【特別企画】
第4回全国高校eスポーツ選手権「LoL」部門、優勝を果たしたのはクラーク記念国際 Akihabara「Yuki飯食べ隊」
ライバルN高を倒して悲願の優勝
2021年12月27日 17:12
- 【全国高校eスポーツ選手権「LoL」部門】
- 12月26日 開催
一般社団法人 全国高等学校eスポーツ連盟(JHSEF)は12月26日、「第4回全国高校eスポーツ選手権」における「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」部門の決勝大会を開催し、クラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabara「Yuki飯食べ隊」(東京)が優勝した。
全国高校eスポーツ選手権は、「eスポーツを日本の文化」を合言葉に、高校生を対象にしたeスポーツ大会。2018年より開催されており、第4回大会となる今回は、「リーグ・オブ・レジェンド」、「ロケットリーグ」に加えて、新種目として「フォートナイト」が加わり、3種目で全国の高校生が覇を競う大会となっている。12月19日には「フォートナイト」、12月25日には「ロケットリーグ」の決勝大会がそれぞれ行なわれており、いずれも学生とは思えないハイレベルなプレイを見ることができた。
大会最終日、最後の種目となる「LoL」部門では、全国から113校、165チームが参加し、予選を勝ち上がってきた4チームが高校「LoL」の頂点を争った。決勝大会に進出したのはアートカレッジ神戸「ACK A」(兵庫)、ルネサンス大阪「ロイヤル決して諦めない」(大阪)、クラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabara「Yuki飯食べ隊」(東京)、N高「N1」(沖縄)の4チーム。前回・前々回の優勝校で、今回も優勝筆頭候補であるN高「N1」が3連覇を果たすのか、それとも打倒「N1」をライバル3チームのいずれかが果たすのかが注目された。
なお、試合の模様はTwitch、YouTube、Twitterの大会公式アカウントにて配信された。配信にはMCとしてeスポーツキャスターのOooDaさん、アナリストに元プロ選手のiSeNN(アイセン)さんが登壇。また、実況・解説はLJLでお馴染みのeyes(アイズ)さん、Revol(レボル)さんが担当した他、応援レポーターとして第2回・第3回大会の優勝メンバーであり、eスポーツ選手とモデルで活躍する大友美有さんも登壇した。
準決勝1試合目 バロン前での集団戦が勝負を分ける
準決勝第1試合目はアートカレッジ神戸「ACK A」(兵庫)とルネサンス大阪「ロイヤル決して諦めない」(大阪)の試合。準決勝のルールはBO1(一本先取)。一発勝負且つ、決勝大会初戦ということもあり、緊張に負けずいつも通りのプレイができるかも重要となる。
「ACK A」は前回大会準優勝のチームで、プロチーム「V3 Esports」から指導を受けている強豪チームだ。予選では相手の仕掛けに対するカウンターを見事に決め、勝利をものにしており、決勝大会でも集団戦での動きに期待がかかる。対する「ロイヤル決して諦めない」は、予選決勝で同じルネサンス大阪から出場しているチームを破り、ここまで勝ち上がってきたチーム。ミッドのkarehamodoki選手の個人技の高さは目を見張るものがあった。
試合は「ACK A」が序盤から要注意選手である「ロイヤル決して諦めない」のkarehamodoki選手にプレッシャーをかけ、リードを作らせないように立ち回る。しかし、序盤に弱い構成のためマップ全体では有利を作ることができず、序盤に分がある「ロイヤル決して諦めない」がドラゴンを3つ立て続けに獲得。さらにリフトヘラルドを用いて「ACK A」のタワーを破壊していく。
試合は22分。有利を築く「ロイヤル決して諦めない」は「バロン」に触り、「ACK A」にプレッシャーをかける。バロンを獲得するだけでなく、妨害しにきた「ACK A」を倒すことで大幅な有利を作りゲームを決めきる作戦だ。対する「ACK A」もここが勝負どころだと判断し、敵の誘いに乗って集団戦へ突入。この時点で獲得ゴールドで勝っていた「ロイヤル決して諦めない」が有利な集団戦と思いきや「ACK A」のミッド、Kensou選手が使う「ビクター」と、サポートikki1031選手の「アリスター」が味方を守りつつも敵に圧力をかけていく。この動きで「ACK A」が一方的にダメージを出すことに成功し、集団戦に勝利した。
その結果、「ACK A」はカウンターでバロンを獲得。得たゴールドで装備が整ったことで強い時間帯に突入した。こうなると「ACK A」のADCのkaeto選手が使う「ジンクス」が止まらず、また、他のメンバーも集団戦における自分の役割をしっかりとこなすことで集団戦で立て続けに勝利。不利を背負っていても諦めず、冷静かつ強気な判断と見事な集団戦でのプレイで逆転し「ACK A」が決勝へとコマをすすめた。
準決勝2試合目 序盤のドラゴンが試合を大きく左右する展開に
準決勝2試合目はライバル対決。前回、前々回の優勝チームで、今大会も優勝筆頭候補のN高「N1」(沖縄)と、過去何度も、N高のチームに敗れているクラーク記念国際 CLARK NEXT Akihabara「Yuki飯食べ隊」(東京)の試合だ。
