【特別企画】

グラップリングフックで縦横無尽! サイバーパンク×2Dアクション「SANABI」プレイレポート

伝説の退役軍人とハッカー少女がメガシティの謎を解き明かす

【SANABI】

11月9日 発売

価格:1,520円(Nintendo Switchパッケージ版は5,082円)

 NEOWIZは、Nintendo Switch/PC用2Dアクション「SANABI(サンナビ)」を11月9日に発売する。ダウンロード版の価格はSwitch/PC共に1,520円。Nintendo Switch向けにはパッケージ版も同時発売され、こちらの価格は5,082円。

 本作は大学生たちによる開発チーム、WONDER POTIONが手掛けるインディゲーム。Steamでは2022年6月からアーリーアクセスが始まり、約2,900件に及ぶレビューにて「圧倒的に好評」を維持している。今回はそんな注目作がSteamとNintendo Switch向けに正式リリースされる。

 ポップなドット絵で表現されたサイバーパンクの世界観と、グラップリングフックによるスピード感あふれるアクションが本作の大きな魅力。本作のストーリーや具体的な特徴について、プレイレポートとしてお伝えしていきたい。

【「SANABI」Official Release Date Trailer】

サイバーパンク風の都市で始まる復讐の物語

 本作の主人公は、チェーンで伸びる義手を装着した伝説的な退役軍人。テロによって最愛の娘を失った彼が、壮絶な復讐心を燃やしながら正体不明の存在SANABI(サンナビ)を追っていく……というのがストーリーの骨子にあたる部分だ。

 まず物語は、娘と一緒に過ごす穏やかで平和な日々から幕を開ける。愛くるしい娘とふれあいつつ、チュートリアルとして基本的な操作を覚えていくことになるが、その矢先に予想だにしない“悲劇”が巻き起こってしまう。

 復讐に駆られた主人公は、かつて退役した軍に招集され、命懸けでSANABIを追うことを選ぶ。そしてその目的を果たすために突入するのが、約300万人の市民が突如失踪を遂げたメガシティ「マゴ」。腐敗したコングロマリットが支配するその都市には、数えきれないほどの謎と脅威が待ち受けていた。

 ゲームの目的はマゴを攻略し、SANABIを見つけ出すことにあり、プレイ中にはステージの背後に都市の風景が映し出される。そこにはきらびやかなネオンに彩られた看板、近未来的なのに荒廃した街並みなどが広がっており、いわゆるサイバーパンク的な世界観だ。レトロかつ壮麗なドット絵の効果も相まって、アクションの合間に思わず目を奪われてしまうことも少なくない。

ステージクリア型で巨大な都市を移動&探索

 本作は広大なマップを探索するメトロイドヴァニア型ではなく、基本的には一本道のステージを1つずつ攻略していく形式。とはいえ決してステージが狭い印象はなく、ひとつながりの巨大な都市を探索していく爽快感を味わわせてくれる。

 また主にステージクリアのタイミングで、キャラクター同士の会話パートが挟まり、徐々にストーリーが進行。そこでメガシティに隠された謎が解き明かされていくと共に、新たな目的が提示される。そしてチャプターごとに存在するボスとの戦いを経て、プレーヤーは次のチャプターへと移っていく。

 ゲーム全体は複数のチャプターに分かれており、それぞれがマゴの重層的な構造に対応。最下層から始まり上層を目指していくことになる。

テンポのいい「チェーンフック」アクション

 本作のアクションのもっとも大きな特徴は、グラップリングフック要素だ。主人公の片腕から伸びる「チェーンフック」を使うことで、壁や天井にぶら下がりながら勢いよくジャンプできる。フックが刺さった場所を起点として、主人公の身体をぐるぐると回転させられる仕組みなので、文字通りマップを縦横無尽に移動できるだろう。

 また、フックにぶら下がったまま急加速する「スイングダッシュ」という技術もあり、疾走感のあるハイスピードアクションを楽しめる。

 移動だけでなく、戦闘においてもスピード感を損ねない工夫が施されており、基本的に小型の敵には直接フックを打ち込むだけで“処刑”することが可能。ボスにはフックでダメージを蓄積させることで撃破できる。さらに敵を倒した瞬間、空中でダッシュできるようにもなっており、移動と戦闘を矢継ぎ早に繰り返すことができる。

 一方で本作はそんなスピーディーなゲーム性でありながら、画面が移動した瞬間にゲームオーバーが確定するような状況が生まれにくいのが巧妙なポイント。そもそもマップ上には理不尽な仕掛けがほとんど存在しない。またトラップに引っ掛かったり、敵の攻撃に当たったりするとダメージを受けるが、一度にライフをすべて失うことはない。加えて、フックで移動する方向を瞬時に変えられるので、もし突然ピンチに見舞われても、操作に慣れてくれば咄嗟の判断で回避できるようになるだろう。

 冒険を進めるとアクションの幅がさらに広がり、フックを巻き取って掴んだ場所に一気に移動することなども可能になる。またステージごとに多彩なギミックが用意されているため、つねに新鮮な感覚のアクションに没入できる。

 逆にフックを使わないアクションは、ダッシュやジャンプくらいしか存在せず、移動から戦闘、回避に至るまで、ほぼすべてのアクションでフックが起点となっている。そのためステージをクリアしていくためには、“フックで何ができるのか”の理解を深めたり、フックが刺さる場所、刺さらない場所を瞬時に把握したりすることが重要だ。フックを使わずに戦闘を行なえば、たちまち敵の攻撃に追い詰められてしまうことだろう。とくにボス戦ではフックアクションを上手く活用することが求められるので、豊かな発想力で戦っていこう。

魅力的なシナリオとキャラクターたち

 フックアクションの爽快感やサイバーパンク的な世界観が本作の魅力であることは確かだが、それに匹敵するほどに心を掴んでくるのが完成度の高いシナリオだった。娘とのほのぼのとした交流から、一気に絶望を突きつけてくる展開の落差。そこで浮上してくるSANABIやマゴの謎めいた設定……。徐々に謎の核心に迫っていく、ミステリー仕立てのストーリーに引き込まれる。

 そして序盤から旅のお供に加わる、マリというキャラクターの魅力も大きい。彼女はヘッドホンを付けた黒髪ロングの女の子であり、マゴのほぼ唯一の生き残りにして、ハッカー(自称・情報資産取得の専門家)でもある。その性格は明るいお調子者で、時にコミカルなやりとりを交えながら主人公をサポートしてくれる存在だ。

 ストーリー上はハードな展開が多く、主人公も寡黙な性格なので、賑やかな少女の存在に救われる場面は多いはず。セリフの掛け合いが楽しく、ドット絵とは思えない生き生きとした感情表現もチャーミングで、殺伐とした世界の貴重な癒し要素と言えるだろう。マフィンというロボットに乗ってふわふわと付いてくる姿もかわいらしい。

 ほかにも、主人公が現役軍人だった頃の後輩たちや、さすらいの傭兵「正義」など、さまざまなキャラクターたちが登場。物語の背景にドラマチックな世界観が広がっていることが感じられ、否応なしに好奇心をそそられてしまう。

 レトロな感触でありながら、新鮮な驚きに満ちた「SANABI」の世界に、ぜひ飛び込んでみてほしい。