【特別企画】
ニワトリ刑事のコンビが活躍する獣人ノワールアドベンチャーが誕生!「Chicken Police」先行プレイ
古き良きハードボイルドな世界観(とかわいい動物)に酔い痴れろ!!
2020年11月6日 01:00
- 11月6日 発売予定
- 価格:2,000円(税込)
- ジャンル:ノワールアドベンチャー
- プレイ人数:1人
ハンガリーのインディースタジオThe Wild Gentlemenが開発を手掛けたノワールアドベンチャー「Chicken Police」が、11月6日にHandyGamesよりSteamにて配信される。
本作は愛、死、チキンと罪の贖いをテーマにした、ハードボイルド・ノワールアドベンチャー。プレーヤーは、かつて伝説的な刑事コンビとして名を馳せた「チキン・ポリス」(文字どおり、ニワトリの刑事!)となって、とあるナイトクラブの歌姫(ネコ)への脅迫事件を捜査し、やがて街の暗部へと迫っていくことになる……。ここまでお読みいただいた読者の皆様は「こいつ、何を言ってるんだ?」とお思いかもしれないが、筆者も正直、今回ばかりはどう書き進めていけばいいのかわからないまま、筆を執った次第。プレイを終えた今も、本作の魅力を如何にして伝えるべきか未だに自問自答するばかりだ……。
とはいえ、そんな筆舌に尽くしがたいほど独特な「Chicken Police」を触る機会に恵まれたからには、その特殊な世界観やキャラクター造形と、ユーモアに満ちたハードボイルドな物語が織りなすシネマティックなゲーム体験について、微力ながらご紹介していきたい。
ニワトリの刑事コンビとなって、街で巻き起こる不穏な事件を捜査!
本作の舞台となるのは、獣人などが暮らす架空の世界(作中では「自然界」と呼称)にある都市「クロービル」。眠らない街と言われるクロービルは、その昔、捕食者とその獲物が平穏と繁栄を謳歌できる楽園として築かれた。が、激化する種族間の対立や街を牛耳るギャングの台頭など、時とともに楽園は自然界でも危険な街と化し、その栄光に影を落とすことになる……。直接的な表現こそ少ないものの、ゲーム内の情報から爬虫類や昆虫がスラム街に隔離されていたり、お店に入れてもらえないなどの描写があったりと、悪意や差別、暴力が蔓延る街であることは間接的にプレーヤーに伝わる。本作が、1940年代のノワール映画の雰囲気と空気感を再現したとされる所以だ。
世界観の設定からして癖が強すぎる本作だが、ムーディーなジャズが流れるモノクロのタイトル画面からは、早くも期待を裏切らないハードボイルドな香りが漂う。いざ本編を開始すると、オープニングから探偵小説の名手レイモンド・チャンドラーの代表作の一節が紹介され、古き良き探偵物語やノワール映画がお好きな方は、この時点で悶絶しそうだ。期待が一気に高まったタイミングで、主人公の渋いナレーションがこれまた渋い英語のボイスとともに始まるが、徐々に見えてくるその姿は何とニワトリ!!そう、あのとさかのついた、コケコッコー!と鳴くニワトリが、本作では渋い革ジャンを着て、時にはリボルバーを構えて颯爽と事件を解決する。これこそが「Chicken Police」なのだ。
そして本作の主役を務めるのは、かつて伝説的な刑事コンビ「チキン・ポリス」として名を馳せた、サンティーノ・フェザーランド(通称「サニー」)とマーティン・マクチキン(通称「マーティ」)の二羽組。10年も前のとある事件をきっかけにコンビを解消した二羽だったが、本作で起こる事件を機に、再びコンビを組むことに!プレーヤーは、このサニー&マーティを操り、大晦日の夜に起こる不審な脅迫事件を捜査することになる。
「Chicken Police」は、アドベンチャーとしては画面の中の気になるキャラクターや物をマウスでクリックして手掛かりを得ていく、ポイント・アンド・クリック型のシンプル設計のゲームだ。とはいえ、刑事らしく尋問イベントや謎解き、銃撃イベントなどもあり、会話劇に留まらないゲームとしての面白さも兼ね備えている。ただの雰囲気ゲーと侮ることなかれ、本作は「遊べるノワール映画」に相応しい贅沢な一作なのだ。
地道な捜査、緊迫の尋問、銃撃イベントなど、刑事物語のすべてがここに!
刑事モノに欠かせない要素といえば、怪しい人物の取り調べだ。本作でも、冒頭から謎の美女「デボラ」(インパラ)がサニーの家を訪れ、彼女の雇い主が巻き込まれたという厄介な脅迫事件の相談を持ち込む。プレーヤーは早速、この美女がサニーに相談してきた訳を問い質すことになるが、本作では事件関係者への聴取は質問の選択肢から適切なものを選んでいくだけで、制限時間などのシビアな縛りもない。ここは一発、身体は大人、頭脳も大人の筆者が華麗に答えを引き出してみせよう!などと調子に乗っていたら、これが笑えるほどにうまくいかない。適切な質問を選べず堂々巡りが続き、聴取の終了後に表示される「尋問ランク」で散々な評価が下される始末……。ハズレの選択肢は一度選べば消えるので、いつかはクリアできる親切設計ではあるものの、不適切な質問をすると評価がどんどん下がるので、パーフェクトを狙いたい方は要注意だ。読者の諸君は、ぜひ私の屍を踏み越えて名刑事を目指してみてほしい!!
