インタビュー

「マジック:ザ・ギャザリング」専門店「晴れる屋」が秋葉原に進出!

「ここに来ればMtGプレーヤーに会える」~齋藤代表、小櫃秋葉原店店長インタビュー

【晴れる屋秋葉原店】

6月7日オープン

 TCG(トレーディングカードゲーム)は、カードを組み合わせて構築したデッキを用いて、相手と戦うアナログゲームだ。最近は、TCGをデジタル化した「シャドウバース」や「ハースストーン」などのDCG(デジタルカードゲーム)が話題だが、TCGの人気が衰えたわけではない。そのTCGの元祖が、アメリカのウィザーズ・オブ・コーストが開発・販売している「マジック:ザ・ギャザリング」である。

 「マジック:ザ・ギャザリング」は、26年前に誕生した世界初のTCGであり、その後に登場した遊戯王やデュエル・マスターズなどのTCGにも大きな影響を与えている。「マジック:ザ・ギャザリング」は、世界中でプレイされており、1,000~3,000人規模の大規模大会「マジックフェスト」や、一握りのトッププレーヤーしか参加できないミシックチャンピオンシップなど高額な賞金が出る大会もあり、ショップなどのスポンサーを受けるプロプレーヤーも数多く存在する。

 晴れる屋は、10年以上の歴史を持つ「マジック:ザ・ギャザリング」専門店であり、これまで国内に7つの店舗を運営していた。その晴れる屋の8番目の店舗として、2019年6月7日にオープンしたのが「晴れる屋 秋葉原店」である。秋葉原は、数十軒のTCGショップが立ち並ぶ超激戦区であり、サブカルチャーの発信地でもある。なぜ今、晴れる屋は秋葉原に新しい店舗をオープンしたのか、晴れる屋代表の齋藤友晴氏と秋葉原店店長の小櫃王彦氏に、いろいろお訊きしてみた。

左が晴れる屋代表の齋藤友晴氏、右が秋葉原店店長の小櫃王彦氏

晴れる屋秋葉原店はこんなショップだ

 晴れる屋秋葉原店は、秋葉原の電気街口を出て、徒歩1分のところにある。横断歩道の手前、1階が富士そばのビルといえばわかる人が多いと思われる。店内の様子を撮影させていただいたので、写真とキャプションを読めば、店の雰囲気が分かるだろう。

 高田馬場の晴れる屋トーナメントセンターに比べればもちろん狭いが、それでも32席のプレイスペースがあり、カードショーケースも8セット分あるなど、秋葉原のTCG店としては広いほうだ。

【晴れる屋秋葉原店】
晴れる屋秋葉原店が入っている宝田中央通りビル
晴れる屋秋葉原店は、ビルの8階にある
1階には富士そばが入っている。富士そばの左の入口からビルの中に入る
突き当たりの左にあるエレベーターに乗って8階に行く
エレベーターの扉(奥の赤い扉)から出ると、目の前にはシングルカード注文用PCが6台並んでいる
PCでカードを選んで注文できる
エレベーターから出て左側にプレイスペースがある。プレイスペースにはパック自販機とジュース自販機がある
プレイスペース奥のパック自販機とランドステーション
パック自販機。いろんなパックやオリパ(オリジナルパック)が販売されている
ランドステーション。ドラフトやシールドで使う基本土地を借りることができる
店内にないシングルカードの取り寄せや、自宅やスマホで注文したカードの店頭受け取りが可能
無料で使えるプレイスペース。全部で32席だ。明るく、快適にプレイできる。こちらの緑の扉のエレベーターは利用できない
店内に入ってすぐ右側には、出来たて特価品コーナーと特選!オリパコーナーがある
こちらは特選!オリパコーナー。オリパも何種類かあり、店の独自性がある
店舗の中央あたりのカードショーケース
店舗の奥には買取コーナーがある。買取は最大6面同時対応できる
買取コーナーのマットは、カードの買取価格が書かれており、どのカードがいくらで査定されたのかが一目でわかる
特に高く買取を行っているカードについては、このように掲示される。左にはスタンの買取表が貼られている
こちらにもパック販売機がある。また、スリーブやデッキケースなどのサプライも揃っている
もちろん、各種ダイスも販売されている
買取コーナーの後ろのカードショーケース
ショーケース内のカードは、状態によってスリーブの色が違っている
販売レジは、エレベーターを出て右手側にある
店内販売スペースのレイアウトはこのようになっている
モバイルバッテリーのシェアリングサービスも行っている
男女兼用トイレもある
店内にはイベントのスケジュールが貼られている
平日は参加無料のイベントもある

