【特別企画】
SPゲストは植松伸夫氏! THE PRIMALSライブレポート
アレキサンダー組曲を始め、涙を誘う楽曲たちも。世界の光の戦士が酔いしれた2時間半の公演の模様をたっぷりお届け
2022年6月6日 12:00
- 【THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow】
- 6月4日、5日開催
- 会場:幕張メッセ イベントホール
スクウェア・エニックスは6月4日、5日の2日間、「ファイナルファンタジーXIV」(以下、「FFXIV」)の公式バンド「THE PRIMALS」のライブコンサート「THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow」を幕張メッセ イベントホールにて開催した。
全世界で開催されたファンフェスでのステージはあれど、単独ライブとしての開催は約4年ぶりとなった、THE PRIMALS。この日をずっと待っていた、という長らくの光の戦士もいれば、本公演が初のTHE PRIMALSライブ参戦となった光の戦士も多くいることだろう。なお、1日目の6月4日はオンライン配信も行なわれ、ネット越しに大変な盛り上がりを見せた。本稿では、6月5日の公演の模様をお届けする。
「THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow」セットリスト
1. ENDWALKER
2. 輝ける蒼 ~希望の園エデン:覚醒編~
3. 究極幻想
-MC-
4. メタル ~機工城アレキサンダー:起動編~
5. 忘却の彼方 ~蛮神シヴァ討滅戦~
-MC-
6. 目覚めの御使い ~ティターニア討滅戦~
7. 女神 ~女神ソフィア討滅戦~
8. 悠久の風
9. メインテーマ~マトーヤの洞窟メドレー
10.ビッグブリッヂの死闘
-MC-
11.貪欲
12.To the Edge
13.Shadowbringers
14.知恵の巻貝 ~オールドシャーレアン:夜~(Acoustic Version)
15. Close in the Distance
16.Flow Together
17. 此処に獅子あり ~万魔殿パンデモニウム:辺獄編~
18. ロングフォール ~異界遺構 シルクス・ツイニング~
-MC-
19. 魔神 ~魔神セフィロト討滅戦~
20. 加重圧殺! ~蛮神タイタン討滅戦~
21. エスケープ ~次元の狭間オメガ:アルファ編~
~アンコール~
22.メタル:ブルートジャスティスモード ~機工城アレキサンダー:律動編~
23.ライズ ~機工城アレキサンダー:天動編~
24.ローカス ~機工城アレキサンダー:起動編~
・THE PRIMALSメンバー
祖堅正慶(SQUARE ENIX 所属/ギター&ヴォーカル)、GUNN(ギター)、イワイエイキチ(チリヌルヲワカ/ベース)、たちばな哲也(SPARKS GOGO/ドラム)、マイケル・クリストファー・コージ・フォックス(SQUARE ENIX 所属/ヴォーカル) ※敬称略
ノンストップの約2時間半! そしてまさかの影ナレはエメトセルク!
まず会場の光の戦士を出迎えた影ナレ(開演前の諸注意事項のアナウンス)は、まさかのエメトセルク(CV:高橋広樹さん)。「幕張メッセ?」と呟くエメトセルクの声に、会場が大きくざわついた。どうやらヒュトロダエウスに「これを読め」と渡されたらしい何かを読み上げる、エメトセルク。
「本日はご来場いただき、誠にありがとうございます」と口調を変えての朗読(?)に、会場に集った光の戦士からは大きな拍手が上がった。さらに「アーテリス全土を熱狂で揺らせるか?」という問いには、再び大きな拍手が沸き起こった。この影ナレ以降は会場に流れるBGMに合わせてサイリウムが振られるほどで、この場に集った光の戦士たちの気持ちを開始前から盛り上げるのに一役買ったエメトセルクとなった。会場の盛り上がりとは反面、ひどく真面目に「撮影禁止」といった諸注意を語るエメトセルクの声には思わず笑ってしまうものがあるので、まだ配信を見ていないという人も、これに釣られる形でも良いからまずは見てほしい。エメトセルクの「間も無く開演だ」のひとことが異様に重苦しく、それでいて笑いを誘うあたりが、なんとも言葉にし難い。
オープニングを飾ったのは、「ENDWALKER」。まだ幕は開かず、生演奏をバックに、幕に「暁月のフィナーレ」のトレーラーを流しながらのOPとなった。エメトセルクの「生きることは死にゆくこと」の言葉が、酷く重苦しく響き渡った。そう、それは一歩を進むたびに何かを殺しているような、こちらが殺されていくような、そんな不思議な気持ちになる旅だったことを思い出す。
続いては「輝ける蒼 ~希望の園エデン:覚醒編~」。
Leviathan Leviathan Endless!
