【特別企画】

新型コロナに負けてたまるか! TCGファンによるTCGファンのためのTCGオンライン対戦のススメ

 新型コロナウイルスが猛威をふるっている現在、誰もが不安とストレスを抱える毎日を送っている。不要不急の外出をしないように要請されたことで、売り上げや業績が大きく低下したところが増えている。中でも、飲食店にとって客足が途絶えることは、店の存亡に関わる。飲食店に負けず劣らず深刻なのが、TCG(トレーディングカードゲーム)を主に扱うTCGショップ(カードショップ)だ。

 TCGショップの多くは、TCGの新品パックや構築済みデッキ、シングルカード、サプライなどの販売のほか、店内に対戦ができるスペースを設けており、店内でフリー対戦やTCGメーカー公認大会、CSなどの大規模大会などができるようになっている。しかし、相手と2m未満の距離で向き合って数十分間戦うTCGの対戦は、いわゆる濃厚接触にあたるため、自主的に対戦スペースを封鎖しているTCGショップが増えている。

 また、スペースを開放していても、公認大会自体を中止すると表明しているTCGメーカーも増えており、デュエル・マスターズ(以下DM)のグランプリや、マジック:ザ・ギャザリング(以下MTG)のマジックフェストといった大型大会も中止が相次いでいる。スマートフォンさえあれば、いつでもどこでも対戦できるDCG(デジタルカードゲーム)とは異なり、TCGは対戦相手が目の前にいないと遊べないのだ。

 TCGは対戦こそが醍醐味だ。対戦ができないのであれば、当然、新しいパックを買って、自分のデッキを強化しようというモチベーションもなくなり、TCG市場の縮小やTCGショップの廃業に繋がる。ただでさえ、近年は「シャドウバース」や「ハースストーン」、「ドラゴンクエストライバルズ」といったDCGに押されているTCGだが、ここで踏ん張らないと、TCGというもの自体が日本から、いや地球からなくなってしまうかもしれないのだ。

 筆者は、娘に引っ張られる形で、8年前からTCGをプレイしている紙勢(といってもDCGも両方やるタイプだが)であり、TCGが熱心なファンだけのものではなく、もっと広く誰もが気軽に楽しめるものになって欲しいと常々考えている。学生にとってはせっかくの春休み、TCGを存分に遊びたいと思っていたのに、水を差されてがっかりしているTCGファンは多いことだろう。というわけで今回の特別企画では、家に居ながら、TCGを楽しむ方法をご紹介したい。

【TCGショップ】
こちらは6月に取材したTCGショップ「晴れる屋 秋葉原店」(参考記事

TCGをオンライン対戦で遊ぶってどういうこと?

 TCGは、紙のカードを集めてデッキを作り、相手とコミュニケーションをとりながら戦うゲームだ。本来のTCGはアナログゲームであり、PCやスマートフォンを用意する必要はないが、そうしたネットに繋がるデバイスを活用することで、TCGでも遠く離れた相手とオンラインで対戦することができるのだ。

 そのやり方は、実は非常にシンプルであり、SkypeやLINEなどに用意されているビデオ通話機能を使うだけだ。通常、スマートフォン同士のビデオ通話は、液晶側に装備されているインカメラを使うことで、お互いの顔を見ながら通話するというものだが、インカメラではなく、背面のアウトカメラに切り替えて、適当なアームか台にスマートフォンを乗せて、TCGの盤面を写すようにすれば、スマートフォンだけでも、オンライン対戦が可能になる。この場合、相手の盤面もスマートフォンの画面に表示されることになるので、画面がかなり狭く、プレイには慣れが必要だ。

 実際、筆者の娘は3年近く前から、スマートフォンだけでのMTGのオンライン対戦を友人や知人と行なっており、筆者はよくそんな小さな画面でMTGをプレイできるなと感心していた。当時は、SkypeかLINEを使い、娘はこのスマートフォンだけの環境で、延べ100回近くの対戦を行なっていた。この方法はスマートフォンがそれぞれに1台ずつあれば、他に何も用意する必要がないことが利点だが、繰り返しになるが画面は小さく、あまり快適とはいえない。

娘は自分でオンライン対戦の方法に気づいたそうだ。これは2017年8月30日に撮影したもの。スマートフォンの画面に表示されているのは相手の盤面だ。スマートフォンのアームも持ってないので、カードを入れるストレージボックスを立てて、その上にスマートフォンを乗せてプレイしていた