プロプレーヤー兼トレーダーとして世界を回ったことが晴れる屋の原点

――まず、晴れる屋代表の齋藤さんの「マジック:ザ・ギャザリング」(以下、MtG)との出会いや、晴れる屋を始めることになった経緯を教えてください。始めたきっかけや、主な戦績など。

齋藤氏: 僕は、中学3年生のとき部活を引退した後にMtGに出会って、すぐにのめり込んでしまったんですよね。それで、1年後に練習もしましたが、運も良くて日本一になっちゃって、そのままの流れで、MtGのプロになりたいな、プロになろう、プロになったみたいな感じで、世界中を回ってMtGの試合をしながら、プロで食えるようになっていきました。

 そのときに、MtGの試合だけではプロといってもそれほど収入がなかったので、もっと稼ぐにはどうしたらいいかと考えました。何をしたら喜ばれるかなと考えたら、MtGのプロとして世界中を回りながら、MtGのカードのトレードをするのがいいんじゃないかと。国によって価格差が結構あったので、ある国で仕入れて、別の国で売るとか、そういうトレーダー的なことを始めたのが、晴れる屋の原点です。

 最初は個人事業として、晴れる屋を始めて、2010年に高田馬場に最初の実店舗「CARDSHOP晴れる屋」をオープンしました。翌年には法人化して、2013年に高田馬場の店舗を移転、拡大して310席のプレイスペースがある「晴れる屋トーナメントセンター」をオープンしました。

 MtGの主な戦績としては、グランプリベスト8が26回(うち優勝4回)、2006年のプロツアーチャールストンでチーム戦優勝、2006~2007年プレーヤー・オブ・ザ・イヤー獲得などがあり、先日生涯プレインズウォーカーポイントが10万点を突破しました(プレインズウォーカーポイントは世界2位)。

晴れる屋代表取締役社長CEOの齋藤友晴氏

――秋葉原店で晴れる屋は8店舗目になりますが、なぜこのタイミングで、秋葉原を選んだのでしょうか? 以前、各都道府県に一つずつ晴れる屋を作りたいという話をされてたかと思いますが。

齋藤氏: ひとつずつというか、晴れる屋が3軒とか4軒とかある県があってもいいんですけど、47都道府県全部に最低1店舗出すことを、大目標として店舗の展開をしています。ただ、このまま47都道府県全てに出店するというのは、正直、今のMtGの規模だとできないです。今、資本がたくさんあれば、全ての都道府県でうまくいくかというと、今はMtGかなり勢いがあって盛り上がっているので、資本を先にぶっこんで、無理矢理やればうまくいく可能性もあるんですけど、それはかなりギャンブルですよね。市場の需要と供給バランスが一気に崩れる可能性もあるし、在庫が揃わない事態にもなりかねないので。

 それはそれとして、現状、晴れる屋の新規出店とMtGの盛り上がりには、かなり相関関係があって、うちが出店すれば、MtGの盛り上がりに繋がる、MtGがより盛り上がれば、うちも出店しやすくなるという、車の両輪みたいな関係にあるんですね。晴れる屋はMtG専門店なので、実際、出店した地域では、MtGの新規プレーヤーさんが増えたり、復帰プレーヤーさんが多くて、プレイはしないけど、MtGファンになる方もいたりして、出店は非常に有意義に感じています。別に新たに出店したからといって通信販売の売上げが落ちるわけでもないので。むしろブランドイメージが向上するので、通販にも好影響です。

 ただ、秋葉原は、47都道府県出店という意味では、スゴロクが進まないんですよね。高田馬場に本拠地のトーナメントセンターがあるので。ですが、秋葉原店は、晴れる屋の2番目の拠点みたいな感じになります。取引量とか在庫量とかスタッフの数とかでいえば、2番目に重要なショップとなる予定です。ですから、秋葉原への出店は、MtGを盛り上げること、晴れる屋を盛り上げることの相関関係を強めたいというところが大きいですね。MtG専門店としてのブランドも高まってきたので、秋葉原で勝負できるようになったというのもあります。その両面ですね。晴れる屋もMtGも盛り上がる場所として、秋葉原への出店が全体の活気につながれば、また全国出店もやりやすくなると思います。これが正直なところですね。

