【特別企画】
「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」発売を前に、「ブレス オブ ザ ワイルド」を3つの“個人的推しポイント”で振り返る
今も愛される前作「ブレワイ」の魅力をネタバレ少なめに紹介
2023年5月11日 00:00
- 【ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム】
- 5月12日 発売予定
- 価格:
- 7,920円(パッケージ版)
- 7,900円(ダウンロード版)
- 14.520円(Collector's Edition)
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(以下、ブレワイ)の発売から6年。その続編となる新作「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(以下、「ティアキン」)がついに発売となる。「ゼルダの伝説」シリーズのファンや同時発売されたNintendo Switchユーザー(Wii Uユーザーも含む)を虜にしたアクションRPGの続編というだけあって、発売前からSNSのトレンドに何度も上がるなど、多くのファンが5月12日の発売日を待ちわびている。
その発売に先駆け、5月6日〜7日には「スプラトゥーン3」と「ティアキン」のコラボフェスも行われ、こちらも大きな盛り上がりを見せた。
新作の発売にあたり、前作の「ブレワイ」にも注目が集まっているようで、任天堂は同作の公式サイトにて、「あなたの知らないハイラル」、「これからはじめるブレス オブ ザ ワイルド」、「冒険の手引き」など、「ブレワイ」をこれから始める人や、新作に向けて履修中のプレイヤーに向けたコンテンツを公開している。また、コアプレイヤーの知識を競う「全国一斉クイズ 知の試練」なる知能テストイベントなども先頃実施された。
弊誌では3月3日の周年企画として、「ブレワイ」の振り返り記事をお送りしているが、本稿では「ティアキン」の発売を前に、筆者が魅力として捉えた「ブレワイ」の3つの推しポイントを挙げ、主観強めの内容で振り返ってみたい。
なおストーリーに関してはあえて多くは語らず、ネタバレは控えめにしているが、間もなく続編が発売されるタイトルでもあるので、多少の言及についてはご容赦いただければと思う。
見えるところはどこでも行ける! 「オープンエア」のハイラルの大地
本作「ブレワイ」は、「ゼルダの伝説」シリーズ初の本格的なオープンワールドスタイルを導入したタイトルだ。厳密には「ゼルダの伝説 風のタクト」(2002年/ゲームキューブ)でも自由に行き来できる広大な海域が採用されていたが、移動は船に限られ、現在の一般的なオープンワールドの概念とは少し違うものであった。
「オープンエア」と銘打たれた仕組みで構築された舞台「ハイラル」は、見えるところは原則として全て行くことができるようになっている。物語の元凶である「災厄ガノン」の居城「ハイラル城」にだって、(行って何ができるかは別として)ゲーム序盤から足を踏み入れることも可能だ。
下記のオープンエアについて解説する動画で開発陣は、本作を初代「ゼルダの伝説」でプレイヤーがフィールドをさまよって探索する「原点回帰」の楽しさを現代の形へ昇華したものだと語っている。感触は確かにその通りで、主人公のリンクが100年の眠り(!!)から目覚め、何も分からない状態で右往左往し、広大かつ多彩なシチュエーションのハイラルを歩き回り、命の器であるハートを増やし、新しい武器防具を手にして強くなっていき、調子に乗って遠出をして、桁違いの強さの敵に遭遇してボコボコにされる展開は、30年以上前に遊んだ「ゼルダの伝説」のプレイフィールにも似ているような気がした(古い話で申し訳ない……)。
全ての場所に行けるといっても、道中には無数の魔物がはびこり、地域によっては寒暖差の激しい気温がリンクのハートを容赦なく奪っていく。突然の雨は壁登りを阻み、雷雨は金属の装備品に雷を落とす。足を踏み入れるだけで燃えてしまう火山地帯や、灯りがなければ何も見えない暗闇の遺跡など、非常に厳しいシチュエーションもあり、行き来をするにはそれなりの対策を立てる必要がある。
ハイラルを旅するためにどんな対策が必要かは、主人公のリンクが目覚める「始まりの大地」である程度理解できるレベルデザインが施してあるのはさすがなところで、それを終えた段階で「パラセール」を入手し、始まりの大地から出ることができたときに改めて味わう「ここから壮大な冒険が始まる」感覚は、何度体験しても最高である。
フィールドマップが開いていく仕組みは、本作の世界観に合わせたシステムに則っている。その要となるのが、ハイラル各地にそびえる「シーカータワー」だ。前述の始まりの大地にあるものを筆頭に、天を貫くような塔が各地に存在し、この頂上にアクセスすることで、その周辺の詳細マップが開くという具合だ。
シーカータワーを見つけたら、とりあえず目指すべき場所だということは始まりの大地で理解できるわけだが、全て容易に行ける場所にあるわけではないことも然り。頂上まで登ること自体も困難な塔は多く、周囲にガーディアンが群れるハイラル平原の塔は、筆者を含む多くのプレイヤーはトラウマを植え付けられたはず。それだけに、苦労して頂上にたどり着いた後の達成感は、マップ開放時の演出も手伝ってカクベツなものでもあった。
これは完全に余談なのだが、ほぼ同じ時期に発売されたプレイステーション 4用オープンワールドRPG「Horizon Zero Dawn」のマップを開放する仕組みが、同様に高所(トールネックという機械生物)に上がって行うスタイルだったのは、ちょっと興味深いところだった。
なおハイラル全土のマップは、物語を進めなくても全て開くことができるようになっている。前述の通り、全てのシーカータワーにたどり着くまでの道のりは厳しいが、全マップを開けてから進めるプレイスタイルも一興。それができるのも「ブレワイ」の楽しみ方の幅の広さを表している。
ちなみに「ブレワイ」の後の物語を描く「ティアキン」のフィールドは、このハイラルの大地が“下の世界”的な扱いとなるようだ。再び訪れるハイラルが一体どのように変わっているのか、大いに楽しみなところである。
リンクのサバイバル生活は全て現地調達! 「がんばりゲージ」が生き延びるカギに!?
