【特別企画】
タイトーの創立70周年記念「レトロ筐体・AM機械展示会」レポート
「スペースインベーダー」をはじめ、ゲームの歴史に残る、懐かしのアーケード筐体がズラリと勢ぞろい!
2023年8月25日 11:36
- 【タイトー:70周年 レトロ筐体・AM機械展示会】
- 8月24日 開催
8月24日に創立70周年を迎えたタイトーは、同日にメディア向けの展示イベント「70周年 レトロ筐体・AM機械展示会」を東京都内で開催した。
タイトーは、1953(昭和28)年にロシア系ユダヤ人のミハイル・コーガンが東京都港区で創業した会社で、当時の社名は太東貿易であった。社名に「貿易」とあるように、創立当初はゲームメーカーではなく、小型自動販売機(ピーナッツベンダー)の製造、販売や輸入雑貨類の販売のほか、何と国内初となるウオッカの醸造・販売を手掛けていた。
同社では、1954年からバーなどの店舗にジュークボックスのレンタルを開始したが、これが後にアーケードゲームビジネスに参入するきっかけになったとのこと。そんなルーツを持つ同社のイベントとあって、会場にはコンピューターが導入される以前のエレメカゲームのほか、ロボットも展示されていた。
以下、本イベントで展示された、今となってはたいへん貴重なアーケードゲーム筐体などを年代順にご紹介する。
最先端技術顔負け!驚くほどの高音質な1972年製の「ジュークボックス」
写真の「ジュークボックス」は、旧太東貿易の創業初期から販売していた機種で、スタッフによると1972年製という貴重な逸品。筆者のリクエストで、懐かしの大ヒット曲「ルビーの指輪」のレコードを聴かせていただいたところ、半世紀以上も前に製造されたとは思えないほど、お世辞抜きで音質がとても良かったのでびっくりした。
ギミックやこだわりがたっぷり詰まったエレメカレースゲーム「スピードランナー」
前方から迫って来る車にぶつからないように、ハンドルとアクセルペダルでマイカーを操作して遊ぶ、1972年に発売されたアーケード用のエレメカレースゲーム。プレーヤーは、ハーフミラーで映し出されたマイカーを見ながら操作し、ベルト上に固定された車を繰り返し回転させることで、車が実際に走っているように見せる仕組みになっている。
筆者は今回、本作を初めてプレイしたが、コンピューターやモニターを一切使用せず、細かいアクセルワークで車を追い抜いていくのが面白く、車に衝突するとハンドルがガタガタと揺れるのも素晴らしいアイデアだと率直に思った。また写真ではわかりにくいが、マイカーは左右移動時にちゃんとウィンカーが点灯するようになっており、開発スタッフの並々ならぬこだわりぶりが窺える。
まだまだ現役! ビデオゲーム最初期のアーケードゲーム「ウェスタンガン」
1975年に発売された、西部劇をモチーフにしたアーケードゲーム。トリガー付きのスティックでガンマンを、レバーで銃の向きを操作して相手のガンマンと戦う、2人対戦プレイ方式のアクションゲームだ。
本作を開発したのは、後に「スペースインベーダー」を作ることになる西角友宏氏。当時はCPUを使用せず、TTL(ロジック回路)を基板上に組み込む形で作られていた。筆者は小さい頃に一度だけ、どこかの遊園地で見た記憶があるが、まさか国産ビデオゲームの最初期の作品が今でもちゃんと遊べる形で残っていたとは、こちらも本当に驚かされた。
ちなみに本作は「ビデオゲームに登場する史上初の拳銃/First videogame gun」として、ギネス世界記録に認定されているそうだ。
リアルな操縦桿とコックピットがロマンを感じさせるシューティングゲーム「インターセプタ—」
1976年に発売されたアーケード用シューティングゲーム。プレーヤーは戦闘機のコックピットに見立てた画面を見ながら、操縦桿(スティック)とショット発射ボタンを操作して敵機を撃墜すると得点となる。モニターは白黒ながら、いかにも空高く飛んでいるような場面を演出した敵機の動きと、ぼんやりと表示される雲の絵が特徴だ。本作はエレメカゲームの「スカイファイター」をビデオゲーム化したもので、こちらの開発を手掛けたのも西角氏である。
いまなお存在感抜群なアーケードゲームの大定番「スペースインベーダー」
1978年に発売され、日本全国で空前の大ブームを巻き起こした傑作中の傑作であることは、もはや当GAME Watchの読者には詳しい説明は不要だろう。