小櫃氏: そうですね。秋葉原は、サブカルチャーの中心地みたいな印象がありますので、ここで盛り上げていけば、日本全国に発展しやすいと思います。

大阪・名古屋・札幌・福岡チーム副最高責任者 秋葉原チーム責任者店長 企画チーム責任者の小櫃王彦氏

――秋葉原はインバウンドの方、外国人観光客も多いですしね。

齋藤氏: 外国人のお客さんは多いですよね。晴れる屋は、海外で出版されている日本のガイドブックにも載ってるんです。だから、MtGをやってない人も覗きにきたりとか。一つのカードゲームの専門店で、310席もあるというのは、結構珍しい観光地みたいな要素もあって、MtGプレーヤーなら、海外から旅行にきたら、必ず、必ずは言い過ぎだけど、かなりの方が晴れる屋トーナメントセンターに来ますよね。

小櫃氏: MtGプレーヤーであればもう必ずといっていいんじゃないでしょうか。

――まさにMtGの聖地みたいな感じですよね。

齋藤氏: 世界から物珍しがられて、「いいなあ日本は」みたいな感じですね。

秋葉原店は他の支店に比べてショーケースのスペースが2.5倍、パック自販機や買取面数は2倍

――秋葉原には、TCG専門店が何十軒もありますし、MtG専門店もいくつかあって激戦区だと思います。その中で、晴れる屋秋葉原店の売り、差別化ポイントはなんでしょうか?

齋藤氏: 秋葉原店が他の晴れる屋の支店と比べて、力が入っているところは、まず、販売からいいますと、普通の支店だとこのカードのショーケースって、名古屋とか大阪とかの売上げが多い支店でも、この片側分くらいしかないんです。秋葉原店では、この裏側とその向こう側にもあるので、ショーケースのスペースは、名古屋や大阪の2.5倍になります。ショーケースの数は、トーナメントセンターを除く支店では一番多いです。また、パック自販機も2台あるので他の支店の2倍、買取面数も最大6面です。普通の支店だと最大3面対応くらいなので、こちらも2倍ですね。

――トーナメントセンターでも買取6面くらいですよね?

齋藤氏: そうです。トーナメントセンターと同じだけあるんですよ。310席あるトーナメントセンターも最大6面対応です。秋葉原という立地は、ちょっとしたついでにカードを売り買いされる方が多い街だと思ってますので。サブカル系でも他でもいいんですけど、いろんな目的でいらっしゃる中で、ちょっとカードを売り買いしたり、ちょっと遊んだりという方が多いのかなと考えてまして、できるだけお待たせしないように買取面数を増やしました。

――その他の秋葉原店の特長はなんですか?

齋藤氏: 秋葉原店は、すぐ欲しいカードも見つかるし、すぐ売りたいカードを査定してもらえるしという、利便性の高い店を目指しています。あとは、楽しい系商品を強めたいなと、ドキドキする商品、オリパとか詰め合わせみたいな楽しい商品にも力を入れる予定ですね。それから、秋葉原のTCG店は、プレイスペースが有料、あるいは条件付きなところも多いですよね。晴れる屋は、プレイスペースを無料でやります。もちろん、イベントをやるときには参加費はいただきますが。テナントの形もあって、プレイスペースは32席で、他の晴れる屋の支店よりちょっと少なめですが、土日でも無料で利用できます。

――それは嬉しいですね。例えば、秋葉原に一人できて、MtGやりたいなというときでも、晴れる屋秋葉原店にくれば、誰かMtGプレーヤーがいる可能性高いですよね。

齋藤氏: そうですね。専門店なので、MtGプレーヤーに会いたければ、ここにくれば会えると思います。総合TCG店さんに一人で行っても、MtGやってる人がいないということがありますからね。遊戯王やデュエマ、ポケカしかやってないみたいな。

――確かに秋葉原は、土日はプレイスペースが有料だったり、何か買わないと使えないところも多いので、ありがたいですね。

齋藤氏: 晴れる屋はMtG専門店なので、他のTCGのプレイができないのですが、MtGなら常に無料で使っていただけます。

――フライデーナイトマジックとかスタンダードショーダウンとか、普通の大会も定期的に行われるのですか?