Leviathan Leviathan Send us!
Leviathan Leviathan Breathless!
Leviathan Leviathan Deathless!
のコーラスに合わせて綺麗にサイリウムが振られるところは、さすが訓練された光の戦士らしい。ちなみに筆者は未だにスっと消える足場でたまに落ちる。一番辛いのは、クセで飛び掛かり攻撃を使用して、そのまま落下していくことである。
そしてコージ氏の熱唱が光る、「究極幻想」へ。もちろん、「漆黒のヴィランズ」で戦ったルビーウェポン及びエメラルドウェポン戦バージョンの「究極幻想」だ。だが、会場のサイリウムが真っ赤だったところを鑑みても、どうやら光の戦士たちにとってもあの「究極幻想」はルビーウェポン戦の印象が強いようだ。「ルビーが負けるって言うの……!?」というあのセリフも印象的だったが、それよりなによりあそこからパッカリと割れて飛び出たネールにひと目で戦慄した、バハムート侵攻編4層クリア者も多かっただろう。
いきなりテンションが上がる3曲で始まったが、MCでは祖堅氏が「声を出せないけれど、コージがいきなりズボンとか脱ぎだしたらそこは笑ってください(笑)」と、ゆるゆるのMCを披露。
そして次の曲がアレキサンダー:起動編の一曲であることを紹介する際に「零式の4層が難易度高すぎて大変だったんだよね~……」と当時の思い出を振り返りつつ「ね!?」と客席にいる吉田直樹P/Dに振る場面が。スポットが当たり、2階席で楽しんでいた吉田氏がみんなに手を振ると、祖堅氏が「あの人の声はマイクなくても通るから、何か叫んでもらおう」と言い出し、吉田氏が「そんなの台本にないんだけど!?」と慌てつつも、「ご来場の皆さま、最後までお楽しみください」と、なんとマイクなしの肉声で広い会場の全域に向かって叫んだ。筆者は吉田氏からかなり離れた席だったのだが、それでも全く問題なく聞こえていたので、驚きだ。なお祖堅氏によれば「あの大声で、バトルコンテンツ班はいつも怒鳴られているんだよ(笑)」とのことだが、それを言われた吉田氏が頭を抱えている姿も非常に印象的だった。
このように、のほほんとした和やかなMCを挟み、まずはバンドのメンバー紹介。ギターのGUNN氏の「みんなどこから来たの?」という問いかけは、本来なら「家(イェー!)」という掛け声になるはずなのだが、飛沫防止対策で声が出せないためにスクリーンに「家」の一文字が映し出されたのには、思わず吹き出してしまった。ベースのイワイエイキチ氏、ドラムのたちばな哲也氏、SQUARE ENIX 所属のただのサラリーマン……ではないイケてるボーカリストは、マイケル・クリストファー・コージ・フォックス氏。そして同じくSQUARE ENIX 所属のただのサラリーマン……とはとても呼べない、この日多くの光の戦士を熱狂させている立役者・ギター&ボーカルの祖堅正慶氏だ。
メンバー紹介でギアも1段階上がったところで、続くは「メタル ~機工城アレキサンダー:起動編~」。
「Wake the metal (boom goobiedoom!)」から「boom goobiedoom!」の掛け声が続く曲だが、声を出せずともサイリウムだけで掛け声が聞こえるような、そんな力のある振りを感じる。そんな客席に煽られるように、コージ氏のダンスにもキレが増す。恐らく当時リアタイでアレキサンダー零式をプレイしていた人は、ここでフリーカンパニーアクションの「衰弱時間短縮II」が必須とも言えたことを覚えているだろうか……。まだまだ野良でクリアするパーティが少なかった時代ともあって、当時はFCの中で常にこのカンパニーアクションが使われていたものだ。
続くは、ボーカルGUNN氏による「忘却の彼方 ~蛮神シヴァ討滅戦~」。女性ボーカルとは違う、ちょっと力強さのあるシヴァ。GUNN氏によるシヴァも大分お馴染みとなってきたが、実はこちら未だにCDなどの音源では発売されていないという貴重な一曲。4年前に開催されたTHE PRIMALSのライブBlu-rayに収録されているものしかないので、ぜひCD(MP3)音源化してほしい曲のひとつだ。(だがもしも実現すると、喜びで噎び泣いてしまう光の戦士が多数いると思われる)
