【特別企画】
迫害されるが健気な魔女がかわいいRPG「魔女の泉R」インプレッション
少人数開発でこの完成度! 開発陣の愛を感じるパイベリーの物語
2023年9月25日 00:00
- 9月26日 配信開始
- 価格:4,300円(税込)
韓国のゲームスタジオKIWIWALKSによるSteam用RPG「魔女の泉R」が9月26日に発売される。価格は4,300円(税込)。発売開始から1週間は15%オフで購入できる。
KIWIWALKSは韓国の小さなゲームスタジオで、Steamのデベロッパーノートによれば、本作は3人で開発しているインディーゲームだ。遊んでみると、確かに髄所にインディーゲームらしさが感じられる。
「魔女の泉」というシリーズはもともとモバイルゲームとして開発されたもので、こちらは現在第4作目までがAndroidとiOS用にリリースされている。「魔女の泉R」は、モバイル用の第1作目「魔女の泉」をベースに、グラフィックスを一新。新規のアイテムやキャラクター、新たなストーリーなど多くの要素を追加して、新しいゲームとして作り直したものだ。
このレビューでは、本作の世界観やキャラクターなどを紹介つつ、序盤をプレイしたインプレッションとともに、本作のポイントを紹介したい。
魔女が恐れられ迫害される世界で、森で孤独に暮らす魔女パイベリー
まずは本作の世界観を簡単に概説しよう。「魔女の泉R」の世界には、かつて多くの神々が存在しており、奇跡の力で人間の生活に恵みをもたらしていた。人間は当初、神々を崇拝していたが、次第にその力を自分のものにしたいという欲望にとらわれていった。神々の力を得る方法を見つけた人間は、神々から力を奪って駆逐した。そして自らは奪った力を使って新たな神となり、人々を支配するようになった。
神々は魔族として貶められるようになった、時折人の中に純粋な魔族として生まれるものがいると、その赤ん坊は殺されるか、森に捨てられた。本作の主人公パイベリーも、そんな魔女のひとりであり、ゴーレムのバルトに守られた森の中でたったひとりで生活している。
魔女は肌の色が違うことと、ウサギのような大きな耳が特徴で、パイベリーも褐色の肌と白い紙、大きな耳を持っている。家の中にいるときにはマントや帽子は脱いでいるが、外に出かけるときには魔法で着替えて、杖を持って出ていく。
森の中には、まれに外の世界から人間の兵士である「勇士」が迷い込んでくることがある。勇士は魔女を見ると殺そうとするので、パイベリーは魔法を使って撃退し、彼らが非常食として携帯しているパイを奪っている。ただ、最近は勇士が入ってくる頻度が増えており、負けないよう強くなりたいと考えている。
パイベリーは天真爛漫で素直な少女だが、世間知らずで自分を害しようとするものには容赦しないという怖い側面もある。ペットは精神支配の魔法で無理やり仲間にするし、精神支配の魔法が効かなかったブラックジョーという鳥は、力業で支配下に組み込んでいる。とはいえ、普段は明るい頑張り屋で、弱いものには優しく面倒見がいい、とてもいい子なのだ。
ただ、パイベリーには不思議な部分も多い。幼いころの思い出に登場する母親らしき人物がどうなったのか、そして古代の神殿で不思議な懐かしさを感じたりと、ストーリーを進めていくと、その生い立ちに大して様々な謎が出てくる。この辺りは、ストーリーを進めることで明らかになっていくのだろう。
キャラクターのボイスは日本語のフルボイス。カットシーンでは、3Dのキャラクターに加えて立ち絵のイラストも表示される。会話は履歴からも見ることができ、何度でもかわいいボイスを堪能できる。
序盤になかば強引に仲間になるブラックジョーは、300年以上生きているという鳥で人間の言葉を話すことができる。ブラックジョーは博識で、憎まれ口をたたきながらも、パイベリーに的確なアドバイスをしてくれる。また、バトル中には2ターンに一度、ターン消費なしでアイテムを使用してくれる便利な存在でもある。
経験値を得る方法に限りがあるので、レベルアップは遅め
「魔女の泉」は、全体としてはRPGだが、育成要素やクラフト要素、ターン性シミュレーションぽいバトルなど、プレイしてみると多くの要素が盛り込まれ、それが新しいゲーム性を生み出している。
RPGなので、メインストーリーを追いかけていくことで物語が展開し、同時に様々な要素が解放されていく。特に序盤はチュートリアルとして、物語の進行と同時に新しい要素が次々に解放されていく。ここで筆者がはまった2つのポイントがあるので、後続の方のために紹介しておきたい。
1つは、フィールドにいる敵からは、一度しか経験値が得られないということだ。フィールドの敵は戦闘後、一定時間たつとリポップして何度でも戦うことができる。素材はなんどでも入手できるが、経験値は最初の戦いでしか得ることができない。