齋藤氏: イベントのラインナップに関しては、晴れる屋トーナメントセンターとは違った、もうちょっとライトなものを増やす予定です。例えば、神決定戦みたいな大型イベントは、スペース的にも店のコンセプト的にも合わないと思っていますので、もうちょっと気軽に楽しめるものを中心にやっていこうかなと思ってます。席数も少ないので、一つのイベントで満席というのもなるべく避けたいですし。プレリリースとかはもちろんやると思いますが、なるべく多くの方に、短い時間しか遊べない方でも楽しんでもらえるようなイベントを多めにしたいと思っています。

――ブースターブリッツとかもいいかもですね。サクッと終わりますし。

齋藤氏: ブースターブリッツは本当にいいです。

小櫃氏: MtGをあまりやってない人でもできますからね。

買取価格にも自信

――買取と品揃えに自信があるということなんですが、晴れる屋は全店で買取価格や販売価格が共通なんですか?それとも、店舗によって違うんですか?

齋藤氏: 晴れる屋全店で共通です。基本的な販売価格、買取価格は同じですが、注目買取品とか、ショーケースのサービス品とかオリパの種類については、店によって違います。

――なるほど、特別に先着限定20枚とかだけ、晴れる屋トーナメントセンターで高く買い取るとかっていうことはありますよね。

齋藤氏: はい、あります。

――ただ、普通のカードに関してはどこで買っても売っても同じ価格ということですね。それは安心ですね。

齋藤氏: はい、買取は全国一律の値段ですが、もちろんそのときに特に人気のカードとか、その店舗の在庫が減っているものを高く買い取ることはあります。それと、買い取ったものをできるだけすぐに売れるようにするので、晴れる屋の総合的な買取価格は東京でも、平均したらかなり高いほうだと思います。しっかりお客様の目の前で1枚1枚査定しています。買取の値段表を全部印刷すると辞書くらいの厚さになるくらい、ほぼすべての商品に個別の値段が付いています。0円とか1円というのもありますが、あり得ないくらい多くの種類のカードに個別の値段を付けています。

 地方都市だと、晴れる屋の買取が一強みたいなところもあります。晴れる屋の買取は、査定方法とか値段も良心的で、安心できるということでお持ちいただいています。もちろん、秋葉原でもカードの何種類かでみるなら、晴れる屋より高い買取値段を出しているTCG店舗さんはいくらでもあると思いますが、例えば、かなり昔のMtGのカード、整理していないやつをまるっとお任せいただくなら、晴れる屋がベストである可能性が高いです。全部調べたわけではないので、ベストとは言い切れませんが、自信があります。

 晴れる屋は、やはり世界のマーケットと繋がっているので、日本ではそうでもないけど、アメリカではとても高くなってるとか、そういった海外で需要があるカードを、直販で売ったり、大口の方がまとめて買ったりするので、そうした海外需要の高いカードも、買取の値段に反映しています。日本だけでやっている店では、日本であまり人気のないカードには、高い値段を付けられないです。

小櫃氏: 販売に関しても、晴れる屋は高いというイメージがあるかと思いますが、それは品揃えを重視していたからなんですよね。でも、今は店舗が増えたり。プロのスポンサードをしたり、晴れる屋のブランド力があがって、仕入れ力が増しています。だから、昔より安い値段で売っても、しっかり売れているならまた買えるので、値段も昔のイメージほどは高くないと思います。値段で勝負している店ではありませんが、お求めやすい価格になっていると思います。

――やはり、PCで注文できるのは便利ですしね。

齋藤氏: はい、そういった利便性もふくめ、妥当な価格で買っていただける店になっていると思います。晴れる屋は、セールも全店共通なんですよ。ただやはり、通販やトーナメントセンターが一番在庫があるので、一番選択肢が多くなります。セール品は、晴れる屋全体で同じ品目でやるので、小さい支店だと、セールになってるけどこの店には在庫がないこともあります。取り寄せサービスもありますが、秋葉原店は支店の中では一番、セール品の品揃えも充実しています。晴れる屋は、セール品が1000種類とか500種類とか、頻繁にセールをしていますが、秋葉原店だとセール品も買いやすいですね。

