【特別企画】

Be My Honey鮮烈デビュー! 「THE PRIMALS Live in Japan - Darkest Before Dawn」レポート

吉田P「マイクくれよ!」に場内沸騰。進化し続けるライブに3万人超が熱狂

【THE PRIMALS Live in Japan - Darkest Before Dawn】

9月21日、22日開催

会場:横浜アリーナ

 「THE PRIMALS」のライブ、素晴らしかった。筆者もこれまで無数のゲームミュージックコンサートを鑑賞してきたが、ライブコンサートは、演者と観客の当意即妙の掛け合い、一発勝負の緊張感、その場に居合わせたものだけが感じられるグルーヴ感と、それ自体が素晴らしいものだが、祖堅氏率いる「THE PRIMALS」のライブは、それらを踏まえても“格が違う”と言わざるを得ない。

 現在進行形の作品「ファイナルファンタジーXIV」をテーマにしているだけあって毎回新曲が披露されるだけでなく、既存の人気曲の再演では演出が強化され、より満足度が高くなっている。お楽しみのゲストは、1月の東京ファンフェスでも出演した「FFXIV」界の2大ボーカルJason Charles Millerさんと、Amanda Achenさんに加えて、朱雀やクルルなど多彩なキャラクターの声を務める南條愛乃さんや、多くのバイオリンパートを担当してきた伊藤友馬さんらが次々に登場するなど、新規、ファン関係なく観客全員を満足させるか、言い換えればいかに観客の期待を上回るかについて、アイデアが練りに練られており、実に大満足のライブだった。

 本稿では、筆者が現地鑑賞してきた初日の模様をお伝えしたい。なお、ライブ写真は公演中撮影不可だったため、公式フォトをお楽しみ頂きたい。

【「THE PRIMALS Live in Japan - Darkest Before Dawn」セットリスト】
1. Open Sky - The Theme from Dawntrail
2. エスケープ 〜次元の狭間オメガ:アルファ編〜
3. 此処に獅子あり 〜万魔殿パンデモニウム:辺獄編〜
4. Scream 〜万魔殿パンデモニウム:煉獄編〜
5. Bee My Honey 〜至天の座アルカディア:ライトヘビー級〜
6. Give it All 〜至天の座アルカディア:ライトヘビー級〜
7. 月満ちる夜 〜喜びの神域 エウプロシュネ〜
8. 忘却の彼方 〜蛮神シヴァ討滅戦〜
9. 千年の暁 〜朱雀征魂戦〜
10. 月下彼岸花 〜蛮神ツクヨミ討滅戦〜
11. Shadowbringers
12. Close in the Distance
13. Flow Together
14. 混沌の渦動 〜蛮神リヴァイアサン討滅戦〜
15. 魔神 〜魔神セフィロト討滅戦〜
16. 過重圧殺! 〜蛮神タイタン討滅戦〜
17. ロングフォール 〜異界遺構 シルクス・ツイニング〜
18. Endwalker – Footfalls
- アンコール -
19. メタル:ブルートジャスティスモード
20. ライズ 〜機工城アレキサンダー:天動編〜
21. ローカス 〜機工城アレキサンダー:起動編〜

「黄金のレガシー」からは、オープニング、至天の座アルカディア:ライトヘビー級2層、4層が初お披露目

 やはりライブは良い。ライブまでの日数を指折り数える感覚も楽しいし、最寄りの駅から会場に向かう道すがら、同志達と共通の期待を胸に歩みを進める感じも良い。装いやバッグ、ペンライトなどの小物類も「FFXIV」仕様、「THE PRIMALS」仕様という来場者も多く、始まる前から熱気に満ちている。

 会場となった横浜アリーナ入り口付近は、入場を待つ来場者でごった返しており、来場者の絶対数では前回の東京ドームほどはないだろうが、コンサートの殿堂である横浜アリーナを軽く埋めてしまう規模。ゲームミュージックのコンサートが、すでにここまで来ていることに驚きを隠せない。

【横浜アリーナ】
入場者でごった返す入り口付近
入り口が遠い……
中では公式グッズも販売されていた
お花。GLAY TERUさんからも届いていた
開演直前の様子

 今回の「THE PRIMALS Live in Japan - Darkest Before Dawn」は、東京ファンフェスのコンサートから約8カ月ぶり、単独ライブ「THE PRIMALS Live in Japan - Beyond the Shadow」からは2年振りの開催となる。

