【特別企画】
新しい”成長”と”発見”が常にある「リトル ノア 楽園の後継者」がすごかった
初心者から玄人まで楽しめるローグライク系アクション。その奥深システムに迫る
2022年6月29日 08:00
- 【リトル ノア 楽園の後継者】
- 6月28日 発売
- 価格:1,500円(税込)
あの「リトル ノア」が復活する! 今回紹介するのは、Cygamesより6月28日発売のプレイステーション 4/Nintendo Switch/PC用ダンジョン探索型2D横スクロールアクションゲーム「リトル ノア 楽園の後継者」だ。
「リトル ノア」は、もともと2015年より配信されていたスマートフォン用のオンラインシミュレーションゲーム。リアルタイムシミュレーションと可愛らしいキャラクターが合わさった内容が特徴だったが、残念ながら2019年にサービスが終了していた。
そんな「リトル ノア」が今回、2D横スクロール型アクションゲームという全く新しい装いで復活することとなった。降り立った謎の遺跡を舞台に新たなストーリーが展開され、主人公のノアを操作しながら「リトル ノア」らしい「錬精術」を駆使したアクションを楽しむことができる。入る度にダンジョンが変化するローグライク要素やアイテムを集めるハクスラ的な要素も合わさって、”同じ冒険が発生しない”ことで何度も繰り返して遊べるタイプの作品になっている。
発表さればかりの本作だが、その仕上がりは、たとえアクション初心者であっても、あるいは数々のアクションゲームをこなしてきたアクション上級者であっても、まさにどんな人でも楽しめるような完成度の高いものとなっていた。そこで本稿では、本作の奥深い魅力について実際にプレイできた内容をレビューしつつ、その詳細について考察していきたいと思う。
謎の遺跡を舞台に一人と一匹の出会いで新たな物語が語られる!
まずは今作の物語について軽く触れていこう。今作は、時系列的には前作「リトル ノア」の前日譚にあたるストーリーとなっており、父親を探して冒険をするノアが、突然の嵐に巻き込まれ未発見の遺跡に不時着してしまう所から物語が展開する。
遺跡にて出会った記憶喪失の喋るネコ「ジッパー」と共に、ノアは遺跡内に秘められた力を狙う「グレイ」を追って遺跡内部を冒険していく。やがて明らかになる「ノア」と「グレイ」の関係、「ジッパー」の正体、そして迷い込んだ遺跡に秘められた力とは何なのか……次々と真相が明らかになりながら、プレーヤーはダンジョンを進んでいく事となる。
前日譚という事もあって、前作を知らなければストーリーを楽しめないという事は一切ない。全く新しいストーリーが展開されるので、今回初めて「リトル ノア」を知ったという人でも問題ない。
またダンジョン探索中に繰り広げられる意地っ張りでツンケンしている「ジッパー」と、強がりだけど純粋な「ノア」の会話は聞いててにやけてしまう事もある。もともとの「リトル ノア」ファンにとっては、久々に「ノア」の声を聞けるところだけでも嬉しいポイントだろう。かわいらしいデザインや性格も相まって、全体的に非常に楽しめるストーリーとなっている。
無限に遊べるダンジョン探索! 玄人から初心者まで楽しめる「リトル ノア」らしい独自のローグライクアクションの魅力に迫る
筆者が実際にそうだったのが、本作には時間を忘れてドップリ浸かってしまうような魅力がある。ストーリーもさることながら、その大きな要因は本作のゲームシステムだ。