――要するに、MtGで欲しいカードあったり、逆に今使わないから古いカードを売りたいのなら、秋葉原店がお勧めということですか。

齋藤氏: はい、そんな感じです。もちろん、トーナメントセンターもお勧めです。高田馬場だと山手線の反対側なので、ちょっと秋葉原からは時間がかかりますが、どちらも便利に使っていただけます。「1日たっぷりMtGするぞー」というときは、トーナメントセンターがお勧めですかね。

――ただ、トーナメントセンターでも、土日とかだと席一杯になっちゃうときが結構ありますよね。

齋藤氏: そうですね。それでいうと、静岡店や成田店がお勧めなんですけど(笑)。福岡店もお勧めです(笑)

総合TCG店での経験も豊富な小櫃店長

――小櫃店長とMtGの関わりについて教えてください。

小櫃氏: もともと、TCGを最初に始めたのは、中学生くらいのときです。24年くらい前ですかね、友人と一緒にMtGを初めまして、いったんMtGをやめた時期もありましたが、他社さんのTCG店ですが、アルバイトで店で仕事をさせていただいたことがありまして、またMtGの魅力を再発見して、どんどんのめり込んでいきました。総合TCG店で働いておりましたので、いろいろなTCGタイトルを触りましたが、いろいろなタイトルを見れば見るほど、半分手前味噌な話ですが、MtGの楽しさが際立ってまして、MtGにいったん落ち込みがみえたときに、ここで落ち込んでしまうのをただ座してみているのは辛くなって、では、僕の立場からなにができるかといったら、やっぱり弊社、晴れる屋ですよね。専門店の晴れる屋に入って頑張っていこうと思って、晴れる屋に入社しました。

齋藤氏: 小櫃さんの前職は、総合TCG店の大手、全国展開している店舗さんで、MtG担当の一番偉い人みたいな感じで、MtG以外のTCGも含めて、いろんな店舗さんを見ていたんですよ。それで、晴れる屋でも何店舗も見てるんですけど、支店の責任者の上司でもあり、秋葉原店の店長でもある感じです。他の支店の店長と社長の間に入っている人なので、エリアマネージャーというか、大店長というか。

――そういう意味では、開店からしばらくは小櫃さんが店長をやられているけど、いずれは別の方になる可能性はあるわけですね。

齋藤氏: うん、そうですね。この店舗は非常に重要なので、最初は間違いのない方に入ってもらってるという感じです。

――では、小櫃店長さんに、秋葉原店をどのような店にしたいかをお訊きしたいです。

小櫃氏: 秋葉原というエリアには、たくさんのTCG店がありますよね。当店にお越しいただくまでにも、それこそラジオ会館さんとか、電気街口を出てすぐ目に付くものといったら、たぶんMtGじゃなくて、他のカードゲーム、広告とか、まあTCG時代になっていると思うんですよ。その中で、秋葉原のMtG専門店は、当店がたぶん3店目だと思いますが、専門店でもやれるんだというアピールと、専門店をやっていくことで、TCG全体の中でのMtGの価値を高めていくことができればと思ってます。サブカルチャーの中心地である秋葉原から、日本全国へMtGの勢いを付けていくとか、世界中にアピールしていくということの一翼を担うことができればと考えております。それができるような店舗にしたいです。アピールポイントはさきほど齋藤がいったように、買取とか、支店で一番の品揃いだとか、そういったところを強く出していきたいと思っております。

それから、他の晴れる屋の店舗だと、買い取ったカードを、在庫として販売展開するまでの時間が、丁寧な作業をしているからということもあるとは思いますが、若干タイムラグがあるんですよね。秋葉原店は、そのタイムラグをとことん少なくして、買い取った商品をすぐ店頭に出すことを意識したいと思っています。

――なるほど、それはいいですね。人気急上昇中で、入手が難しくなったカードをすぐに欲しいという人に。

小櫃氏: はい、お客様のニーズに応えやすいというのもありますし、回転率を上げるということは、利益を多少落としても、回っていくことでカバーできるということもありますので、お客様側としても店舗側としても利益に繋がると考えています。

今のMtGの盛り上がりは過去最大級

――お二人からみて、今のMtGの盛り上がりというのは、これまでのMtG26年の歴史の中でも最大級のものなのでしょうか?

