【特別企画】

ゲーミングマイク「ロジクールG YETI GX」インプレッション

自身の声をクッキリ綺麗に伝えてくれる全ゲーマー待望のダイナミックマイク

【YETI GX】

2024年2月15日発売予定

価格:オープン

ロジクールオンラインストア価格:32,780円

 ロジクールは、ロジクールGブランドとしては初となるゲーミングマイク「YETI GX」を2月15日に発売する。エントリーモデルの「YETI ORB」との2モデル展開で、対応ハードはUSB 1.1ポートを備えたWindowsもしくはMac。価格はオープンで、ロジクールオンラインストア価格は「YETI GX」が32,780円、「YETI ORB」が8,690円。今回は日本での正式発表に合わせて実際に試す機会に恵まれたのでインプレッションをお届けしたい。

【ロジクールG Yeti GX - GAME Watch】
【YETI GX / YETI ORB】
パッケージ
使用シーンを提示したポップなイメージ
YETI GXは、ハイエンドらしく化粧箱入り
YETI GXは、マイク本体に、スタンド、マイクカバー、USBケーブル、吊り下げ用のアタッチメントを同梱
YETI ORBは、マイク本体にUSBケーブルというシンプルな構成

Blueを買収したロジクールが満を持して放つゲーミングマイク「YETI GX」

 マイクというのは評価が難しいデバイスだ。なんといっても自分ではその良し悪しがわからない。マウスやヘッドセットのように、使った瞬間に「これは!」というものがない。自分の声を伝えるという意味では、スマートフォン付属のイヤフォンやヘッドセットで事足りているし、ただでさえゲーミングギアは多種多様で、アップグレードしたいギアは山ほどある。マイクまではなかなか……というゲーマーが多いのではないか。

 ただ、フレンドに協力して貰うなど一手間掛けて、聞こえ方を確かめて見ると、情報の質、伝達量、聞こえやすさといった点で、雲泥の違いがあるのがマイクだ。当たり前の話だが、YouTuberら配信者がヘッドセットやイヤフォンではなく、単体でマイクを使っているのにはそれなりの理由があるわけだ。

 とりわけ我々ゲームメディアが取り扱うゲーミングカテゴリのマイクは昨今急速に増えており、いまやゲーミングヘッドセットと並んでホットなゲーミングギアのひとつといっていい。増えている理由は、ゲーム配信者をはじめとした需要の拡大にあるが、その背景には、USB接続が敬遠されがちな理由のひとつだった各種ノイズの問題が解決され、XLR接続が多かったダイナミックマイクにUSB接続が増えていることが挙げられる。つまり、ゲーマーにとっての選択肢が豊富になりつつあるわけだ。

 今回紹介する「YETI GX」は、ゲーミングマイクとしてはかなり後発になるが、その分だけ、ゲーマーが欲しい機能をこれでもかと詰め込んだ魅力的なプロダクトに仕上がっている。ゲーミングマイクではまだまだ採用例が少ないダイナミックマイクを採用し、単一指向性の中でもハイクオリティなスーパーカーディオイド、物理的な衝突ノイズを吸収してくれる内蔵型ショックマウント、単体で使用可能なスタンド一体型、誤動作を防ぐ物理的なゲインホイールにミュートボタン、そしてゲーミングギアとして欠かせないRGBライティングと、まさにゲーマーに求められるマイク機能を全部詰め込んだ印象だ。

【ロジが万を辞して放つゲーミングマイクYETI GX】

 新参入とは言え、ノウハウと実績は十分だ。ロジクールユーザーならご存じのように、YETIのブランドネームは、Logitechの子会社であるBlueのオーディオブランドだ。これまでは“ストリーミングギア”という扱いで、配信者向けを謳っていたが、「YETI GX」、「YETI ORB」からはロジクールGブランドに統合し、満を持してゲーマー向けのゲーミングギアとして販売していく。

【ロジクールG YETIシリーズラインナップ】
しばらくBlue YETIシリーズの併売は続くが、将来的にはロジクールGシリーズに一本化される見込み

 現行のYETIシリーズから引き続き、Logicool Gゲーミングヘッドセットでも使われている音響技術Blue VO!CE(ブルーボイス)を採用。強力なノイズリダクション効果、表現豊かなボイスを提供してくれる。

【Blue VO!CE】

 「YETI GX」は、現行最上位モデル「YETI X」、「YETI ORB」は「SNOWBALL ICE」のそれぞれ上位モデルとなる。デザインはそれぞれ踏襲しつつ、マイクとしての性能は少しずつ底上げしている印象だ。それではさっそく各プロダクトを見ていこう。

