【特別企画】

一撃必殺の威力は健在! 「SAMURAI SPIRITS」濃密体験レポート

「サムスピ」節全開! 新しくも懐かしい、真剣勝負のプレイフィールをたっぷりお届け!!

4月5日開催

会場:神田明神ホール

 SNKは4月5日、剣戟格闘ゲームのシリーズ最新作「SAMURAI SPIRITS」の発表会を神田明神ホールで行なった。新情報の発表だけではなく、会場では日本国内初となる本作の体験会も実施された。

 発表会の内容は別稿で詳しく紹介しているのでそちらをチェックして頂き、本稿ではプロゲーマーによるエキシビションマッチや体験会を中心に、最新作の手触りやプレイしての感想などをお伝えしていきたいと思う。

まずは声優VSプロゲーマーのエキシビションマッチ!

 1時間超に渡って行なわれた発表会のフィナーレには、司会進行を務める声優の天崎滉平さんとプロゲーマーによるエキシビションマッチが行なわれた。ゲストとして登壇したのはプロゲーマーのチョコブランカ選手。「サムスピ」は初プレイというチョコブランカ選手は、「サムライスピリッツの迫力や攻撃の気持ちよさなどを感じながら、楽しく遊べたらと思います」と余裕のあるコメント。対する天崎さんは「手加減は許さないですよ」と本気モードの様子。

【エキシビションマッチが開幕】
新キャラクターの鞍馬夜叉丸を演じる、声優の天崎滉平さん
プロゲーマーのチョコブランカ選手

 天崎さんが使用するのは「サムスピ」主人公の覇王丸。そして、カワイイキャラを使うと宣言していたチョコブランカ選手はカワイイとは程遠いアースクェイクを選択。試合開始と同時にダメージを取っていくのはアースクェイク。鎖鎌を伸ばすリーチの長い強斬りが覇王丸を襲う。

 開幕は押され気味だった覇王丸だが、相手の隙にうまく強斬りを差し込み、1撃でゴッソリと3割のダメージを奪う。体力はイーブン。怒りゲージを失う代わりに攻撃力が飛躍的に上がる、ダメ押しの「怒り爆発」を発動。怒り爆発状態でのみ使える大技「一閃」が炸裂。チョコブランカ選手から1ラウンドを先取する。

 良い滑り出しだったが、やはり怒りゲージが無くなったのは痛かったか、2ラウンド目は圧倒的な体力差でチョコブランカ選手が勝っていく。そして最終戦。チョコブランカ選手も怒り爆発して一閃を繰り出すが、うまくジャンプでかわす天崎さん。両者怒りゲージが消失し、あとは斬り合うのみ。互いに残り体力は僅かになり、牽制で飛び道具の旋風烈斬を飛ばす覇王丸だったが、ジャンプでかわされ、そのままジャンプ強斬りが直撃して試合は終了。予想以上の接戦であったが、勝利したのはチョコブランカ選手。

【天崎さん対チョコブランカ選手】

 チョコブランカ選手のほかにも、天崎さんと対決するプロゲーマーがもう1人スタンバイしていた。そのプロゲーマーとは、チョコブランカ選手の夫であり、数々の格闘ゲーム大会で優勝してきた実力派ゲーマーももち選手。緩い相手を所望していた天崎さんの前に、まさかのラスボスが登場。

【プロゲーマーのももち選手】

 天崎さんは先ほどと同じく覇王丸を選択。ももち選手はシャルロットを使用。試合開始と同時に天崎さんが秘奥義の天覇風神斬を狙うも、シャルロットのジャンプ強斬りがヒット。1度しか使えない秘奥義は潰され、オマケに大ダメージももらってしまうという二重の意味で痛い展開に。そこからは機敏な動きで距離を詰めるももち選手。立ち中斬りから必殺技のパワーグラデーションにつなげるコンボを見せつける。覇王丸の残り体力はほぼ0。この勢いでももち選手が1ラウンドを取ろうとしたとき、天崎さんが怒り爆発を発動。間髪入れず一閃を繰り出し、見事ヒット。強力な一太刀を浴びせ、まさかの逆転勝利。この最後の瞬間まで分からないのが「サムスピ」の面白さだ。

 1ラウンド目は見事な逆転劇を見せた天崎さんだが、怒りゲージが無くなった2ラウンド目からが地獄の始まり。2ラウンド、3ラウンドとシャルロットの武器飛ばし必殺技を食らってしまい、丸腰の状態にされてしまう。武器を失って弱体化している覇王丸をジワジワと追い込んでいき、この戦いを制したのはももち選手。

【天崎さん対ももち選手】

 エキシビションマッチのトリを飾ったのは、ももち選手とチョコブランカ選手のプロ同士による対戦。お互いにキャラクターを変え、ももち選手はガルフォード。チョコブランカ選手は柳生十兵衛を選択。プロ同士の戦いだけあり、どちらも引かない互角な試合展開。互いに飛び道具の撃ち合って様子見をしていたが、攻め込んだのはももち選手。姿を消して相手の頭上から降ってくる忍者ならではの技・レプリカアタックで、見事奇襲が成功し、1ラウンドを先取したのはももち選手。

