【特別企画】
2021年にX68000向けフロッピー版「イース I&II」が何故発売されるのか?
2021年1月8日 00:00
「イース」が発売されるまでのパソコンゲームは、どれも難しかった?
では、パソコンゲームはどのような歴史を通ってきたのだろうか? 「イース」シリーズに深く関係する、難易度という部分に注目して見ていこう。
1980年代前半のタイトルは、その多くが「難しいゲームほど、遊びごたえがある良いゲーム」という解釈の元で発売されていた。当時人気のジャンルだったアドベンチャーゲームでは、通常の生活では使用しないような英単語の入力を求められたり、RPGなら複雑怪奇なマップや、ごく僅かなヒントから手がかりを掴まなければ先へ進めないなど、どのソフトハウスも“我こそは”と難易度を競っていた。
そのような風潮の中、1987年6月21日に「今、RPGは優しさの時代へ。」というキャッチコピーと共に登場したのがシリーズ1作目の「イース」だ。最新作などとは違い、「イース」はトップビュー視点で展開され、敵との戦闘も基本は体当たりとなっている。
プレーヤーは主人公である赤毛の少年、アドル=クリスティンを操作し、ゲームを進めていく。序盤は街で人々に話を聞き、その問題を解決していくのだが、物語が進行すると全体像が少しずつ見えてくるという構成になっており、非常にドラマチック感が強かった。このストーリー性が話題を呼んだほか、他よりも大幅に低い難易度や絶妙なゲームバランス、多数発売されていたソフトとは一線を画すFM音源を駆使したハイレベルなBGMなどが人気を博し、「イース」は大ヒットタイトルとして当時発売されていた主なパソコンへと移植されることになる(機種ごとに、BGMやグラフィックスに多少の差違がある)。
「イース」のタイトル画面には「Ancient Ys Vanished Omen(失われし古代王国 前兆)」とあり、1作目が発売された翌年には「Ancient Ys Vanished The Final Chapter(失われし古代王国 最終章)」と題した続編「イースII」が登場した。「優しさから、感動へ。」とのキャッチコピーと共にリリースされた2作目は、古代王国イースを舞台にした物語の完結作となっている。オープニングでは、前作のラストでダームの塔から天空に浮かぶ国イースに飛ばされたアドルが、リリアという少女に助けられるシーンから始まるのだが、そこで彼女が振り向くシーンが話題となり、多数のユーザーが心を奪われたとか奪われなかったとか……。
そんな「イースII」は、システムは前作とほぼ同じトップビューアクションだったものの、体当たりに加えて魔法での攻撃も可能になり、より攻撃の幅が広がっている。難易度も前作同様に優しく、それでいて少し考えればわかるレベルの謎もしっかりと仕掛けられたほか、驚くべきストーリー展開や前作にも増して耳に残り続ける美しいBGMなど、1作目に続き非常に高い完成度を誇ったことで、後々まで多くのユーザーから称賛されることとなった。
シャープが発売したX68000と、「イース」との関係性とは?
そんな「イース」と同じ1987年にシャープから、当時の機種としては桁違いのパワーを持った16ビットパーソナルワークステーション・X68000がデビューする。見た目が、アーケード版と比べても遜色のない「グラディウス」が付属したこのハードは、10MB以上のメモリを利用可能なほか、512×512ドットで65,536色での描画が行なえたり、他機種のパソコンよりもより表現力豊かなFM音源が使えるなど、あの時期としてはモンスター級のマシンだった。
大ヒットした「イース」も移植され発売されることになるのだが、その際にはPC-8801mkIISRを初めとした8ビットパソコン版そのままではなく、X68000というハードの仕様に合わせた移植方法が採られた。リアル寄りにしたキャラクターグラフィックスや一部マップの変更、ハードの特性を活かした楽曲アレンジを行なった結果、それとは別に8ビットパソコン版(PC-8801mkIISR版)をX68000で遊びたいという自然発生的な要望が生まれることに……。そういった潜在的需要が以前からあったことは間違いなく、今回発売された「イースI&II ~Lost ancient kingdom~」は、まさにそれを現代にて具現化したタイトルと言えるのだ。