【特別企画】
「VALORANT」高校生王者はどのチームに? 第2回横須賀eスポーツカップレポート
スカジャンスタイルの大和周平氏と岸大河氏の姿も
2021年11月4日 10:42
- 【横須賀eスポーツカップ】
- 11月3日オンライン開催
「横須賀eスポーツカップ」は横須賀市が主催する全国の高校生を対象としたeスポーツ大会だ。今年3月に「ロケットリーグ」を採用した第1回大会が開催され、そして今回は新たに「VALORANT」を採用して第2回大会が開催された。
横須賀市はeスポーツ文化の振興に非常に意欲的であり、市内の高校のeスポーツ部設立を支援するプログラムを行っている市でもある。本大会もそういったeスポーツ振興活動の一環であり、横須賀市に限らず全国各地から38チームもの高校生が出場した。
本大会のルールはシングルエリミネーションのBO1、マップはBAN/PICK方式で、短期決戦型の形式となっている。また実況解説は「VALORANT」プロシーンのキャスターも多く務める大和周平氏と岸大河氏が務め、大会の配信はプロ大会顔負けの豪華さとなった。出場する高校生たちにとっても、これだけの舞台で戦えるというのはいい経験になるだろう。
出場チームは4ブロックに分かれて予選を戦い、それぞれのブロックを勝ち抜いた、どさんこファイト、一歩入魂帰宅部万歳、鳳雛、わからせ隊の4チームが11月3日の決勝大会へ駒を進めた。TOP4進出チームにはそれぞれ横須賀市が制作したオリジナルロゴが進呈されており、チーム名がうまく反映されたデザインにも要注目だ。高校生といえどもTOP4の選手陣は強者揃いで、中にはプロチームでのプレイ経験がある選手の姿も。ハイレベルな戦いになることは必至だが、果たして優勝はどのチームになるのか。
第1試合、道産子VS帰宅部!
準決勝第1試合はどさんこファイトVS一歩入魂帰宅部万歳のカードとなった。どさんこファイトは札幌の高校生が集まって結成されたチームで、そのロゴには北海道の地形があしらわれている。対するは家のマークが四つ合わさったロゴの一歩入魂帰宅部万歳、「神のお告げでVALORANTを始めた」と語るTAKURO選手が率いるチームだ。マップは一歩入魂帰宅部万歳のがアセントを選択し、どさんこファイトがアタッカー側スタートを選択した。
両チームのエージェント構成は、どちらもメタを意識した構成になっており、ジェット、ソーヴァ、キルジョイは共通していた。注目なのはコントローラーの違いで、どさんこファイトが強力なスモークキャラのアストラを採用しているのに対し、一歩入魂はより万能な動きのできるオーメンを採用している点だろう。アストラはプロシーンなどでは多く採用されるキャラクターである傍ら、チーム内の連携が取れてこそ力を発揮するエージェントといえる。対するオーメンは単独でも動きやすいエージェントなので、この違いがどう出るか。
試合が始まると序盤は拮抗した展開が続くが、2-2の状況で迎えた第5、第6ラウンドで試合は大きく動く。第5ラウンド、直前2ラウンドを勝利していた防衛側の一歩入魂はクレジットを消費してジェットがオペレーターを購入し、ミッドの防衛に臨む。対するどさんこファイトはエコでこのラウンドを迎えるが、ここでどさんこファイトがミッドの打ち合いでオペレーターにシェリフで勝ち、見事オペレーターの鹵獲に成功、そして勢いのままにラウンドも勝利する。
THRIFTYを決めたことで試合はどさんこファイト有利の展開になるかと思いきや、続く第6ラウンド、Bサイトに攻め込むどさんこファイトを一歩入魂が挟み込むかたちで迎え撃ち、またXdll選手が終盤でハンターズフューリーを上手く起動することで、一歩入魂がTHRIFTYを返すかたちとなった。この時点でラウンドは3-3だが、クレジット差は大きく一歩入魂に有利になっており、ここから一歩入魂がどんどんとラウンド数でも差をつけていった。
一歩入魂のジェット使い、踊るあほいに見るあほい選手は、ひとたびオペレーターを手にすると卓越したエイム力で凄まじい脅威となり、攻撃側のどさんこファイトに大きなプレッシャーを与えていた。序盤で必ずと言って良いほどワンピックを決め、人数有利の展開から相手の決死のエントリーも一丸となって防いでおり、これが壁となってどさんこファイトは思うように攻めの糸口を見つけられない。ひとたび整ってしまった一歩入魂の盤石な防御は簡単には崩されることなく、攻守交替の時点ではスコア差は8-4となっていた。
この試合では両チームとも質の高いプレイングを見せていたが、個人技しかり連携しかり、一歩入魂が少しだけ上回っていたという印象だ。攻撃側にまわった後も一歩入魂は華麗な立ち回りを見せ、うまく勢力を分散させながら相手の出方を伺い、体力を消耗しないうちに再合流して攻撃を決めることでどさんこファイトの防衛陣を翻弄していたという印象がある。どさんこファイトも一時10-4まで開いた差を懸命に縮め、最後まで健闘したものの、準決勝第1試合は13-8のスコアで一歩入魂帰宅部万歳の勝利となる。
第2ゲーム、元プロ選手を有するわからせ隊が実力を見せる!
