【特別企画】
かぶせ持ちの決定版! ゲーミングマウス「G604」ファーストインプレッション
新素材でグリップ力大幅アップ。ずっしりボディと大量のボタンであらゆるゲームシーンをサポート
2019年10月31日 14:00
- 【ロジクールG G604】
- 11月21日発売予定
- 価格:12,760円(税込)
ロジクールというのは不思議なメーカーだ。筆者は現在の「ロジクールG」ブランドになる以前からずっと同社を担当しているが、このメーカーはおもしろいぐらい毎年のようにポリシーがころころ変わる。あるときはワイヤレス技術(G900)、あるいは独自センサーの採用(G304)、軽さ&バッテリー駆動時間(PRO Wireless)という場合もあれば、乾電池駆動(G603)という温故知新的な展開、と思ったら人気デザインの最新テクノロジーでの復刻(G502 LIGHTSPEED)、はたまたワイヤレス充電(POWER PLAY)という意外なアプローチだったり。担当としてまったく飽きさせないメーカーだ。
この背景には、1つにはそれ以前のゲーミングマウスの絶対的な指標だったトラッキング解像度(DPI)競争に完全に終止符が打たれたことがある。マウスメーカー各社は、無意味なトラッキング解像度競争をやめ、冒頭で紹介したように、付加価値の充実に力を注ぐようになっている。
このためeスポーツ関係者や選手から「中村さん、ロジクールで今どれがオススメですか?」と言われるとちょっと困る。ロジクール自身がどんどんトレンドを変えてくるからだ。かつては最初の数字が多い方が高性能だった。つまり、表記的にはG903が最強のはずだが、ロジクール自身がとっくの昔にこの命名規則をゴミ箱に投げ捨てている。直近で言えば、G903、PRO Wireless、G502 LIGHTSPEEDの3モデルがハイエンドモデルとして並び立っており、マウスとしては同等の最高性能を擁しながら、なおかつ上記に記したような独自の付加価値を備えている。あとは完全に好みの問題だ。
そうした中で“第4の刺客”がやってくる。人に説明するのがさらにややこしくなるからこれ以上ラインナップを増やさないで欲しいのだが、彼らは増やすことを辞めないだろう。ロジクールとはそういうメーカーだからだ。というわけでロジクール“第4の刺客”である「G604」のファーストインプレッションをお届けしたい。「G604」は11月21日発売予定で、価格は12,760円(税込)。
またまたデザインが変わり持ちやすさに磨きが掛かったMMORPGマウス。
「G604」は、代々6を名乗るMMORPG向けゲーミングマウスの最新モデルだ。旧ロジクールG時代の「G600」をベースに、2013年にリリースされたその新型「G602」のワイヤレス専用&電池駆動という個性を受け継ぎながら、新デザインで再設計された新たな時代のMMORPG向けマウスとなっている。
基本仕様としては、最高16,000DPIの性能を持つHERO16Kセンサーを採用し、接続はワイヤレスのみ。駆動は単三乾電池で、LIGHTSPEED時で240時間、Bluetooth時で最大5.5カ月持つ。本体サイズは、G502 LIGHTSPEEDよりもやや大きい、現行モデルでは最大規模で、気になる重量は電池込みで135g。こちらも現行モデルの中ではもっともヘビーとなる。
ところで何をもって“MMORPG向けマウス”と名乗っているのかというと、その左側面に用意された大量のボタンの存在だ。元祖の「G600」は、左側面に12個ものボタンを用意し、「一体何にそんなに使うのか」と世界に衝撃を与えたが、「G602」では半分の6個に減り、今回の「G604」もそれを踏襲して6個となっている。「G602」は、その6個と、左右メインボタンも含めて全部で15個のボタンを備えており、個々にショートカットを割り当てることで、マウスだけでかなりの操作が可能となる。数あるPCゲームの中でも、もっとも多くのキーを使うのがMMORPGであるため、自然とMMORPG向けとなったわけだ。
その特徴となる6つのボタンは、これまた「G600」とも「G602」とも異なる。「G600」はキーパッドのような“ボタン”、「G602」が多くのゲーミングマウスに近い“スイッチ”だったのと比較すると、6つの鋭い突起だ。これまでにあったような“遊び”の部分もなく、微動だにしない6つのやや鋭利な突起物が側面に鎮座している。
よくよく見ると、6つのボタンそれぞれの高さが微妙に違う。どうやら親指にフィットするように高さが変えられているようだ。各ボタンはかなり固めで、先述したように遊びがなく、押す際はやや押し込む感じになる。同じスカート形状でサイドボタンを採用する「G502」と比較する場合、「G502」はボタンが軽すぎるため、親指を置いたままだと誤操作が発生してしまうが、「G604」の場合、6つのボタンの上に親指を置いたままでも誤操作はなさそうで、重量配分が絶妙だ。やはり、多ボタンマウスの3世代目として、無数のフィードバックが反映されている印象がある。