本作は、主人公の「ノア」を操作してダンジョン内のキャラクターを倒しながら進む横スクロールアクションとなっている。ダンジョン内には敵を討伐するエリアや、トラップだらけの地形を進むエリア、さらにはアイテムを購入できるショップエリア、ノアの能力を強化できるエリアなど、様々な役割を持ったエリアが待ち受けている。
その中でプレーヤーはノアの攻撃アクションに使用するキャラクター「アストラル」や、ノアのステータスや攻撃/防御を強化してくれる「アクセサリ」等を入手していく。それらを駆使しながら、道中で待つ中ボスやボスを攻略し、ダンジョンの最奥に向かって進んでいく……というのが基本的なゲームサイクルだ。
本作のミソは、ダンジョン探索ではステージを進むと後戻りができず、途中で体力が尽きれば最初の拠点に戻されてしまうということ。またその場合、入手した全ての「アストラル」と「アクセサリ」は失われて、能力は初期状態に戻ってしまう。そして、再び最初のステージからダンジョン攻略を開始することとなる。
再スタートすると、登場するボスなども含めてダンジョンの構成は全てが変化。つまり本作は、変化するダンジョンへ何度も冒険に行って、様々な「アストラル」や「アクセサリ」を集め、入手したものの中から最適な攻撃方法や攻略方法を模索し、考えながら最奥を目指すゲーム、というわけだ。
ポイントは、途中で力尽きた際、入手した全ての「アストラル」や「アクセサリ」が失われる代わりに、その分の「マナポイント」が手に入ること。「マナポイント」を使うことで拠点を強化でき、すればするほどノアの基礎能力や初期装備が強くなる。たとえ途中で倒れても、「マナポイント」で能力を底上げしたノアを使用して、また新たな気持で冒険に旅立つことができる、というわけだ。
”成長”と”新体験”が常に繰り返される。全く“飽き”の来ないゲームデザイン
これを聞くと「せっかく入手した色んな物が使えなくなっちゃうのが辛そう……」と思ってしまうプレーヤーも居るかもしれないが、毎回違う「アストラル」や「アクセサリ」に出会える事で、むしろ新たな攻撃方法や攻略法を思いつくことの方が多い。
そうなると体験がガラッと変化して、飽きるどころか遊ぶたびに楽しくなっていく。また個人的には、“倒れたら最初から”という緊張感の中で、レアリティの高い「アストラル」や「アクセサリ」に出会える瞬間の喜びがたまらない。この緊張と喜びの連続が、凄まじくゲームを面白くしてくれている。
さらには拠点に戻った際の「マナポイント」による強化要素は気持ち的に大きい。こうしたローグライク系の“倒れたら最初から”のゲームシステムが採用されている場合、実際に倒れた際の「ガッカリ感」は非常に辛い。ただ「マナポイント」は、戦って頑張った分の報酬として入手する形なので、とても救われた気持ちになる。
そして何より、ノアの強化で冒険が格段に楽になったり、新しいアクションが身に付いたりする変化が起こるため、冒険を繰り返したくなるモチベーションに繋がる。プレイするほど操作にも慣れるし、自分が強くなっていると実感しながらゲームを進められるため、プレイするほどやり応えが出てくる。
「リトル ノア 楽園の後継者」は、この”成長”と”新体験”が常に繰り返されるゲームデザインになっていて、一度サイクルにハマると思わず病みつきになる。ローグライク系のゲームは、ダンジョン探索の繰り返しが時に”飽き”を誘うが、本作はそこを上手く回避、あるはサポートしている。
その点が、カジュアルプレーヤーにも遊びやすい要因になるのではないかと筆者は考えている。どんな冒険でも、新たな体験と入手したアイテムによって一期一会の全く違う戦略を可能にするのが本作の魅力だ。
攻撃アクションが変化する「アストラル」の試行錯誤が楽しい!