 「黄金のレガシー」のリリース後、初のライブということで、同作から何が採用されるかが注目されたが、場内のナレーションを務めたのは、なんと「漆黒のヴィランズ」で活躍したアルバート(CV諏訪部順一)。「Beyond the Shadow」ではエメトセルクが務め、会場を沸かせたが、それと同じノリで、諏訪部さんがあくまでアルバートとして、横浜アリーナをやけに詳しく語り、来場者に対して来場のお礼と注意事項を述べ、来場者からは歓迎の大きな拍手が贈られた。その後も、「漆黒」での名台詞をところどころで挿入。この演出は定番ネタとして今後も続きそうで、将来的にはウクラマトら「黄金のレガシー」で活躍したキャラクターが登場することもあるのかもしれない。

 さて、ライブの開幕を飾ったのは、「黄金のレガシー」のオープニングテーマ「Dawntrail」。幕は開かず、幕をプロジェクター代わりに、「黄金のレガシー」オープニングシーンを流す演出。フルボーカル、ベース激しめのロックアレンジ。ヒカセンを迎えるにはうってつけの1曲だ。

  間髪入れずに、「THE PRIMALS」では定番となっている人気曲「エスケープ ~次元の狭間オメガ:アルファ編~」がはじまり、「エスケープ」のイントロが鳴った瞬間にスタンドはほぼ総立ち状態に。今宵のヒカセンは展開が早い。祖堅氏の短いウェルカムスピーチを挟んで、「ちょっと前のレイドの曲とかどう? 赤いサイリウム付けてるけど、その色にお応えして!」と「此処に獅子あり ~万魔殿パンデモニウム:辺獄編~」、「Scream ~万魔殿パンデモニウム:煉獄編~」を2曲続けて演奏。アレンジのききまくった定番曲で、ロックコンサートらしい幕開けとなった。

 2曲終えると祖堅氏はそそくさと舞台から消え、頭に「黄金のレガシー」のキーアイテム「レギュレーター」を付けて戻ってきた。祖堅氏は、「中国広州でファンフェスがあったんだけど、中国でまだ『Dawntrail』リリースされていないのにスフェーンがいて、そのスフェーンに貰ったの」と、ヒカセン向けのネタバレ上等のトークを展開。

 続けて「これのアレのレイドをやりたいんですけど、みんなの力を借りたい」と切り出し、タイミングを合わせて「オールライト!」と挿入するコール(コールアンドレスポンス)を要求した。果たしてその楽曲はというと、祖堅氏が「ちょっと黄色い系の……」と語り出しただけで悲鳴のような歓声が巻き起こった。今回のライブはタイミング的に、演者側も「黄金のレガシー」のネタバレにそれなりに配慮している雰囲気があったが、来場者側は「黄金のレガシー」はとっくにクリアして、最新レイド「至天の座アルカディア」に挑んでいる濃いヒカセンばかりであることがわかる。

 祖堅氏は「あの~~、たぶん~、みんな(2層のギミックに)イライラしながら(曲を)聞いてると思うんだけど……」となぜか申し訳なさそうに語ると大爆笑が巻き起こり、「そんなことないよー」とフォローするヒカセンも。このあたりのヒカセンの気持ちを代弁する絶妙なトークは、祖堅氏の真骨頂で、ゴリゴリのコアプレーヤーの吉田氏からはなかなか出てこない台詞だけに、その対比が笑いを呼び込む。そんなこんなで初お披露目されたロックアレンジバージョン「Bee My Honey ~至天の座アルカディア:ライトヘビー級2層~」は、サビ手前のツンツツン……(祖堅氏談)の合間に「オールライト!」を挟み込み、客席も一体となって大いに盛り上がった。

 演奏後、祖堅氏は、おっさんのロックバンドがハートマーク連発の映像を流したことをしきりに恐縮していたが、「かわいい!」の声多数に満足げ。祖堅氏によれば、実は当初「Bee My Honey」ではなく別の楽曲を演奏する予定だったという、ところが事前にエゴサしたところ「2層やるだろ」みたいになっていたので、慌てて準備したという嘘か本当かわからないエピソードも披露された。

  「黄金のレガシー」からはもう一曲「Give it All ~至天の座アルカディア:ライトヘビー級4層~」が演奏された。同曲は、ロックバンドとコラボした楽曲でトレーラーも公開されたためご存じの方も多いだろう。いかにもロックコンサート向きというより、最初から「THE PRIMALS」が制作に関わっており、ライブで演奏されることが確実視されていた楽曲だ。

