【特別企画】

いよいよ「刀鍛冶の里編」始動! 原作コミックから読み解くアニメ「鬼滅の刃」のこのさき

甘露寺や無一郎は、上弦の鬼はどう描かれ、どのように演じられるか?

【『鬼滅の刃』上弦集結、そして刀鍛冶の里へ】

2月3日より劇場公開予定

 いよいよ4月からアニメ「鬼滅の刃」の新章「刀鍛冶の里編」が始まる。これに先がけ、2月3日より「『鬼滅の刃』上弦集結、そして刀鍛冶の里へ」が劇場公開される。この映画はアニメ版「遊郭編 第十話・十一話」に加え、「刀鍛冶の里編 第一話」が先行公開されるのだ。公開直前の今、アニメ「鬼滅の刃 刀鍛冶の里編」への期待はいやがうえにも高まっている。

 アニメ版だけを見ている人はもちろん、原作を読みストーリーを知っている人も「刀鍛冶の里編」はとても楽しみだろう。特に原作ファンにとっては、「原作のシーンやキャラクターがどう描かれるか?」に期待している。アニメ「鬼滅の刃」は、アニメーション制作会社であるufotableによって原作ファンもうならせる印象的なシーンを描き出した。キャラクターを熱演する声優達、作品を彩る音楽により、原作の魅力をさらに引き出すようなアニメーション作品となっている。

 アニメのみを見ている人にとってはネタバレになってしまうので注意して欲しいが、本稿では原作ファンの視点から原作をどうアニメ化するか、キャラクターを声優達がどう演じるか、その期待を語っていきたいと思う。「刀鍛冶の里編」は新たな舞台で、これまでスポットが当てられなかったキャラクター達が活躍する。映画公開、そして4月からの放映が本当に楽しみだ。

【ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ】

クローズアップされる2人の"柱"、甘露寺蜜璃と時透無一郎はどう描かれるか?

 「刀鍛冶の里編」では、前章である遊郭編で大きなダメージを負った主人公・竈門炭治郎(かまどたんじろう)が妹の禰豆子(ねずこ)と共に刀鍛冶の里を訪れることとなる。炭治郎達は遊郭編で上弦の鬼である妓夫太郎と堕姫の兄妹を撃破したのだが、炭治郎の刀・日輪刀は刃こぼれしてしまった。

 炭治郎は日輪刀を打った刀鍛冶・鋼鐵塚(はがねづか)に刀の修理を依頼し刀を彼の元に送るものの、気難しい鋼鐵塚は刀の修理と返還を拒否、炭治郎は日輪刀を取り戻すため鬼殺隊のお館様の許可を得て刀鍛冶の里へ向かう……。というのが、「刀鍛冶の里編」のプロローグだ。

 「刀鍛冶の里編」ではこれまでフォーカスされていなかったキャラクターが活躍することとなる。その中でも代表的なのが「甘露寺蜜璃(かんろじみつり)」と「時透無一郎(ときとうむいちろう)」という2人の"柱"だろう。柱はその名の通り鬼殺隊を支える高い実力を持った存在であり、炭治郎の時代には9人の柱が存在する。しかし炎柱であった煉獄杏寿郎は上弦の鬼の猗窩座(あかざ)に倒され、音柱の宇髄天元は、妓夫太郎の戦いで深手を負い、柱を引退してしまっている。今回、2人の柱のエピソードが描かれることとなるのだ。

コミックス「鬼滅の刃」14巻の表紙を飾る甘露寺蜜璃。「刀鍛冶の里編」は12巻から15巻の中盤まで展開するストーリーだ

 恋柱の甘露寺蜜璃はまだ19歳の女性である。先端が緑色に変わる桃色の髪という特異な髪の毛を持っているが、彼女によれば「好物の桜餅を食べ過ぎたため」だという。豊満なプロポーションを持ち、殺伐とした「鬼滅の刃」の中でほぼ唯一の"お色気担当"といえるキャラクターだ。

 鬼殺隊に入ったのは「結婚相手を見つけるため」という他の柱や隊士とは大きく異なる理由で、明るく元気が良いその言動はシリアスな「鬼滅の刃」の世界観でちょっと浮いた存在とも言える。しかし彼女は筋肉の質が常人と大きく異なり、その力は人間を超える鬼にさえ対抗できるもの。彼女はその特異な筋力と女性としてのしなやかな関節でわずか半年の修練で最終選抜を突破している。