この後も、「目覚めの御使い ~ティターニア討滅戦~」、「女神 ~女神ソフィア討滅戦~」と女性ボーカルの曲が続く。なお、ティターニアは「俺たちが歌えるキーじゃないじゃん、誰が歌うんだ?」となり、全員が嫌だと言った結果じゃんけんになり、負けた祖堅氏が歌うことになったという、逸話付きだ。しかも入りを間違えて、仕切り直すことになったことも付け加えておこう。もちろん、そんなポカも温かく見守る光の戦士たちだ。むしろ「温かく」というよりも「おいしい……」と思いながら眺めていた方が正しいかもしれない。なお、この入りを間違えた時、祖堅氏がカイロスを起動したため、既に全員の記憶は失われているはずだ。つまりこの記事も、いずれ消滅するに違いない。
なお、ソフィアのボーカルは、GUNN氏。どこか切なげな声で歌うGUNN氏のソフィアは、原曲とはまた違う不思議な魅力が溢れている。
まさかの”レジェンド”が登場……!?
そして再び、エメトセルクの声が会場に響き渡る。「長い時の中で、ふと懐かしいメロディを耳にすることがある」、「その始まりを知っているか。プレリュードを創造した人物を」。このようなセリフと共に、祖堅氏らバンドメンバーがステージを去る。そして入れ替わるように、壇上にアシエンのフードを深くかぶった人物が現れた。
幻想的なシンセサイザーの音が、会場に響く。きらきらと、それでいて深く沈んでいくような、とても不思議な気持ちになる音だ。そこに「プレリュード」の音色と「悠久の風」は、懐かしいPSG音源の音を混ぜながらも新たなアレンジが加えられ、テクノポップのようなメロディになっていた。
最初はてっきり祖堅氏が中央でソロで弾いているのかと思ったのだが、祖堅氏にしては面白いアレンジだな、とのんきに考えていたら、曲が進むにつれてフードが取られ、壇上の主が露わになってゆく。
「メインテーマ~マトーヤの洞窟メドレー」は激しいテクノロック調のアレンジになっており、会場から自然と手拍子が起こった。こちらも神秘的な音色が印象的でありつつも、PSG音源の良さを活かしたアレンジとなっており、そしてこの辺りでいよいよ壇上の人物が、あの「FINAL FANTASY」音楽産みの親である植松伸夫氏だということが判明。
続く「ビッグブリッヂの死闘」はエンジンが一気に吹き上がるような、――ボルテージが最高潮に上がるような、とにかく必聴のロックアレンジとなっている。「ビッグブリッヂの死闘」はこれまでに多数の「FF」シリーズや派生作品でアレンジされてきた楽曲で、その度に「こんな切り口が!」と思わされるのだが、「ビッグブリッヂの死闘」に限らず、この日植松氏が演奏した曲はいずれも「作曲家本人だからこそ可能なアレンジだ」と感じた。作曲家の手を離れた新しい解釈でのアレンジと、作曲家の手による新しい解釈でのアレンジはやはり切り口も異なるもので、これらはいずれも、紛れもなく作曲家の手による新しい解釈でのアレンジで、そしてアナログシンセサイザーの音の良さを多分に活かしたアレンジになっている。
曲を演奏し終えた植松氏を、壇上で迎える祖堅氏。植松氏は祖堅氏の大先輩で、スクウェア・エニックスがまだスクウェアとして目黒にあった頃は、よく植松氏にご飯に連れていってもらうこともあったという。それにちなんで植松氏のことを「たかりやの大先輩」と紹介する祖堅氏に対して、「たかられやです」と返す植松氏とのテンポの良い会話が、非常に面白い。
なお植松氏によればファミコン時代の楽曲を自分で演奏するのは、非常に珍しいことだという。植松氏は自分で自分の曲を聞き返すことを一切しないそうで、ネットでも自分の名前を絶対に検索しないそうだが(「嫌なことが書かれていたら悲しいから」という理由らしい)、さすがにこの日の前日は、配信で植松氏の登場にSNSが大いに盛り上がったという話をスタッフから聞いて、珍しくひとりでSNSをずっと眺めていたのだと笑った。
