【特別企画】
ZOWIE、ワイヤレスゲーミングマウス「EC-CW」インプレッション
ワイヤレスでも“シンプルイズベスト”。使い勝手抜群の新定番ゲーミングマウス
2023年5月17日 13:00
- 【EC-CW】
- 5月18日より順次発売予定
- 価格:21,800円
- カラー:ブラック
「Counter-Strike Global Offensive」コミュニティをコアに、FPSゲーマーからの支持が厚いゲーミングブランドである「ZOWIE」。とりわけゲーミングマウスのカテゴリは、手頃な価格帯、必要十分な機能、シンプルで馴染みやすいデザインと、逆に言えば一際目立つ要素はひとつもないものの、質実剛健、使い勝手の良さにこだわったことで、アマチュアからプロまで幅広い層で愛されている。そんなZOWIEからついにワイヤレスゲーミングマウスが登場した。短期間ながら実際に触ることができたのでインプレッションをお届けしたい。
「EC-CW」は、ZOWIEとして唯一の左右非対象のエルゴノミクスデザインを採用した有線ゲーミングマウス「EC」シリーズをワイヤレス化したモデルだ。ZOWIEは、“ゲーミング=有線”として、これまで頑なにワイヤレスを出してこなかったが、ついにリリースすることになる。ZOWIEファンにとっては待望のモデルであり、有線を避けて他社のワイヤレスゲーミングマウスを使っているゲームファンも、ZOWIEのワイヤレスはどんなものなのか、気になっている人も多いだろう。
「EC-CW」を含めた「EC」シリーズは、いわゆる“IE3.0クローン”と呼ばれるIntelliMouse Explorerのデザインを踏襲したゲーミングマウスだ。左右非対象デザインのマウスの中では、この“なすび型”と呼ばれるこのデザインがもっとも定番でありファンも多い。それだけにこれまで無数のクローンが生み出されてきた。
「EC」シリーズがユニークなのは、あたかも洋服のようにまったく同じデザインでS、M、Lと3つのサイズを用意していることだ。「EC-CW」もそれを引き継いでおり、かぶせ持ち派はLサイズ、掴み持ちはMサイズ、つまみ持ちはSサイズといった具合に、持ち方に応じてサイズをチョイスできる。
加えて、換えのソールも1組標準で同梱されており、相当タフな使い方をしても、ソールを交換しながら長く使い続けられる。ケーブルは丈夫で柔らかく取り回しが楽なパラコードタイプ。これらのこだわりはeスポーツアスリートの意見を反映した結果ということで、かゆいところに手が届く仕様がゲーマーに支持されている理由だろう。
さらにおもしろいのは、それでいて性能は“普通”なところだ。ゲーミングマウスといえば、常に最新のトラッキングセンサーを採用し、何万にも達するようなDPI、数千にも及ぶレポートレートを実現するのが当然とされてきた。それは言い換えれば、一般道を走るスーパーカーに、圧倒的な馬力や最高速を詰め込むような話で、ほとんどの人には使いこなせないオーバースペックで、あまり意味のない競争だ。
「EC」シリーズを含めたZOWIEのゲーミングマウスは、そうした風潮に明確に異を唱え、トラッキングセンサーは、最新世代ではないPixArt PMW 3360を採用。センサーのDPI上限は12000ながら、マウス側でDPIは400、800、1600、3200の4段階に絞り込み、レポートレートも125、500、1000の3段階に限定。ドライバのインストールも不要で、設定はすべてマウス背面のスイッチで切り替える。シンプルイズベスト。今時珍しいぐらい機能を絞り込んだゲーミングマウスだ。
といったところがZOWIEのゲーミングマウスの特徴となるが、そのワイヤレスモデルはどういうものに仕上がったのだろうか。
最大の特徴は、Enhanced Wireless Receiverと呼ばれるワイヤレスレシーバーの存在だ。2つの効果があり、1つはワイヤレス接続の最大の敵となる、無線干渉による通信エラーを防ぎ、遅延のないワイヤレス通信を実現すること。もうひとつは充電ドックとしての機能。ワイヤレスゲーミングマウスのウィークポイントを補強してくれるこのレシーバーが、ZOWIEからの明確な回答というわけだ。
ワイヤレスマウスのウィークポイントとは、無線通信の不具合・干渉による遅延や飛びだ。とりわけゲーミングマウスではエラーひとつが致命的となる。ZOWIEが長年、ワイヤレスに参入しなかったのはそれが理由であり、今でも一部のゲーマーは有線を使い続けている理由もそこが大きい。