ちなみに、マウスとしての全体のデザインは「G602」寄りだが、「G600」とも「G602」とも異なる金型で再設計されており、完全に新デザインだ。大きな特徴は、パーツが本体は左右ボタン部、中央部、手根部(手前部分)の3部位に分かれており、手の平を置く中央部だけ素材が異なるところだ。
左右ボタン部、手根部は既存のマウスと同様に“ザ・プラスチック”という感触のABS樹脂が使われているが、中央部は、ロジクールGのゲーミングマウスとしては初採用となるABS樹脂と熱可塑性エラストマー(TPE)の二重構造になっている。このTPEは、ゴムのような性質を持った素材で、さらに熱を帯びると柔らかみを増し、さらにグリップ力が増強されるという特殊な特性を備える。
プラスチックとゴムの中間のような触り心地に、最初に触ったときは「なんだこれは?」と未知の感触に対するわずかな抵抗感があったが、プラスチックでありながら確かなグリップ力に「おお、これいいじゃん!」とわずか数分で肯定派に転じたことを正直に告白しておく。
この中央部の二重構造は上部だけでなく、親指を置くスカートを備えた左側面と、薬指を添える右側面にも適用されており、この結果、「G604」は文句なしにロジクールG史上最高のグリップ力を誇る。ガシッと持ってぶんぶん動かしても微動だにしない強烈なグリップ力は大きなセールスポイントと言える。
最大の魅力は、ゲーマーが忘れかけていたかぶせ持ちの味わいにあり
その上で「G604」の最大の魅力は何かというと、それはもうただひとつ“かぶせ持ちマウス”だということだ。ゲーミングマウスメーカーとしてのロジクールは、もう完全につかみ持ち、あるいはつまみ持ちを得意としてきたメーカーだ。「G900」で、有線を凌ぐ無線応答速度と長時間のバッテリー駆動を実現してからは、その傾向に拍車が掛かり、特にプロシーンではとにかく“軽さとコンパクトさ”に重きが置かれてきた。
実際、初代「PRO」は、小型軽量のG304のデザインを踏襲したコンパクトボディ(83g)で完全につまみ持ちに適したマウスだし、第2世代の「PRO Wireless」も標準サイズながらわずか80gしかなく、つかみかつまみ向けだった。もっとも、持ち方はあくまでユーザーが決める話で、これらのマウスをかぶせで使ってもいいわけだが、プロダクトとして“つまみ/つかみにあらずんばゲーミングマウスにあらず”という風潮はちょっとどうかと思うところもあったわけである。
そこにきて「G604」である。デカい! 重い! ボタン多すぎる! というわけで、「G602」と同様にワイヤレス専用&乾電池駆動であるため、「PRO Wireless」を持ってから「G604」に持ち替えると、重りでも入ってるかのようなズッシリ感がある。どう考えてもかぶせ持ち以外の持ち方ができないデザインだ。
そこで覚悟を決めて右手をマウスに思い切って預けてみると、これが心地よい。凄く良い。親指と薬指で軽く掴んでせせこましく動かす感じもなく、やや神経質風にに左右ボタンに爪を立てる必要もなく、エルゴノミクスデザインにしたがってマウスに手を添えればそのまま最適な形で包み込める。そのまま腕を前に動かせば、マウスポインタがすすっとと動く。
かつてのゲーミングマウスは、あのベストセラーの「IntelliMouse Explorer 3.0」を筆頭にエルゴノミクスデザイン全盛期で大ぶりなマウスが多かったため、自然とかぶせ持ちが多かったように記憶しているが、その頃の忘れかけていた感覚が甦ってくる。
加えて「G502」を彷彿とさせる長大なスカートの存在も「G602」の特徴のひとつだ。スカートに親指を完全に預けたままマウス操作を行なうことができる。筆者の場合、PCはゲームだけでなく、原稿を書いたり、WEBも見たり、Twitchを見たりと、仕事道具として色んなことに使うわけだが、そういう場合に、「G602」がもたらすかぶせ持ちの安心感はとてもいい。
逆に言うと、かぶせ持ちの構造上、指や手首ではなく“腕”で操作することになるため、FPSやMOBAのような、ドット単位の精密かつ高速な操作には難がある。「ファイナルファンタジーXIV」や「ファンタシースターオンライン2」のようなMMORPGをはじめ、「シヴィライゼーション」や「トロピコ」のようなストラテジーゲーム、それから「ハースストーン」や「Shadowverse」のようなカードゲームなど、シビアな操作が要求されないゲームだとかなり幸せになれると思う。
ゲーミングマウスのトップブランドが6年振りにリリースしたかぶせ持ちマウス。ぜひ活用したいところだ。