齋藤氏: はい、最高規模だと思います。

小櫃氏: 一般の方の認知力という点で、すごい大きな差を感じますね。

――例えば、秋葉原駅構内でも、デジタルサイネージでMtGの広告が流れていたり、YouTubeでも動画の中にArenaの広告動画が入ったりしているので、ウィザーズ・オブ・コーストもかなり販促に力を入れている感じがしますね。

齋藤氏: はい、かなり盛り上がっていますね。スタンダードだけでいえば、一番盛り上がっていた昔、20年くらい前、テンペストからウルザブロックぐらいのときと同じくらいの活気ですが、今はArenaだったり、YouTubeなどの動画だったりとかで周知が増しつつ、スタンダード以外にも遊び方がたくさんあり、楽しみ方に多様性がある状態なので、昔とは全然違います。それらをすべてあわせると。今の活気はまだまだ上がっていくと思うんですよね。昔、MtGで遊んだことがある人や、今興味だけある人が、これから始めていくと思うので、かなりアツイかなあと。今は、MtGを始める絶好のチャンスかなと。やはり、サーフィンしてて、波が大きくなる直前に乗ると楽しいじゃないですか。実際にサーフィンしたことないんですが(笑)。サーフィンの動画を見るとそんな感じかなと。

 また、日本は今、MtGの市場規模がアメリカに次いで世界2位、古物を含めるとひょっとしたらすでに世界1位かもしれないんですよ。そういった意味でも、今MtGを始めるのはお勧めです。

――最近は、ArenaからMtGを始める人が増えたり、日本絵PWが盛り上がったり、MtGにとっていいニュースが多かったのですが、渡辺選手が失格になった件で、トップレベルではアナログのカードを使うことに限界が見えたのではないかという話もあったりしますが、そのあたりのご意見をお伺いしたいです。なかなか言いにくいことかもしれませんが。

齋藤氏: 僕の本音は、あまり世に出すべきじゃないと思って、生きています。僕も、結果として、たくさんのファンの方をがっかりさせてしまったことがあるので。確かにテーブルトップには、アナログでしか起こり得ない、ネガティブな出来事が起こります。それはデジタルより起こるんですよ。でも、アナログでしか味わえない、ポジティブなことのほうが圧倒的にたくさんあって、僕はそのデジタルのMtGよりアナログのほうが、非常にメリットが大きいと思っています。今の世の中では、アナログの強いものが、なかなか生み出されづらくなっていく中で、MtGはアナログのほうが、メリットが大きい、魅力が大きい、ポジティブが大きいという感じです。確かに悲しい出来事もときどき起こってしまうものの、僕は、そのプラスマイナスというか、トータルで見るタイプなので。

 やはり、インターネットって、ネガティブなことで盛り上がりやすいのですが、アナログでMtGをしている皆さん、平日の仕事帰りだったり、土日にイベントに来て下さる皆さんとか、昔、リアルでカードゲームをやっていた皆さんなら、人と会って、カードゲームをする素晴らしさは、インターネットでわざわざ言わずとも本能的に分かっている部分が大きいと思います。そうした体験の中で、ハッピーやんこれって、分かっている人は多いと思うので、僕はあんまり心配していないというか、むしろ、MtGはもちろん、TCG全体について、明るい未来を感じてますね。

 公式が長年、競技マジックとかプロとか、プロモーションの一環でずっと行ってました、その伝統があるものを大事にするのも重要ですが、それはMtGを楽しんでいる方のほんの一部でしかないですよね。その競技レベルで戦うとか、プロを目指してとか、というのは確かに大きな魅力ですが、そういう方は、僕の感覚では1割くらいという感じなんです。やはり、仲間内でいろんなシーンでMtGを楽しむ方、オフィスでとか、バーでとか、自宅でとか、その仲間や友人同士、知人同士楽しんだり、コミュニケーションツールとしてプレイするという楽しみ方。あとはArenaをたまにプレイするのでもいいですし、ショップに月1回だけ来て、ちょっと遊ぶ日があるっていう方もいますので。