ZOWIEは、通信エラーを完全に克服するために、ある意味、大げさとも言える大型レシーバーを標準装備し、ZOWIEが抱える有線ユーザーに対しても「これなら無線を使えますよ」と提案しているわけだ。筆者は発表会で、高負荷環境のデモを体験することができたが、驚くほど電波耐性が高かった。
それから充電ドックの機能も地味に便利だ。ワイヤレスマウスは、ケーブルの取り回しが不要で、ゲームプレイ中の引っかかりとも無縁で、今やゲーマーにとって無くてはならない存在と言えるが、ついつい忘れがちなのが充電だ。USBケーブルを差すだけだが、最近のモデルは、バッテリー駆動時間が100時間を超えるものも少なくないため、ついつい後回しになってしまう。
このレシーバーなら、添えるだけで充電がスタートするため面倒がない。PCの電源を落とす際に充電しておくということが自然に行なえる。なお、バッテリー駆動時間は公称70時間。決して長い方ではなく、毎日使い終わったらレシーバーに接続して充電するのが普通の使い方になるだろう。
なお、「EC-CW」ではトラッキングセンサーが、PixArt PMW 3360からPixArt PAW 3370に進化している。3360から数世代分進化しているが、最新世代のPAW3395や、PAW3399と比較するとDPIやIPSも低めで、このことは発表時に海外で批判された部分でもある。ただ、初モノ、最新モデルではなく、安定した性能を提供するためにあえて底を外すというのはZOWIEが一貫している部分であり、このブレなさがZOWIEブランドの魅力と言って良い。
数日ほど「EC-CW」を使ってみた感想は、有線モデル同様に「クセがなく非常に使いやすい」というものだ。IE 3.0を踏襲したデザイン、軽すぎず重すぎずの80g弱の重量感、質の高いソール、必要十分なボタンなどなど、すべてが丁度良い。
筆者は日頃、G502Xを利用しているため、専用ソフトウェアがないことに若干戸惑ったが、マウス本体側ですべての確認、設定の変更が行なえるのはビギナーにもわかりやすい。
トラッキング性能についても、まったく問題なかった。試しにMouseTesterでその軌道をチェックしてみたが、何度繰り返しても安定した円を描くことができた。ただ、ミニレシーバーでの接続では、わずかに円が崩れる(言い換えれば意図した操作とわずかなズレがある)印象があり、ゲーム用途についてはレシーバー使用を推奨したいところだ。
なお、「EC-CW」は3サイズあると紹介したが、Sサイズの「EC3-CW」とMサイズの「EC3-CW」の2モデルが5月18日より先行発売となる。今回2モデルしか検証できていないのはそれが理由で、残るLサイズ「EC1-CW」は5月29日発売となる。かぶせ持ち派は注意したい。
発表に間に合わせるために、わずか数日しか触れなかったが、初日で馴染む感じは、さすがIE3.0の系譜を受け継ぐモデルだなという感じで、万人にお勧めできるゲーミングマウスだ。専用レシーバーの存在により、自宅はもちろん、LANパーティーのような場でも混線の心配がないのは嬉しいところで、1台目のワイヤレスマウスとしても最適だろう。
強いて難点を挙げるとするなら、やはり価格だろう。有線モデルの倍以上というのはさすがに高く感じられる。ゲーマーにとってゲーミングマウスは“消耗品”であり、だからこそボディは軽量でありながら高耐久性を備え、予備のソールをわざわざ付けている。ZOWIE自身、他のペリフェラルメーカーが続々ワイヤレス化、高価格化に参入するなか、あえて有線のみの8,800円にこだわってきただけに、21,800円という価格設定は「高い!」と判断するゲームファンも多いのではないだろうか。
個人的には、ゲーミングマウスには欠かせないキビキビとした動き、長時間プレイに耐える持ちやすさ、そして専用レシーバー、ミニレシーバー、パラコードケーブルといった使い勝手を考えたパーツ類の完備など、ゲーミングマウスとして必要十分な要素は備えており、あとは「EC-C」のワイヤレス化、専用レシーバーにどれだけ価値を認められるかだと思う。
「EC-CW」の反応次第では、残る「FK」、「ZA」、「S」といった左右対称モデルのワイヤレス化も進み、この界隈がより賑やかになるはずだ。「EC-CW」は定番感と安心感、この2つ高度なレベルで兼ね備えたワイヤレスゲーミングマウスだ。