今回構築した理想的なTCGオンライン対戦の風景。今回はこちらのやり方をレクチャーしたい

TCGオンライン対戦を実現する4つの方法

 SkypeやDiscordなどのビデオ通話機能を使えば、遠く離れた人ともTCGで遊ぶことができるのだが、それを実現する具体的な環境としては、次の4パターンが考えられる。

1.スマートフォン(タブレット)単体

 まず、一番シンプルなのが、スマートフォンだけでおこなう方法だ。上で紹介したように、娘もその方法で3年近くオンライン対戦をおこなってきた。メリットは、スマートフォンさえあれば、他に何も準備がいらないことで(スマートフォンを固定するアームやスタンドはあったほうがいいが)、追加投資が安くてすむ。ヘッドセットがあれば、より音声が聞きやすくなるので、スマートフォンで使えるヘッドセットを持っているのなら、使うといいだろう。デメリットは、やはり画面が狭くて、相手の盤面が見にくいということだ。対面での対戦に慣れた人同士なら、音声によるコミュニケーションを多めにすることで、一応プレイは可能だが、TCG初心者にはあまりお勧めできない。ただし、10型以上の液晶を備えたタブレットなら、画面が狭いというハンデはかなり軽減される。

2.PC+Webカメラ

 2つめが、PCにUSB接続の外付けWebカメラを組み合わせて使う方法だ。これはいわばTCGオンライン対戦の王道ともいえる環境であり、PCの大画面で相手の盤面を見ることができるので、快適にプレイできることがメリットだ。デメリットはPCが必要だということだ。Webカメラは、解像度720p程度で十分なので、5000円もあれば購入できるが、問題はPCだ。ビデオ通話は、最新のPCゲームなどに比べるとはるかに負荷が低いので、PCの性能はそれほど要求されないが、それでも新たに購入すると、4~5万円は必要になる。すでにPCを持っているのなら、この方法が一番お勧めだ。なお、こちらの場合も、ヘッドセットはあったほうがより快適にプレイできる。

3.PC+スマートフォン(タブレット)

 3つめの方法は、基本的には2つめの方法の亜流であり、Webカメラの代わりにスマートフォンやタブレットのカメラを使うという方法だ。スマートフォンやタブレットは、今使っているものでももちろんかまわないが、機種変更などをして使わなくなった古い機種でも、WiFiさえ使えれば大丈夫だ。SIMが入っていなくても利用できるので、使わなくなったスマートフォンの有効活用にもなる。メリットは、2つめの方法と同じで、PCの大画面で相手の盤面を見られるということだ。デメリットも、2つめの方法とほぼ同じだ。PCとスマートフォンをお持ちの方なら、追加投資はあまりいらないが(スタンドかアームとヘッドセット程度)、PCを新たに買うには、4~5万円が必要になる。

4.タブレット+スマートフォン

 4つめの方法は、タブレットとスマートフォンを同時に使い、複数アカウントを使って、グループビデオ通話をおこなう方法だ。画面の大きなタブレットのカメラはオフにして、相手の盤面の表示に使い、アームやスタンドで固定したスマートフォンのカメラで、こちらの盤面を撮影するというやり方をすることで、2.や3.に近い環境を実現できる。メリットは、PC+Webカメラに近い環境で快適にプレイできるということであり、デメリットは複数アカウントを取得する必要があり、接続に多少手間がかかることだ。もちろん、このために、新たにスマートフォンやタブレットを追加で買うと、最低でも1~2万円は必要になる。

 なお、これらの4つの方法は、あくまでこちら側の環境ということであり、こちらと相手が同じ環境である必要はない。例えば、こちらはスマートフォンだけでやっているが、相手はPC+Webカメラという場合もあり得る。

 筆者は、以前からもっと快適にTCGオンライン対戦ができる環境を作りたいと考えていたのだが、新型コロナによる不要不急の外出禁止要請が出たことで、その計画を実現に移すことにしたのだ。今回、筆者が選んだのは、3番目の方法だ。その理由は3つある。最初の理由が、新型コロナウイルス対策としてテレワークを導入する企業が増えたことで、手頃なWebカメラの入手が難しくなっていることだ。2つめの理由が、ちょうど手元にあまり使わなくなった格安Androidタブレットが転がっていたことだ。最後の理由が、サンコーから、スマートフォンやタブレットをPCのWebカメラとして活用するのに適した、アーム製品が発売されたからだ。

