【特別企画】
「ヴィクター・ヴラン」は「ディアブロ」なのか? デーモンハンターが繰り出す斬劇、銃劇、撃奏、孤高のナンデモ屋が魅せる欲張りハクスラ・アクション・RPG
2019年2月13日 12:00
「ハック&スラッシュ」!なんて甘美な響きだろうか。やってくる敵を打ち倒し、強力な武器と高みを目指して迷宮の深淵へ潜り込んでいく、現代に根付くゲームの王道のひとつといえるジャンルだ。
その「ハクスラ」と言われて、読者の皆様は何を思い浮かべるだろう?「ディアブロ」シリーズはきっと「王道中の王道」といえるそれだし、「より強い武器を求めて戦う」という行為をハクスラと捉えた場合「ボーダーランズ」シリーズや「Bloodborne」、「仁王」もハクスラの1つの答えだ。
そして本稿のメインディッシュ、「ヴィクター・ヴラン オーバーキル エディション」もハクスラである。本作は2015年にPC(Steam)版が発売され、本日2月14日にプレイステーション 4、Nintendo Switchへ有料DLCとともに移植され発売された。ゲームの形式は「ディアブロ」シリーズと同様の見下ろし型で、「悪魔がはびこる街に自分を誘いながらも消息を絶った友人を捜す」というビジュアルに相応しくダークな雰囲気のストーリーだ。
ここまで述べると「ふむ、ではやはり『ディアブロ』なのでは?」と思う。筆者は思った。だが違う。タイトルにもなっている主人公の「ヴィクター・ヴラン」、こいつはたった1人で――そう、育てるキャラクターはこのヴィクター1人のみである――暗黒の軍勢をちぎっては投げ、さらには3次元的に飛び回り、暗黒の「デーモンパワー」を操り、ウィットに富んだトークと……敵すらも”ヘドバン”させるキレッキレのギグを披露する。本稿ではそんな、イケてるハクスラRPG「ヴィクター・ヴラン」の魅力を紹介する。
「1人だけ」という、自由
本作は”孤高の”デーモンハンター、ヴィクターが主人公のゲームである。ヴィクターひとりが「ディアブロ」でいえば「バーバリアン」で「ウィザード」な「デーモン・ハンター」なのだ。つまり、何でもできる。
本作に登場する武器は大別して10種。近接武器の「ソード」や「レイピア」にはじまり、範囲攻撃が可能な「ハンマー」や「サイズ」、そして「ショットガン」や「ハンドモルタル(擲弾砲)」といった近代的な銃器などに加え、魔術書のような「トーム」、仕上げに「ギター」が存在する。ええ、ギターである。ヴィクターはこれらを自由自在に使いこなし、狩りへ臨む。
また、ヴィクターは”衣装を変える”ことでそのベースとなる性能が変わる。たとえば必殺技に似た「デーモンパワー」を解放するゲージが2回分溜められるもの、毎秒そのゲージがたまっていくもの、ダメージを受けるとゲージが溜まるものなど。DLC「モーターヘッド」に収録されているものを含めて11種の衣装を利用可能で、戦闘スタイルの基底が変わってくる。
「デーモンパワー」は特殊な敵からのドロップで増え、その種類は20種。また条件を満たすと効果が発動する「ディスティニーカード」というものがあり、これもレアリティと種類が数多く――とにかく色々とコレクションできるのが本作の強みだ。
これらをキャラクターのビルドに関係なく自由に付け替えられる。たとえば攻撃した敵が爆発したり、特定の武器だけを振り回すために特化したりできる。これの何がいいかというと、そう、例えば”ジョブ”のあるゲームで遠隔攻撃が得意なジョブから近接ジョブになりたいなと思ったとき、だいたいは最初からやり直しになる。でもヴィクターは最初から強い。なぜならレベルの上昇で強化された肉体はそのままで、武器だけを変えればファイティングスタイルが変わるから。色々試したい欲張りさん(筆者)にはとても都合のいいシステムである。
武器を強化しさらなる戦いへ
武器にはそれぞれ、趣の異なる3つの攻撃方法が設定されている。これが主な武器の毛色の違いとなるが、武器ごとに多少のパラメーターの違いや「接頭語」と「接尾語」として2つの特性が付与されることがある。
この個性に溢れる武器を自分好みに強化するのが「変成」だ。3つの武器を組み合わせてパラメーターを変化させたり、武器にデーモンパワーを注入して特性を付与できる。レベル16以上から可能となるが、少し遊べばいつのまにか可能になっている。
そしてハクスラで避けては通れない――というかこれこそハクスラだよなという要素の――”ユニークウェポン”というもの。本作では「レジェンダリー」のレアリティを持った武器がそれにあたる。たとえば「ギター」のレジェンダリー「キルミスター」は通常攻撃である「パワーコード」が敵を貫通し、「ショットガン」のレジェンダリー「パーティ・スターター」はタイミングよく攻撃することで溜めた「エーテル」で強力な一撃を見舞う。それぞれの武器に数種のレジェンダリーが存在するため、これをコレクションするのもハクスラたる本作の醍醐味だ。
「ディアブロ」よりもダイナミックなゲームプレイ。翔べ、ヴィクター!