ビーム砲を操作して、敵のインベーダーやUFOを倒していく面白さは、今なお色あせることがない。本作でもハーフミラーを使用し、CGと地球外惑星の表面をほうふつとさせるアートを合成することで、まるでSF映画のような迫力と美しさを生み出しているのも実に見事だ。
見た目も可愛いアイドル・マスコットロボット「ゆめ丸」とプロギターリストも唸らせる「ギターロボット 弦遊」
1984年に登場した、ユーザーとのおしゃべりが楽しめるセールスプロモーション用ロボットで、二足歩行が可能。バックヤードに控えているスタッフが「ゆめ丸」に搭載されたカメラでユーザーの様子を見つつ、マイクでしゃべった声をスピーカーから流して会話をする仕組みになっている。
「ギターロボット 弦遊」は1987年に登場した、その名のとおりギターの生演奏をするロボット。タイトーのスタッフによると、本機のテーマ曲「イリンクス」を作曲したのはクロード・チアリで、本機で演奏するすべての曲の編曲はゴダイゴの浅野孝已が担当したそうだ。また本機は、人間の手では演奏できない、複雑な弦の弾き方ができるのも特徴とのことだった。
気分はまるでパイロット。ポリゴンを使用した最初期のフライトシミュレーションゲーム「トップランディング」
1988年に発売された、旅客機を操作して空港への離着陸をするアーケード用フライトシミュレーションゲーム。前作の「ミッドナイトランディング」と同様、操縦桿やスロットルの操作に合わせてシートが上下左右に傾く、専用の大型体感筐体を使用していた(※今回の展示は、シートが固定されたアップライト版の筐体だった)。
ポリゴンを使用して描かれたリアルな景色と、管制塔との無線やキャビンアテンダントのボイスが流れるなどの演出により、プレーヤーはまるで本物のパイロットになったかのような部分にさせてくれるのが本作ならではの特長で、フライト中などに流れる数々の軽快なBGMも素晴らしかった。本作の開発を担当した、1979年の入社で現技術顧問の三部幸治氏に伺ったところ「ポリゴンを使用した最初期のゲームです」とのこと。ゆえに本作は、ゲーム開発技術の発展の歴史という観点でも貴重なものと言えるだろう。
今となっては貴重なシリーズ第1弾がお披露目! アーケード用鉄道シミュレーションゲーム「電車でGO!」
1996年に発売されたアーケード用鉄道シミュレーションゲーム。プレーヤーは電車の運転士となり、マスコンを操作して電車をダイヤどおりに停車・発車させたり、信号の指示を守りながら走らせる面白さで人気を博し、プレイステーションの移植版も大ヒットした作品だ。
多くのシリーズ作品が登場したこともあり、本シリーズの第1弾はレトロゲームコーナーを運営するゲームセンターでも滅多にお目にかかれないものだ。タイトー広報によると、本作は社内会議で反対意見が多く、当初の生産台数は通常のアーケードゲームよりも少なめだったというのだから、今となってはウソのような話だ。
すでに製造から数十年が経過したこれらの筐体は、部品の経年劣化などの理由により、日々メンテナンスをするだけでも非常に手間が掛かると思われる。筆者もゲームセンターで働いていた経験があり、その大変さは身をもって知っているので、今でも新品同様に稼働できる状態を維持し続けるタイトー開発陣には本当に頭が下がる。今後も同社の資産として、そして日本のゲームの歴史を末永く伝えるための貴重な文化遺産としても大いに活用していただきたい。
タイトーのゲームを遊んでいただいているお客様には、感謝の言葉しかありません。エレメカから始まって、CPUを使わないゲームから「スペースインベーダー」のようにCPUを使用したものを経て、ポリゴンなどを使用したゲームへと発展した背景には、技術者たちが苦労の末に思い付いたアイデアを出し合い、その時々でコスト的に許されるギリギリまで最新の技術を追求していたことがあります。特に、CPUが出てきてからは性能が急激に上がり、開発環境も劇的に変わったことを、今回の展示を見てふと思い出しました。
これからも、我々は積極的にゲーム開発を進めたいと考えております。ゲームセンターの経営も続けていきますし、家庭用でも懐かしのアーケードゲームをどんどん復活させますので、今後ともタイトーをぜひ応援していただければと思います
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