【特別企画】

ホラーゲーム「CHIYO」インプレッション 超能力で初心者でも遊びやすい和風ホラー

【CHIYO】

発売元:SCRY SOFT

開発元:Nimbus Games

ジャンル:ホラーゲーム

プラットフォーム:PC

発売日:2023第4四半期

 マレーシアのゲームデベロッパーNimbus Gamesが開発しているインディゲーム「CHIYO」。来年の頭に予定されているリリースに先駆け、10月2日から体験版のプレイが可能となっている。

 江戸時代の屋敷を舞台に繰り広げられるホラーゲームである本作。超常現象の捜査員としてやってきた主人公の伊達千代は、時に仕掛けを解き、時に呪いを浄化しながら、屋敷の謎と悪意の正体を探っていく。

 謎を解きながら屋敷の奥へと進んでいくオーソドックスなホラーゲームでありながら、扉の浄化やアイテムの捜索など、探索を手助けする力を主人公が有しているのが本作の魅力だ。

 本稿では「CHIYO」の体験版をプレイ。序盤のプレイからでも感じられる和風ホラーの不気味さと、主人公の超能力が与えるホラーゲームの新たな体験について触れていこう。

超能力を駆使しながら進むホラーゲーム

主人公は屋敷の異変調査に来た超常現象捜査員

 主人公の伊達千代は、徳川幕府の魔法秘儀師団なるものに所属する超常現象の捜査員。まだ採用されたばかりの新人で、魔法秘儀師団の頭領から初めての任務を与えられるところからゲームが始まる。

 その任務とは、ある山間部で発生した渦巻く暗雲と一帯を覆う霧という特異事象の調査。同時期には本位田家という一族が、荷物を抱え自身らの屋敷を後に。その後本位田家の屋敷の近くを幽霊のようなものが彷徨い始めたという話から、主人公は本位田家の屋敷を調査することとなる。

下を見れば陰陽師のような服装の主人公が映る

 「CHIYO」は一人称視点で繰り広げられる3Dホラーゲーム。主人公である伊達千代の視点で進んで行くため、没入感が高く本当に自分がそこに居るかのような感覚に捕われる。プレイ中には正体不明の足音なども聞こえ、恐怖に思わず操作する手を止めてしまうこともあった。

超能力を発動する際には両手で印を結んでいく。忍者アニメにハマっていた頃の厨二心がくすぐられる動きだ
指に明かりが灯ることで暗い所も探索可能。突然電池が切れるような心配が無いのも良い

 ホラーゲームと言えば、例えば興味や好奇心で心霊スポットに足を踏み入れたり、観光客がふとした出来事から怪奇現象に巻き込まれるというパターンが多い印象を受ける。しかしながら本作の主人公は、怪奇現象の調査員。魔法秘儀師団では訓練も受けており、様々な超能力を見に付けている。例えば暗い所を探索する際にはFキーで光を灯すことが可能。機械による灯りでは無いため、ホラーゲームによくあるライトの点滅やバッテリー切れによる驚きが無いだけでも心持ちが変わってくる。

呪われている扉は浄化することで通行可能に

 扉には呪いを受けているものもあり、Eキーを長押しして浄化をすることが可能。これに関しては、演出こそ見ていて楽しいものの、普通に通行可能でも問題ない印象を受ける。体験版では通れない扉が通行可能になるだけだったが、製品版では扉の浄化が新たな仕掛けやホラー要素に繋がっていくのかもしれない。

心眼を使えばアイテムの場所が一目瞭然

 そしてゲームに最も影響のある超能力が心眼。こちらもEキーの長押しで発動し、なんと自分が拾っていないアイテムや手がかりを光らせることが出来る。おまけにこの光は壁や階を跨いで認識できるのだ。

 ホラーゲームに限らず、皆さんには脱出ゲームなどで手がかりを見落し沼った経験は無いだろうか。そういった時にこの心眼を使えば、自分の見落しに気づくことが可能。探索が苦手な方や、恐怖で隅々まで見ることが出来ないという方にはかなり嬉しい機能となっている。

 もちろんそういった機能に頼らずに自力で探索しきりたいという方は、心眼を使わずにプレイしていくことも可能だ。

屋敷内に散らばっているメモには謎解きのヒントも

 これらの能力を駆使しながら、主人公は謎を解き屋敷の奥へと潜入。屋敷の中にはアイテムだけではなくメモや手紙も落ちており、その内容が仕掛けのヒントや答えとなっていることもある。