――プレリリースだけ出る方もいますよね。

齋藤氏: はい、プレリリリースは、新作で遊べる交流会みたいな感じですからね。

小櫃氏: 麻雀が、PCというかデジタルとアナログをうまく両立している一つのロールモデルなのかなと。コンピューターの力を借りて、麻雀のルールを覚えて、実際の麻雀をやってみたり、コンピューター麻雀だけの人もいるかもしれないですし、アナログだけの人もいるかもしれないですけども、MtGもそれにすごく近い印象は受けますね。アナログの良さってやっぱり、手で牌を切りたいみたいなのもあるかもしれないですし。

齋藤氏: 五感で楽しめますからね。

小櫃氏: 対面でやるゲームですしね。

齋藤氏: バーチャルというか、デジタルもいずれはそうなっていくんでしょうけど。ARとか、HMDだけじゃなくて、手にもなにか付けてやりだすんでしょうね。匂いとかも出て。

――まあ、SAOとかそういう世界ですからね。

小櫃氏: 10年、20年先のMtGはそういう世界になるかもしれないですね。ただ、僕は、アナログも残り続けるなと、確信はしてますね。

2つめのトーナメントセンターを大阪か名古屋に作る

――今後の目標とか展開とかありましたら。前にインタビュー記事でみたのは、店を移転する度にプレイスペースが5倍くらいになってるから。次は1,500席くらいの店を目指すとか。

齋藤氏: それもやりたいんですけど、1,000席くらいの店とかもやりたいですし、トーナメントセンター、200~300人が遊べるMtG専門店も、日本の主要都市、とりあえず、東京、大阪、名古屋とかには作りたいです。

――晴れる屋のトーナメントセンターの定義ってなんですか?

齋藤氏: トーナメントセンターは、通常の晴れる屋が100席までの範囲なのに対し、200席以上のイメージですね。あとは、開催されるトーナメントの数ですね。支店とトーナメントセンターだと、1日に開催されるイベント数の平均が4倍くらい違いますね。都市部で、平日休みの方がかなりいないと厳しいスタイルなんですが。イベント成立数でいうともっと差がありますね。7~8倍とか違いますね。とにかくイベントの数が4倍とか5倍とかあって、席数も多くて、在庫も多くて、スタッフも多くて、まあ一言でいうと、晴れる屋の巨大店という感じですね。

――大阪店と名古屋店は今、トーナメンセンター昇格をかけて戦ってますよね?

齋藤氏: そう、今、大阪店vs名古屋店でバトルに勝ったほうが、先にトーナメントセンターを作りますという勝負をやっていて、今、ちょうど5対5ですね。先に7勝したほうが勝ちで、今5対5。これ、やらせなしで5対5なので(笑)。もともと、トーナメントセンターを名古屋に出すのと大阪に出すのではどっちがいいか調査していたのですが、そのスコアが僅差すぎて、スコアは少し名古屋のほうが高いけど、大阪のほうが潜在力ありそうだなとかで、トーナメントセンターは2時間圏内から、集まってくれる場所なので、どっちに出すかをガチで競って決めようと、お客さんにもそれをアピールして、より求められているほうに出そうみたいに、それ自体が盛り上がりにもなればいいかなと。だから、この2つの場所にはトーナメントセンターを作る予定です。負けたほうは、1年後になるか、2年後になるか、状況次第ですが。

――では、まず大阪か名古屋のどちらかがトーナメントセンターになって、もう片方も数年以内になるわけですね。

齋藤氏: はい、やはり大阪、名古屋、札幌、福岡とか、主要都市には全てトーナメントセンターが欲しいんですけど。東京も2つめのトーナメントセンターを作ったりとか、神奈川に作ったりとか、神奈川なんてまだ出店もできてないですけどね。したいんですけどね。
小櫃氏: いい場所がないんですよ。

――川崎とか横浜とかに晴れる屋の店舗が欲しいという人多そうですけどね。

齋藤氏: やはり、いくつか出したい場所はあって、出す優先度が高い場所はあるんですけど、この後がどういう順番に最終的になるかはテナント次第なところもあります。場所がないと開けないので。

――そういう意味では、今後もタイミングを見て、積極的に店舗を増やす方向ということですよね。

齋藤氏: そうですね。ただ、今だと出せない都道府県は、半数くらいはありますね(筆者注:このインタビューの数日後、晴れる屋9番目の店舗となる仙台店のオープンがアナウンスされた)。

