【特別企画】

「テニプリ」の愛称で親しまれている「テニスの王子様」はコミックス発売から24周年!

 中でも、U-17W杯の日本VSドイツ戦のドイツ代表ダンクマール・シュナイダーの「 巨像(ギガント) 」。シュナイダーがサーブを打つ際に使用する技で、読んで字の如く自身が 巨人化 する技だ。原作者曰く、巨人化した様子はあくまでイメージだというが、「新テニ」を読んでいないであろう知人から突然SNSのリンクが送られてきた時はどれほど世間にインパクトを与えたのかを一ファンとして目の当たりにした。

 他にも日本代表の高校生・徳川カズヤの「 ブラックホール 」もパンチが効いている。一応理論上は空中でラケットを振ることで空間を削り取ってどんなボールの動きも止めてしまう技らしいが、どんなに説明がついたところでコート上にブラックホールを出現させる高校生なんてNASAの研究対象にされるのではないか。

 「新テニ」では奇想天外な技が多数登場し、その度に世間をあっと驚かせては興味を引いている。今となっては確固たる「テニプリ」を象徴する文化のようにもなった。通常のテニスでは有り得ない必殺技の数々からテニスを通り越し「テニヌ(※あくまで非公式の呼び方)」という新たなワードまで生み出されてしまうほどの影響力だ。この奇抜さが逆に功を奏し「テニスの王子様」を読んだことがない人にも、何となく本作が凄いテニスをしているマンガとして認知され、読者のみならず世間に浸透した。原作者の許斐剛氏はこれら全てを計っていたというから脱帽だ。(※「ORICON NEWS」インタビューより)

細かすぎるキャラクター設定。女性ファンが落ちていく王子様たちの魅力

 好きな人ができるとその人のことをより知りたくなってしまうのが恋の性。テニプリはそんなニーズにもしっかり応えてくれるサービス精神旺盛の作品だ。

 本作に登場するキャラクター達にはかなり細かい設定がある。一般的に公式から公開されるキャラクター設定でよくあるのは、誕生日や血液型など大まかな部分が多いが、テニプリに関してはキャラクターが現実に生きているかのような設定の細かさだ。

テニプリパーティー20th

 例えば、使用しているラケットやシューズのメーカー、靴のサイズや視力、家族構成、父親の職業、さらにはお小遣いの使い道や、好みのタイプ、グループLINEのやり取りなどのかなりパーソナルな部分まで細かく、人物像が想像しやすい情報をファンに向けて公開してくれている。

 靴のサイズを知った日には、靴屋で同じサイズの靴を眺めては想いを馳せてしまうに違いないし、好みのタイプを知った日にはきっと意識してしまうだろう。特に筆者的に一番想像を掻き立てられた情報は家族構成と父親の職業だ。

 なんてことない情報だが父親の職業まで教えてもらえることで推しの育ちを感じることができる。幸村精市の父親の職業が広告代理店の会社員というわりとイケイケな職業だと判明した時は、儚げな中学3年生の幸村とのギャップに尊さを感じつつも、ジャージに袖を通さず肩に引っ掛けるあの粋な着こなしにもなんとなく納得できてしまった。(※あくまで筆者の想像の域)本作のキャラクターの魅力はコート上での熱い戦いに現れているのはもちろん、原作者の許斐剛氏によるファンへのきめ細やかなサービス精神によっても増長されているに違いないだろう。

時代を跨ぎ長く愛され続けるテニプリワールド

 原作であるマンガでも絶大な人気を誇る「テニプリ」だが、マンガ以外でも幅広い展開を長年見せている。ジャンプ作品の中でも異例の長さと多さで、キャラソンフェス、ミュージカル、原作者本人による企画イベント、グッズ展開などが年間を通して行なわれている作品だ。

 また、許斐剛氏は自身を「ハッピーメディアクリエイター」と称している。原作者本人が作詞作曲歌唱してリリースした曲もあり、フェスやイベントで披露することもしばしば。どこまでも突き抜けた展開が多くのファンの心を掴んで離さない。漫画家ではあるがその枠組に捉われず、あらゆる方法で「テニプリ」を好きになったファンを楽しませてくれるその様子は、稀代のエンターテイナーとも言えるだろう。原作の外側ではどのような取り組みがファンの心を掴み続けているのか。

アニメ版声優陣によるキャラクターソングの継続的なリリース・キャラソンフェス

 代表的なのは定期的にリリースされている「キャラクターソング」だ。

 テニプリがアニメ化した2000年頃、当時はアニメ化されると人気アニメには声優によるキャラクターソングアルバムがリリースする作品が多く見られた。

 しかし、だんだんとキャラソン文化は薄れていき、いつの間にか人気アニメ作品でもキャラソンを耳にすることは少なくなった令和。だが、「テニプリ」に関しては初めてキャラソンがリリースされた2002年から令和になった現在も新しいキャラクターソングが続々とリリース。なんと900曲以上にも及ぶとんでもない膨大な曲数だ。中にはキャラソンの作詞を担当声優本人が手掛けることもあり、ファンにとってはかなり熱い。

 定期的にリリースされるだけでも凄いことだが、その中でもファンを楽しませるような様々な趣向が凝らされている。ハッピーサマーバレンタインはその代表例だ。

2月14日のバレンタインデーには毎年「テニスの王子様」に登場するキャラクター宛に沢山のチョコレートが原作者の許斐剛氏の元へ届く。そのお返しとして、原作者自ら毎年8月14日をハッピーサマーバレンタインデーと独自に制定し、お返しの「ハッピーサマーバレンタイン」という曲をその年に公式によって選ばれたキャラクターが歌唱しリリースするという年1のイベントだ