植松氏は「若いころに作った曲は恥ずかしい」としつつも、今ならばこれをどう面白い曲に出来るかと思って、この日演奏された「悠久の風」を作り始めたとのことだ。逆回転なども入れたり、あちこち切り貼りなどもしているそうだが、いざやり始めたら楽しかったとのことで、そこから11月9日発売予定のアルバム「Modulation」を作る運びになったのだという。今も発売に向けて絶賛制作中とのことだ。
ちなみに「Modulation」とはアナログシンセサイザーをやっている人ならばすぐにわかる単語で、ジャケットの絵などにもアナログシンセサイザーを弾いている王様の絵を入れてほしいという要望をしたりと、これからまだまだ面白いものになっていくのではないかと、植松氏は語った。植松氏の作った数々の楽曲を「『FFXIV』でも大事に使わせてもらっています」と祖堅氏が頭を下げる場面もあった。
なお余談だが、この日植松氏が着ていたアシエンの衣装は「うん十万円」するそうだ。なのであと数回はTHE PRIMALSのライブに来て、あの衣装を着てほしい、という祖堅氏のお願いを植松氏は「僕でよかったらぜひ」と快諾。叶えば、海外公演などでもアシエン姿の植松氏が見られるかもしれない。
植松氏は最後にTHE PRIMALSについて「エンタメが徹底している」と称賛。また、昔はゲーム音楽が浸透していなく、コンサートをやるにも植松氏が社長に直訴しにいくようなレベルだったそうだ。「こういう時代になったのも、皆さんが集まってくれるおかげです。FFとか、FFの音楽とか、祖堅君とかを可愛がってあげてください」と大先輩らしいひとことで締めくくった。植松氏を見送った祖堅氏も「ああいうレジェンドがいるからこそ、皆さんに面白いゲームを届けられる」と改めて植松氏に感謝の言葉を述べた。
プレーヤーによるプレイ動画が使われる楽曲も!
そしてエメトセルクは「なるほど、思ったよりは楽しめるようだ」とコンサートの感想を語る。だが、地上が恋しくなることはないのだという。「おまえたちが進む未来は、私が愛した過去じゃない。だからこそおまえたちと本気で命を懸けて戦ったんだ。私が私である限り、この思いは砕けない」と、彼らしい言葉を口にした。
次に演奏されたのは「漆黒のヴィランズ」のIDボス曲である「貪欲」。ここから2曲は、あらかじめプレーヤーから募集していたプレイ動画をスクリーンに流すという、プレーヤーとのコラボ企画だ。「貪欲」のカッコよさはもちろんのこと、プレーヤーによるプレイ動画のカッコよさも半端がない。「漆黒のヴィランズ」で通り抜けた数々のIDボスたちを撃破していく映像たちには、心が痺れた。
もう一曲のコラボはウォーリア・オブ・ライト討滅戦の「To the Edge」。この曲は5.3当時、筆者の感情を大崩壊させた曲で、未だにプレイ動画も冷静に見ていられないほどのため、ボロボロに涙を流しながら見ていたのだが、エメトセルクの「おまえたちが進む未来は、私が愛した過去じゃない」という言葉が、なお一層突き刺さる。そう、我々が進むのは過去ではなく未来であり、我々は進み続けている。その足跡を「プレイ動画」という形で飾ったのではないかと思えて、仕方がなかった。(ただの思い込みが激しいオタクである)
コラボはここまでだが、「漆黒のヴィランズ」のターンはまだまだ続く。次は「Shadowbringers」だ。先程のエメトセルクのセリフは、ここまで繋がっていたのかもしれない。「漆黒のヴィランズ」の名場面を振り返っていくような映像がスクリーンには流れ、最後にはエメトセルクの「ならば、覚えていろ」のシーンまで繋がった。このシーンから冒頭の「この思いは砕けない」に繋がると思うと、一層涙腺も崩壊するというものだ。
――だが、ここで崩壊した涙腺を簡単に引っ込めさせるのが、ゆるふわおじさんたちによるMCコーナーである。(誉め言葉)