YouTuber「トモハッピー」としての手応えを感じる

――齋藤さんは最近、トモハッピーとして、YouTubeで積極的に動画を配信していますが、その反響はいかがでしょうか。

齋藤氏: MtG専門店晴れる屋が関わる話としては、結構、直接YouTubeのコメントだったり、Twitterのリプライ、DMだったりで、トモハッピーさんの動画を見て、MtGを始めましたとか、始めたいとか、とてもたくさん連絡をもらってます。晴れる屋チャンネルで見たというのもあるんですが、晴れる屋チャンネルはMtG専門で、すでにMtGをプレイしている人に向けたチャンネルなので。

 僕のトモハッピーチャンネルは、僕がMtGの人なので、MtGのカードとかMtG関連の内容もいっぱい出てきますが、MtGをプレイしていない一般の人でも見られるかな、楽しんでもらえるかなというものを目指しています。逆にMtGに深くはまっている人からしたら物足りない内容かもしれませんが、その結果、他のYouTuberとの繋がりとか、僕やMtGを知っている人が増えるのに役立っています。頑張って続けていけば、もっとMtGを広められるんじゃないかなと思ってますし、手応えも感じてます。

――トモハッピーチャンネル、毎日更新されてますけど、大変じゃないですか?

齋藤氏: 大変です。大変ですけど、楽しくやるように気をつけてます。あまりムキになりすぎないように。それが大事だということを、プロとしての活動で学びました。ベストを追い求めすぎると、大きな喜びをつかめたときは嬉しいんですけど、日々が苦しくて。常に楽しみながらやるという姿勢だと、日々もハッピーだし、日々ハッピーなら、成功もつかみやすいんですよね。ポジティブを保ってやるということが大事です。

 それで晴れる屋も、この事業もワクワクする方向に判断していくから、楽しめてるからずっとやっていけてるし、皆さんの助けもあって、伸ばせていけてます。トーナメントセンターなんて、もろに、そのトキメキアクセルだったし、秋葉原店も、今一個一個全国スゴロクを埋めていくより、ここらへんで、でかいのをやっておこうよというタイミングでもありました。MtGがすごく盛り上がっていて、うちの会社のコンディションもいい状態なので、ちょっと攻めのタイミングではあるんですよね。

 それで、秋葉原への出店だったり、YouTube、今、晴れる屋チャンネルも強化していますが、僕もトモハッピーとしてYouTubeを始めたりとか、もう全部オフェンスを強めるフェイズだなというところと繋がっていますね。さっき言ったように、トーナメントセンターの2号店を今年出す予定もありますので、テナント次第で来年になるかもしれませんが、バトルに勝った方にトーナメントセンター2号店を出しますからね。

 それ以上の大きなことは、まあどこまでできるかなという感じですけど、今はYouTubeでいえば、ワクワク増やしの種を蒔いているところで、やはりもっと世の中を知って、いろんな人と知り合って、MtGを広めるためにできることはまだまだ増やしていけると思うので、そのきっかけ作りにもいいですね。今、その動画の活動は。

――最後に読者へのメッセージをおふたりからお願いします。

齋藤氏: 今、全国8店舗の晴れる屋でMtGの初心者体験会を頻繁に行っています。無料なので、MtGに興味があるならお越し下さい。臨時でも余裕があればやりますし。MtGは、とても楽しいので、是非体験して下さい。

小櫃氏: Arenaが今これだけ盛り上がっていますが、まだオープンベータなんですよね。これが、正式版になったらもっともっと盛り上がるかもしれない。そうしたときに、ArenaというゲームのプラットフォームはPCですよね、PCと秋葉原は親和性も高いので、趣味の一環として何か触れあう機会があったときに、こう言ってしまうとあれなんですが、トーナメントセンターは、ちょっとハードルが高めなところがあると思うんですよね。それに対して、秋葉原店はもっとカジュアルに寄れる場所なので、是非、秋葉原に来たときに、興味があったら気軽に寄ってもらいたいと思います。秋葉原駅から徒歩1分ですので、気軽に立ち寄るのにいいと思います。

――ありがとうございました。