そしてノアの基礎となる攻撃要素「アストラル」を駆使した攻撃アクションも簡単ながらも奥深いシステムとなっているので、ぜひ紹介したい。
「アストラル」は、最大5体までセットでき、攻撃ボタンをポンポンと押していくと、セットした順番に「アストラル」が登場して攻撃アクションを行なってくれる。「アストラル」は数多くの種類がいて、攻撃力や攻撃範囲、攻撃の出し方、また敵を打ち上げたり打ち落としたり、それぞれ全く違うアクションが発動する。
上手く「アストラル」同士の攻撃を繋げれば、連続で攻撃を当てて大ダメージをも狙える。どの順番でどのように攻撃を当てていくか、自分なりの「アストラル」コンボをいかに構築できるかが重要なポイントだ。
また「アストラル」は、通常攻撃のほか「スキル」のボタンに配置することもできる。再使用までの待機時間(いわゆるクールタイム)があって連続では使えないが、その分強力な攻撃手段となる。スキルには最大2体がセット可能で、最大で合計7体の「アストラル」を各スロットにセットして攻撃アクションを繰り出せるようになっている。
「アストラル」毎に攻撃方法に遠距離、近距離、出が速い・遅い、対空攻撃、属性攻撃などなど多種多様な特徴を持っているため、どのように攻撃を組み合わせるかがプレーヤーの腕の見せ所。上記で挙げた通り、どの「アストラル」に出会えるかも冒険によって変わるので、常にコンボや攻撃方法を模索しながら、ゲームを進める楽しさと奥深さを味わう事ができるだろう。
また入手した「アストラル」での攻撃を考える際に重要となるのがダンジョン攻略中の「クリスタル」によるノアの育成方針だ。
ダンジョン内には様々なエリアが用意されているが、その中でノアの能力をアップさせてくれる「クリスタル」を入手できる場所が用意されている。この「クリスタル」は、近距離攻撃を強化するか遠距離攻撃を強化するか、はたまたコンボ数によるダメージを強化するかの3択から選ぶ事ができるのだが、ここで重要になるのが自分の持っている「アストラル」との相性、という訳だ。
自分の所持している、もしくはこれからゲットしていきたい「アストラル」がどの攻撃タイプに向いているのかを判断しつつクリスタルを選ばないと、攻撃方法と強化方針がちぐはぐになってダメージを与えられなくなってしまう。
さらにノアの攻撃アクションで重要になってくるのが、拠点で事前にセットできる「アニマ」の存在だ。
「アニマ」は、ノアの見た目を変化できるほか、セットしている特定の場所(コンボの順番位置)の「アストラル」を強化してくれる能力も持っている。どの攻撃にバフをかけたいかを考えることで、「アストラル」のセットがより効果的になるかも、というわけだ。
さらにこの「アニマ」には、それぞれ「アニマバースト」と呼ばれる必殺技が備わっている。これはバトルを繰り返す事で「バーストゲージ」が貯まり、発動可能なノアの必殺技。巨大化したノアが広範囲に大ダメージのド派手な攻撃を繰り出してくれるもので、まさに奥の手、切り札といった感じの強力な攻撃となっている。
攻略にももちろん大切な要素だが、何より「アニマバースト」発動時は、様々な可愛らしい姿のノアを拝むことができる。ぜひ色々な「アニマ」を装備して、試してみて欲しい。
瞬間移動「エーテルスラスト」の存在で初心者から玄人まで楽しめる仕上がりに
他にも攻撃アクションとして、任意の方向に一瞬で移動しながら突進攻撃を行う「エーテルスラスト」の存在は大きく感じた。移動や攻撃に使えることは勿論だが、「アストラル」によるコンボ攻撃に挟む事で間髪入れずに再びコンボ攻撃を繋げる事ができたり、他の敵キャラクターの元へ一瞬で移動して攻撃を継続してくれるなど、本作のアクションとしての楽しさにスタイリッシュさを追加してくれる素晴らしいシステムとなっている。
特に「アストラル」「アニマ」「エーテルスラスト」の3つは戦略性とアクション性が非常に強く結びついていて、しかもしっかり両立できている。ここが、アクションゲームとしての手触りの良さや面白さの地盤になっていると筆者は考えている。
アクション初心者であれば、お気に入りの「アストラル」をセットしながら攻撃と「エーテルスラスト」を連打するだけでもサマになるし、実際にそれだけでも十分に楽しむことができる。
徐々に操作に慣れシステムを理解してきた玄人プレーヤーは、「アストラル」でのコンボ攻撃や、「アニマ」での攻撃補正や「アニマバースト」のタイミング、「エーテルスラスト」でのコンボ継続など様々な要素に意識を向ける事で、ノアのアクションをとことんまで突き詰めることができるだろう。