準決勝第2試合は鳳雛VSわからせ隊のカードとなった。鳳雛は予選では「予選突破ができなかったら全員坊主という約束で練習してきた」と語るほどの硬派な集団で、この大会に懸ける想いは人一倍高いチームだ。対するわからせ隊は今大会の優勝候補筆頭であり、かつてプロチーム「GTS」で活動していたAngelicc選手、RIA選手が主となって結成されたチームだ。マップはヘイブンで、鳳雛アタックでのスタートとなる。
わからせ隊のエージェント構成は、ジェット、レイナ、ソーヴァ、サイファー、アストラとなっており、Angelicc選手がレイナ、RIA選手がジェットとそれぞれデュエリストを担当することで前線の圧力が非常に高く、またサポート陣も非常に厚い構成といえる。対する鳳雛は、レイナ、ジェット、アストラまでは同じで、さらにキルジョイとスカイを採用しており、わからせ隊よりも前のめりな構成になっているといえるだろう。
試合が始まると、わからせ隊のプロ顔負けの個人技が鳳雛を圧倒する。ファーストラウンドからAngelicc選手、RIA選手は卓越したマップ把握能力とエイム力で前線に繰り出し、攻めの機会を伺う鳳雛陣営を崩していく。この両名が撃ち合いに負けるようなシーンはほとんど見られず、練習量と大会での経験値が支える圧倒的な実力で相手を翻弄していく様は圧巻だった。
また鳳雛がUltなどを上手く使ってRIA選手らを倒す展開も見られたが、その場合には防衛側深くに構えるサイファーのUdon選手がそれをカバーし、決して思うようには攻めさせない。鳳雛も必死に食らいつこうとするのだが、個人技の差に動揺してしまっている部分もあるのか、ラウンドを追うごとに攻めが単調になっているところもあり、結果として負けを重ねてしまい、スコア差は一時11-0まで開く。
しかし交代前最終ラウンド、鳳雛が意地を見せてラウンドを取り返す。ジェットを操作するEma選手がブレイドストームを起動し、Angelicc選手、Udon選手、RIA選手を立て続けにキル。これで生まれた人数差をしっかりと活かし、Cサイトへのプラントを決めた。
鳳雛はここから勢いをつけて巻き返したいところだったが、わからせ隊は簡単な相手ではない。攻撃側に周っても巧みなプレイを見せ、一切の隙を見せないまま13-1でわからせ隊が勝利した。試合後のインタビューで鳳雛のリーダーYG選手は「準備してきたことが全く発揮されなかった。強かった」とその悔しさを語った。
決勝戦、帰宅部はわからせ隊を止められるのか!?