PCとスマートフォンを組み合わせて快適なTCGオンライン対戦環境を実現

 それでは、スマートフォンをWebカメラ化してPCに接続し、快適なTCGオンライン対戦を実現するには、どんな機材が必要になるのだろうか。そのために必要な機材は以下の通りだ。

・PC本体(ノートPCでもデスクトップPCでもかまわない)
・モニター(デスクトップPC時、ノートの場合は不要)
・スマートフォン(タブレットでも可能)
・ヘッドセット(マイクを内蔵したノートPCならなくてもできるが、あったほうがより快適)
・スマートフォンやタブレットを固定するためのスタンドやアーム

 スマートフォンやタブレットをPCのWebカメラとして使うには、スマートフォン側とPC側に専用アプリを導入する必要がある。スマートフォンをWebカメラ化するアプリもいくつかあるが、筆者はAndroidとWindows PCに対応した「DroidCam」を使っている。DroidCamは無料アプリだが、動作も安定していて使いやすい。iPhoneやiPadをWebカメラにする場合は、iOS用にも同じようなアプリがあるので、それを利用すればよい。

 DroidCamは、導入や設定も簡単だ。まず、Android側とPC側にそれぞれアプリをインストールする。DroidCamの公式サイトにある「Google Play」のアイコンをクリックすれば、Google PlayからAndroid用アプリをダウンロードできる。有料版のDroidCam Xもあるが、TCGオンライン対戦をするだけなら、無料のDroidCamで十分だ。また、公式サイトの下にある青いWindowsのロゴをクリックすれば、Windows PC用のアプリをダウンロードできる。

 それぞれのアプリのインストールが完了したら、まず、Android側でDroidCamを起動する。このとき、PCとAndroid端末が同じネットワークに接続されていることを確認すること。自宅WiFiなら、同じアクセスポイントに接続されていれば大丈夫だ。DroidCamを起動すると、画面の右上のWifi IPという項目に「192.168.1.6」のようなIPアドレスが表示される(ネットワーク環境によってIPアドレスは変わる)。

 次に、PC側で「DroidCamApp」を起動し、Device IPの項目にAndroid側で表示されていたIPアドレスを入力する。その下に、「Video」と「Audio」の項目があるが、マイクを内蔵したノートPCや、ヘッドセットを使っている場合は、Videoだけチェックをいれればよい(Audioにチェックを入れると、Android側のマイクが有効になる)。「Start」ボタンをクリックすれば、Android端末のカメラの映像がリアルタイムで表示されるようになる。これで設定は完了だ。

【DroidCamの設定方法】
DroidCamの公式サイト。ここからAndroid用アプリとWindows PC用アプリをダウンロードする
Android側で「DoridCam」を起動し、右上のWifi IPをメモする
PC側で「DroidCamApp」を起動し、Device IPにAndroid側のWifi IPを入力。「Video」のみにチェックを入れて、「Start」をクリックすると、Android端末の内蔵カメラがWebカメラとして認識される
下にプレビュー画面が出るので、TCGオンライン対戦をする場合は、これを見ながらタブレットの位置や角度を調整する

 なお、スマートフォンやタブレットは基本的にインカメラよりもアウトカメラのほうが解像度が高いので、Webカメラとして使う場合も、アウトカメラを使うことをおすすめする。DroidCamの場合、Androidアプリの右上をクリックしてメニューを開き、「Camera」をタップすることで、インカメラ(フロントカメラ)とアウトカメラ(バックカメラ)を切り替えることができる。また、デフォルトだと解像度は480pになっているが、PC側の設定で720pに変更できる。720pにすると、PCやAndroid端末への負荷が高くなるそうだが、筆者の環境では720pでも問題なく利用できていた。解像度の変更は、一緒にインストールされる「HD Mode」というツールでおこなう。解像度を切り替えると、一度PCを再起動する必要がある。

【アウトカメラへの切り替えと解像度の変更方法】
Androidアプリの右上をクリックしてメニューを開き、「Camera」をタップする
「Back」を選べば、アウトカメラが有効になる
PC側で「HD Mode」を起動し、解像度を「720p(16:9)」に変更し、再起動する

スマートフォンやタブレットを固定するには、サンコーのアームが便利

 これで、使っていなかった古いスマートフォンやタブレットをWebカメラとして活用することができるようになった。あとは、そのスマートフォンやタブレットを固定するためのアームやスタンドを用意すれば準備は完了だ。スマートフォンやタブレット用のアームやスタンドも各社から登場しているほか、100均などに売られているワイヤーラックなどを流用してスタンドを自作している人もいる。