 アニメで期待したいのは甘露寺蜜璃ならではの戦い方だろう。凄まじい筋力としなやかさを併せ持つ彼女は新体操のリボンのようにしなる特殊な日輪刀を使う。甘露寺のプロポーションとこのユニークな日輪刀、踊るように戦うその戦いがどう描写されるかは非常に興味深い。実に"アニメ向き"なキャラクターと言える。

 遊郭編では宇髄天元は元忍者という経験を活かし、火薬とヌンチャクのように振り回せる日輪刀で戦った。そのド派手で勢いのある戦い方はアニメでより華麗に描写され思わず目を惹きつけられた。対する妓夫太郎の血鬼術や、堕姫の帯の描写など通常のTVアニメの描写の枠を超えた濃密な動画描写が非常に印象に残った。甘露寺の戦いはどう描写されるか、特に注目したいところだ。

 甘露寺を演じるのは花澤香菜さん。コミカルな役からシリアスな女性まで様々な作品でヒロインを演じてきた人気声優だが、天真爛漫な甘露寺をどう演じるかは見所だろう。戦闘シーンでも弱音を吐いたり、怒ったりとコロコロと表情を変える甘露寺は"声"を得ることでさらに魅力が増すだろう。何といっても出す技が「恋の呼吸 弐ノ型 懊悩巡る恋」だったりするのだ。どのような感じで花澤さんがこの技を叫ぶのか、楽しみだ。

 そして「刀鍛冶の里編」では、「鬼滅の刃」ほぼ唯一の"入浴シーン"が登場するのも甘露寺ファンには見逃せないところ。歌を歌ったり、その筋肉を維持するための大食い描写などコミカルな場面も注目。「刀鍛冶の里編」では甘露寺の人気が一気に上がるのが予想される。

こちらは12巻の表紙の時透無一郎。2人の柱は「刀鍛冶の里編」で活躍する

 「刀鍛冶の里編」ではもう1人の柱・時透無一郎も掘り下げられる。記憶を失い、今も覚えたことを忘れてしまう彼はだからこそすべてに関心が薄く、対人関係も効率を追い求めるドライなところがある。ドライな人柄に加え、かなりの毒舌で、鬼とのやりとりはアニメでの聞き所だろう。

 それでいてその実力は超一流で、主人公の炭治郎より1歳若い14歳でありながら、刀を握ってわずか2カ月で柱まで登りつめた。もちろん柱の中で最年少だ。「霞柱」とよばれ、その呼吸は「霞の呼吸」。風の呼吸から派生しており、相手を幻惑するような剣技で戦う。「刀鍛冶の里編」では訓練シーンも含めて無一郎の剣の技が大きくクローズアップされる。その戦いがどう描かれるかは注目したい。

 無一郎を演じるのは河西健吾さん。クールなキャラクターを演じるのが多い印象の河西さんだが、だからこそ動揺したときの裏返った声でのコミカルな演技なども面白い。無一郎はあまり感情を表に出さないキャラクターだが、鬼への毒舌など普段以上に辛辣な台詞回しも面白そうだ。

 時透無一郎は冷淡で、それでいて凄まじい実力を持っており、甘露寺とはまた違った話題を集めるキャラクターだろう。剣技やその行動と共に、彼の"過去"がどう描写されるかも見所。彼はなぜこのような態度を取る人間になってしまったのか、本当の無一郎はどんな人物なのか、「刀鍛冶の里編」を経ることで、無一郎のキャラクターに厚みが生まれ、しっかりと認識されるようになる。アニメファンに"「本当の無一郎」を知ってもらう過程が観察できる"のはコミックファンの特権かもしれない。

2人の鬼と不死川玄弥はどう描かれる? 声優達の演技に注目

 アニメと言えば映像と共に"声"である。声優の演技はアニメ「鬼滅の刃」の注目ポイントの1つだ。「鬼滅の刃」では序盤の印象に残るがかなりあっさり倒される鬼に緑川光さんや、子安武人さんという、主人公や大ボスを演じるようなキャストを起用し話題を集めたが、どんな声優が起用されるか、アニメファンは多いに興味を持っているところだろう。

 2月3日より劇場公開される「『鬼滅の刃』上弦集結、そして刀鍛冶の里へ」では「刀鍛冶の里編」の第1話が上映されるがこの1話こそ6人(この時点で妓夫太郎が倒されているので正確には5人)の"上弦の鬼"が勢揃いすることとなる。これまで姿を見せていなかった鬼達が明らかになるのだ。

