【特別企画】

イケアの新世代ゲーミングデスク「UPPSPEL/ウップスペル」購入レポート

組み立ては歯ごたえ十分も、使ってみて大満足の1台

【UPPSPEL/ウップスペル ゲーミングデスク】

10月発売

価格:79,990円より

 東京ゲームショウで出展されたイケアのゲーミング家具のラインである「UPPSPEL/ウップスペル」シリーズ。黒を基調にしたまさに「ゲーミー」なデザインをあしらわれた製品であり、非常にローコストながら電動昇降機能まで併せ持つという代物だ。イケアがゲーミング家具を出している、という噂は小耳に挟んでいたが、今回、TGSでの取材に合わせて公開されたレポート「4,999円チェアで業界を震撼させたイケアの最新ゲーミング家具がもの凄かった」で紹介された「UPPSPEL/ウップスペル」を見てひと目で気に入り、読んだ勢いのままポチってしまった筆者。その旨を業務上のやり取りの箸休めとして中村編集長に伝えたところ、「勢いがありすぎて面白いので、ぜひ組み立て体験を共有してほしい」と鶴の一声で決まったのが本企画となる。

 イケアを含めた大手家具メーカーの参入が相次ぐゲーミング家具。ゲーミングデスクを含めた、PC周りの環境を整えてくれるこれらの需要は、高まり続けるPC需要に比例してこれからも伸びていくものと考えていい。そうした背景からイケアの提案する大型、かつ電動昇降機能のついた「UPPSPEL/ウップスペル」を気になっている方も多いと思うが、今回、「UPPSPEL/ウップスペル」購入までの経緯、組み立て、そして使用した際の所感を含めたレビューをいちゲーマーとして速攻で人柱になってきたのでご紹介したい。ぜひ組み立ての苦労も含めて、今回の体験をまるっとお楽しみ頂ければ幸いだ。

【ビフォアアフター】
よくばり構成によってスペース不足に陥った筆者のゲーミング環境。デスクが狭すぎてマウスとキーボードの配置を最適化できず、いびつな姿勢でゲームを楽しむ他ない状態に。これも記事を読んで勢いで買ってしまったエンボディーゲーミングチェアも泣いている
ウップスペル ゲーミングデスク導入後のデスク回りの状態。モニター2台、ゲーミングキーボード2台、さらにデスクトップPCを置いてもまだ余裕がある。買って大満足だった

購入の経緯「最高のゲーミング環境を求めて」

 レビューの大前提として、まずは購入に至った経緯を説明しよう。筆者は当初、コクヨ製の「LEAN/リーン」という、幅140cm、奥行き70cmの比較的大きなオフィスデスクを1年ほど使用していた。オフィスデスクということで使用感について文句は殆どない優秀なデスクなのだが、ミドルタワーPC、そして24インチ台のディスプレイを2台ほど乗せると一気に窮屈になってしまうという、140㎝幅のデスクの宿命からはどうしても逃げきれなかった。そこに更に追い打ちをかけたのが、仕事用、そしてゲーム用にとキーボードを2台使い分けるというゲーマーならではの習性。「LEAN/リーン」は“スペース不足”という物理的な限界に行き当たってしまったのだ。

 ゲームを、そしてプレイすることで味わえる没入感を楽しむためには多少の出資は厭わないのがゲーマーであり、その例に漏れない筆者はこれまた中村編集長のレポートを読んで衝動買いしたエンボディゲーミングチェアを愛用している。

 エンボディゲーミングチェアは、ゲーマーとして過去最高の買い物だったと声高に宣言できるほどの優れたチェアだが、「LEAN/リーン」の物理的な限界に伴ってマウスとキーボードを思うように配置出来なくなったため、メインディプレイを正面に捉えた時、使用中のキーボードがどうしてもやや左よりにズレてしまうという状態に悩まされることに徐々にストレスを抱えるようになった。これはWASDキーでの操作がメインのゲームを遊ぶ時には気にならない配置ではあるのだが、お仕事モードへと切り替えると右腕をやや伸ばさなければタイピング出来なくなるのが非常にネックだった。

【導入前の状況】
デスクの上にものを増やしすぎた結果、手狭になってしまった我がゲーミング環境

 こうした経緯から、幅140cm、奥行き70cmのデスクでは快適な生活に必要な環境を満たせないと判断した折に東京ゲームショウの展示会で紹介されていたのが幅180cm、奥行き80cmという大型ゲーミングデスクである「UPPSPEL/ウップスペル」だった。中村編集長によるこの製品の紹介記事を読んで衝動買いしたわけだが、当初は天板のみを購入し、脚の部分はDIYしようと検討していたところ、電動昇降機能という、これまで利用したことのなかったライフスタイルを強烈に変革しうる要素に目を奪われ、買うならばパッケージ化された製品を買ったほうが良いのではとセット購入を決断した。