【デザインはシリーズを踏襲】

ハイエンドの「YETI GX」とエントリーの「YETI ORB」

 「YETI GX」は、先述したようにゲーミングマイクとしてはまだまだ採用例が限られるダイナミックマイクだ。YETIとしても初採用で、当然ロジクールとしても初だ。

 ダイナミックマイクは、わかりやすくいえば、歌手が手に持っているアレであり、マイクの近くだけ、歌い手の声だけを収録するのに適したマイクだ。人が持って歌えるように、振動や衝撃にも強く、マイクを動かしたり衝撃を与えてもノイズがのりにくい特性を持つ。

 「YETI GX」では、ダイナミックマイクであることに加え、一方向からの感度を高くした単一指向性、その中でもよりノイズを拾いにくいスーパーカーディオイドの特性を備え、さらにショックマウントを内蔵している。YETIシリーズを含めた従来のコンデンサーマイクのノイズ対策がBlue VO!CE頼りだったのと比較すると、「YETI GX」はハードウェアレベルで、自身の声以外を徹底的に排除する工夫が幾重にも凝らされていることがわかる。

【YETI GXディテール】
セットアップはネジを回すだけと簡単
マイク本体の底部にUSB Type C端子
ウェイトが設定され、安定感のあるスタンド
マイク入力をコントロールするゲインホイールとミュートボタン。状態は色でわかる仕組み
カバーを外すと、マイク本体がお目見えする

 本体デザインは、YETIから継続してオーソドックスなスタンドマイクタイプ。色は黒で統一されており、ゲーミング環境に馴染みやすい。マイク部には丸洗い可能なスポンジが被せられており、これを外すと金属メッシュに護られたマイク本体がお目見えする。「YETI-GX」では底部、ロゴ、ゲインホイールにLEDが適用されており、RGBで光らせることができる。この各所のLEDの影響で、マイク部が間接照明のようにほのかに光っており、ゲーミングマイクっぽい感じがありなかなかクールだ。

 本体はマイクスタンドに固定されており、右側面のダイヤルを緩めることで、マイクの角度を変えることができる。そのまま緩めきると外すことができ、外部スタンドに取り付けることも可能だ。マイクスタンドは、硬化プラスチック製で質感が高く、台座部分にはウェイトと裏面には滑り止めが設定されており、多少触った程度ではびくともしない安定感がある。総じて、ロジクールGブランドに相応しい、ゲーマー好みの質実剛健なデザインだ。

【YETI GXディテール】
スタンドはネジ式で簡単に外すことができる
マウントを使って吊り下げたイメージ
マイク部のみを接続することもできる
LEDは、裏側と底部に配置
使っている自分からLEDはほぼ見えない

 「YETI ORB」は、「SNOWBALL ICE」ベースで、三つ叉のマイクスタンドに、球体のコンデンサーマイクが取り付けられている。コンデンサーマイクながら、単一指向性のカーディオイドを採用しており、Blue VO!CEのノイズリダクション機能との組み合わせで、キーボードの打鍵音や環境音をある程度カットしてくれる。三つ叉スタンドは、設置時の安定感はあるものの、ボール型の頭でっかちなのに加えて、普通のプラスチックでウェイトも設定されていないため、ややアンバランスな印象で、ちょっとした接触でも倒れてしまう。ここは明確にマイナスポイントだ。

 こちらはエントリーモデルということで、ビジュアルからしてハイエンドの風格を漂わせる「YETI GX」に対して、デザイン的にも機能的にもカジュアルでポップな印象だ。価格的にも1/3以下の8,690円となっており、まずはゲーミングマイクというものを試してみたいという向きに適した1台だ。

【YETI ORB】
YETI ORBは箱から取り出すとすでに使える状態になっている
LEDはロゴとその上部にワンポイント
三つ叉スタンドはそれほど安定感は高くない
マイクはスタンドから外して、外部スタンドへの接続が可能

使ってはじめて分かるゲーミングマイクの存在意義

 説明はこれぐらいにして実際に検証してみた結果をお届けしよう。今回、検証に使用したのは、比較対象としてiPhone 15 Pro Max、PRO X 2 LIGHTSPEED、そしてYETI ORB、YETI GXの計4台。iPhone 15 Pro MaxとPRO X 2 LIGHTSPEEDは、日頃からボイスチャットにビジネスミーティングに使い回しており、マイク性能に特に不満を感じたことはない。

 いずれも今回のマイク2製品より高額なプロダクトだが、これぐらい軽く凌駕してくれないとわざわざマイク単体で買う意味がない、という点からチョイスした。今回あまり検証時間が確保できず、ゲームを使っての検証までたどり着けなかったが、その違いはお伝えできるかと思う。

