【特別企画】

メインイベントは「LoL」トーナメント!全国初の試み「障がい者eスポーツ大会」が群馬県にて開催

8月31日 開催

会場:ビエント高崎 ビッグキューブ

 ワンライフは8月31日、障がい者向けのeスポーツ大会「第1回障害者eスポーツ大会2019 GUMMA」を開催した。障がい者限定のeスポーツ大会は他に例を見ない全国で初の試みであり、メインイベントでは100万円という多額の賞金額も相まって非常に注目を集めたイベントだ。

 「第1回障害者eスポーツ大会2019 GUMMA」ではメインステージで行なわれたトーナメント以外にも、障がい者向けのサービスや商品の出店や車椅子で行なわれるスポーツ「ポッチャ」や「車椅子バスケ」の体験、「ぷよぷよeスポーツ」や「ストリートファイター」等が試遊できるコーナーなど数多くの催しが行なわれていた。まさに「eスポーツ×障がい者」をコンセプトにしたイベントに相応しいラインナップであったと言える。障がいの有無に限らず多くのサービスに直接触れる事ができ、eスポーツと障がいの両面に対して理解を深められる機会となっていたほか、参加者の中には子供の姿が目立ったのも印象的だった。

障がい者の方向けのサービスや、相談コーナー、「コギ―」や「ボッチャ」と言った車椅子スポーツの体験コーナーが会場には用意されていた
eスポーツの体験という事で「ストリートファイターV」「ぷよぷよeスポーツ」など様々なゲームの試遊スペースも用意された
ステージでは「ぷよぷよ」プロゲーマーlive選手によるエキシビジョンマッチも行なわれ、「1連鎖だけでも勝てる」などの名言を残しつつプロとしての実力を披露

優勝賞金は100万円!「League of Legends」にて行なわれた激戦

 本大会のメインイベントとして据えられたのは、優勝賞金100万円を掛けて競い合う「League of Legends」を使用したトーナメント戦「GUNMA E-SPORTS FESTIVAL(LoL)」だ。本トーナメントは事前応募によって集ったプレーヤー達をパワーバランスが均等になるように4チームに分け、各チームはオンラインコーチングによって大会に向けた調整と練習を行ない、実力とチームワークを高めてトーナメントに挑むという形が取られた。

 これは今回使用したゲーム「League of Legends」が非常に複雑な戦略とプレイング、そして何よりチームワークが求められるチーム戦のゲームである為だろう。通常のトーナメントとは違い本大会は出場に条件がある都合上、出場者の中で大会専用のチームを結成する必要があり、選手のパフォーマンスを高める意味でもパワーバランスと事前条件を合わせる事に強い意味がある。

 上記のような采配もあってか、トーナメントでは非常に熱く拮抗した試合展開が数多く見受けられた。選手が実際に集まるオフライン環境でのトーナメント戦であった為、試合中もチームメイトで声を掛け合ったり、難聴の障害を患っている選手にはメモ帳やゲーム内でのマーカーなどを用いてコミュニケーションを取るなど、助け合いや協力といったチーム戦としての醍醐味がフルに発揮されていた。障がいがあったとしてもそれを乗り越え、チームで支え合い戦う姿は観客の心を確実に掴み、熱く燃やす。

 さらに今回出場した選手やチームにはそれぞれ特徴があったのも、試合が盛り上がった一因だ。第1回戦は「ファーストブレイカーズ」VS「特攻野郎Bチーム」というチームが対決したのだが、どちらも名前通り攻撃を得意としているチームであり、チャンピオン同士の熱い激突が幾度となく行なわれた。最終的には最初のキルを獲得した「ファーストブレイカーズ」が勝利を収めたが、どちらも全力を出し切った非常に見ごたえがある試合だったと言える。

 続く第2試合に登場したチーム「YBKTC」にはなんと"魔界出身"の選手が出場しており、会場を一際大きく沸かせた。対するチーム「ウォールブレイカーズ」のリーダーであるGreenBird選手も「京都から群馬を制覇しに来た」と発言し会場はヒートアップ。結果はチーム「ウォールブレイカーズ」の勝利となったが、非常に熱い展開を見せてくれたと言える。試合そのものはもちろん、選手やチーム自体が秘めた強い個性が大会を一層盛り上げていた。

【各チームが激戦を繰り広げるトーナメント戦】
巨大スクリーンに対戦の様子が映し出され、戦いの様子が常に表示される
メインMCにはeスポーツキャスターの吉崎氏、実況解説はJaeger氏とあかさん氏が登場。わかりやすく熱い進行と解説実況で会場を盛り上げる
魔界からやってきたこちらの選手。他にも各チームや選手たちの個性が光っており、観客たちの応援にも熱が入る

 そして決勝戦、ついに「GUNMA E-SPORTS FESTIVAL(LoL)」決勝戦の火蓋が切って落とされた。対決するのは1回戦に序盤の先制を勝利につなげた「ファーストアタッカーズ」と、関西から群馬を制しに来たと強く語る「ウォールブレイカーズ」だ。まず最初に行なわれるのはお互いに使用できないチャンピオンを決めるドラフトフェイズ。両チームとも1回戦目を見ていたため、敵チームが前の試合で使用したチャンピオンを潰していく展開に。