 何かいいものはないかと探しているときに偶然見つけたのが、サンコーから3月13日に発売された「スマホ・タブレット用超強力アームスタンド」である。公式オンラインショップではすでに完売しており、次回出荷は5月下旬となっているものの、秋葉原の直営店には在庫があった。このオンラインショップの説明でも、「カードゲームの対戦に!」とうたわれており、実際のプレイイメージも掲載されている。価格も2,980円と手頃であり、早速、試してみることにした。

【サンコーのスマホ・タブレット用超強力アーム】
公式ページより。人気商品となっておりオンラインでは品切れとなっている

 このアームスタンドは組み立て式で、組み立ても非常に簡単だ。パイプをねじ込んでいくだけなので、工具もいらない。ただ、一つだけはまったというか、悩んだことがある。メインのポールは2本のポールを繋いで使えるのだが、それだと高さが高すぎて盤面が小さくなってしまう場合、ポールを1本だけにできるはずなのだが、上のアーム部分を差し込むポールの片側がオスネジになっており、台座部分もオスネジなので、取り付けられないということだ。

 説明書にも詳しく書かれておらず、散々悩んだのだが、実はなんのことはない、このオスネジ自体、ポールにねじ込まれているので、手で回せばポールから外せるのだ。いわばオスネジがジョイントになってるわけだが、これに気づかなかったのだ。こうしたポールを使った家具などを組み立てたことがある人には常識だろうが、筆者はてっきりポールに直接ネジが切られていると思い込んでいたのだ。文字で書くと何を言ってるのかよくわからないかもしれないが、下の写真を見れば一目瞭然であろう。

 その点を除けば、組み立ては簡単で、強度も十分だ。安定性も高く、アームの角度も自由に調整でき、タブレットとスマートフォンそれぞれに対応したホルダーが付属しているので、汎用性も高い。ここでは、オンラインTCG対戦のためだけに本製品を使ったが、ベッドに寝転びながら映像を見たいといった用途にも最適であろう。コストパフォーマンスの高い、優れた製品といえるだろう。

【サンコーのアームスタンドの組み立て手順】
サンコーの「スマホ・タブレット用超強力アームスタンド」のパーツ。工具不要で簡単に組み立てられる
説明書に従えば、10分程度で組み立てが完了する
まずは、スタンド足とセンターポールを組み立てる
センターポールを2本繋いだところ
バネアームをポールに差し込むだけで組み立ては完了
バネアームは自由に角度を変えることができる
バネアームの先端の銀色の球体を前に出す
スマートフォンホルダーは、大きな洗濯ばさみみたいになっており、このようにスマートフォンを挟んで使う
ホルダーについている固定ネジを外して、銀色の球体部分に通す
銀色の球体をホルダーの後ろにはめ込み、先ほどの固定ネジを回して固定する
こちらは、タブレットホルダーの裏面。スマートフォンホルダーと同様に、この固定ネジをまず外して、銀色の球体部分に通す
タブレットホルダーの表面。両端はバネで開くようになっており、さまざまなサイズのタブレットに対応できる
このようにタブレットをホルダーに挟んで固定する
銀色の球体をホルダーの後ろにはめ込み、固定ネジを回して固定する
センターポールを2本繋いだ状態でのTCGオンライン対戦の様子。実はこれだと高さが高すぎる
そこでポールをばらしたのだが、左のポールがオスネジになっており、台座にどうやって固定すればいいのか分からなかった
正解は簡単で、このオスネジ自体がポールにねじ込まれていて外せるのだ
このようにジョイントとなっているネジを外せば、ポール1本だけで台座に固定できる
センターポールを1本にした状態でのTCGオンライン対戦の様子。筆者のタブレットでは、これくらいの高さがベストであった

 今回、Webカメラとして利用したのは、1万円台で売られていたいわゆる中華Androidタブレットで、コミュニケーションツールとしては「Discord」を利用した。Discord以外に、SkypeなどでもTCGオンライン対戦は可能だが、接続安定性や機能などの点で、やはりもともとゲーマー向けチャットとして誕生したDiscordのほうが使いやすいと感じている。

 Discordで、DroidCamを使うには、ユーザー設定(歯車のアイコン)から、音声・ビデオを選び、ビデオ設定のカメラで「DroidCam Source x」(xは数字)を選択すればよい。PC側のDroidCamAppで、プレビュー画面を見られるので、プレイマット全体が写るくらいにアームを動かして、タブレットやスマートフォンの位置を調整すればよい。