【検証に使った機材】

 今回は友人に協力して貰い、製品が何であるかは伝えずに、LINE通話でデバイスを切り替えながら感想を聞き、あとでその録音データの提供を受けて筆者も全部聞き直して、2重チェックで性能を評価した。日頃の使用シーンを想定して、BGMをスピーカーからかなりの大音量で鳴らしながら、なおかつマイクはマウスやキーボードと近い位置に配置し、さらにマイク部に触れたり、叩いたりして振動を与えるなどしてあえてノイズがのりやすい環境で検証してみた。

 結論から言うと、今後のボイスチャットやミーティングはすべてYETI GXに切り替えようと思うぐらいゲーミングマイクの効果は絶大だった。検証によって、自分の声がどう伝わっているのか、周囲の環境音をどれほどノイズとして拾っているかなどについて、気付く良いきっかけになった。これはゲーミングマイクの導入にかかわらず、皆さんも一度やってみるといい。

 iPhone 15 Pro Maxは、LINE通話のスピーカーモードで試してみた。マイクの音質自体は悪くなく、しっかり聞き取れる。ただ、デフォルト状態では声以外の環境音もある程度拾ってしまうため、BGMやキーボード音もしっかりのってしまう。本体への接触等にも弱く、マイク付近への接触音や衝突音をそのまま拾ってしまうこともマイナス点だ。

 ちなみにこれらのノイズは、iOSのマイクモードの設定を「標準」から「声を分離」にすることでかなり解決できる。ただ、音自体を魔法か何かで消しているわけではなく、ソフトウェア技術で分離しているだけなので、「声を分離」すると、今度は声自体にノイズが混じり、声質が低下してしまう。結果として聞き取りづらくなる。iPhoneのOSレベルでのノイズキャンセル機能は、簡易的な機能としては優れているが、高い水準が求められるゲーマーが満足する水準には達していないようだ。

 次にPRO X 2 LIGHTSPEEDのブームマイク。iPhoneと比較するとマイクモード「標準」の音質より下がり、ラジオボイスっぽさが出る。音質を意識して聞き直すと、伝達している声の幅に限りがあり、声を綺麗に伝え切れていないことがわかる。周波数特性的にも、PRO X 2がもっとも狭いので、これは当然かもしれない。

 ただ、単一指向性の6mmブームマイクを採用しているためか、環境音はほぼ聞こえず、とにかくノイズがのらない。筆者自身日々使っていることもあり、声を伝えるという点では必要十分な性能を備えていると言える。

 PRO X 2の魅力は、ここからさらにBlue VO!CEによる補正を掛けられるところだ。オンにすると声が増幅され、環境ノイズがさらになくなる。オフ時にわずかに感じた接触やポップ音などもなくなり、クリアなボイスだけを相手に伝えることができる。

 ただ、オフ時と比較すると、機械的なブースト感が出ることに加え、音質自体が良くなるわけではないため、ノイジーな環境で使うと逆に聞き取りづらく感じることがある。その構造上、性能に限界のあるブームマイクならではの泣き所といったところだろうか。

【PRO X 2】
ヘッドセットながら、マイク側の設定もしっかりできる。さすがはハイエンドゲーミングヘッドセットだ

 さて、ここからが本番のマイクになる。まずYETI ORB。1万円以下のエントリーモデルだが、しっかりとした機材を使っているということがわかるほど、前述2製品と比べて音質がぐんと上がる。単一指向性の特性を活かして、環境ノイズも最小限で、BGMやキーボードの打鍵音は、指摘されれば気付くが、気にならない程度まで小さくなる。

 Blue VO!CEをオンにすると、PRO X 2と同様に声が増幅され、ノイズはさらに減る。接触ノイズ等も気にならなくなる。ただ、コンデンサーマイクであるため、ノイズ自体はある程度拾っており、声の周波数帯や発声の切れ目など、一定のタイミングでノイズが“突き抜ける”という現象が起こる。また、接触音などもBlue VO!CEの力で綺麗にカットしてくれるが、声自体が消える現象があり、Blue VO!CEの補正処理の優秀さを認識しつつも、ソフトウェア処理だけでは限界があるということに気付かされる。エントリーモデルとしてはかなり優秀だが、若干の粗はあり、満点とは言えない、といった感じだ。

【YETI ORB】
こちらはYETI ORBの設定画面、PRO X 2と同等だが、イコライザーの周波数の中高域が6200Hzから6500Hzまで広がっているほか、プリセットの内容が一新されている

 そして最後のYETI GX。音質は今回検証した中ではダントツに1番だった。検証が一巡した後、2巡目で順序を入れ替えて再検証したが結果は同じだった。他の3製品が、伝えている声の幅に限りがあり、その補正にも機械的な印象があるのに対して、YETI GXは直接相対して話しているようなナチュラルな声を相手に届けることができていると感じた。