本作の敵の攻撃は、とくにボスであれば苛烈。雑魚にしても群れればそれなりに怖い。とくに遠隔攻撃が。ピュンピュン飛んでくる敵弾をローリングして回避することも可能だが、ヴィクターはそれをよりゆっくりと避けられる。――ジャンプを使って。
本作は見下ろし型のハクスラだが、ジャンプで高く跳び上がれる。これで敵弾を避けられるどころか、ジャンプ中に通常攻撃にあたるボタンを押せば急降下して衝撃で敵がひるむ。またこのジャンプを利用した「シークレット」が存在し、ただ歩いているだけではたどり着けないマップの隠し通路に飛び込めるのだ。気になった場所でとりあえず跳んでみると、意外なお宝(と、ときどき強めの敵)が見つかって嬉しい。
やる気マンマンのDLCが充実
「オーバーキル エディション」と銘打つ本作はPC版で有料DLCの「砕けた世界」と「モーターヘッド」を収録している。「砕けた世界」はゲーム開始時に「レベル20以上でないと危険だぞ」とアナウンスされる手強い中級者向けのワールドで、毎日ランダムに地図が変化し50階層のダンジョンが存在する。
対して「モーターヘッド」はその名を冠するバンド「モーターヘッド」とゴリゴリにタッグを組み完成したDLCで、同バンドの音源13曲を使用して彼らの創作世界を表現する。フロントマンであったレミー氏の愛機(ベース)やギター、そしてリボルバーはここで入手でき、敵たちにギターの音色を響かせてやれば「ヘドバン」状態になって敵が踊りだす。気分はロックスター。
「砕けた世界」はそのダンジョン自体に殺(ヤ)る気を感じさせるが、「モーターヘッド」は高い密度で開発陣とバンドが連携して生まれた「モーターヘッド」そのものを浴びせにかかってくる。開発陣の「ヴィクターの世界」を表現する(半ば血走った目のような)本気――ガチの熱意が伝わるDLCとなっている。
王道を歩みつつも随所に遊びやすさを感じさせる作品
強力な武器、大量の敵、奥深いダンジョン。本作「ヴィクター・ヴラン オーバーキル エディション」はそういった”ハック&スラッシュの王道”ともいえる要素をしっかり踏まえながら、性能の特徴づけを武器や装備に依存させたことからくるキャラクター育成の自由度、人気バンドとのタッグで生まれた独特な世界観で踏み込んだファンを魅了する。
本作を遊んでみた筆者からすれば、特に面白かったのは3次元的な動きの存在だ。これまで遊んできたハクスラタイプのタイトルは”段差の概念”こそあれど、自発的に高く跳びあがって戦うことは珍しかった。さらに言えば日本語字幕もコミカルかつ”日本語的”で、ヴィクターとその周りの人物たちの言動をよく理解しながら描いていると思う。――ちょっとフォントが小さい印象はあるが味わい深い。「膝に矢を受けてしまってな」と各所にニヤリとする意訳も仕込まれていて、ゲーマーに寄り添っている印象もある。
王道を踏まえながらも、戦う楽しさと遊びやすさを両立させている本作。ローカルで2人、オンラインで4人までのマルチプレイにも対応しており、困ったら野良で飛び込んだり友人や家族と遊んでも、きっと楽しい。これまでに述べたように何でもやってみたい欲張りさんはもちろん、ハクスラが大好きで新たな刺激が欲しいハクスラ沼の住人にもオススメしてみたい作品だ。
□ PlayStation Storeの購入ページ
https://store.playstation.com/ja-jp/product/JP4236-CUSA14196_00-VICTORVRANGAMEJ1
□ My Nintendo Storeの購入ページ
https://ec.nintendo.com/JP/ja/titles/70010000014754