【特別企画】

NEC「Project炎神」第1弾「LAVIE GX」詳報

PC-9801シリーズの系譜を受け継ぎ、24年振りにゲームシーンにカムバック

【LAVIE GX】

7月14日発売

価格:オープン

参考価格:
GX750:302,280円

 NECといえば、国産PCメーカーの中でも老舗中の老舗といえるメーカーだ。同社が1979年に発売した「PC-8001」は、日本の元祖PCともいえる製品であり、その後上位シリーズのPC-8801やPC-9801、下位シリーズのPC-6001などが登場し、PC市場を牽引することになった。

 今から3年前の2019年にはPC-8001発売40周年を記念して記者会見が開催されたのだが、その会見の最後に明らかにされたのが「Project炎神」である。このプロジェクトは、NECパーソナルコンピューターがゲーミングPC分野に参入するというものであった。2021年のCESで試作機「LAVIE MINI」が公開されたものの発売には至らず、プロジェクトが製品として結実するのかが不安になってきたのだが、ほぼ3年が経った2022年7月5日、ついにProject炎神の第1弾「LAVIE GX」がついに発表された。その発表会の様子をレポートする。

エントリーPCゲーマー向けのオールインワンパッケージとして開発

 発表会ではまず、NECパーソナルコンピューターの執行役員 河島良輔氏が登壇し、LAVIE GXがなぜ今発表されたのか、その背景を語った。「NECのゲーミングPC初参入ではなく、40年前に登場したPC-9801によってPCゲームがブームになったと考えており、その40周年を記念して、再参入することになった」。

 Project炎神の目的は、PCゲームに関する「人口の裾野拡大」、「UX Transformation」、「エコシステム活性化」であり、その目的のために開発された第1弾が「LAVIE GX」である。

 続いて、プロジェクト炎神 総合プロデューサーの森部浩至氏がLAVIE GXの製品説明を行った。LAVIE GXは、エントリーPCゲーマーを対象にした製品であり、中でも「レトロゲームで育った元ゲーマーパパ」と「ゲーム実況を見てPCゲームに興味があるZ世代」の2つをメインターゲットとした。そうしたエントリーPCゲーマーの悩みが、「何を買っていいか分からない」、「どのゲームを遊べばいいか分からない」、「高額なので失敗したくない」ということである。そこでLAVIE GXは、買ってすぐに遊べるゲーミングPCを目指した。LAVIE GXには、「シックなデザイン」、「PCゲームもサクサク」、「オールインワン」、「LAVIEゲーミングサポート」、「つながる!LAVIE」という5つの特徴がある。

 デザインについては、「五崩し」と呼ばれる和柄とホワイトLEDを採用し、リビングにも溶け込むデザインを実現。テレビの横に置いてもあまり違和感がないデザインを目指している。基本性能も第12世代CoreプロセッサーやGeForce RTX 3060(上位モデルのGX750)を採用するなど十分である。

 また、Xboxワイヤレスコントローラーやゲーミングヘッドセットなどが標準で付属し、Xbox Game Pass Ulitimateの3ヶ月無料利用権もついてくるオールインワンパッケージなので、買ってきたらすぐに遊べることが魅力だ。さらに、ゲームに関するサポートを24時間365日行う専用の「LAVIEゲーミングサポート」も、エントリーPCゲーマーには非常にありがたいサービスとなる。LAVIE独自の「つながる!LAVIE」は、他のPCに画面を転送できるアプリであり、無線LANとXboxワイヤレスコントローラーの届く範囲なら、自宅の好きな場所から、ノートPCを使ってゲームをプレイできる。

 さらに、「モンスターハンターライズ:サンブレイク」やプロジェクトEGGとのコラボも行われる。前者については、キャンペーン期間中にLAVIE GXを購入すると先着500名に「モンスターハンターライズ デラックスエディション」がもらえるというもので、後者については、キャンペーン期間中にLAVIE GXを購入してプロジェクトEGGサービスに加入すると、プロジェクトEGGで使えるポイントが3000ポイントもらえるというものだ。