やっていることは簡単ながら、行なえるアクションの幅や戦略がとても広く、どんなプレーヤーでも自分のリズムで楽しめる。まさに”簡単なのに奥深い”を体現した作品と言えるのではないだろうか。
やり込みもカジュアルも全部ウェルカム!どんなプレーヤーも最後までドップリ遊べてしまうその理由を考察
本作は何度もダンジョンに挑むが、新しい”成長”と”発見”を何度も繰り返しながら進んでいけるところが非常に魅力的だ。
序盤は、言ってしまえば「ラスボスが待ち受ける最奥に到達するなんて到底無理」という感覚で何度もダンジョンに入る事になるのだが、そのダンジョン探索であっても新しい「アストラル」に出会って今までに無い戦略が体験できたり、追加されたアクションを試せたり、新しいボスに出会えたりなど常に停滞する事なく”飽きずに”ゲームを楽しむことができる。
特に色濃くその要素を感じたのが、各エリアの最後に待ち受けている大ボス戦とそこまでの道のりだ。初見だと全く歯が立たず、何度も繰り返しダンジョンに挑む事になるのだが、繰り返すうちに操作が洗練されていき、どのタイプの「アストラル」の攻撃が有効なのか、どのタイミングで攻めこめば安全にダメージを取れるのか、それを理解し、実践し、ついにボスを倒した時はこの上なく嬉しい。
ボスに負け、拠点に戻り、再戦するとなるといわゆる「戻し作業」になることも多いだろう。ただ本作は、常に新しい体験が待っていることがあらかじめわかっているので、再挑戦のハードルがとても低い。初心者がぶち当たってしまうボスを倒すまでの”苦難”やそれに伴う”飽き”を、ダンジョンや難易度を簡単にすることでケアするのではなく、常に新しい体験や面白さを与え続けるという方向で継続させる事が多くの層のプレーヤーが楽しめる要素となっていると筆者は考えている。
加えて2D横スクロールアクションにしては珍しい自由なビルドシステムも本作の大きな魅力のように筆者は感じている。言ってしまえば本作は、ダンジョン1周を通してノアをどのように強化していくかを楽しむゲームでもある。
最初に拠点でノアや「アストラル」の基礎能力を強化しつつ、セットできる「スタチュー」(若干のステータスボーナスが上乗せされる)や「アニマ」で冒険の方向性を決めて、冒険に出たら「アストラル」や「アクセサリ」などのランダム要素で試行錯誤しながら最強のノアを完成させていく……といった感じ。これが楽しい。
実際筆者も、一周ゲームクリアした後も「次はこのアニマで……」や「今回は遠距離攻撃を中心に装備して……」と言ったように様々なビルド方針でノアを育てながらダンジョンに挑み続けてしまったほど。遊び方を変えて何度もプレイできてしまうゲームとなっている。
ローグライク系アクションの初心者にゲームを継続させる作りだけでなく、繰り返しダンジョンに挑むというローグライク系ならではの面白さをキャラクターのビルドと合わせて味合わせてくれる本作は、既存のローグライク系アクションに慣れた玄人プレーヤーにも刺さる、やり込み度の高い作品と言えるだろう。
また何より、主人公の「ノア」と「ジッパー」がひたすらに可愛いく魅力的なキャラクターだったというのも外せない魅力だ。
アクションの際にはしっかりボイスがついているのは勿論ながら、ノアが宝箱を空ける際の少し乱暴な仕草(思いっきり蹴り上げる!)を始めとしたアクションの数々、ボス戦に破れた際の「ジッパー」との反省会など、キャラクター性を感じられる要素が作中の随所に見られたのは非常に良いポイントだった。
筆者は前作の「リトル ノア」をそこまで詳しく無い状態でプレイしたのだが、最後には「ノア」というキャラクターが好きになっていた。なので、前作を知らないプレーヤーであっても問題なく遊べるだろう。
前作のファンであればもちろん楽しめるし、例えその人がアクション初心者だったとしてもバッチリ遊べる。つまり、どの層のプレーヤーにもオススメできる作品だ。
惜しむらくは、本作が非常にお手頃価格でプレイできる代わりに全体のストーリーボリュームが少し控えめな所……! 正直筆者としてはフルプライスで全然構わないから、是非このシステムで大長編のゲームをプレイしたいと感じた。それほど、本作はアクション性もゲームシステムも素晴らしく質が高いと思う。
今後のシリーズ展開にも思わず期待してしまうほどのお気に入りとなったので、是非「リトル ノア」ファンのプレーヤーは勿論、アクションゲーム好きのプレーヤーにも一度プレイしてみて欲しい作品である。初心者でも玄人でも、どんなスタイルでも楽しめる非常に奥深いゲーム体験ができるだろう。