 Blue VO!CEをオンにすると、声がさらに増幅される。ノイズはそもそもオフの時点でほぼ拾っていないが、ハードウェアレベルでノイズをシャットアウトしているおかげで、オンにしてもYETI ORBであったようなノイズの突き抜けがなく、自身の声だけを増幅して相手に伝え続けられる。ソフトウェア補正でこれを綺麗に実現できていたのはYETI GXだけだ。

【YETI ORB】
こちらはYETI GX。物理スイッチがある関係で、「スマートなオーディオロック」のダイヤログが追加されているほか、イコライザーの周波数の幅がもっと広い

 ちなみに、オンにすると若干ブースト感が出て原音感が下がってしまう。ここは好みの問題だが、気になる方はオフにして使っても良い。YETI GXは数々のハードウェア機能によって、オフでもノイズがほとんどのらないため、結果として「オフにする」という選択の余地があるのが素晴らしいところだ。

 その後もBGMを大きくしたり、キーボードを打鍵しまくったり、さらにゲームをスピーカーで鳴らしたり、本体を倒したりバンバン叩いたりしてみたが、まったく破綻が起きない。自身の悪質なノイズ発生行為などまったくないかのように、自身の声だけを相手に伝え続ける結果となった。ダイナミックマイク&スーパーカーディオイド&Blue VO!CEの組み合わせの力を実感した次第だ。

 なお、Logicool G Hubでは、Blue VO!CEのオプションとして、イコライザー機能で音質を調整したり、信号クリーンアップ機能でノイズリダクション効果を強化・調整することができるほか、エフェクトを掛けてボイスチェンジを掛けることもできる。自身の声を綺麗に届けたいなら、単体マイクに勝るものはないといった印象だ。

【RGBライト】
RGBライトは、G Hubで設定可能

ゲーミングマイクはゲーミングシーンに大きな変化をもたらしてくれる

 今回の検証は、複数のノイズを発生させた状態で友人とボイチャして聞き比べただけという簡易的な内容だが、それでも明確な違いが感じられた。あとは、ゲーミングマイクとしての価値を活かすだけの使い方ができるかどうかだろう。

 筆者の場合、ゲーミングシーンが一段上がるというレベルで大きな進化が感じられた。先述のようにボイチャありの場合はヘッドセットを使っていたが、本来ゲームをプレイする際はスピーカーで音を出したいタイプだ。YETI-GXなら、スピーカーでゲームサウンドを鳴らしたままで、スピーカーのミュートやヘッドセットを使わずにそのままボイスチャットが可能になる。これはもの凄く便利だった。

【ゲーミングマイクで変わるゲーミングライフ】
ゲーミングマイクはかなり大きく存在感があるため、置くだけでゲーミングデスクの雰囲気が変わる

 もちろん、YETI GX以外でも、iPhoneのマイクモードやBlue VO!CEの補正効果によって、環境ノイズはかなりのレベルまで除去できるため、やろうと思えば同じ事はできる。ただ、元々の音質自体は変わらず、声の帯域や一定のタイミングによってノイズの“突き抜け”や、逆に声も含めて丸ごと補正してしまう“声の落ち”が発生することがあり、トータルでの使い勝手は、YETI GXがぶっちぎりで高かった。

【マイクアーム】
マイクアームに接続して、より本格的なスタイルで使用することも可能

 最後にやや余談になるが、今回紹介した2製品は、Windows、Mac向けのプロダクトだが、PS5に接続しても正常に認識してマイクとして使用することができる。これ自体は“ロジクール製品あるある”だが、マイクに限ってはそのまま実戦投入するのは厳しいなと感じた。

 というのは、Blue VO!CEはもちろんのこと、ドライバ自体が機能していないため、一切のノイズキャンセルが掛からず、全部の音をそのままマイクが拾ってしまう。特にコンデンサーマイクのYETI ORBはダイレクトにノイズを拾ってしまうため、上記のような環境で利用するとかなり騒がしくなってしまう。ダイナミックマイク&スーパーカーディオイドのYETI GXはその点かなりマシになるものの、それでもPCで利用したときよりノイジーになる。PS5で使おうと考えている方は注意が必要だ。PS5については、今回比較対象として使用したPRO X 2が正式対応しているため、こちらを使用するといいだろう。

【PS5でも認識するが……】
挿すだけでデバイスを認識してくれる
マイクレベルの調節では機械的なノイズがのってしまう

 YETI GXとYETI ORBは共に来月2月15日発売を予定。ゲーミングマイクは、ゲーミングシーンに明確な変化をもたらしてくれるデバイスで、とりわけYETI-GXは強烈なインパクトを残してくれた。PCゲーマーはぜひ導入を検討してみては如何だろうか。

【YETI GX / YETI ORB】