【NECパーソナルコンピューターのプレゼンテーション】
NECパーソナルコンピューター 執行役員 河島良輔氏
河島氏はギャラガのようなシューティングゲームの動画をバックにプレゼンテーションを開始した
2019年に明らかにされた「Project炎神」
2021年1月に発表された試作機「LAVIE MINI」。発売には到らなかった
Project炎神の目的はPCゲームに関する「人口の裾野拡大」「UX Transformation」「エコシステム活性化」である
PCゲームの火付け役となったPC-9801が発売されて今年が40周年となる
Project炎神の第1弾として登場するのが「LAVIE GX」である
NECパーソナルコンピューター プロジェクト炎神総合プロデューサー 森部浩志氏
LAVIE GXのターゲットユーザーは「レトロゲームで育った元ゲーマーパパ」と「ゲーム実況を見てPCゲームに興味があるZ世代」の2つ
そうしたエントリーPCゲーマーの悩みが、「何を買っていいか分からない」「どのゲームを遊べばいいか分からない」「高額なので失敗したくない」ということだ
そこでLAVIE GXは、買ってすぐに遊べるゲーミングPCを目指した
LAVIE GXの特徴その1。シックなデザインであり、「五崩し」と呼ばれる和柄を採用。フルカラーLEDではなくホワイトLEDを採用し、リビングにも溶け込むデザインを実現
このようにテレビの横に置いてもあまり違和感がない
LAVIE GXの特徴その2。PCゲームもサクサク遊べる基本性能を実現
LAVIE GXの特徴その3。Xboxワイヤレスコントローラーやゲーミングヘッドセットなどが付属したオールインワンパッケージ
LAVIE GXの特徴その4。ゲームに関するサポートを24時間365日行う「LAVIEゲーミングサポート」。購入後1年間利用できる
LAVIE GXの特徴その5。「つながる!LAVIE」で、他のPCに画面を転送し、自宅の好きな場所でゲームをプレイできる
「モンスターハンターライズ:サンブレイク」との発売記念コラボも実施。キャンペーン期間中にLAVIE GXを購入すると先着500名に「モンスターハンターライズ デラックスエディション」がもらえる
PC-9801 40周年記念コラボの第1弾として、キャンペーン期間中にLAVIE GXを購入して、プロジェクトEGGサービスに加入すると3000ポイントがもらえる
LAVIE GX店頭モデルのスペック
LAVIE GX直販モデルのスペック。赤字が店頭モデルとの違い

Xboxやインテル、カプコン、D4エンタープライズなど援軍も続々

 続いて、日本マイクロソフトやインテル、カプコン、D4エンタープライズの代表がゲストとして登壇し、プレゼンテーションを行った。

 日本マイクロソフト株式会社 コンシューマー事業本部 Xbox戦略本部 本部長 及部高宏氏は、「マイクロソフトはFlight SimulatorやAge of Empireシリーズなど、PCゲームにも力を入れており、Xbox Game Passなどのサブスクリプションサービスも展開しており、ゲーミングの裾野を広げることに注力している。今回、LAVIE GXとコラボを行い、買ったその日から数百タイトルのゲームがプレイできる『Xbox Game Pass Ultimate』の3ヶ月無償利用権を提供したり、Xboxワイヤレスコントーラーを添付することになった」と語った。

 インテル株式会社 第二技術本部 部長 安生健一郎氏は、「LAVIE GXに搭載されている最新の第12世代インテルCoreプロセッサーは、インテルとして初めて2種類のコアを搭載したハイブリッド・アーキテクチャーを採用し、電力効率と性能を両立。インテルもゲーム市場には注力しており、ゲームソフトメーカーとのパートナーシップが重要だと考えている」と語った。

 株式会社カプコン CS第二開発統括 編成部 運営室 砂野元気氏は、「カプコンというとコンソール機の印象が強いが、最近はPCプラットフォームを積極的に活用しており、237もの国や地域で300タイトル以上を販売しており、PC版の販売本数比率が3割を超えるまで成長している。また、国内のPCゲーム市場拡大に向けて、ゲームソフト動作確認済みPCを訴求したり、ゲームソフトが当たる動作確認済みPC購入キャンペーンなどさまざまな取り組みを行っており、今後もさらなる取り組みを企画中」と語った。

 最後に登場した株式会社D4エンタープライズ 代表取締役 鈴木直人氏は、「D4エンタープライズでは、ゲームソフト一つ一つを文化として捉え、大切な資産だと思っている。しかし、ハードウェアが様変わりする中で、ゲームソフトも遊べなくなってしまうことが多い。そこでこのゲーム文化を後世に残すために、プロジェクトEGGというブランドを2001年にスタートした。プロジェクトEGGでは、エミュレーターを使って過去のゲームソフトをプレイできるようにしているが、これはアスキーの西和彦さんやマイクロソフトのビルゲイツさんにも協力を得て権利調整を行ったもので、日本初の合法エミュレーター事業である。今回、NEC様とのコラボレーションが実現できることを嬉しく思っている。レトロゲームは当時を知らない人でも楽しめるコンテンツがたくさん揃っている。今後、NEC様とさまざまな形でレトロゲームを活用したコンテンツをコラボレートできればと考えている」と語った。