【FINAL FANTASY XIV - The Arcadion "Give it All" (feat. Chrissy Costanza)】

 驚いたのは、ボーカルだ。オリジナル版を歌うロックバンド「Against The Current」のボーカリストChrissy Costanzaさんではなく、Amandaさんが務めた。しかも事前のアナウンスはなく完全サプライズだったため、ロックなAmandaさんに誰もが驚かされた。Amandaさんは、その後、再登場し、「Flow Together」、そして「Endwalker - Footfalls」を歌い上げた。スペシャルゲストでありながらピンポイントで投入する贅沢さが嬉しい。

豪華ゲストが続々登場。祖堅氏と吉田氏によるショートコント「マイクくれよ!」

 続くゲストパートでは、伊藤友馬さん、南條愛乃さん、Jasonさん、そしてAmandaさんらが次々に登場。それぞれの持ち歌(曲)を披露した。

 伊藤さんは「月満ちる夜」。「THE PRIMALS」による男性ボーカルで、印象的なバイオリンパートを伊藤さんが務めた。伊藤さんとのトークでは、ヒカセンの仲間入りを果たしたことが報告。レベル99まで到達し、メインジョブは竜騎士。また、「漆黒のヴィランズ」、「暁月のフィナーレ」のトレーラーのバイオリンパートが伊藤さんが担当していたことが明かされた。

 その後、祖堅氏がストリーマーイベント「FFXIV The k4sen」を見た影響で演りたくなったという「忘却の彼方~蛮神シヴァ討滅戦~」の久々の再演を果たすと、蛮神をテーマにしたトークに。蛮神は、ヒカセンにとって幾多の死闘を繰り広げてきた強敵で、「FFXIV」開発チームにとっては大事に育ててきた可愛い存在だが、自分自身にとっての蛮神は「吉田直樹」と告白。続けて「その辺にいるって聞いたんだよね」と、上手最上階を指し示すと、吉田氏ら「FFXIV」チームが陣取っているファミリー席にスポットライトが当てられ、場内は大歓声に。吉田氏も手を振ってこれに応じた。

 ざわつく会場を見回しながら祖堅氏が「何か言ってみます? たくさんヒカセンいるから、なんかキーワードでも何でも」と煽ると、たちまち場内からは怒号とも歓声とも付かない大声が飛び交った。そこで祖堅氏「1回静かにしてみようか」と呼びかけ、シーンと静まりかえった場内で吉田氏は腹から声を出すような大音声で「マイクくれよ!」。すかさず祖堅氏が「ありがとうございました~」と切り上げ、場内は大笑いと拍手に包まれた。

 吉田氏が来場者と配信者に向けてお礼を伝えたあとも、吉田氏がボーカルを務めた「天つ風 ~白虎征魂戦~」のイントロを流したり、「ああ見えて取締役だからね」などといじりは続いたが、このままだと本当に怒られると思ったのか、「うちの会社面白そうだなと思ったらぜひ応募してください」とリクルーティングの話題に切り替え、祖堅&吉田劇場は終幕となった。

【歓声に応える吉田氏】
公演終了後にスポットライトを当てられ歓声に応える吉田氏。遠くからでもそれとわかるビジュアル

 散々にゆるんだ場の雰囲気を一変させたのが、南條愛乃さん。「黄金のレガシー」ではクルル役で知られる南條さんだが、「紅蓮のリベレーター」では、朱雀役として登場し、そのバトル曲「千年の暁 ~朱雀征魂戦~」も歌っている。今回は朱雀を彷彿とさせる和服姿で登場し、「千年の暁 ~朱雀征魂戦~」と、「月下彼岸花 ~蛮神ツクヨミ討滅戦~」の2曲を歌った。

 トークパートでは、「これ全員ヒカセンなの? 全員テンゼンなの?」と朱雀っぽい台詞で場を盛り上げた。悪戯好きの祖堅氏は、「ときに『Dawntrail』ではまた違った感じで御出演されて、黄色い絵を描く方に……」と話を振ると、すかさず南條さんは「それっ!」と即興でかわいらしいピクトマンサーボイスを披露。仕上がりが気に入らなかったのか都合3回も披露するなど、サービス精神旺盛だった。

 ゲストパートのラストを飾ったのは、JasonさんとAmandaさんの2人。「FFXIV」のコンサートには欠かせない名曲「Shadowbringers」、「Close in The Distance」、「Flow Together」の3曲を、アルバートの泣かせる台詞と共に熱唱。2人のライブはこれまで何度か観覧する機会に恵まれてきたが、1月の東京ファンフェスでも感じたことだが、やはりライブが最高だ。美しい旋律と共に圧倒的な声量で放たれる波動のようなものを感じ続ける数分間はとても幸せな時間だ。