 後がないチョコブランカ選手。2ラウンド目の中盤、互いの体力が残り半分といった場面で怒り爆発をしたのはチョコブランカ選手。勝負の一閃が見事決まり、1ラウンドを取り返して最終ラウンドに突入。怒りゲージを失ってかなり苦しい十兵衛に対して、ガルフォードは開幕から怒りゲージマックスで攻撃力が格段に上がった状態。威力の上がった状態を活かし、ガンガン攻めていくももち選手。残り体力僅かな十兵衛に、最後はダメ押しの一閃を決め、圧倒的な強さでももち選手が勝利した。

 試合後チョコブランカ選手は、「普段は対戦しても結構一方的にやられちゃうんですけど、ここまで食らいつくことができて楽しかったです」と大満足の様子。これですべてのエキシビションマッチが終了。いよいよ待ちに待った試遊会の時間だ!

【ももち選手対チョコブランカ選手】

そして待望の試遊会に参戦! 1撃の重さ、過激なバイオレンス表現……これこそが「サムライスピリッツ」!!

 「サムライスピリッツ閃」から約11年。「サムスピ」ファンとしては待ちに待った最新作である。前作の「サムライスピリッツ閃」は空中コンボが主軸となる全く別のゲームといった感じだったが、今作ではコンボなどは取り入れず、差し合いのジリジリ感が熱かった「真サムライスピリッツ」をベースにしていると聞き、期待値がかなり上がっていた。

 試遊台はPS4版とXbox One版が計10台以上も用意されており、待ち時間がほどんどなくスムーズに遊べた。今回の体験会では「覇王丸」、「牙神幻十郎」、「ガルフォード」、「ナコルル」、「シャルロット」、「柳生十兵衛」、「アースクェイク」とシリーズお馴染みの7キャラクターが使用できた。キャラクターの雰囲気はそのままに、シャルロットやガルフォードなどの一部のキャラはデザインが現代風にアレンジされていて格好良くなっている。

 原点回帰となっている本作。自分も初心に帰り、初めは主人公の覇王丸を選択。操作性は「サムライスピリッツ閃」のシリーズ後期の3D格闘ゲームの感触とは違い、馴染みのある2D時代の操作感そのまま。過去作に触れている人なら違和感なく動かせる作りとなっている。

 これまでと違うと感じた点を強いて挙げるなら、ゲーム全体のスピードが少し上がっているように感じた。これまでの「サムスピ」が全体的にスローテンポだったので早いと感じるが、実際は標準的な格ゲーのゲームスピードと同じぐらいになっただけなので特に問題はない。

 コマンドリストを確認すると、覇王丸の必殺技は、飛び道具の旋風烈斬、対空技の弧月斬、中段飛び込み技の烈振斬と、これまでにあった基本の技は一通り揃っていた。今作では武器飛ばし必殺技や、秘奥義などの大技は、全キャラクター統一のコマンドになっており、キャラごとのコマンドを1つ1つ覚えなくていいのは地味にありがたい。

 今回使用できる7人を一通り触ってみたが、オールマイティに戦える覇王丸や牙神、トリッキーな動きで翻弄するナコルルやガルフォードなど、どのキャラも良い意味でクセや強味の変化が少なく、過去作と同様の立ち回りで戦うことができた。

【お馴染みの操作感と必殺技】

 たったの1撃でありえない程の体力が減るのが「サムスピ」最大の魅力なのだが、シリーズを重ねるごとに初期の頃と比べて1発のダメージが抑えめなバランスになっていて、本作の持ち味が薄くなっていた。しかし今作はシリーズ初期の「真サム」を踏襲しているということもあり、とんでもないダメージを叩き出せる。

 本シリーズの要である強斬りは1撃で3割の体力をもっていき、怒りゲージマックスで攻撃力が上がった状態ではなんと1撃でゴッソリ4割も減らすことができる。強斬り数発で勝負が決まってしまうこのダメージに懐かしさを感じた。「サムスピ」の真骨頂である、“相手からの強斬りもらわず、いかに自分が食らわせるか”という対戦の駆け引きが今作でも味わえることに感激した。

【一撃必殺の威力】
通常攻撃でこの威力! 下は怒りマックス時の一撃の威力!!