始まりの大地の「回生の祠」で目覚めたリンクは、この世界における万能端末の石板「シーカーストーン」ひとつを腰に提げて旅立ち、装備やアイテムは全て現地調達という過酷なサバイバル生活を強いられる。恐らく世のほとんどのリンクが最初に手にした武器は、祠の前に落ちている「木の枝」だったはず。
魔物との戦いにおける駆け引きは、SwitchでもHDリマスター化された「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」でかなり洗練された印象があったが、同作はあくまで剣と盾の攻防にこだわったものだった。武器も現地調達で、なおかつ使い捨てでもある本作の戦いは、複数の種類の武器を切り替えて立ち回るのが基本で、ここもまたプレイヤーに選択の余地を与えていた。
プレイヤーの選択肢が増えた分、魔物も賢くなった。こちらを見つけると側に置いてある装備を身に着けて攻撃態勢となり、武器ごとに異なる攻撃手段を行ってきたり、違う種族が混合で攻撃をしてきたりとかなり手強い。前述したストーリーを進行せずにマップを開いていくようなプレイスタイルは、なかなかハードな道のりとなるはずだ。
また、探索と戦いに明け暮れるリンクに本作で備わったのが、「がんばりゲージ」である。これはリンクが特定のアクションを行うと一時的に消費され、行動をやめればすぐに回復する、スタミナのような要素である。これを使ったアクションは、ハイラルでのサバイバル生活における大きなカギとなった。
中でもリンクが崖や壁を這い上がる「壁登り」は、ハイラル城周辺の突起や祠の中など特定の壁を除きほとんどの場所で行えるという思い切った仕様で、最初はちょっと常識外れにも感じられたが、高所への移動やシーカータワーへの登頂、道中のショートカットなど、これまでのオープンワールドRPGであまり味わったことのないルートを構築することができた。
どこでも登れるとはいえ、持続時間はがんばりゲージの残量に依存するので、同様にゲージを消費するアクションも含めたペース配分が重要で、それ自体がアクションの面白さにも繋がっている。がんばりゲージを回復するには食事をするのが手っ取り早いが、崖などの一部に緩やかな場所があったりしたとき、そこを適度に歩いたり止まったりすることで、ゲージを回復させつつ、さらに上へ登っていくというテクニックも存在した。
がんばりゲージの上限を上げる「がんばりの器」は、リンクの命となる「ハートの器」との兼ね合いというのもまたもどかしい。ハートを増やせば強敵とも渡り合えるようになるわけだが、がんばりの器が増えればより遠くまで足を伸ばすことにつながる。後の道中で器の内容を入れ替えることもできるようになるが、プレイスタイルに応じた選択肢があるのも本作の持ち味だ。
往年の「ゼルダの伝説」シリーズへのリスペクトが、随所に見え隠れする
オープンエアの採用や、ゼルダとリンクの関係を独自の設定で描いたストーリーなどにより、イメージが大きく変わったこの「ブレワイ」ではあるが、そこには37年(発売当初は31年)培ってきた「ゼルダの伝説」シリーズの1タイトルとして、ポイントはちゃんと押さえていることに、古くからのファンとして感動を覚えた。
ハイラルの各地に住み神獣を司ったゾーラ族、ゴロン族、リト族、ゲルド族は過去シリーズでもおなじみの種族で、そこにシーカー族も加わり、本作の新たな世界観を構築している。魔物も然りで、モリブリンやオクタロック、ライネル、ウィズローブなどは、見た目はずいぶん変わっているが、初代「ゼルダの伝説」から存在した魔物達である。
筆者がグッと来たのはサウンドで、オープンエアの空気感を重視したナチュラルな楽曲がゲームの展開によって流れていくという演出がある。例えばゴロン族の住むデスマウンテン周辺では、「ゼルダの伝説」のレベル9(同名の「デスマウンテン」に存在する最終ダンジョン)のBGMをアレンジした楽曲が使われている。ゾーラの里やリトの村も、それぞれ「時のオカリナ」や「風のタクト」からのアレンジ楽曲で、耳にしたときは思わず口ずさんでしまったほどだ。
そしてハイラル城では、「ゼルダの伝説」のメインテーマや「神々のトライフォース」ハイラル城BGM、「時のオカリナ」の「ゼルダの子守歌」など、ファンにとって馴染み深いフレーズが組み合わされ、プレイヤーがその場所で体験する出来事に重なって、楽曲が胸に突き刺さってくる。後に発売された「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド オリジナルサウンドトラック」付属のライナーでは、過去シリーズのどの曲が本作のどの曲で引用されているのかがリスト化されているので、興味があればぜひ購入して、楽曲をしみじみ聴きながら確認してみてほしい。
もうひとつ、amiiboや有料DLCの特典にも、過去シリーズにまつわるものが用意されている。特に後者で入手できる装備品は、非常に有用なものが比較的早い段階で入手できる利点もあり、(見た目さえ気にしなければ)オススメだ。
「ブレワイ」に関しては語りたいことが多すぎるのだが、正直きりがないので、色々と迷いつつ、この形にまとめさせていただいた。本稿の執筆と並行してゲームプレイを行っていたので、「ティアキン」への予習は(操作系などに大きな変更がなければ)個人的にはバッチリな状態だ。
また、もし「ブレワイ」を未体験だという人は、「ティアキン」の前にぜひ触ってみてほしい。「ゼルダの伝説」シリーズを知る知らないに関わらず、これまでにあまりなかった感覚のアクションRPGを味わえるのは間違いない。
© Nintendo