【特別企画】
「CHAOS;CHILD」9周年! 当然だと思っていたもの全てが覆るサスペンスアドベンチャー
2023年12月18日 00:00
- 【CHAOS;CHILD】
- 2014年12月18日 発売
みんなにとって“自分の人生を変えたゲーム”はなんだろうか。やりこんだFPSだったり、大切な人と出会ったMMOだったり、様々なゲームが挙がるだろう。自分にとって「CHAOS;CHILD」はそんな衝撃を与え、その後のゲーム選びにまで影響を及ぼした作品だ。
「CHAOS;CHILD」はMAGES.(旧:5pb.)からリリースされた科学アドベンチャーシリーズの1作。同シリーズ内のタイトルを挙げるなら、「STEINS;GATE」の名前を聞いたことのある方は多いだろう。「CHAOS;CHILD」も「STEINS;GATE」同様に多くの謎が繰り広げられ、全てが明かされた時の達成感と衝撃が魅力のノベルゲームとなっている。
そんな「CHAOS;CHILD」は、本日2023年12月18日で発売から9周年を迎えた。本稿では、本作の魅力について語らせていただく。なお、ネタバレとなる要素も含まれているので注意してほしい。
また、使用しているSSは、iOS版「CHAOS;CHILD」のものとなるので、こちらもご了承願いたい。
渋谷を舞台に起きる連続猟奇事件
「CHAOS;CHILD」を語る上で外せないのが、科学アドベンチャーシリーズの1作目である「CHAOS;HEAD」の存在だ。他の科学アドベンチャーシリーズと違い、「CHAOS;HEAD」だけは「CHAOS;CHILD」と密接に話が結びついている。
もちろん、「CHAOS;HEAD」を遊んでいなくとも「CHAOS;CHILD」単体で楽しむことは可能だ。過去作の主人公たちも、基本的には出てこない。だが、「CHAOS;HEAD」をプレイしていると本作の話を理解しやすくなる上、「CHAOS;HEAD」を遊んでいたからこそ楽しめる要素も存在する。余裕があればぜひ「CHAOS;HEAD」から楽しんでみてほしい。
「CHAOS;HEAD」では、「ニュージェネレーションの狂気」と呼ばれる連続猟奇殺人が行われた。その6年後が「CHAOS;CHILD」の舞台となっており、「ニュージェネレーションの狂気」と全く同じ日付に、同じ渋谷で猟奇殺人事件が発生する。
ゲームを始めたプレイヤーは、まずこの猟奇殺人事件の被害者の1人目と2人目の視点を見せられる。特に1人目の視点では、死ぬ瞬間までの思考をまざまざと見せられるのだが、この生々しい描写はかなりおぞましい。
ちなみにこのゲームのCEROは最も高いZに指定されている。これはあくまでもそのグロテスクさ故のレーティングなので、プレイする際には留意してもらいたい。
自らの腕を食べて死ぬ配信者や、腹にスピーカーを埋め込んで死んだバンドボーカルと、猟奇的な事件が続くが、これはまだ序の口。犯人に何の目的があるのかわからないまま、この猟奇的な事件は6年前をなぞって続々と発生する。
上述した通り、プレイヤーは最初に事件の被害者視点を見せられる。そこからこの事件の違和感と、犯人の手がかりを得ることができるのだが……。それだけの情報が開示されるということは、ここまでの情報は明かしてもシナリオ上で問題ないというゲーム側の意図も含まれている。この事件で何が起きたのか、全貌はまだまだ見えていない。
学園の新聞部が事件を追う
主人公の宮代拓留(みやしろたくる)は、渋谷の学園に通う新聞部の部長だ。幼馴染の尾上世莉架(おのえせりか)や施設で姉弟の関係だった来栖乃々(くるすのの)、友人の伊藤真二(いとうしんじ)と無口な後輩の香月華(かづきはな)の4人と共に、渋谷で起こる連続猟奇事件を追っていく。
いち早く、6年前に起きた「ニュージェネレーションの狂気」とのつながりに気づいた拓留は、3つ目の事件が起きる日付に警察沙汰の騒ぎを聞きつけ、世莉架と2人で事件現場に潜入する。この事件の状況を間近で見たことをきっかけに、拓留は連続猟奇事件に大きく巻き込まれていくこととなる。
姉として拓留を心配する乃々と、どこか天然ながら理解者として背中を押してくれる世莉架。主人公の拓留に最も近いとも言えるこの2人には、過去に拓留とどんな事があったのか。
他にも、3つ目の事件現場に居合わせた謎の少女、有村雛絵(ありむらひなえ)や、同じ学園の生徒でありながら警察と協力して事件を追っている久野里澪(くのさとみお)など、個性豊かなキャラクターたちが登場。
それぞれのキャラクターたちはどんな秘密や思いを抱え、どんな目的で動いているのか。少しずつ新たな事実が判明していき、プレイヤーを釘付けにしていく。