「N1」は、チームメンバーの半数がプロのアカデミーに所属しており、個人技・連携共に学生離れしたプレイで予選を圧勝で勝ち上がってきたチーム。対する「Yuki飯食べ隊」は元プロ選手がコーチをしているというだけあって、予選でも高い個人技と連携を見せていたチームとなっている。予選を見る限り、この2校の戦いが事実上の決勝戦といってもいいほどハイレベルな戦いが期待された。
試合は「Yuki飯食べ隊」のGalaxy1619選手が、現状では珍しいチャンピオンであるサポート「ザイラ」をピック。序盤から強いADCの「ジン」と合わせて使用することで、レーン戦で有利を作る作戦にでた。一方の「N1」は敵の構成を見極め、集団戦を避け、サイドレーンから有利をつくる構成をとった。
試合は序盤から「Yuki飯食べ隊」が「ザイラ」を活かしボットレーンを押し込むことでプレッシャーを与え、有利を作っていく。構成的にボットで試合を作りたかったはずの「N1」に対して、自分たちのペースを押し付けるどころか、ザイラによるドラゴンスティールにも成功。その結果「Yuki飯食べ隊」がゲームの主導権をじわじわと握っていく。
試合は13分、ドラゴン前で突発的な戦闘が起き、「Yuki飯食べ隊」はトップのtoriyaki選手が使用する「セト」が見事なスキルコンボを行なない、それに続く形で味方がダメージをだして手段戦に勝利。序盤の有利を広げていく。
それでも王者「N1」はトップレーンでmomo tqt選手が大幅にリードしたことや、隙をついたような集団戦での勝利もあり、キルやオブジェクトで負けてはいたものの、チームゴールドではやや有利の状態を維持。集団戦の結果次第ではどちらが勝ってもおかしくない状態だった。
試合が大きく傾いたのはこの試合4体目のドラゴンのタイミング。「Yuki飯食べ隊」はブッシュで待ち伏せをし、ドラゴンを確認しに来た「N1」の選手をキル。確実な形で強力な「インファーナルソウル」を獲得し、大きな有利を手にすると立て続けにバロンを獲得。そのままバロンバフを持って敵陣に攻め込み勝負を決めに行く。「N1」も最後まで諦めず、戦闘を仕掛けようとするものの、ここまででついた差を覆すことはできずに自陣での集団戦で敗北。「Yuki飯食べ隊」が見事に勝利し、悲願の打倒「N1」を達成。決勝へと駒を進めた。
決勝戦 勢いに乗る「Yuki飯食べ隊」が圧倒的な強さで勝利!
決勝戦からはBO3(2本先取)となり、より戦略面や集中力などが問われることとなる。試合前、「ACK A」は「ここまで来たら優勝したい」と意気込みを語った。対する「Yuki飯食べ隊」は「絶対王者(N1)を倒した僕達に敵はいないと持っている」と強気の姿勢で決勝に挑む。
試合は最序盤、「ACK A」tatsu09選手の「シン・ジャオ」がボットへガンクするもののの、この動きを読んでいた「Yuki飯食べ隊」はテレポートを使用した見事なカウンタープレイで逆に2キルを獲得。ここでとった有利を活かし、キルを取り、視界を得ると、マップ全体をコントロールしていく。
途中、「ACK A」も食らいつこうと仕掛ける瞬間はあったものの、終盤に寄せた構成では火力が足りず、どの戦闘でも「Yuki飯食べ隊」が勝利。終始スキのない試合運びでほぼパーフェクトに近い形で「Yuki飯食べ隊」がネクサスを破壊し、優勝に王手をかけた。
決勝2試合目。このままの勢いで「Yuki飯食べ隊」が優勝するのか、それとも「ACK A」が一旦メンタルリセットし、立て直すことができるか。試合は「Yuki飯食べ隊」が「N1」を破った「ザイラ」+「ジン」を再びピックし、序盤の優位を取りに行く。対する「ACK A」は集団戦で強いチャンプをそろえ、勝負にでる。
試合は序盤こそお互いキルを取り合う展開になっていたものの、ドラゴン前の集団戦で「Yuki飯食べ隊」Nanabito選手の「ヴェックス」がアルティメットで敵陣に飛び込み、味方が合わせる形でダメージをだし、一方的に勝利。「Yuki飯食べ隊」はこれをきっかけにさらに勢いづき、集団戦で立て続けに勝利していく。
「ACK A」も集団戦に強い構成を活かし、不利ながらもトラップを仕掛けるなどして逆転を狙うが、「Yuki飯食べ隊」の個人技と連携によって跳ね返されてしまう。どんどん育っていく「Yuki飯食べ隊」の選手たちはもはや止まらず、僅か24分で33:7という大差をつけて、敵陣を飲み込み試合に勝利。悲願の優勝を果たした。
試合後、「Yuki飯食べ隊」の選手たちは「勝ててよかった。これからはN高じゃなくてクラークの時代だと改めて伝えておきたいです」、「(優勝したので約束の)Yukiコーチの得意料理を食べたい」などと語ってくれた。なお、本誌では本大会に出場したチーム・選手たちのインタビューを行なっているので、是非一読してほしい。
毎年、高校生とは思えない素晴らしいプレイを見せてくれる高校生「LoL」シーン。今回はこれまで圧倒的な強さを誇っていた「N高」が破れ、「クラーク記念国際」という新たな風が吹くこととなった。「N高一強」状態が崩れることによって、さらに競争が激しくなり、高校「LoL」シーン全体のレベルが上がっていくことを期待したい。