 「UPPSPEL/ウップスペル」の購入時のお値段は84,990円。天板のみだと14,990円であることを考慮すると、電動昇降機能のついたテーブルの脚部を含めた骨組みに7万円をかけることになる。この金額、決して高いと思うことなかれ。補足するとすれば、この価格設定は並みいる大手の競合他社の提案している電動昇降デスクと比べても明らかに低く、イケアだからこそ実現できた非常に挑戦的なものだ。実際、筆者の購入した電動昇降機能付きのデスクを軽く各イーコマースサイトで探してみても、同様の価格帯の製品はおろか、似たようなスペックを実現しているデスクすら見当たらなかった。ただ、見落としがちだが、本製品、すべて自分で組み立てなければならない。承知の上で購入した筆者。到着した部材の多さに驚くことになる。

【どんと届いた大荷物】
届いた状態の「UPPSPEL/ウップスペル」。左から順に「天板」、「脚部パーツと骨組み」、「電動昇降機構と骨組み」

 「UPPSPEL/ウップスペル」は3つの箱に梱包されて到着した。いずれの箱も重量がある割には取っ手など指を引っかける場所も用意されておらず、中々に持ちにくい構造をしているため、滑り止めのついている手袋を着用のうえで持ち運びするのが望ましい。また、最初の失敗として記憶に残っているのが、全ての箱を開封しなければ部品や工具類が揃わなかったという点だろう。

 初めて購入したイケア製品がこの「UPPSPEL/ウップスペル」だったこともあり、「これがイケアの洗礼だ」と言われればそれまでだが、今後大型のイケア製品を購入する場合は箱ごとに入っている部品を開封して整理しながら、組み立てられる環境を整えていく必要性を実感した。特に注意を要したのが天板の梱包されている箱の開封で、天板の小さな隙間に六角レンチに力を加えるために必要なパーツが入っていた。イケアの製品は最終的な段階まで出す必要のないパーツの箱だったとしても、まずはすべて開封してから作業を開始したほうがいいだろう。

【天板の箱】
天板の箱に入っている六角レンチを見逃したまま組み立て作業を始めると筆者のように数日間指を痛める結果に繋がるため、必ず回収しておくこと

 今回「UPPSPEL/ウップスペル」組み立て時にはゲーマー特有のぼっち属性の影響で頼れる人がいなかったため、「二人で組み立てるように」と指示しているイケアの取り扱い説明書を無視して一人での組み立てを敢行した。

 これを可能としたのが筆者の日々のジム通いで培われた筋力と体力で、日頃からあまりトレーニングや運動をしていない方だとあまりの重量に腰や腕を痛めてしまうかもしれないと感じた。できればイケアのアドバイスに従って、組み立て時は友人や家族を誘う方が良いだろう。

 最も重量のある天板は寝かせている状態から持ち上げる時にフォームを見誤るとほぼ確実に腰を痛めるだろうと思える重量だし、これを骨組みの上に乗せる時の姿勢も身体への負荷のかけ方が分からなければ間違いなく腰に来る。骨組みや脚部の多くが重量のある棒状の金属パーツなため、こちらも持ち運ぶ時や組み立て時には重心やしっかりとつかめる場所を持って慎重に作業を進める。

 イケアの取り扱い説明書には「UPPSPEL/ウップスペル」はフローリングなどの固い床面の上では組み立てず、カーペットなどの比較的柔らかな素材の上での組み立てをおすすめしている。そのため、今回は設置予定の場所での作業は最低限に抑え、小さなパーツの組み合わせは基本的に筆者の住居の中でも広くスペースが取れ、柔らかい素材でもあるベッドの上で行った。

【組み立ての流れ】
脚部と天板を支える板
マニュアルに従って組み立てていく
組み立てた部材を組み合わせていく
ケーブルを通し、本体である天板を載せれば完成まであともう少し
天板裏の自動昇降機構

 「UPPSPEL/ウップスペル」の組み立て自体は説明書を読めば問題なく行えたが、非常に苦労したのが電動昇降機構の骨組みとのネジ留めだ。片脚に4つずつ、合計8つものネジを締めなければならないのだが、いずれの穴も用意された六角レンチでは絶対に骨組みと接触し、思うように締めることが出来ない場所にある。ストレスレスな組み立てを目指すのであれば、これらのネジ穴のためだけに工具店で長めの六角レンチを購入した方がよかったと感じたほど、このネジ締めには苦戦を強いられた。

 構造上、どうしても奇妙な角度でのネジ締めを行わないと仕方のないパーツであることは理解できるのだが、この一点だけが「UPPSPEL/ウップスペル」の組み立てを面倒なものとして印象付けさせてしまっている。

【問題のネジ穴】
問題のネジ穴がある箇所。構造上仕方のないことかもしれないが、中が空洞になっているため、ネジを落とすと重量のある骨組みを回転させながらネジを回収しなければならない罰ゲームが発生する

 それからもう1点、「UPPSPEL/ウップスペル」が近づくにつれて気づいたのが脚部パーツの床面への配慮の無さで、これほどの重量物がフローリングにそのまま乗った場合の想定が全くなされていなかったように思えるし、筆者のフローリングは無垢材を使用していることもあり、対処せずに使用するリスクがあまりに高すぎた。そこで急遽ではあるが脚部に貼り付けられるフローリング保護用のフェルトパッドをそれぞれのパーツに張り付けることで対応した。見た目でいうと少し不細工だが、擦れることで傷つくであろうフローリングの事を思えば安い犠牲に違いない。

