【特別企画】
X to Earnプラットフォーム「アニカナ」はゲームファンに何をもたらすのか?
「ネコダービー」ではトロフィーをNFTに変えて現金化
2023年3月28日 11:00
- 【アニカナ】
- 2022年12月正式サービス開始
2022年12月、レヴィアスがX to Earnプラットフォーム 「アニカナ」 をリリースした。X to Earnとは、何か(X)をして稼ぐ(Earn)という概念で、例えばゲームをプレイして稼ぐ「Play to Earn」や勉強することで稼ぐ「Learn to Earn」、移動することで稼ぐ「Move to Earn」などがある。しかし、これまでのX to Earnは、暗号資産(仮想通貨)を使うものが多く、ウォレットを作って暗号資産を買う必要があるなど、始めるためのハードルが高かった。
この点アニカナは、法定通貨(日本では円)がベースとなっており、そうした煩雑な手間が不要で、気軽にX to Earnを始められることが大きな特徴となっている。そのアニカナでは2023年ゲームを始めとした各種エンタメサービスをプラットフォーム上で本格展開していくという。本稿では、アニカナとは何なのか、ゲームファンに何をもたらしてくれるサービスなのか、レヴィアスに直接取材してみた。
アニカナとは何か?
レヴィアスが開発したアニカナは、独自のブロックチェーン技術を使ったX to Earnプラットフォームであり、あらゆるゲーム型サービスのインフラを目指す、画期的なサービスだ。
アニカナの特徴は、自分の体験や行動を経済的な価値に変換できることだと、レヴィアスの小町氏は語る。「ユーザーからするとブロックチェーンの知識などを気にせずに、自分の体験をキャッシュバックに近いような感覚で、簡単にお金に変えることができる仕組みです。これまでそういうことをしようとすると、法律や社会通念上の問題があったりしましたが、そういったものに対する、課題解決が考慮されています」。
アニカナは、法定通貨に換金できるX to Earnプラットフォームとしては世界初である。アニカナのコンセプトは、公共性を持ち、日本経済に貢献するというもので、さまざまな省庁や行政とやり取りをして、国に応援してもらえるような座組で取り組んでいるとのことだ。要するに海外が運営するウォレットや暗号資産などを使わないため、ゲーム内で使った課金や稼いだ金額が、ダイレクトに日本経済の一部として、経済を回すことに繋がるというわけだ。
アニカナでは何が”プレイ”できるのか
アニカナは、あくまでプラットフォームであり、アニカナ自体で何かが遊べるわけではない。アニカナを利用したゲームや学習サービスといった、具体的なアプリケーションが必要になる。アニカナは2022年末に運営が開始されたばかりの新しいプラットフォームであり、まだ対応したアプリケーションは多くはないが、海外のベンダーも含め、多くのベンダーがアニカナに対応したアプリケーションを開発中であり、今後はさまざまなゲームが遊べるようになるだろう。
現時点でアニカナで遊べるゲームとしては、 「ネコダービー」 という育成ゲームがある。「ネコダービー」は、ネコを育ててレースで競い、歳をとったら交配をして仔ネコを産ませて、また育てるという、わかりやすくいえば「ウマ娘」のネコ版みたいなゲームであり、2023年2月22日にアーリーアクセスが開始されたばかりだ。
「ネコダービー」はブラウザゲームであり、アプリケーションをインストールせずに、スマートフォンでもPCでもプレイ可能だが、スマートフォンの画面に最適化されているため、スマートフォンでプレイするのが推奨されている。「ネコダービー」をプレイするには、まず、LEVIAS IDを作成する。規約により18歳未満は作成できない。IDを作成したら、「ネコダービー」を起動してログインすることで、プレイすることができる。「ネコダービー」自体は無料だが、ゲームを進めていくためには、有料アイテムを購入する必要がある。有料アイテムの購入は、LEVICAという電子マネーを使うが、これ自体はいわゆる仮想通貨のように相場が変動するものではない。
ゲームの成果をどうやって現金化するのか
この「ネコダービー」は、プレイして楽しんで終わりではない。先述したように、アニカナは、ゲームをはじめとするユーザーのさまざまな体験を直接現金化できることが特徴で、「ネコダービー」の場合、G1などの重賞レースで勝つともらえるトロフィーが、その対象となる。このトロフィーから、アルカナと呼ばれるNFTを作成でき、そのアルカナを売ることで直接法定通貨の日本円が得られるのだ。ここで注意したいのは、あくまで売るのはトロフィーを獲得したという体験を使って作成したアルカナであり、アルカナを売ってもトロフィーがなくなるわけではない(もちろん、一つのトロフィーからアルカナは一つしか作成できない)。
アニカナとアルカナ、似ているので紛らわしいが、プラットフォームがアニカナ、そこで作成されるNFTの名称がアルカナである。NFTとは、Non-Fungible Tokenの略で、日本語にすると代替不可能なトークンとなる。NFTには固有のアドレスが割り振られているため、他の物と替えが効かないのだ。また、NFTの情報や移動の記録はブロックチェーン上に残るため、偽造も不可能とされる。