他にも、サニーたちは様々な場所を訪れては手掛かりや有力な個人情報などを集め、刑事らしく足を棒にしながら地道な捜査を行っていく。街中のポスターや看板などにもちょっとした情報が隠されていたり、一度訪れた場所も後で再び訪れると変化が起きていたりするので、怪しいと思ったところは片っ端からクリックしてみよう。情報が揃ってくると、それまでに得た情報を整理して次のチャプターに進めるようになるため、もし先に進めないという場合は、どこかに見落としがないか隅々まで調べるしかない。名刑事は一日にして成らずだ!
そして刑事モノには何と言っても、ピンチが付き物。怪しい連中から銃撃を受けたり、へまをして命の危機に陥ったり……もはや予定調和とも言うべきピンチの数々が、チキン・ポリスを待ち受ける!とはいえ、どんなピンチでも画面で焦っているのは二羽のニワトリだ。冷静に考えるとかなりシュールな絵面なのだが、二羽とも大真面目に捜査しているだけに、プレイしているこちら側は、そのギャップにジワジワ来てしまう。この絶妙な笑いとシリアスのバランスが、ノワールアドベンチャーとしての本作の持ち味なのだ。
本物の人間と見紛うほど生々しい、個性豊かな動物たちに注目!
実在の役者が演じた実写のボディに、動物の頭部を合成したキャラクター造形は、一歩間違えれば不気味と評されかねない。だが、本作の登場動物たちの動きはまるで違和感がなく、それぞれの口調も実に個性豊かで、本当に生きているのではないかと思わせるほどだ。初めはリアルな動物の顔に驚いた筆者も、すぐに世界観に馴染み、この独特な世界の魅力に取りつかれていった。
謎の人物から脅迫を受けている魅惑の歌姫「ナターシャ」(ネコ)や、その恋人で街のギャングのボスでもある「イブン」(ネズミ)といった怪しげな事件関係者だけでなく、本作では警察署の同僚や街の住民たちもそれぞれに命を吹き込まれ、物語を盛り上げてくれる。ネコとネズミといった現実ならあり得ないカップルも、「Chicken Police」の中では何の違和感もなく、主役の二羽組も段々とかわいく見えてくるから不思議だ。
様々な動物たちが登場する本作だが、筆者は特にサニーの友人の「ルイス」(ウサギ)と、警察署の事務方である「モニカ」(ハチドリ)にこそ注目したい。妻子に逃げられてからアルコールに溺れ、現在は謹慎中のサニーを温かく見守るのが、街の名士の家系に生まれたルイスだ。路頭に迷うサニーを自分の物件に居候させるだけでなく、電話ひとつで駆けつけるなど、このウサギが実に従順で愛らしい。筆者などはもう見ているだけで癒される。また、サニーとマーティの誘いを軽くあしらうモニカの大人の余裕も、見ていて気持ちがいいほど。物語の要所でサニーたちを助けるなど、隠れたヒロインと言っても過言ではない活躍を見せる。そういった現実ではあり得ない動物たちの組み合わせや化学反応をリアルに楽しめるのも、「Chicken Police」の大きな特徴なのだ。
本作では他にも、ダイナーの店主を務めるアライグマの情報屋に、カモメの新聞記者など、まだまだ魅力あふれるキャラクターがわんさか登場する。そんな動物たちが織りなす日常や、ハードボイルド作品らしい苦い展開は実に生々しく、どの動物に焦点を当てたとしても、彼らの存在はプレーヤーの心を捉えて放さないはずだ。
往年のノワール映画を彷彿とさせる唯一無二のゲーム体験に酔い痴れろ!
生き生きとした造形や動物たちの関係性もさることながら、本作がリアルに感じられるのは、その作り込まれた世界観によるところも大きい。例えば、本作の世界では人間は架空の生物とされているため、ローカライズにおいても「二人組」→「二羽組」、「本人」→「本鶏」、「人生」→「猫生」などのように言い方が工夫されており、「人」という言葉が徹底的に排されている。これによってプレーヤーは、まるで本当に獣人が生きる世界に入り込んだかのような没入感を味わえるのだ。
一見ふざけたキャラクター造形ながらも、本作の根底に流れているのは、ノワール映画やハードボイルド作品への徹底したリスペクト、そして動物たちへの溢れんばかりの愛だ。それぞれの動物の特徴を捉えた造形や設定が、このほろ苦いノワール風味の世界に完璧に溶け込み、混然一体となって唯一無二のゲーム体験を作り上げた。ゲームとして見ると、謎の脅迫に端を発した事件は寄り道しなければ一日ほどで結末を迎えられるが、ただクリアするだけでは解除されない実績が多いのも事実だ。また、物語に残された謎も多く、エンディングのスタッフロール後の展開からも、一周しただけでは完全クリアにならないことも示唆されている。何より、これほど特異な世界を、ただシナリオをなぞるだけで終わらせるのは、勿体ないの一言に尽きる。これから本作を手に取っていただく読者の皆様には、ぜひ心ゆくまでじっくりと、この不思議な世界を隅々まで堪能していただきたいところだ。
© 2019 THE WILD GENTLEMEN. CHICKEN POLICE IS A TRADEMARK OF THE WILD GENTLEMEN.