【Discordの設定方法】
最初にDiscordのビデオ設定で、カメラを「DroicCam Source x」に設定する

 なお、使うタブレットやスマートフォンによっても異なるだろうが、筆者の環境だと、センターポールを2本繋ぐと、高さが高くなりすぎてしまったので、センターポールは1本にすることにした。後は、対戦相手にビデオ通話を申し込むだけだ。

【センターポールの長さと写る範囲の関係】
センターポールを2本繋いだ状態だと、写る範囲が広すぎる
センターポールを1本にすると、この通り、ちょうどいい範囲が写る

格段にプレイしやすくなり、娘も大感激

 では、環境ができたところで、実際に娘にMTGでのTCGオンライン対戦をやってもらった。PC+タブレットでの対戦の様子は下の写真に示したとおりだ。娘は、スマートフォン1台だけでのオンライン対戦の経験はかなりあるが、今回構築したようなしっかりとした環境でオンライン対戦を行なうのはこれが始めてだ。

 いつもと同じようにプレイを始めたが、やはりとても快適そうだ。相手の盤面がしっかり見え、こちらの盤面も相手からしっかり見えるので、スマートフォン同士だと頻繁に交わされる「その左のカードなんでしたっけ?」みたいな会話がほとんどない。10マッチほどプレイした娘の感想は、「前はスマホが途中で倒れたりして大変だったけど、これだとそういう不便さがなくて、純粋にプレイに集中できて楽しかった。」というものであった。

 私も、老眼が進んでおり、スマートフォンの小さい画面では正直厳しいと思って、オンライン対戦はほとんどしてなかったのだが、これなら私でもプレイできそうだと思い、実際にプレイしてみた。対面で対戦しているのとあまり変わらない感覚で、「普通に」プレイできたが、考えてみればこれはなかなかすごいことだ。オンライン対戦なら、どれだけ遊ぼうが、どれだけお喋りしようが新型コロナに感染する恐れはないし、相手さえ見つかれば、ちょっとした空き時間にも対戦できる。

 また、競技志向のグループなどで、じっくり練習をして実力を高めたいというニーズにもマッチするだろう。また、TCGショップによっては、夏は人が多くて冷房が効かず不快な思いをすることもあるのだが、オンライン対戦なら自宅でゆっくりくつろぎながらプレイできる。親しい仲間となら、飲みながら対戦するのも悪くはないだろう。

【快適なTCGオンライン対戦環境を実現】
MTGプレイ中のこちら側の様子
相手の盤面は、このようにPCの画面に映る

TCGオンライン対戦をスムーズにおこなうための五か条

 このように、今回紹介したような環境を用意できれば、快適にオンライン対戦を楽しむことができる。しかし、TCGオンライン対戦は、対面で対戦している場合とはまた違った気配りが必要になる。いくつかそのポイントを紹介しよう。以下は、例としてMTGを取り上げているが、他のTCGでも基本は変わらない。また、ヘッドセットだが、周囲が静かな環境なら、なくても特にプレイに支障はなかった。ただ、他の人がいたりする場所では、やはり安くてもいいからヘッドセットがあったほうが快適であろう。

1.カードをプレイするときは、しっかりカードの名称を声に出して、カードをカメラに近づけてからプレイする

 対面でプレイする場合でも、「島をセットします」とか、宣言してカードを使うべきだが、TCGオンライン対戦ではそれをもっと丁寧におこなうべきだ。直接、カードを手札から盤面に置いてしまうと、どんなカードが置かれたのかよくわからないことがあるので、一度、カメラにカードを近づけてから置くようにしよう。相手のカードの効果で、山札の上から何枚かを墓地に置くときなども、同じようにカードをカメラに近づけ、カード名を読み上げるようにすること。

 また、相手から「そのカードなんでしたっけ?」とか聞かれたら、テキストを読み上げてあげたり、効果などを説明してあげるようにすること。お互いがそのことを心がけてプレイすれば、快適に対戦できる。

【オンライン対戦のコツ】
自分がカードをプレイするときには、一度カメラの近くにカードを持って行ってから、盤面に置くようにするとよい
相手のカードの効果で、山札の上から何枚かを墓地に落とす際も、落ちるカードをこのように相手に見せつつ、声でも読み上げるようにすれば親切だ

2.フェイズの移行宣言も丁寧に行なうこと

 カードのプレイと同様に、TCGにはさまざまなフェイズがあるが、その移行宣言も、対面でやっているときより丁寧におこなうこと。「戦闘入ります」とか「○○をプレイしたいです」みたいにコミュニケーションをとることで、カウンターを撃ち損ねたみたいなトラブルを減らすことができる。