 そして試合は序盤から大きな動きを見せた。「ウォールブレイカーズ」が先制キルを決めるとその後も順調にキルを重ね、序盤から5,000ゴールドを貯めるプレーヤーも現れる展開に。貯めたゴールドでチャンピオンを超強化すると、その強化されたチャンピオンを敵陣へ進ませるようにチームメイトがスキルやアイテムを使用し見事にサポート。作戦が成功しタワーを複数破壊する事に成功した。

 だが「ファーストアタッカーズ」も負けてはいない。流れを取られながらも相手の隙やミスを的確につき着実に味方の強化を行ない、相手を何度も味方の陣地から追い返す。その中で何度か攻めにも転じて相手のタワーも着実に破壊していく。しかし「ウォールブレイカーズ」のチャンピオン育成スピードも速くなり徐々に押されていく事になるが、それでも最後のネクサスだけは落とさせまいと防衛を続けていく。

 そして最後は防衛しきれば勝てるというラインまで戦線を巻き返し、自軍にて防衛に徹する「ファーストブレイカーズ」に、「エルダードラゴン」と「バロンナッシャー」のダブルバフを得て攻め切る準備が完了した「ウォールブレイカーズ」の決戦。まさにお互いの勝敗を分ける「攻め」と「守り」の最終激突。

 勝負は超強化されたパワーで押し切った「ウォールブレイカーズ」に軍配が上がった。両チームとも疲労困憊になるほどの熱い激戦を繰り広げ、会場では両チームに大きな拍手が自然と沸き上がった。この盛り上がりは間違いなく各eスポーツ大会で起こっている盛り上がりと同じものであり、そこにハンディキャップは関係ないのだと強く感じられる1戦だった。

【トーナメントを勝ち抜き賞金を受け取る「ウォールブレイカーズ」】
両者チーム一歩も譲らない接戦。表情から本気で取り組んでいることがよく分かる
勝利をつかみ取りチームメイト全員で賞金を受け取る。この栄光にハンディキャップの有無はもはや関係ない

優勝チームへインタビュー!「League of Legends」の魅力とチームメイトとの関係とは?

 今回優勝した「ウォールブレイカーズ」のリーダー兼ADCを務めた「GreenBird」選手がインタビューに応じてくれた。非常に気さくで明るい印象を持つ選手だが、試合前にPCが故障してしまうトラブルに遭いながらも、練習できない期間は他チームの情報収集に徹するなど非常に知的で勝利に徹底している選手だ。

――本大会に臨まれるに当たって、チームで意識したプレイはありますか?

GareenBird選手:BOTレーンを集中的に狙ったゲームメイクをしつつ、試合中にお互いができる事を見つけて臨機応変に動くことを意識していました

――今後もこのような大会が催されたら参加したいと思いますか?

GreenBird選手:ぜひ参加したいと考えています。対戦格闘ゲームなども好きなので他のゲームでもどんどん挑戦していきたいです。

――チームメイトの皆さんとはどのような間柄だったでしょうか?

GreenBird選手:実はしっかりと顔を合わせたのは今日が初だったので最初は静かな感じでした。ですが最終的には打ち解けたと思っています!今後も一緒にプレイしたいです!

――最後に、競技タイトルとなった「LoL」の魅力とは何でしょうか?

GreenBird選手:140体以上存在するチャンピオン達がどれも魅力的です!加えて個人の力だけは勝てず、チーム戦としての行動が勝利に直結するという部分も非常に魅力だと思っています!

――本日はありがとうございました。優勝おめでとうございます!

【「ウォールブレイカーズ」全員での1ショット】

「障がい者×eスポーツ」という新たな可能性が開けた「第1回障害者eスポーツ大会2019 GUMMA」

 繰り返しになるが、今回行なわれた「第1回障害者eスポーツ大会2019 GUMMA」は全国初の障がい者向けのeスポーツ大会である。今までに無い新たな試みであったが、今後に対する新たな可能性を切り開くものであったと強く感じた。何故ならハンディキャップがあったとしても特殊なコントローラーを使用したりコミュニケーションの取り方を工夫する事で、最も競技性の高いと言われたチーム戦ゲーム「League of Legends」を見事にプレイしきり、会場に居た観客たちを熱狂の渦に巻き込んだからだ。

 今回この「第1回障害者eスポーツ大会2019 GUMMA」を主催したワンライフの代表、市村 均弥氏はイベント後のインタビューにて「ハンディキャップを持つ人達にプロゲーマーが夢の選択肢の1つとなり、それらが自信となって経済的な自立ができる足掛かりとなってほしい」と語った。

 eスポーツは障がい者の新たな夢と繋がる。今回のイベントを体験して筆者はそう感じずにはいられない。普通のスポーツにパラリンピックがあるならeスポーツにだってそれに該当するイベントがあっても良いのだ。eスポーツと障がい者の両面に衝撃を与えた本イベントは非常に意義のあるモノだったと言えるだろう。「障害者eスポーツ大会」は第2回の実施も既に決定しているとのことで、今から開催が楽しみである。