 脚部パーツについている4つのカップのようなものは、そのままフローリングに設置させては絶対にいけないだろうなあという雰囲気を醸し出している。よほど固い床面でない限りは使用する前に何かしらの保護パッドの貼り付けを行ったほうがいいだろう

【脚部には保護シートを】
脚部パーツは、金属土台に非金属のカップが付けられており、微妙な高さの調整が可能となっているが、家庭のフローリングに直置きする設計にはなっておらず、使用中にテーブルを動かすとキズが付いてしまう恐れがある
筆者はフェルト製の保護マットを購入し、カップの下に貼り付けることで対応した

完成した「UPPSPEL/ウップスペル」にほっと一息、そしてその使用感とは

 約90分ほどで組みあがった「UPPSPEL/ウップスペル」を使ってみて感じたことを一言で表すなら、「報われた」に尽きると思う。

 なにせ、このデスクは72cmから120cmまでの電動昇降機能を使うことで座ったままの作業に飽きたらボタン一つで立ち仕事に移行でき、よくばりにもミドルタワーPC、そして24インチ台のディスプレイを2台、さらにはキーボードを2台乗せてもまだまだ天板上のスペースに余裕を残しているモンスター級のゲーミングデスクだからだ。

 こうした特徴や機能については購入した時点で理解していたにも関わらず、完成した「UPPSPEL/ウップスペル」を初めて使用した時にはデスクを前にして感動している筆者がいた。これが幅180cmのゲーミングデスクの破壊力なのか、という思いが芽生えるとともに、前述した組み立て時の不満も、「UPPSPEL/ウップスペル」の使用を続けるごとに段々と薄れ、次第に無くなっていったのを記憶している。

【完成したデスクにアイテムを配置していく】
完成した「UPPSPEL/ウップスペル」にPCを少しずつ乗せていく。デスクの初期配置を考えるときほど楽しいことはないだろう

 より細かいところを見ていくと、「UPPSPEL/ウップスペル」の天板の質感は直接マウスを乗せて使用できるものとは言えない。天板の表面には極小の凹凸があり、置いたものを強くグリップしてくれる半面、マウスの滑らかな動きを阻害する部分があると感じた。

 PCゲーマーなら、まずマウスパッドを使っているだろうから問題はないが、これまでデスクに直置きしていたというユーザーは注意した方が良いかもしれない。たっぷりと余裕を持たせた天板を活かし、大型の布マウスパッドなどを敷き、その上にキーボードとマウスを乗せて使うのが一般的な使い方になるだろう。

【マウスパッドを敷こう】
新調した大型のマウスパッド。「UPPSPEL/ウップスペル」なら楽々敷ける

 また、電動昇降機能付きのデスクにありがちなグラつきだが、こちらは高さが72cmの状態だと余程揺らさない限り感じ取れるほどの揺れはなかった。力には自信がある筆者が力を込めて押さなければ揺れなかった、という点には是非注目していただきたい。

 なお、天板を120cmまで上げるとどうしてもグラつきは発生したが、これも普段使いしている時に不満を感じるほどの揺れではなかった。さらに言えば今回は20kg近いデスクトップPCを上に乗せた状態での検証であったため、筆者のよくばりなレイアウトでなければ、PCを天板からどけるだけでグラつきを大きく改善することも可能だと感じた。

【電動昇降機能をチェック】
組み立て時にはステップの一つとして電動昇降機能の動作を確認する。さほど気にならない音量で昇降する「UPPSPEL/ウップスペル」に感動。(精度は気持ち程度ではあるだろうが)小数点第一位まで高さ調節が可能だ

総括「大満足の1台です」

 「UPPSPEL/ウップスペル」はゲーミング家具に参入してからまだ日も浅いイケアが提案するひとつのゲーミングデスクの形だ。全体を見れば組み立て式家具ならではの問題点も見受けられたが、最終的に完成して使用してみると、スペック通り非常に優秀なゲーミングデスクであることが再確認できた。

 今回の体験をワンフレーズでまとめるとするならば、「UPPSPEL/ウップスペル」には組み立て式ゲーミングデスクとして世に送り出したからこそ実現できた優れた価格による確固とした優位性があり、設置のスペースさえ確保できれば、その高いポテンシャルから多くのゲーマーのPC環境を支える力強い礎となってくれるだろう。

 つい衝動買いで購入した本製品だが、人柱として爆死することなく、大満足の1台だった。この満足度は、「UPPSPEL/ウップスペル」は使えば使うほど向上していく。それは組み立ての苦労に十二分に見合うリターンであり、これからデスクを更新する予定であったり、電動昇降機能や余裕のある天板サイズなどを求めているゲーマーは、ぜひ選択肢に入れて欲しいゲーミングデスクだ。

【現在の様子】
完成した「UPPSPEL/ウップスペル」環境で、ゲームをプレイすると購入を決断して大正解だったことをしみじみと実感した。お次はゲーミングPCを新調しなければ!