ポジティブ? ネガティブ? 物語を盛り上げる妄想トリガー
「CHAOS;CHILD」はビジュアルノベルにもかかわらず、選択肢らしい選択肢が存在しない。代わりにゲーム内でたびたび登場するのが「妄想トリガー」だ。
左側はポジティブ、右側はネガティブとなっており、どちらかを選ぶことで拓留の妄想が繰り広げられる。
ポジティブを選んだ時は、大体は思春期の学生らしい妄想が、逆にネガティブを選ぶとサスペンスな妄想が行われる。
特にネガティブな妄想では、突然ヒロインがキレたり、主人公がプロレス技を決めたりと公式でキャラ崩壊が起きることも。かと思えば妄想の中で平気で人が死ぬこともあり、その温度差にかなりドキドキさせられた。
ネガティブな妄想を見た後はすぐにクイックロードを使い、ポジティブな妄想を見て心を落ち着かせるのが筆者のプレイスタイルだ。
もちろんこれらはただの妄想。どちらを選んでも基本的には直後のストーリーに影響はないのだが、この選択がルート分岐の条件にもなっている。
多くのヒロインはそのキャラにまつわるポジティブなトリガーを引いておけば、ルートに入ることができるのだが、やや特殊な分岐をするヒロインも存在。さらにはルートに入ってからもエンディングの分岐に関わるトリガーが出現することもある。初めて見た時はネタ要素だと思っていたが、 実はかなり重要な存在だ。
クリアした時、自分の認識全てが覆るサスペンスアドベンチャー
ここまでネタバレにならないよう「CHAOS;CHILD」の背景と特徴を紹介してきたが、正直なところこのゲームの魅力を存分に伝えられてはいないだろう。というのも、このゲーム最大の見せ場は張り巡らされた伏線が回収され、真実が明かされる瞬間だからだ。
というわけで、ここからはネタバレありで筆者の感想について書かせて頂ければと思う。まだ「CHAOS;CHILD」をプレイしていない方は注意してほしい。
まずこの作品の登場人物たちは「ギガロマニアックス」と呼ばれる超能力を持っている。OPで彼女たちが持っている剣「ディソード」は能力者の証だ。
例えば事件現場にいた少女・雛絵は嘘と真実を見分ける力を持っている。この設定が明かされる前に、雛絵は相手に執拗に言葉にさせようとする描写があったのだが、今思えば納得の部分だ。
「超能力が存在する時点で何でもありでは?」と思う方もいるだろうが、「CHAOS;CHILD」は別に推理ゲームではないのでそこは留意してほしい。
重要なのは“どうやって事件が起きたのか”ではなく“誰が何のために事件を起こしたか”だ。
ここまででなんとなく気付いている方もいるかもしれないが、この一連の事件の犯人は主人公に近しい人間だ。そのためこの先では学園で事件が起きたり、主人公の身近な人が事件に巻き込まれることもある。
詳細は伏せるが、6つ目に起きる事件は筆者のみならず多くのプレイヤーにとってトラウマとなったはずだ。
最終的に犯人が明かされた時はもちろん衝撃だった。だが驚きはそこで終わりではない。犯人の背景、そしてその目的を知った時、主人公とプレイヤーはさらなる衝撃を受ける。
ゲームが始まった時にはただの部外者でしかなかった主人公が、いつの間にか事件の中心に立っていた理由。納得の事実が明かされると同時に、言いようのない絶望も与えてくるのが「CHAOS;CHILD」だ。
さて、ここまで重要な事実は伏せながらネタバレをしてきたわけだが……正直これでも序の口。ここまでは1周目の共通ルートである。
この後個別ルートに入っていくわけだが、あるヒロインの秘密が発覚することで2度目の衝撃を。そして個別ルートを全てクリアした後に明かされる最後の秘密を知った時、あなたは最初からこの作品に騙されていたことに気づく。
恐るべきはその事実が、数々の伏線により裏付けされていること。自分はこれほどまでに伏線の回収が美しい作品を見たことがない。
「CHAOS;CHILD」は筆者にとって、記憶を消してもう1度遊びたい1本だ。もし今初めて本作を知ったなら、あなたは幸運だ。「CHAOS;CHILD」はSteam版に加え、プレイステーション 4/プレイステーション 3/PlayStation Vita/Xbox One/Nintendo Switchといったコンシューマーゲーム機、さらにはiOS/Androidのスマートフォン端末でもプレイできる。
遊べる端末が幅広くハードルが低いため、ぜひ人生で一度はこの衝撃に触れてみてほしい。
(C)2014 MAGES./5pb./RED FLAGSHIP/Chiyo St. Inc.
(C)2008 5pb./Nitroplus/RED FLAGSHIP