準決勝が終わり、グランドファイナルのカードは一歩入魂帰宅部万歳VSわからせ隊となった。準決勝で圧倒的な実力を見せつけたわからせ隊だが、一歩入魂は果たしてどこまで食らいつけるのか。マップはアセントで一歩入魂のアタッカースタート、エージェント構成は双方変わりなしとなった。
まず鍵となったのは、序盤の第4、第5ラウンドだろう。第4ラウンドでは、Udon選手のサイファーとGeji選手のアストラが堅く守るBサイトに一歩入魂が突撃し、相手の視界を上手く遮りながら、Takuro選手のスカイがプラントを強行して人数不利を負いながらもこれを成功させる。わからせ隊は落ち着いて解除に向かうも、ここでTakuro選手が見事なダブルキルを決めて相手の陣営を崩し、見事ラウンドを勝利した。
続く第5ラウンドでは、序盤にあほい選手がRIA選手に対してジェット同士の撃ち合いを制しワンピックを決め、人数有利の状況からキャットウォークとメインからAサイトを挟み撃ちにエントリーを決める。そしてリテイクを狙うわからせ隊に対しても、行き届いた守備でこれを封じ込める。一歩入魂は4人生存でこのラウンドを勝利し、スコアは3-2でリード、またクレジットの面でも大幅有利の展開を迎えた。
ここまで一歩入魂が有利で進んでいるように思えたが、続く第6ラウンド、オペレーターを購入したあほい選手が無念にもキルされ、オペレーターがRIA選手に渡ってしまったことで流れが大きく変わる。防衛側のRIA選手のオペレーターの威力はやはり凄まじく、約束されているかのように序盤にワンピックを決めて人数有利の状況を作る。一歩入魂は思うように攻めを通せなくなり、どんどん負けを重ねるようになってしまう。
一歩入魂も何とかエコラウンドで凌ぎ、スコア5-3の時点でキルジョイ、スカイ、ソーヴァのUltを貯める。どこかでこれらのUltを吐いてラウンドを取り返したいところだったが、わからせ隊はそんな一歩入魂の動きも読んでおり全く隙を見せない。特に印象的だったのは第10ラウンド、一歩入魂が5人そろってBメインにプッシュを決めようとしたところ、わからせ隊は完全にこれを読んでおり、オーディンの壁抜きでこれを制圧していた。これも大会経験の多さからくる読みの鋭さなのだろうか。
8-4で攻守交替を迎えると、今度はわからせ隊の怒涛の攻撃が一歩入魂を襲う。わからせ隊の攻めはまずAngelicc選手が相手陣をかく乱するような形で突入し、崩れた防御の隙を突くようになだれ込むのが特徴だ。しかしAngelicc選手だけに気を取られていると、キャリアーに全くの逆方面からのエントリーを許すこととなり、マップ全体から気が抜けない。あほい選手などは果敢に裏取りを狙うこともあったが、これに対してもきちんとカバーが行き届いており、一歩入魂はわからせ隊の攻めを防げないでいた。
そのまま点差は開いていき、わからせ隊は12-6のダブルスコアでマッチポイントを迎える。第19ラウンド、わからせ隊はAngelicc選手を先頭に中央からBサイトに圧力をかけ、またAサイトから駆け付けた増援に対してもしっかりと対応して人数有利を取る。しかし人数有利を取った後も設置を強行することはなく、相手の守備を誘きだすような立ち回りを見せ、最後には持ち前の個人技で一歩入魂を圧倒した。決勝戦は13-6のスコアでわからせ隊が勝利し、第2回横須賀eスポーツカップの王者となった。
試合後のインタビューに対してRIA選手は「他のチームが沢山練習してきているのを知っていたので、勝てて嬉しい。今後はVALORANTの競技シーンで活躍できるような選手になるために活動していきたい」と今後の抱負を語った。優勝したわからせ隊にはゲーミングチェアをはじめ、多数の商品とトロフィーが贈呈された。
世界中で活発な競技シーンを持つ「VALORANT」だが、トップ選手の中には10代の選手も数多く存在している。今回「横須賀eスポーツカップ」を観戦して、このような高校生大会はeスポーツの振興となるだけではなく、プロシーンで活躍できるような逸材を若いうちに発掘するための場としても非常に意義深いと感じた。RIA選手やAngelicc選手はじめ、今大会に出場した選手の中には今後第一戦で活躍してもおかしくないような実力者が多数いた。このような大会で実績を積んでいけば、彼らの才能が花開く日も遠くはないだろう。