前日の公演よりもステージが熱いのは、前日よりも今日集まった光の戦士たちの平均年齢が若いからでは? と笑うメンバーたちに縮こまるしかない、四十路の筆者であった。恒例の「どこから来たか」コーナーではアメリカやヨーロッパからの参戦者もおり、壇上のメンバーを驚かせていた。
ここからはアコースティックコーナーということで、「知恵の巻貝 ~オールドシャーレアン:夜~(Acoustic Version)」が演奏。アコースティックギターが、印象的なメロディを刻み、ゆったりと心地よく音楽を聴くという気持ちよさを、存分に感じることが出来た。
しかし、ここから「Close in the Distance」、「Flow Together」と、再び泣きの2曲が続けて演奏される。ウルティマトゥーレでの出来事を思い出しては涙し、「Flow Together」では「暁月のフィナーレ」でずっと心臓を掴まれながら苦しい旅を続けてきて、それでもフィナーレを迎えられた時のことを思い出す。ましてやスクリーンにも「新生編」から「暁月編」までの冒険を振り返るような”フィナーレ”を演出されて、これで泣くなというほうが無理があるというものだ。
正直に述べると、オーケストラコンサートは泣けるものだと思っている。しかしTHE PRIMALSのライブでは、”泣き”の演出を想像すらしていなかった。いや、これらの曲が演奏されるのはわかっていた。何故なら5月25日に先行して発売されたCD「THE PRIMALS-Beyond the Shadow」に、このどちらも収録されていたからだ。それでもライブで泣くことになるとは思っていなかったのだが、これが生演奏だからこその独特な力なのかもしれない。
同じように涙腺を刺激された光の戦士は多かっただろう。我々の歩みはいつだって、楽しく、悲しく、明るく、辛く、強く、弱く、勇ましく、それでも己の脆弱さを感じながら、生と死と、善と悪と、天秤にかけられないものを天秤にかけながら歩み続ける冒険だったように思う。
それこそこれがオーケストラコンサートならば、きっとここで終幕だったのだろう。我々は「暁月のフィナーレ」の余韻に浸りながら、会場を後にしていたことだろう。実際、エメトセルクが「もう終わりかとざわついているぞ」と、光の戦士と、壇上の登壇者たちに言葉を投げかける。
そう、これはオーケストラコンサートではない。THE PRIMALSのライブなのだ。だから、こんな風にしんみりとは終わらない。
続くは「此処に獅子あり ~万魔殿パンデモニウム:辺獄編~」。コージ氏のボーカルが冴え、涙も一気に引っ込んでこちらも拳を振り上げる。そして更に続くは、あの「FFXIV」に登場するエモートをダンスに取り入れた「ロングフォール ~異界遺構 シルクス・ツイニング~」だ。なお、前回のファンフェスでのライブでは開発スタッフらがダンスを踊る姿が見られたが、今回はついにプロのダンサーになり、完全版とも言える振付が出来上がっていた。ファンフェス版の振付をほぼ覚えてしまっている筆者だが、完全版のキレッキレなダンスもぜひ覚えたいところなので、このライブのBlu-rayを一刻も早く発売してくれることを切に祈りたい。
なお、基本的に会場でペンライトを持っている人たちはみんな楽曲のイメージカラーにその都度切り替えていたのだが、「ロングフォール」だけはタンク(青)、ヒーラー(緑)、DPS(赤)の3色混合になっており、恐らくこの日集った光の戦士たちは自分のメインジョブのカラーにしていたのだと思われる。言わずとも自然とこういったギミック(?)に気づいてしまうのが、光の戦士の宿命なのだろうか。
最後のMCでは、残り3曲であることが告げられ、そして祖堅氏から「これから特にフロントの席の人たちには強力なAoEとデバフがくるから気を付けてほしい」と謎の言葉が告げられた。そして最後のMCのラストは、光の戦士たち一同による、「起立」、「気を付け」、「礼」で締めくくられた。