【ゲストのプレゼンテーション】
日本マイクロソフト株式会社 コンシューマー事業本部 Xbox戦略本部 本部長 及部高宏氏
Xbox Game Passにより、コンソール機でもPCでもスマホでも同じゲームを楽しめる
LAVIE GXには「Xbox Game Pass Ultimate」を3ヶ月無償利用できる権利が同梱される
インテル株式会社 第二技術本部 部長 安生健一郎氏
第12世代インテルCoreプロセッサーの特徴。インテルとして初めて2種類のコアを搭載したハイブリッド・アーキテクチャーを採用
AAAタイトルとのコラボなど戦略的パートナーシップが重要
株式会社カプコン CS第二開発統括 編成部 運営室 砂野元気氏
カプコンはPCプラットフォームにも注力しており、販売本数比率が3割を超えるまで成長した
国内のPCゲーム市場拡大に向けて、さまざまな取り組みを行っている
「モンスターハンターライズ:サンブレイク」においても今後は「モンスターハンターライズ」と同等以上の規模で各種施策を行う
株式会社D4エンタープライズ 代表取締役 鈴木直人氏
D4エンタープライズの会社概要
D4エンタープライズの沿革
プロジェクトEGGの概要。エミュレーターを用いて過去のゲームを最新プラットフォームに蘇らせる
D4エンタープライズが行っているコンテンツ配信事業
権利調整を正しく行い合法的なエミュレーターを日本で最初に実現
「PC-9801」40周年特別キャンペーンとして、LAVIE GXを購入してプロジェクトEGGに入会すると3000ポイントが付与される
鈴木氏「今後、NEC様とさまざまな形でレトロゲームを活用したコンテンツをコラボレートできればと考えている」

インテルの最新CPU「Core i7-12700F」と最新世代GPU「GeForce RTX 3060」を搭載

 LAVIE GXには、CPUやGPU、SSDなどの違いによって上位モデルのGX750と下位モデルのGX550の2モデルが用意されているが、会場では上位モデルのGX750の展示やデモが行われていた。GX750は、CPUとしてインテルのCore i7-12700Fを搭載する。Core i7-12700Fは、12コア(Pコア8、Eコア4)のCPUで、最大20スレッドの同時実行が可能であり、高い性能を発揮する。グラフィックス機能は省略されているので、利用には単体GPUが必要となる。

 メモリは8GBのDDR4 DIMMを2枚搭載しており、合計16GB。マザーボード上にはDIMMスロットが4基実装できるスペースがあるが、実際に実装されているDIMMスロットは2基であり、16GB以上にメモリを増設する場合は、元々の8GB DDR4 DIMMの代わりに16GB DDR4 DIMMを装着する必要がある。

 GPUには、NVIDIAのGeForce RTX 3060を採用。最新世代の中ではミドルレンジ下位という位置付けではあるが、フルHD解像度ならほとんどのゲームで性能不足を感じることはない。また、ビデオカードを固定するためのステーが用意されていることも評価できる。本体を運んだ際の振動や衝撃などでビデオカードが緩むトラブルを防げ、拡張スロットに対する負荷も減らせる。

 LAVIE GXの筐体は、奥行きがかなり短いことが特徴だ。一般的なタワーケースの奥行きは440mm前後だが、LAVIE GXの奥行きは308.6mmしかない。また高さも370mmと低めなので、机の上などにも無理せず置けるのは嬉しい。サイズは170×308.6×370mmであり、PlayStation 5の390mm×104mmx260mmやXbox Series Xの151×151×301mmを少し大きくした程度である。コンパクトなことは評価できるが、カード長が長いハイエンドビデオカードに換装するのは難しいだろう。

 ファンは吸気用と排気用それぞれ1つずつ用意されており、十分なエアフローを確保している。電源ユニットは80PLUS PLATINUM認証の500W仕様で、このままの構成で使うには十分だが、より消費電力の大きなビデオカードへアップグレードする場合、容量が足りなくなる可能性がある。しかし、もともと追加電源コネクタなどが用意されていない。主なターゲットがエントリーPCゲーマーとされており、ユーザーがパーツを交換したり、拡張するといったことはあまり想定されていないのであろう。

 M.2 SSDにしっかりしたアルミ製ヒートシンクが装着されていることも評価できる。M.2 SSDは意外と発熱の大きなパーツであり、しっかり冷却しないとパフォーマンスにも影響する。

 会場では、LAVIE独自機能である「つながる!LAVIE」を利用したデモも行われていた。多少ラグはあるものの、FPS/TPS以外ならストレスなくプレイできそうだ。会場には、初代PC-9801やPC-9801VM11、レトロゲームなども展示されていた。