アニカナでは、作成されたアルカナを外部のセカンダリーマーケットによって日本円に換金することができる。こう書くと現金化が面倒なようだが、実際は「ネコダービー」の中からシームレスにアルカナジェネレーターを呼び出し、アルカナを作成でき、さらにそのアルカナを外部のセカンダリマーケットで売ることも一連の流れで行なえるため、プレイヤーはその仕組みをあまり意識する必要がない。他のPlay to Earnゲームでは、NFTから換金できるものが暗号資産であることが多く、肝心の暗号資産が日々の相場変動によって価値が乱高下するリスクがある。しかし、アニカナの場合、NFTから直接法定通貨の日本円に換金できるので、そうしたリスクはない。
アニカナ経済の循環の仕組み
ところで、アニカナでは、NFTであるアルカナを日本円に換金することができるが、その原資はどういう仕組みになっているのだろうか。普通に考えると、ユーザーによるゲーム内課金の一部が原資だと考えがちだが、アニカナの場合はそうではないのだ。
アニカナは、経済の循環構造を実現していることが特徴である。ゲームなどの体験によって作成できるアルカナは、分解することが可能であり、その分解されたアルカナシャードと呼ばれるデータが、次のアルカナを作成するための種のような役割を果たす。
アルカナ→アルカナシャード→アルカナ
という形で、アニカナの経済が循環するのだ。その仕組みを、小町氏は次のように説明した。「NFTが分解によってリサイクルされ、そのリサイクルされたものが、また次のNFTを作成するための条件になる。鶏がいることで卵が産まれて、卵がいることで鶏が産まれるわけです。さらに、分解されたNFTは、他のゲームのパブリッシャーにも入っていきます」。
つまり、他のゲームなどでアルカナを作成するためには、アルカナを分解したアルカナシャードが必要になるのだ。アルカナを分解するエンジニアは、エクストラクターと呼ばれるが、エクストラクターはアルカナを分解して、アルカナシャードを産み出すことで稼ぐことができる。このあたりは暗号資産のマイニングにも似ているところだ。
こうした仕組みがアルカナの価値や需要を担保することに繋がっている。例えば、実際にアルカナを売りに出すと、数分以内で買い手がつくという。小町氏に、実際にアルカナをセカンダリーマーケットで売るところを見せてもらったが、確かにすぐに買い手がつき日本円に換金されていた。
今後の「ネコダービー」とアニカナの展開
「ネコダービー」は、まだアーリーアクセス中であり、今後の正式サービスに向けて機能強化やアイテム価格の調整などが行われるとのことだ。現在はG1トロフィーからしかアルカナを作成できないが、4月にも調整が行われ、G2やG3のトロフィーでもアルカナを作成できるようになり、アルカナ作成(つまり換金)へのハードルが下がる。筆者も「ネコダービー」をしばらくプレイしてみたが、ネコのキャラは可愛く、育てたネコがレースで勝つと嬉しいし、もっと上のグレードのレースに出場させたくなってくる。育成ゲームとしての基本はしっかりしている。
また、今後のアニカナの展開だが、年内に海外展開も予定しているほか、アニカナ対応のゲームも、いくつかのパブリッシャーが開発中であり、詳細はまだ発表できないが、5月にも新しいゲームが登場する予定とのことだ。Play to Earn以外にも、アニカナを利用したアプリケーションとして、勉強することで稼げる「Learn to Earn」や移動することで稼げる「Move to Earn」、食べることで稼げる「Eat to Earn」などの企画も進んでいる。アニカナは、プレイヤーだけでなく、パブリッシャーにとっても注目が集まっているX to Earnを手軽かつ完全に合法的に実現できるプラットフォームとして魅力があると思われる。
2022年11月29日には、アニカナの普及、適正な利用を目的として、一般社団法人日本アニカナ業協会が設立されている。「アニカナ」の推進を通して、Web3.0の発展に寄与し、2025年度までに国内におけるブロックチェーン活用サービス市場の10%となる724億円の売上を目指すという。
「ネコダービー」は、ゲームをプレイすることで現金が稼げる従来のNFTゲームとは一線を画すものだと小町氏は語る。「誰かが損をして誰かが得をするというものではないんです。ゲームの中での体験を換金できる、そういう新しい価値体験を楽しんでもらいたいと思っています。ですから、ギャンブルのように儲かるとか負けるとか、そういう概念でやって欲しくないと思っています」。稼げるというよりは、ゲームに時間と努力を費やした体験に、キャッシュバックがついてくるようなイメージで捉えるといいだろう。
筆者も「ネコダービー」をついつい遊び込んでしまったが、G2までは比較的簡単に勝利できても、G1で勝つのは難しい。そのG1で勝って獲得できたトロフィーからアルカナを作成しそれを簡単に売って日本円に換えられるというのは、これまでのゲームでは得られなかった新しい体験であり、素直に嬉しい。いわゆるNFTゲームのように1日やればいくら儲かるというものではなく、ゲームのプレイで目標を達成したことに対するご褒美をもらえるような感覚だ。ゲームと金融を結びつけるGameFiを実現するプラットフォームとして、今後の展開に期待したい。