最後の3曲の1曲目は「魔神 ~魔神セフィロト討滅戦~」。どうやらコージ氏の一番のお気に入りの曲らしく、コージ氏のボーカルにも熱が入る。筆者にとっては、当時「ひとりが死んだらもれなく全員死ぬ。そして冒頭の死闘に戻される」という未だにトラウマのひとつであるセフィロト戦(極)だ。セフィロトのイメージカラーといえば緑だと思うが、ペンライトでオレンジにしている光の戦士たちも見受けられたのは、まさに筆者のトラウマの「ひとり死んだら全員がもれなく死ぬ」”あの場面”の再現かと気づき、また震えた。訓練された光の戦士たちの対応力が、本当に素晴らしい。
最後の3曲の2曲目は、「加重圧殺! ~蛮神タイタン討滅戦~」。やはり「バナナモゲラ!」(正確には「Bow down overdweller」)をしないでは帰れない。曲の最初からステージ上で火が吹くという演出がなされ、「なるほど、これがAoE……火傷のデバフ……」と思わず笑ってしまう場面だったが、実際壇上のメンバーとステージに近い光の戦士たちには猛烈な熱風が襲ってきていたに違いない。
「加重圧殺!」からノンストップで入ったのは「エスケープ ~次元の狭間オメガ:アルファ編~」。ちょうどもうすぐオメガ外伝が始まる時期とあって、ここでこの曲が最後だというのは実に心憎い選曲だ。
アンコールはアレキサンダー組曲!
鳴りやまない拍手。アンコールの声は出せないが、必死に拍手とサイリウムでアンコールを促し続ける会場の光の戦士たち。そこに再び響いたエメトセルクの声。「さあ、全力で呼び戻してやれ。次の公演をまた始めるために」。その声と共に始まったのは、楽器をトランペットに持ち替えた祖堅氏率いる「メタル:ブルートジャスティスモード ~機工城アレキサンダー:律動編~」。既に「メタル」が演奏されていたので今回「ブルートジャスティス」はないものかと思っていたら、まさかの選曲であった。祖堅氏のトランペットの音色が冴え渡り、「ブルートジャスティス」の元気でコミカルなリズムを刻む。最後の〆に、ステージから大きな花火が上がった。
アンコール2曲目は「ライズ ~機工城アレキサンダー:天動編~」。毎度おなじみの時間停止ギミック込みだ。「ピー、ポッ、ポッ、ポッ」の時間停止ギミックと共に会場の光の戦士たちも一斉に動きを止める。会場に集った何千人という光の戦士が誰ひとり微動だにしないあの瞬間は、何度経験してもゾクっと鳥肌が立つのを感じる。
そしていよいよ本当に最後の曲となったのは、「ローカス ~機工城アレキサンダー:起動編~」。なんとアンコールの3曲全てが機工城アレキサンダーからとなった。最後とあり、祖堅氏が拳を振り上げて客席にアピールする姿も見受けられ、煽られるように客席の光の戦士たちも飛び跳ねる。これが最後だとわかっているからこそ、力いっぱい最後の最後まで全員が死力を尽くしたような、そんな終わり方だった。(これはまさか絶アレキサンダー討滅戦……?)
ステージを後にしようとした祖堅氏は、最後に「今日のライブを楽しめた人は、14を真剣にやっていた人だ!」と叫んだ。それだけは間違いがない。思い出は、それを試から楽しんだ人に宿るものなのだから。そしてゲーム音楽とは、思い出を詰め込むものなのだから。
いざ退場という中で、客席にいた吉田氏が客席の全員に向かって何度も何度も頭を下げ、挨拶する姿もみられた。こんなにもたくさん集ってくれた光の戦士への感謝を感じる、吉田氏らしい一面だった。
この「THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow」は、チケットを購入すれば、6月12日23:59まで配信で楽しむことが出来る。チケットの種類と価格は以下の通り。
・料金:3,500円 (税込)
・販売期間:2022年5月23日(月)12:00~6月12日(日)23:59
・アーカイブ視聴可能期限:2022年6月5日(日)22:00~6月13日(月)23:59
となっているので、興味がある人はぜひ購入してほしい。
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