 ちなみに2月のバレンタインデーに言えなかった気持ちも真夏の8月ならチョコとともに溶けて言えるだろうということで8月になったらしい。2017年初代は原作者の許斐剛氏による歌唱から始まり、以来様々なキャラクターによって歌い継がれてきた。2023年のハッピーサマーバレンタインの歌唱を担当したのは「新・テニスの 王子様」から高校生キャラクター・毛利寿三郎(CV.野島健児さん)と越知月光(CV.川上貴史さん)だった。

 ファンはキャラクターたちとの特別な記念日も味わえるので、「テニプリ」を好きになることで毎年生きる理由ができると言っても過言ではない。毎年推しからお返しがもらえるとはなんて素敵な企画なのだろうか。

 さらにはキャラソンリリースのみならず、キャラソンによるフェスも定期的に開催されている。声優陣もアニメ放送時から変わらず現在も同じキャストが務めていることもあり、主人公・越前リョーマ役の皆川純子さんを筆頭に、多くのキャスト陣の素晴らしい演技と歌唱がイベントを盛り上げ支えている。

 2023年に開催された「テニプリフェスタ2023」でも、横浜アリーナがテニプリファンで埋め尽くされ、皆思い思いにコールしペンライトを振る様子に「テニプリ」のキャラソンがどれだけのファンの人生を支え彩ったのだろうかと考えてはなんだか涙腺が緩んでしまった筆者。声出しOKになった公演だったこともあり大盛況の末幕を閉じた。

【「テニプリフェスタ2023 U-17 WORLD CUP」Blu-ray&DVD 2023年12月22日発売告知PV】

原作者による読者へのファンサや企画が神レベル

 基本的にイベント企画には原作者は関わらないパターンが多いが、「テニプリ」に関しては原作者自身がかなり積極的に関わっている。

 3DCGを駆使して実際にキャラクター達が目の前にいるかのような画期的な演出を取り入れた自主企画イベント(「許斐 剛☆サプライズLIVE~一人テニプリフェスタ~」)や、キャラクター宛に送られてきたチョコの数をランキング発表するバレンタイン企画、ファンのテニプリ知識を確かめる「テニプリ入学試験」、キャラクター人気投票「テニプリ国勢調査」など、ファンを喜ばせる企画が原作者直々に多数企画されている。

 中でも過去に開催されていたバレンタイン企画は白熱したチョコレースが実際に繰り広げられる、「テニプリ」ならではの飛び抜けた企画だった。(※近年は「集英社」にてチョコの処理が追いつかないため中止となっている)

 こちらはバレンタイン企画当時に投稿された原作者の公式X。なんとジャンプ編集部に青学・不二周助宛のチョコが8,000個も送られてきたそう。この後、跡部様推しのファンにより不二の記録を大きく上回る跡部様宛のチョコレートが大量に贈られることに。結果2014年は跡部様の圧勝に終わった。

 また、許斐剛氏のXでは、結婚式を控えた跡部様推しのファンからのリプに対し「 あ~ん?参列するぜ 」と白スーツを纏った跡部様のイラストと共に祝福のリプ返をしてネット上で話題となった。ファンへの対応がかなり手厚くまさに神対応だ。

 原作者自身の作品愛とファンへの思いやりを感じる企画や対応もテニプリファンの熱量を盛り上げているに違いない。

2.5次元の新たな道を切り拓いた「テニミュ」という今や歴史的なコンテンツ

 テニプリを語る上で最早欠かせないコンテンツとなった「テニミュ」こと「ミュージカル テニスの王子様」もファンにはたまらないコンテンツだ。

【【公演CM】ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学vs立海】

 2003年に初代キャストによる初演が行なわれてから約20年に渡って公演が続くテニミュ。現在も4代目キャストで公演が続いており、歴史ある2.5次元ミュージカルへと成長した。

 現在主流となっている「女性に人気の少年マンガ原作で男性キャストのみ」という、2.5次元ミュージカルの先駆けとなった。今では若手俳優の登竜門とも呼ばれる伝統的な2.5次元ミュージカルとしても浸透し、出演俳優から本作に入っていくファンもいたりと、流入の多い間口の一つでもあるだろう。

 俳優達のお芝居によってキャラクターが生き生きとリアルに動く様は、キャラソンフェスとはまた違った感動がある。劇中曲の歌詞は声優でもある三ツ矢雄二さんが手掛ける。その数は200曲以上で、原作のキャラクターの心情を忠実且つインパクトのある歌詞で再現した楽曲の数々は一度聞いたらつい口ずさんでしまうだろう。ミュージカルでもしっかり爪痕を残しているのが「テニプリ」らしい。

 このように、本作には原作をはじめとする様々な入り口を用意しつつファンへの供給が行われており、そのサイクルは新たなファンを取り込みながら常に循環し続けている。

 正直、巨大なコンテンツなだけにその内容はあまりにも濃く、本稿で紹介した魅力や世界はごくごく一部に過ぎないがテニプリの魅力が少しでも伝わっていたら幸いだ。

 現在「テニスの王子様」は全42巻が絶賛発売中で、新シリーズ「新・テニスの王子様」は引き続き連載中。まだ読んだことがない人も、学生時代に読んだ人も、難しいことは一旦抜きにして本気でぶつかり合う熱い試合や、個性的なキャラクター達の成長など、許斐剛氏の繰り広げる独自の世界を楽しんでみてはいかがだろうか。もしかしたら心の「王子様」も見つかるかもしれない。

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