よく見ると、戦闘前の確認画面に、この敵からは経験値が得られませんというメッセージが出ているのだが、それに気づくまでは「いやに成長しないゲームだなあ」と思いつつも、何度も同じ敵と戦ってしまった。ちなみに気づいたとしても、成長しづらさには変わりない。何しろ、1つのマップで得られる経験値には上限があるので、ストーリーを進めて新しいマップを開放する以外に経験値を得る方法がない。このレビューを書くために6時間程度遊んでみたが、現在はレベル2の半分くらいだ。確かにレベルアップ時には各種ステータスが上がるのだが、実は他にもステータスを上げる方法があり、むしろレベル上げよりも、そちらの要素がメインの成長要素といえるかもしれない。
様々な「修練」で特定のステータスを成長させる
では、どうやって成長させるのか。本作には「修練」というキャラクターを特定の方向で育てることができる育成要素がある。キャラクターの基礎能力はHP、MP、魔力、力、防御、素早さの6種類があり、それぞれがバトルに影響する。
修練にはそのステータスのうち、特定のステータスを成長させることができる10のメニューがそろっている。10のうち、「走る」、「腕立て伏せ」、「岩叩き」などフィジカル系が5種類、「瞑想」、「読書」、「魔法練習」など魔法系が5種類ある。
例えば、「走る」ならHPと素早さ、「腕立て伏せ」なら力と防御力、「読書」ならMPと魔力、「魔法練習」なら魔力に特化して成長させることができる。修練を行なうには修練ポイントが必要。ポイントは一定時間ごとにたまり、最大5つまでスタックできる。
修練はちょっとしたミニゲームになっていて、ノーミスクリアするとパーフェクトボーナスがもらえる。オートでもクリアすることができるが、自分で操作した方がボーナス分経験値が多くなる。複数の修練を設定するとどれか1つだけがランダムで選択される。修練レベルは1からスタートし、同じ修練を何度かこなすとレベルが上がって、もらえるボーナスが多くなっていく。
修練の結果ステータス以外に、身体鍛錬レベルと精神修練レベルにも経験値が入っていく。この2つのレベルはクリティカルの発動率などキャラクターのパッシブな能力に関係している。この修練でステータスを上げていくことで、レベルが同じでもキャラクターを成長させることができる。
強そうな敵はスルー。戦う順番を考えるのも戦略
筆者がはまったもう1つのポイントは、敵の配置だ。敵はフィールドに位置固定で配置されており、戦うかどうかはプレーヤー側で選ぶことができる。だが、実はメインストーリーの最中に配置されている敵の中には、現在のレベルでは倒すのが難しいものも含まれている。
例えば序盤で訪れる「ワームプリフの沼」にいる、頭に花が咲いた大きなカエルは、序盤の敵としてはかなり強い。一度の攻撃で半分以上のHPを持っていかれるので、回復に手を取られて攻撃ができずジリ貧で倒されるということを何度か繰り返した。ブラックジョーが仲間になり、ターン外で回復が可能になり、HPの減少をMPで肩代わりできる「魔力の盾」、MPを消費せずに使える必殺技の「魔力爆発」などの能力が使えるようになってからはラクに倒せたが、最初は理不尽な強さに呆然とした。
だが、実はメインストーリーを進めるために、この敵と戦う必要はない。戦う必要のない敵はたいてい道の端のほうに配置されており、避けて進むことができる。道を塞ぐように配置されているのはメインストーリー上倒す必要がある敵で、ちゃんとその時点で倒せるレベルに調整されている。
さらに同じダンジョン内には、さらなる素材獲得のために倒す、見た目からして強そうなボスも最初から配置されている。いわゆるワールドボス的な存在で、もちろん手を出すと運がわるければ即死だ。
つまり、メインストーリーを進めるだけなら、最低限倒さなければならない敵だけを相手に進めておいて、装備や魔法が整ってから改めて倒しに来た方がいいということだ。このことに気づくまで、結構遠回りしてしまった。
幸いうっかり、敵に近づいたとしても、最初に戦闘するかどうかの確認画面がでるので、そこで「逃げる」を選べば逃げることができる。また、とりあえず戦ってみて、無理だと判断した場合も、逃げることができる。本作では無理をしてもいいことは何もないので、強すぎる敵はスルーしておいて、後からゆっくり挑戦することをおすすめしておく。
ステータスアップなど成長要素に繋がる採集とクラフト
採集とクラフトの要素も、多彩に取り揃っている。クラフトはプレイを始めて最初のチュートリアルが採集とクラフトであることからわかるように、この2つの要素も本作のメインコンテンツの1つであり、キャラクター強化にとって必須のものとなっている。
