【特別企画】
30年以上の歴史を持つ「イース」。旧作の再展開もアツい今、その魅力と歴史を振り返る
2021年1月29日 12:00
34年の歩みから転換点をピンポイントにピックアップ!イース概要史
それではここからは、1987年の第1作発売から現在まで、「イース」シリーズが辿った34年の歴史を振り返ってみよう。なお今回は筆者が転換点と位置付ける作品をベースにピンポイントに語らせていただく。「この作品に触れないなんて!」という異論が出るであろうことは重々承知しているが、紙幅などの都合上ご容赦いただきたい。よければぜひ、読者の皆さんの考えるイース史を語っていただければ幸いだ。
すべてはここから始まった。「イース」・「イースII」
1987年にシリーズ第1作「イース」がパソコン向けに発売、翌1988年には前後編の後編にあたる「イースII」が発売された。失われた古代王国「イース」をめぐるアドル・クリスティン最初の冒険を描く。
発売当時はパソコンがホビー用途でも盛り上がりを見せていた頃。筆者も電器屋の店頭で流されていた「イースII」のOPデモに魅せられたのを覚えている。古代祐三氏によるシリーズを代表する名曲のひとつ「TO MAKE THE END OF BATTLE」と、ヒロインのリリアが何かに気付いたかのようにはっと振り返るアニメーション、いわゆる「振り向きリリア」は当時のパソコンゲーマーに強い印象を残したのである。
初作品にして代表作のひとつということで、移植・リメイクが盛んに行われているのも特徴。最近では原作発売当時に一世を風靡していたパソコンであるX68000の実機向けという“異色の移植”が発表されたことでも話題になった。またWindows向け移植版である「イースエターナル」「イースIIエターナル」は、かの新海誠監督がファルコム在籍時代にOPムービーを手がけたことでも知られる。
久々の完全新作にして、シリーズをリブートさせた「イースVI ~ナピシュテムの匣~」
その後、パソコン向けに「イースIII」が、PCエンジンやスーパーファミコン向けに「イースIV」「イースV」が発売されたが、「イースV」が発売された1995年から先、長らく完全新作は途絶えていた。その上で初期2作品のWindows向けリメイクが「エターナル」・「完全版」と重なったことから、もはやリメイクばかりで完全新作は望めないのか……というムードがファンの間でも一部存在したことは否めない。
そんな中、Windows向けの完全新作として2003年に満を持して登場したのが「イースVI ~ナピシュテムの匣~」だ。伝説の「有翼人」が残した遺産をめぐる謎と陰謀にアドルが挑んでいくという内容で、グラフィックの3D化によりフィールドは立体感を増し、アクションの幅も大きく広がった。世界観の設定面でもこれまでの作品を再解釈しつつ総括しており、あらゆる面でシリーズをリブートさせたと言える作品だ。
コンシューマへの移行を決定付けた「Ys SEVEN」
その後、「イースIII」を「イースVI」のシステムをベースにリメイクした「イース −フェルガナの誓い−」、数百年前という過去の時代を描いた外伝「イース・オリジン」をWindows向けに発売したのち、2009年にナンバリング新作「Ys SEVEN」がPSP向けに発売。基本的に“パソコンゲームメーカー”だったファルコムが本格的にコンシューマへと移行する流れを決定付けた。
「Ys SEVEN」では、巨獣が闊歩し“五大竜”の伝承が眠る地を舞台に、消えた古代民族の謎も絡み合って物語が展開する。システム的には操作キャラクターを切り替えながら戦う3人パーティ制、同時に4つまでセットして使い分けられる多種多様なスキル、ガードと回避など、最新作まで続くシステムの基本がここで構築されている。
従来のファルコムファンを越えてプレーヤー層を一気に広げた「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」
その後、PS Vitaでの「イースIV」リメイク作品「イース セルセタの樹海」発売を経て、2016年にPS Vitaで、2017年にPS4で発売されたナンバリング新作が「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」。漂着した無人島からの脱出を模索しながら島の謎に迫っていくという作品だ。「セルセタの樹海」で導入された「フィールドを踏破しオートマッピングで地図を完成させていく」という要素がより洗練され、無人島という舞台も合わさって探索の楽しさが際立つ内容となっている。