 上弦の鬼のうち、上弦の参である猗窩座(あかざ)は映画「鬼滅の刃 無限列車編」で、上弦の弐の童磨(どうま)は遊郭編のラストで登場した。猗窩座は石田彰さん、童磨は宮野真守さんが演じている。戦うときに熱に浮かされたようによくしゃべる猗窩座、こちらをからかうような、すべてを笑うような不気味な底知れなさを感じさせる童磨と、どちらも声優の"演技の幅"を感じさせてくれたが、まだ明かされていない3人の鬼を誰がどのように演じるかにも期待が掛かる。

「『鬼滅の刃』上弦集結、そして刀鍛冶の里へ」の告知ビジュアルでは前方に甘露寺や無一郎、そして後方に上弦の鬼と無残が描かれているものの、明かされていない上弦の鬼に関してはシルエットが確認できるのみだ。彼等がどう描かれるか、楽しみにしよう

 声優の魅力は一声で世界観を感じさせてくれるところだろう。その時点でキャラクター像が描かれていなかったり、ほんの1シーンしか登場していなくても、わずかなセリフで「こいつにはこんな過去があるのではないか?」、「この台詞の意味は本当はこうではないのか?」、「こういう性格ではないか?」などなど様々なイメージが生まれる。声優はそういった"キャラクター表現の実力"を期待して起用される。

 公開直前でも上弦の残りのキャストが発表されないのは、どんな声優が彼等を演じるか、そのインパクトを狙ってのものだろう。また甘露寺や無一郎はフィギュアなど商品化されバックボーンなども公開されているが、上弦の鬼に関してはその姿も含めかなり厳重に情報規制がされている。鬼の特徴やバックボーンなどをここで語ってしまうとただのあらすじの紹介になってしまうので、ここではあえて明かされていない上弦は掘り下げないことにしよう。しかし筆者は、これまで以上に明かされていない上弦の鬼にどんな声優が起用され、どう演技をするかを楽しみにしている。正直、最も想像がつかない。かなりのインパクトを与えてくれるのは間違いない。

 鬼は"人ではなくなってしまった部分"がある。あまりにも歪んだ妄執、相手を傷つけることを喜ぶ人でなしの悦楽……。人間が持っている嫌な部分、邪な部分を強調し、そこに囚われる、人間としての醜い部分を結晶化したような存在だ。上弦の陸・妓夫太郎を演じた逢坂良太さんは「うらやましいなぁ」、「みっともねえなぁ」といった彼を象徴するセリフで鬼として歪んでしまったキャラクターを強く印象づけた。

 声の演技は監督や音声監督など制作スタッフと声優の共同作業で生み出される。スタッフは原作を読み込んだ上でアニメでどうキャラクターを描けば良いかを深く考えており、その想いを受けて声優はキャラクター表現にのめり込んでいく。「刀鍛冶の里編」の上弦の鬼はかなり難しい表現が求められる。声優がどう応えてくれるか、ここは大いに注目したい。

 そして、鬼や柱以外の注目キャラクターとして、不死川玄弥(しなずがわげんや)が挙げられるだろう。炭治郎と同期の鬼殺隊員だが、これまではフォーカスされてこなかった。「刀鍛冶の里編」で彼がどう活躍するか、その特異な能力も含め楽しみだ。

13巻の表紙の不死川玄弥。彼は炭治郎と同期の鬼殺隊員だ。彼もまた「刀鍛冶の里編」の中心人物の1人

 大きな戦いの合間をドラマで繋ぐ「鬼滅の刃」は少年漫画のバトルものの原則を忠実に守り、ド派手なアクションシーンを物語の中心に置きながらその他の要素をできるだけ削ってテンポを大事に物語を進めている。アニメでもこの原則を大事に、オリジナルエピソードなどは極力挟まず進行している。「刀鍛冶の里編」ではアクションシーンに加え、過去の因縁が見えてくるなどこれからの展開に重要なシーンも盛り込まれていく。

 「刀鍛冶の里編」では上弦の鬼が出そろい、「鬼滅の刃」の物語はクライマックスに向け加速していく。しかしアニメ「鬼滅の刃」はその高いクオリティこそが人気の秘密だ。コミックスで描かれていたキャラクター達の活躍、そして繰り広げられた激闘と、心を振るわされたエピソードがアニメでどう描かれるか、まだまだ楽しめそうである。ゆっくりと時間を掛けて、アニメ「鬼滅の刃」完結まで付き合っていきたい。