3.公開情報は聞かれたらしっかり答えること

 TCGオンライン対戦では、相手の手札の枚数や残り山札の枚数、墓地の中身などの公開情報が対面で対戦している場合に比べてわかりにくい。そのため、相手から「手札枚数何枚ですか?」と聞かれたら、ちゃんと数えて答えることが大切だ。同様に「墓地見せてください」と言われたら、墓地を広げて見せつつ、声でも読み上げてあげればよい。

【手札枚数や山札枚数などの公開情報はきちんと伝える】
相手にこちらの山札の残り枚数を聞かれたので、山札の枚数を数えているところ

4.音声でのコミュニケーションを密にとること

 基本はこれにつきる。何か分からないことがあったら、気軽に相手に尋ねるようにすること。例えば、「一番右のクリーチャーのP/Tいくつでしたっけ?」とか。DMは、相手の盤面への直接的な干渉が少ないのでオンライン対戦も比較的楽だが、MTGでは、「集団強制」のように、相手のクリーチャーのコントロールを奪うカードなどがあるので、こちら側は何か適当なカードをプロキシとして使うなど、少々工夫が必要だが、相手とのコミュニケーションをしっかりとっていれば大丈夫だ。

 娘はこれまで数十人の方とMTGやDMのオンライン対戦をおこなった経験があり、筆者もそれを横目で見たりしていたが、どの方も丁寧にプレイしていて、娘も楽しそうだった。TCGオンライン対戦は、自分や相手の顔は映さないのが基本なので、TCGショップで知らない人と対戦するのに抵抗があるという方でも、気軽に対戦できるのもメリットといえるだろう。

【相手との音声によるコミュニケーションを密にとる】
ちょっと何をやってるか分かりにくいかもしれないが、奥(スタンド足のところ)に置いた3枚のプロキシは、相手のクリーチャーのコントロールを奪ったもので、手前側はこちらで出したトークン
相手がスマートフォンの場合、相手の盤面が縦画面になることもあるが、それでもプレイは問題ない

5.広い心でプレイすることを心がける

 一番大事なのは、広い心でプレイするということだ。特に相手がオンライン対戦に慣れていないようなら、普段よりもゆっくり丁寧にプレイすることを心がけたり、多少のミスなら、巻き戻しを認めてあげたりするべきだろう。オンライン対戦は競技性の高い大会ではないあくまでフリー対戦なので、細かなミスをあげつらうようなことはせず、相手が自分に有利な誘発を忘れているなら、こちらから指摘してあげるくらいでいいのではないだろうか。お互いがそういう心がけでプレイすることで、楽しくオンライン対戦ができるだろう。

TCGオンライン対戦のススメ

 TCGオンライン対戦は、新型コロナウイルスへの対処でTCGショップへ行けないという人だけでなく、地方在住でTCGの対戦相手がなかなか見つからないという人、勤務時間の都合でTCGショップが開いている時間に行けないという人にも福音となる。もちろん、TCGは対面でプレイするのが一番楽しいのだが、オンライン対戦でも、相手との駆け引きやコミュニケーションの楽しさは十分に味わえる。MTGにはデジタル版のアリーナもあるのだが、やはり相手が見えない味気なさもある。相手が実在する人間だと実感できるTCGオンライン対戦は、TCGの新たな可能性を開く扉になるかもしれない。筆者や娘はまだ未体験だが、TCGオンライン対戦で画面を4つに分割し、4人同時対戦をおこなっている人もいる(MTGだとEDHという多人数戦ルールがある)。

 また、環境ができても、どうやって対戦相手を探せばいいのか分からない人もいるだろうが、twitterなどのSNSで、MTG、対戦希望などのタグを使って相手を募れば、結構相手は見つかるものだ。同じTCGで対戦してくれる相手を探すためのDiscordサーバーもいくつか存在する。たとえば、TCGショップのカードキングダムが運営するカードキングダムDiscord店やMTGならあーるまん氏が運営しているMTG対戦募集サーバーがある。そうしたコミュニティに参加するのもおすすめだ。

 TCGオンライン対戦によって、TCGへのモチベーションを高め、いつもお世話になっている馴染みのTCGショップで、新弾やシングルカード、サプライなどを買うことで、大事なプレイ場所、ひいてはTCGそのものを守るという意識を持っていただければ幸いだ。