 同時にこれらのメモからは本位田家の人々の関係も伺い知ることが出来るため、新たなメモを入手したらしっかりと内容を確認したい。

得体のしれない存在に追われる和風ホラー

もともとは1階へ戻る階段のあった場所
ある仕掛けを解くと、階段のあった場所は壁になっており1階へ降りることが不可能に

 操作にも慣れ、ある1つの仕掛けを解いた矢先。

 突如屋敷全体が大きく揺れ始めた。しばらくすると揺れ自体は収まったものの、今まで通れていた階段のあった場所が壁に。

 前述した通り、今回の主人公は屋敷から出ることでは無く調査が目的なのだが、本当にこの不気味な屋敷に閉じ込められてしまったのでは……と焦りと不安に駆られる。

角を曲がった瞬間に感じた絶望

 加えてここまでは不気味な音こそあれど、噂の幽霊と遭遇することは無かったのだが……引き続き探索を続けていると突如女性に遭遇。そのままゲームオーバーのような演出となってしまった。

 「もしかしたら幽霊が追いかけて来たりするタイプのホラゲでは無いのかもしれない」と高をくくっていた矢先、曲がり角で突然襲われた時の驚きと絶望は筆舌に尽くしがたい。

アイテムを拾ってふと顔を上げると女性がこちらを見つめていたなんてことも

 そもそもホラーゲームは和風と相性が良い。日本のホラーは幽霊を始め、目に見えない・正体の分からない恐怖が多く、「この後突然何か起きるかもしれない」といったじわじわとした怖さが特徴的。CHIYOでもその特徴は現れており、前述した明らかに自分のものではない足音などがそれにあたる。

 加えて探索を進め、幽霊の類に出会わず安心しきっていたところにさっきの女性だ。あまりに突然の出現に、「別の幽霊が増えているのでは?」「他にも突然ゲームオーバーが起きるのでは?」と全てに疑心暗鬼に。

 直接的な幽霊との遭遇以外にも、ふとした時に驚かせる要素も存在し、油断も隙も無いホラーゲームに仕上がっている。

ゲームオーバー前に回収した網もしっかり所持したままだった

 だがそんな中でも優しく感じたのは、ゲームオーバーになっても進行が引き継がれること。筆者がゲームオーバーになった時、件の仕掛けを解いた場所から再スタートとなったのが、ゲームオーバーになる前に拾ったアイテムなどはしっかりと所持したままだった。死んでセーブ場所に戻されるというよりは、気を失って目を覚ますといった感覚だろうか。恐怖に打ち勝ちアイテムさえ回収してしまえばこちらのものなら、ホラーゲームの中でもかなり良心的だろう。

最後に視界に映った人物は一体……?

 そのままさらに謎解きを進めて行くと、ある扉の先で突然別の場所へワープ。イベントを挟み体験版は終了する。果たしてあの演出は体験版ならではなのか、はたまた実際の製品版でも起きる演出なのか。イベントの中では謎の人物も視界に映ったため、気になるところだ。

 体験版をプレイした所感としては、やはり心眼による手がかりの透視が偉大。ホラーゲームのネックは「何かが起きるんじゃないか」という恐怖から、隅々の探索が難しい事。心眼は見落しに気づけるだけでなく、「あそこに確実に手がかりがあるから、まずはあそこまで頑張ろう……!」と自らを奮い立たせる力にもなってくれる。ゲームオーバーなどの仕様も含め、CHIYOはホラーゲームの中でも進めやすいゲームと言えるだろう。

 また、しっかりとした背景があるのも今作の魅力。Steamのストアページには『彼女(伊達千代)の生存を脅かす一族の暗い歴史に遭遇する』と書かれており、本位田家に何が起きたのか、そして一連の怪奇現象が解決するのかについても注目したい。

 「CHIYO」は2023第4四半期に配信予定。ホラーゲームの中でも比較的進めやすい作品となっているため、こういったゲームが苦手な方にもぜひ手に取って欲しい作品だ。体験版は誰でもプレイ可能なので、もし少しでも気になったなら、まずはこちらを触れて怖さの度合いや操作感の参考にしてみてはいかがだろうか。