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読み込み速度「PS4の100倍」、PS4下位互換は「ほとんど全て」!プレイステーション 5技術解説動画詳報

3月19日 公開

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、プレイステーション 5の技術解説動画を3月19日に公開し、PS5の設計思想やスペックに関する詳細を明らかにした。

 動画で解説を務めたのは、PS5のリードシステムアーキテクトであるマーク・サーニー氏。動画ではPS5のビジュアルや全体像は明かさないまま、設計思想として重要な3つのトピック、SSD、GPU、3Dオーディオについて紹介した。

PS5のリードシステムアーキテクトのマーク・サーニー氏
【The Road to PS5】

PS4の「速度100倍」! 独自の高速SSDを標準搭載

 サーニー氏によれば、PS5の設計思想は多くのゲーム開発者との話し合いの中で決定したという。PS5では新たな機能も備えているが、現役の開発者が1カ月以内で習得できるようなものになっている。

 サーニー氏が「次世代の鍵」とするもののひとつが、SSDの搭載。PS4で標準採用されたメインストレージはHDDだったが、PS5ではSSDを標準搭載する。

 SSDを搭載する最大のメリットはローディング時間。シーケンシャルアクセス速度はPS4のHDDが50~100MB/sだったところ、PS5のSSDでは5.5GB/sを実現する。

 PS4でもHDDをSSDへ換装することで、2倍程度の速度向上が実現できたが、PS5ではSSDそのものをRAMとして扱うなどメモリの読み込みも工夫することで、PS4比較での「速度100倍」が実現する。

 この速度が実現することにより、ゲームの作り方も大幅に変わるとサーニー氏は言う。たとえば3Dモデルのゲームでは、マップ全体を一気に表示させると大量の時間がかかるため、視界に映らない場所はカットしたり、分割して読み込ませることでロード時間を短縮させていた。しかし高速SSDがあれば、視界に映らない背景も含めてそもそもロードしておくことが可能となる。

 また「Marvel's Spider-Man」の都市などでは、ある程度の塊をグループ化することでスパイダーマンの高速移動にも耐えうる読み込み速度を実現していたが、こうした手法ではローディング時間が短縮できる代わりに、メールボックスなど同じようなオブジェクトが頻繁に登場してしまうことにもつながる。つまり、これまでプログラム上の工夫が必須だった「読み込み速度」の制限がより緩まり、開発者がより自由にゲームを設計することができる。

 SSDの標準容量は825GB。これはゲーマーのあらゆるプレイパターンを検証した結果、SSDの価格とプレーヤーの満足度のバランスを考えて決定されたという。加えて、ストレージの追加も可能となっている。

GPUはAMDの次世代GPU「RDNA 2」カスタムに

 続くGPUの紹介では、AMDの次世代GPU「RDNA 2」をベースとしたカスタムGPUを採用したことが明かされた。

 GPUはPS4タイトルの下位互換にも対応しており、これはPS5の標準機能として搭載される。サーニー氏は「互換性の確認はタイトルごとにテストする必要がある」としながら、現時点では「プレイ時間の長いトップ100のPS4タイトルをテストしており、そのほとんどはPS5のローンチと同時にプレイできるようになると期待できる」と述べた。なお、SIEの補足によれば「既に数百のゲームを検証しており、発売に向けてさらに数千のゲームの検証を行う準備を進めている」とのこと。

 またカスタムGPUの機能として、AMD GPUならではのグラフィックス機能「プリミティブシェーダ」やレイトレーシング機能にも対応する。レイトレーシング機能では秒速100億単位の光線を簡単に表現できるほか、フルレイトレーシングにしたとしても、秒速10億単位の光線を表現可能。

 すでに開発中のPS5用タイトルでは、「レイトレーシングベースの陰影や、複雑なアニメーション表現の成功を確認している」と述べた。さらにCPUとGPUの処理バランスを常時チェックすることで、消費電力を抑えているとした。

「次のレベルのリアリズム」を実現する3Dオーディオ機能

 そして、サーニー氏が最後に触れたのが「3Dオーディオ」について。3Dオーディオは、サーニー氏が「次世代の夢」として語ったもので、開発者とともに発展させる狙いがあることを強調した機能だ。

 サーニー氏が3Dオーディオを重要視するのは、精度の高い3Dオーディオがあることで、すべてのゲーム体験がより向上するから。周囲から回り込むように音声が聞こえることで、よりその場にいる感覚を味わえるし、FPSなどでは「右後ろのこの距離に敵がいる」など実際にゲームプレイにも影響する。

 PS5では「TEMPEST 3D AudioTech Engine」と呼ばれる独自の音声エンジンを採用し、VR、ヘッドフォン、スピーカーといったあらゆる音声環境で3Dオーディオ体験を提供できるようにする。特にテレビスピーカーなど正面からのみ聞こえる環境であっても、PS5では疑似3Dオーディオが体験できるとした。

 3Dオーディオ実現のために、サーニー氏はHTRF(頭部伝達関数)、つまり人によって異なる音の聞こえ方のバラツキを調査。「その場にいる感覚」を味わうにはその人のHTRFに合わせた音の出力がキーとなるが、PS5のローンチ時では5つのプリセットが提供される。

 HTRFについては、将来的に耳や頭の写真をSIEに送ると、ニューラルネットワークを駆使して個人に合わせたHTRFプリセットが提供されるようになるかもしれないという。これらは今後の研究分野であり、「みなさんと歩むことになるだろう旅」だとサーニー氏は話した。3Dオーディオが実現することで、すべてのプレーヤーが「次のレベルのリアリズム」を体験できるだろうと締めくくった。