【特別企画】
「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」ファーストインプレッション
ゲームの進め方すら手探りの奇妙な味わいのアドベンチャー
2022年8月5日 00:00
- 【ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット】
- 8月25日 発売予定
- 価格:4,939円(税込)
- CEROレーティング:D(17歳以上対象)
- プレイ人数:1人
「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」は、久し振りに初見で驚かされたゲームだ。原材料がわからない異国の辛い料理を食べた時の、ピリリとした痛みに似た衝撃が来て、そこからかなり奇妙でクセになる味が口に広がっていく味わいに似ている。よくわからないが、その感触そのものが面白い。そういうゲームだ。
本作はRPGというジャンルだが、「街で装備を調えて冒険に出発!」というファンタジーものの定番のノリではない。世紀末の雰囲気が漂う謎めいた街で、主人公の刑事が殺人事件を追う、大人な雰囲気のアドベンチャーだ。
主人公はいきなり全裸で記憶喪失。殺人事件を示す死体はあるものの数日も放置されてて、クソガキが死体に石をぶつけて遊んでいる。街では労働者と資本家が対立しており、共産主義や人種差別など、極端な思想を押し付けてくる登場人物との会話が待っている。おまけにシステム周りも特異で自分が何をすべきか途方に暮れるところがある。
ゲームを進めるのすら手探りの本作だが、その独特のシステムや世界観はとても味があり、魅力的だ。一言で面白さを言い表せない謎めいたゲームだが、既存のゲームの枠組みにはめ込んではいけない。その奇妙な味わいこそが楽しい作品である。筆者もまだ本作をはじめたばかり。今回はファーストインプレッションとして、「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」の序盤の展開やわかったシステム、手探りで進むこの独特の感触を伝えていきたい。
ストーリー、システム、自分の名前すらわからない状況で手探りで進めるゲームの楽しさ
ゲームでは最初に主人公のパラメーターを選択する。3つの「アーキタイプ」から1つを選ぶか、自由にスキルを割り振ってキャラクターを作ることが可能だ。
「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」では24ものスキルが存在する。様々な物事を細かく知っている「百科事典」、嘘を突き通すなど相手を騙す「演劇」、苦痛に耐える「耐久力」、実はこれらは「人格」として主人公の内面に存在し……。いや、こういった知識をプレイ前に仕入れるのも面白いと思うが、細かいことは考えず初見は自分好みのタイプにするのが良いだろう。このゲームはまずプレイしてみて、色々動いてみてから、さらにのめり込むためにプレイスタイルを変えてみる、という遊び方がオススメだからだ。
アーキタイプの選択の後は謎めいた問いかけだ。哲学的な実在を問うような問答の後、プレーヤーキャラクターはいきなり全裸で酒瓶を抱えて倒れ込んでいる。プレーヤーが主人公にまずさせることは「服を着ること」。あちこちに散乱した服を部屋の中で探す。本作は左スティックでキャラクターを動かし、右スティックでインタラクトできるものを探していく。インタラクトできるものを指定し、アクションボタンを押せば主人公はその場を探索したり、仕掛けを動かしたりする。まずこの基本の操作を部屋の中で覚える。
天井で回っているファンにひっかかったネクタイを取るには素早い動きを判定する「才覚」のスキルチェックが必要だ。このときファンを止めておけば成功率が増す。部屋はいわばチュートリアルになっていて、本作の基本的な操作を学ぶことができる。
様々な行動をしているとき状況の説明や行動を促す「声」が聞こえている。これは主人公の「スキル」であり「人格」なのだ。主人公には24もの人格が内在し、これらの声に耳を傾けつつプレーヤーが行動を決断していく。スキル(人格)にはレベルが設定されていてこれを高めることでプレーヤーは困難な行動も成功できるようになっていく。
徐々にゲームシステムは把握できるが、その中でプレーヤーは主人公が記憶を失っていることに直面する。何をするのかわからないまま部屋を出て下の階にいき、何人かのキャラクターと話を交わしていく中でプレーヤーは刑事であり、殺人事件の調査をするはずがホテルを借りたものの連日酒浸りになって、夜中は大騒ぎしていたことを知る。
そしてホテルに迎えに来た別の分署の"相棒"と共に調査を開始することとなる。死体はすぐに見つかる。ホテルの裏庭の木に一人の男が服を剥ぎ取られて吊り下げられているのだ。街の子供が何かを叫びながらその死体に石を投げている。子供に話しかけても全く要領を得ない返事。この事件は、自分は、この世界は一体何なのか、すべてが霧の中のようにぼんやりした状態で、プレーヤーは探索を進めていくこととなる。
ゲームを進めながら筆者は「なんだこれは?」と思わず声を上げてしまった。主人公は自分が何者かはっきり思い出せないまま、相棒の刑事をあてがわれ、なし崩し的に調査を開始することとなる。死体が何日も放置されているのも奇妙だし、死体があるという異常な状況なのに街はそれを無視しているかのよう。
「ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット」は推理よりも世界を探索し、社会や今の状況を探っていく探索に重きをおいた作品である。自由度は高いが、何をすれば良いかわからず途方に暮れる感じも強い。しかしその奇妙さを受け入れ、世界を探索していく中で、様々なことが見えてくる。謎は明かされるどころか深まるばかりだが、この世界との付き合い方そのものが楽しい作品となっているのだ。次ページではもう少し細かくゲームシステムを紹介しよう。
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