ビジュアル面も大幅に強化されたほか、ヒロインを「もう一人の主人公」としても描くという新たな試みも行われ、シナリオのスケールも過去最大級となった。難易度を緩和させる要素の幅も広く、これまでイースを知らなかった層も含め幅広いプレーヤーに受け入れられた出世作と言えるだろう。
30年以上を経てなお続く“革新”の象徴「イースIX -Monstrum NOX-」
「イースVIII」が評価を得たあと、次の一手はどうなるか……そう待ち構えていたファンを唸らせたのが続く「イースIX」だ。冒険好きのお人好しというイメージの主人公アドルがなんと「怪人」になり、そして野外や遺跡ではなく1つの都市が主な舞台になるというイース的にはなかなか異色の内容が告知され、「攻めてきたな!」と感じたものだ。
とはいえ蓋を開けてみれば、怪人になってもアドルらしいお人好しぶりは健在だし、中盤以降は野外フィールドも開放。一方でセミ・オープンワールド的に構築された都市丸ごと一つを、壁登りや滑空といった多彩な異能アクションを駆使して隅々まで探索するという新基軸の遊び応えも感じられた。ストーリーの描き方にもこれまでにないような大仕掛けが施されており、「イースらしさ」を保ちつつも「変革」を恐れない、シリーズの今後にも期待を持てるような傑作となっている。
今からシリーズ作品に触れるなら?
ここまで「イース」の魅力と歴史を語ってきたが、いかがだったろうか。もしシリーズ未プレイの方がこれを機に触れてみようと思っていただけたなら、前述の通り各作品は基本的に1作完結なので、どの作品からプレイしても問題ない。とはいえ長い歴史の中で、今からプレイするのは難しい作品もあるのが実情だ。そこで最後に、“手の出しやすさ”も加味したお勧めを紹介して本稿の締めとしたい。
とにかく1本、ということであれば、やはり一番は「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」だ。バトル、探索、ストーリーと「イースらしさ」が存分に詰まった上で今時の家庭用ゲームなりの遊びやすさにも配慮されており、ボリュームもたっぷりで誰にでもお勧めできる。PS4では廉価版にあたるスーパープライス版が出ているほか、Nintendo Switch版とPC(Steam)版もリリースされており、プラットフォームの面でも手を出しやすい。拙作の紹介記事も参考になれば幸いだ。
「短めの作品から入りたい」、「やはり原点に触れたい」ということであれば、初期2作品のリメイクをセットにした「イースI&II クロニクルズ」のWindows版がお勧めだ。PSPでリリースされた作品の移植のためやや解像度が低めな点だけはネックだが、ゲーム内容自体は幾度のリメイクを経た「決定版」と言えるものとなっている。公式の対応OSはWindows 8までだが、筆者の環境にてWindows 10で動作することを確認している(あくまで非公式の確認であることはご留意いただきたい)。ダウンロード版をDLsite等の販売サイトで購入可能だ。
そのほか、こちらは個人的な思い入れも入ってしまい恐縮だが「Ys SEVEN」もイチオシ。回復アイテムの所持数制限が緩くなる前の最後の作品であり、パソコンゲーム譲りの一部容赦ないバランスと家庭用ゲームらしい多彩な要素が合わさって「イースの真髄」を感じられる作品と言える。いい意味でプレーヤーに傷痕を残すようなシナリオも見どころ(筆者は初プレイ時ボロ泣きした)。PSP版(ダウンロード版があるのでPS Vitaでもプレイ可能)か日本語音声が省かれたPC(Steam)版とプレイしやすさの点ではやや難ありだが、そこを押してでもお勧めの選択肢に入れたい作品である。
もちろん、新たに開発発表された「イースVI」スマホゲーム版で、気軽にイースシリーズに触れてみるというのもひとつの手だろう。リリース時期などはまだはっきりとしていないが、今後の情報に期待したい。
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