「THE PRIMALS」の真骨頂はここから! 怒濤の後半戦に突入

 オープニング、新曲披露、ゲストパートだけでもすでにお腹いっぱい、大満足といった印象だが、「THE PRIMALS」が凄いのはここからが彼らにとっての本番であるところだ。

 開幕からすでに1時間半以上が経過しているが、祖堅氏はここからが「後半戦」であることを告げ、改めてメンバー紹介を行なった。いよいよフィナーレに向かって、彼らロックバンドがロックバンドとして演りたいものを体力の続く限り演り続ける「THE PRIMALS」の時間となる。祖堅氏も容赦なく「いけんのかな?」と観客に向けてDPSチェックを繰り返し、ロックコンサートらしい雰囲気になってくる。観客も高いDPSを求められ、ライブもいよいよ正念場を迎える。

 今回チョイスされた楽曲は、いずれも激しいものばかり。「混沌の渦動 ~蛮神リヴァイアサン討滅戦~」と「過重圧殺! ~蛮神タイタン討滅戦~」は、「FFXIV」の新生を支えた初期の蛮神として、ファンフェスのフィナーレを飾るライブで必ずといっていい頻度で演奏されていた伝統の名曲達。拡張パッケージを経るごとに演奏機会が減ってしまっているが、懐かしく聞かせて貰った。とりわけ「タイタン!」のかけ声でお馴染みの「過重圧殺!」は会場が一体となって本日一番の盛り上がりを見せた。

  その盛り上がりをいきなり更新したのが「ロングフォール」。原曲のノリの良さも然る事ながら、後付けされたダンスでもお馴染みの1曲。これまでライブでは室内俊夫氏らスクウェア・エニックス社員が学芸会的ノリで頑張って踊ってきたが、今回はついにプロのダンサーが起用され、「さすがはプロ」と場内をどよめかせる凄まじいキレで観客を魅了。「ロングフォール」はダンスが注目されがちだが、曲自体も素晴らしく、プレリュードを含む「FF」シリーズの楽曲、「FFXIV」の楽曲も織り交ぜられており、1ダンジョンのみに使うにはもったいないほどの名曲だ。もはや「FFXIV」コンサートに欠かせない1曲といえる。

【FINAL FANTASY XIV DIGITAL FAN FESTIVAL 2021 - A Long Fall (THE PRIMALS)】

 フィナーレを飾ったのは「Endwalker」。奇しくも2年前のライブではオープニングに採用された曲だが、今回はJasonさんとAmandaさんの共演を加え、より豪華バージョンに。2人の歌を繰り返し聞けるだけで幸せな気持ちになる。その前座として導入されたアルバートの台詞も相まって感極まったヒカセンも少なくなかったはずだ。

 アンコールは奇しくも2年前と同じ、メタル:ブルーとジャスティスモード、ライズ、ローカスとアレキサンダー尽くしの3曲。アルバート大一番の名台詞「魂ごと持っていけ!」はアンコールの導入に使われ、ヒカセン達も待ってましたとばかりに拍手喝采。
メンバーはラフなTシャツに着替え、祖堅氏のトランペット、マイケル・コージ・フォックスの高速ラップ、それに続く時間停止ギミック、最後は「ロングフォール」に出演したダンサーも再登場し、豪華なフィナーレとなった。


 冒頭に触れたように、「Darkest Before Dawn」はゲームミュージックコンサートの中でも指折りの素晴らしいコンサートだった。楽曲演奏やゲストトークに頼り切らない、進化し続けるライブを通じて、改めてゲームミュージックが持つ力や、ゲームミュージックを触媒に蘇ってきたゲーム体験の想い出、そして収斂するところのゲーム自体の素晴らしさを強く実感することができた。ライブは10月7日までオンライン視聴が可能なので、うっかりしていたというヒカセンは遡り視聴を楽しんでもいいし、いずれ出るであろうライブBlu-rayを待ってもいいが、筆者としてはぜひライブに直接足を運んで貰いたいと思う。

 今後楽しみなのは、「黄金のレガシー」の楽曲が、まだほぼ手つかずで残っているところだ。同作は、トライヨラ(昼、夜)を筆頭に、バトルサウンドも名曲が多い。それは「THE PRIMALS」ではなく、オーケストラコンサートということになるのかもしれないが、いつどのような形でお披露目されるのか、ヒカセンの1人として楽しみにしている。祖堅さん、そして「THE PRIMALS」メンバーの皆さん、素晴らしいロックをありがとうございました。