【LAVIE GX】
LAVIE GXの外観。前面のデザインが特徴的で、シックな雰囲気を醸し出している
前面中央にホワイトLEDが搭載されており、電源を入れると点灯する
斜めから見たところ。左側面にはエアフローのための穴が空いている
左側面。奥行きがかなり短く、308.6mmしかない
上位モデルのGX750の左側面パネルを外したところ
GX750の内部。コンパクトにまとまっており、無駄なケーブルなどもない
CPUヒートシンクは薄型のタイプで、背面には排気用ファンが用意されている
GeForce RTX 3060搭載ビデオカードが装着されている。中央にはカードを固定するステーがあり、スロットへの負荷が軽減されている
前面には吸気用ファンが用意されている
ファンの隣にあるヒートシンクはM.2 SSD用のものである
電源ユニットとしてAcBel製の80PLUS PLATINUM認証の500W電源ユニットが搭載されていた
Xboxワイヤレスコントローラー+USB-Cケーブルが付属する
ゲーミングヘッドセットも付属しており、ボイスチャットなどに利用できる
ヘッドセットのケーブルの途中には音量調整つまみとミュートスイッチがある
このようにXboxワイヤレスコントローラーを使ってゲームをプレイできる
動いていたゲームは、「ハイドライド 3 SV」である
左のモニターはLAVIE GXが直接繋がっており、右のノートPCでは「つながる!LAVIE」を利用してゲーム画面を転送している
40年前に発売された初代PC-9801。情報処理技術遺産や重要科学技術史資料に認定されている
初代PC-9801。CPUとして初代x86である8086を搭載。動作周波数は5MHzであった。ちなみにメモリは128KB
左がLAVIE GX。右がPC-9801VM11。どちらも「ハイドライド」が動作している

PC-FXに型番が似ているのは「まったくの偶然」 質疑応答で明らかになった今後の展開

 発表会の最後に質疑応答が行われた。また、発表会終了後、短時間だが河島氏に質問することができたので、その内容を紹介したい。

――LAVIEゲーミングサポートは有料で延長できるか?

森部氏: 現時点では延長は考えていない。ご要望に応じて今後検討したい。

――ゲーミングPCを買って、次に買うものといえばゲーミングマウスやゲーミングキーボードなどの周辺機器だが、これらに対するLAVIEゲーミングサポートはいかがでしょうか?

森部氏: そちらのご要望、サポートの拡大についても今後の検討とさせていただければと。

――ゲーミングPCへは何年ぶりの再参入と捉えているのか?

河島氏: 98シリーズの最終出荷が1998年だったので、24年振りとなる。

――なぜ今再参入するのか?

河島氏: 我々は後発にはなるが、そもそもPCゲーム自体が私の記憶だと、7、8年くらい前から欧米ではかなり流行っていたと。当時、日本ではPCゲームがどれくらい流行るのか見ていた。というのは日本ではコンソールゲームが主流で、PCゲームでやる必然性があまりないのではないかと見ていた。やはりこのコロナの後で、爆発的にPCゲームが増えてきたのかなというところと、PCゲームでしっかりやるタイトルのニーズが顕著に出てきたので、我々もそこをやりたいけどなかなか踏み出せない人への仲立ちとしてのポジショニングはあるんじゃないかと思って参入を決めた。

 補足すると、今のコアゲーマーの方は昔からPCでゲームをやられているが、最近YouTubeとかをみて、新しくPCでゲームしたいという人が非常に増えてきたという感覚がある。そういうお客様に対してしっかりアプローチできる商品を作った。GXがその1弾目となる製品だ。

――試作機ではモバイルを意識していたが、今後はモバイル系の展開はあるのか?

森部氏: 先の商品計画については、コメントはできないが、やはりPCのUXの間口を広げるような商品は今後考えていきたいと思っている。

――型番がPC-GXとなっているが、これは以前発売されていたコンソール機「PC-FX」を意識したものか?

森部氏: これは考えてなくて、全くの偶然だ。

――NECのPC出荷台数に占める割合の目標や予測などあれば。

河島氏: まだ第1弾を出しただけなので、今の時点ではそう大きな割合にはならないと思うが、今後第2弾、第3弾を出して行けば、アメリカとか海外ではゲーミングPCの割合が15%くらいになっているので、それくらいになってくれるといいなあと思っている。

――今回、プロジェクトEGGとコラボレーションを行ったが、今後もNECとしてプロジェクトEGGをサポートしていく予定はあるのか?

河島氏: 今回が第1弾であり、今後もさまざまなコラボレーションを行っていきたいと考えている。

【質疑応答の様子】
質疑応答では、NECパーソナルコンピューターの河島氏と森部氏が壇上に上がった