チュートリアルでは、「ルアレット」というHPとMPを同時に回復してくれる薬の材料を集めることから始まる。材料は木の葉とウサギの肉。 木の葉は、フィールドのあちこちで光っている場所を調べると1~2枚採取できる。
ウサギは同じくフィールドにいるが、こちらは逃げられない程度に近づいて「Shift」キーを押すと、視点がグッとパイベリー寄って照準が表示され、ウサギに矢を当てるミニゲームが始まる。ウサギはあまり動かないので簡単に倒せるが、この後訪れる海辺の電気フグなどは高速で回転しており、照準を合わせるのが難しい。あまり時間をかけるとぴゅーっと逃げてしまうので、結構緊張感があり、投げた時のリアクションも気持ちよく単純だが楽しめる。
素材を集めると、家にある大釜で薬を作る。この釜は、最初は薬と、魔法陣を作るためのレシピしか持っていないが、宝箱から新たな図鑑を手にいれることで作れるものが増えていく。例えば上記の回復薬「ルアレット」は、序盤の早い段階で回復力不足を感じるようになるので、もう少し回復力の高い「葉っぱプリンエキス」が欲しくなってくる。これを作るには「勇士」が持っている「乾いたパイ」が必要なのだが、序盤には勇士はイベントでしか現れないので、序盤はひたすらウサギ狩りと葉っぱ拾いに明け暮れることになる、といった感じだ。
ストーリーを進めていくと、薬以外にも、魔法を強化するための魔法陣や、戦闘前に使ってステータスを引き上げる戦闘補助アイテムなどを作るための図鑑が手に入る。図鑑には何種類かのレシピが書かれているので、その材料を集めてクラフトする。
本作では魔法は自動的に覚えていくのではなく、クラフトで作った魔法陣を「石板」というアイテムスロットにセットすることで使えるようになる。魔法は最初、単体と範囲の火炎魔法しか使えないが、魔法陣を作成してセットすることで、ランダムな4体を攻撃できる「四球火炎魔法陣」が使えるようになる。どの材料を何個揃えればいいのかは、フィールドでも確認することができるほか、ヒント画面に登録しておくこともできる。
クラフトで作れる薬や、集めた素材の中には、永続的にステータスを上昇できるものがある。経験値がたまらない敵が相手だとしても、素材を集めて薬をつくれば、例えば体力増強剤ならHPを+5することができる。
複数の要素をうまく組み合わせることでダメージアップを狙う
バトルはストラテジックなターン制。戦闘画面の右下に、攻撃の順番がアイコンで表示される。パイベリーの攻撃は、基本は魔法と杖を使った物理アタック。魔法は、主石版と呼ばれる場所にセットした主力を基軸に、使い分けていく。物理アタックは1回攻撃と、2回攻撃、ノックダウンの3種類。
魔法を使うと、魔力の痕跡が敵に残り、この状態で物理攻撃をすると追加ダメージが入る。また、物理攻撃は4回に1回「武器刺激」という状態で、魔力が強く噴出しダメージが増強される。
また、特殊スキルとして、MPを消費しない「魔力爆発」や、メインストーリーの中で出会う神殿守護者の力を借りる「アルアの矢」のような必殺技や、ランダムに発動するカウンター攻撃もある。
魔法によっては、一定の範囲に巻き込む必要があったり、敵の位置取りによって巻き込める敵の数が変わってくる。また、4ターンに1度はかならずクリティカル攻撃が発動する。さらに、物理攻撃と魔法攻撃をうまく組み合わせることで、追加ダメージを与えることができるので、使える魔法の数はそれほど多くないのだが、考慮できる要素が多いため戦闘の奥は深い。
敵によっては、精神支配の魔法を使って仲間にすることができるものがいる。精神支配が使える敵は、ネームプレートが表示されているのですぐにそれとわかる。基本的には強めの敵なので、十分な準備をして挑んだ方がいい。ある程度までHPを削れば、精神支配の魔法が使えるようになる。
過酷だが優しい世界を、パイベリーとともに冒険しよう
ずっと山奥にひとりで住んでいたパイベリーだが、ある日ついにおいしいパイを求めて外の世界に旅立つことを決意する。外の世界には多くの人間がおり、見知らぬ魔女との出会いもある。優しい人間も、敵意を向けてくる人間もおり、まったくの世間知らずだったパイベリーは多くのことを学んでいく。
成長の速度が時間やレベルデザインで厳密に管理されているところに窮屈さを感じる部分もあるが、成長の自由度は高く、どういうパイベリーを育てるかの方向性はプレーヤーに委ねられている。
連れていたペットがカットシーン後に勝手に帰ってしまうなど、少し気になる部分がなくはないが、少人数でこれだけのクオリティのゲームを開発したことには素直に称賛を送りたい。これでもかと表示されるパイベリーの立ち絵にも、開発陣のあふれんばかりの愛を感じる。ぜひ、本作をプレイして、その奥深さとパイベリーのかわいさを感じて欲しい。
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