 過去作では、基本的に必殺技よりも通常攻撃の方が威力が高いという他にはないゲームバランスだったのだが、本作では超必殺技に相当する秘奥義がハンパではなく強くなっていた。

 1試合で1回しか出すことができない秘奥義は、一撃でなんと7割も減らすというとんでもない火力を誇る。1回という回数制限はあるが、開幕からすぐに使うことも可能。強斬りを1発当てた後に続けざまに食らわせて一瞬で勝負を決することもできる。

 見ようによってはめちゃくちゃなバランスとも思えるかもしれないが、「油断をしたら一瞬でやられる」、「体力有利なんて意味がない」というこの緊張感こそが「サムスピ」なのだ。

 「サムスピ」シリーズの試合展開は、細かな牽制攻撃を打ち合って強斬りを叩き込む隙を伺うという、昨今のコンボを重視した格闘ゲームと比べると正直派手さは薄い。しかし、試合中常につきまとうジリジリ感や、読み通りに強力な一撃が決まったときの爽快感は味わったらやみつきになる。

【演出がカッコいい、秘奥義】

 ゲーム性は「真サム」ベースではあるが、「真サム」以降に追加された一部のシステムは今作でも健在。エキシビションマッチでも多用されていた、怒りゲージを消滅させることで発動できる「怒り爆発」システムは4作目の「サムライスピリッツ 天草降臨」から登場したもの。怒り爆発状態では、高速で相手に駆け寄って強力な一太刀を浴びせる大技、「一閃」が使えるのだが、この技がこれまでのシリーズとは比べ物にならないくらい速度が速くなっている。

 過去作では、密着で発動されなければ見てからガードすることも可能なスピードだったが、今作では一閃の発動演出を見てからではガードが間に合わないほど速い。怒りゲージの量で威力が変わるが、こちらも秘奥義並みの高威力。この1撃で状況がガラリと一変するなんてことも容易に起こる。

 怒り爆発システムの存在は、戦いの駆け引きを面白くさせる。相手に怒り爆発をされたらいつ一閃が飛んでくるか分からない。怒り爆発中はガードを固めておかなければ危ないが、固め過ぎても相手の投げを通してしまう――というような立ち回りと読み合いに深みが増すのだ。

【怒り爆発からの大技、一閃】

 そしてゲームバランスやシステム面のほかに「サムスピ」の空気を色濃く感じたのは、シリーズを象徴する“バイオレンス表現”だ。斬撃を与えたときのおびただしい出血量は、現代のゲームではあまり見られない過激さだ。こういった表現が苦手な人もいるかもしれないが、個人的には近年でここまで攻めた作りに称賛を送りたい。この痛々しさこそまさに「サムスピ」。過去の作品ではもっと過激な表現もあったほどだが、そこまではいかなくとも、“刀で人を斬る”という表現をしっかりと演出している。

【飛び散る血飛沫、これがサムライの戦い】

 筆者がプレイして感じたのは、昔からのファンはもちろんのこと、「サムスピ」や格闘ゲームをプレイしたことがない人でも遊びやすい内容になっている。基本的に複雑な技コマンドなどは無く、戦いの軸となるのが1ボタンで出せる強斬りなので、まともに対戦できるようになるまでのハードルがかなり低い。先でも挙げた一撃必殺級の大技である一閃も、2つのボタンを同時押しするだけで出せるという簡単コマンド。

 エキシビションマッチの天崎さんとプロゲーマーのももち選手の対戦では、格闘ゲーム初心者ながら、プロであるももち選手に1ラウンドを取る場面も見られた。どんなにうまいプレーヤーが相手でも、デカい攻撃を数発当てれば勝てるチャンスがあるという、他のゲームではありえないゲーム性だからこそ、格闘ゲームを敬遠していた人に猛プッシュしたい。

【初心者でも勝てるチャンスが十二分にあるゲームバランス】

 ちなみに今回の体験会では使用できなかったのだが、シリーズのファンとしては、ハイパーネオジオ64の「SAMURAI SPIRITS~侍魂~」と「SAMURAI SPIRITS2 アスラ斬魔伝」にのみ登場したヒロイン、色(シキ)がプレイアブルキャラにいるのも本作の注目ポイントである。

 この2タイトルは筐体が高価という理由もあり、当時稼働していたゲームセンターもかなり少なかった。さらに家庭用に移植もされていない作品で、とにかくプレイするのが困難であった。魅力あるキャラクターでありながらも日の目を浴びず、完全に風化してしまったキャラクターと思われたが今作ではまさかの復活参戦を果たした。

 色については、筆者は「サムスピ」ファンでありながら、過去に1度も触ったことがないキャラクターだったので、今作からの新キャラクター3人と同じくらい使うのが楽しみである。

【個人的に注目のキャラクター、色】

 最新作に触れて率直な感想は、原点の「サムライスピリッツ」が帰ってきた。その一言に尽きる。システムや操作感などは20年以上前のものを踏襲した作りなのだが、不思議と古さは感じず、一撃必殺のゲームバランスが逆に今では新しさすらも感じる。

 平成が終わろうというこの時期に、一番熱かった頃の「サムライスピリッツ」に再び巡り会う機会が生まれるとは正直夢にも思わなかった。PS4版、Xbox One版は6月27日の発売が決定し、今後はNintendo Switch版、PC版、アーケードでの展開も予定されている。さらに、EVO 2019のメイン種目にも選出され、「サムスピ」のこれからの盛り上がりが期待したいところだ。