【特別企画】

【特別連載】プレイステーション 4のゲーム配信で、PC使ってワンランク上のクオリティを目指す!

【連載第2回】ゲーム実況で有名な「NottinTV」にどうやって配信してるのか聞いてきた!

 ゲーム配信についてワンランク上を目指す企画の第2回目となる今回は、実際にYouTubeなどでゲーム配信をしているプロは一体どのような機材を使い、どうやって配信しているのか取材してきた。今回ご協力いただいたのは「NottinTV」だ。

 第1回目の前回はプレイステーション 4で配信してみたが、思ったより簡単に配信できることを実感できたと思う。実況配信で楽しいのは、視聴者を巻き込んでワイワイとゲームをプレイできることであり、なにより、視聴者から反応があったときにうれしさや共感できる楽しさを感じることができる。

 PS4本体だけでの配信は簡単である反面、PCで配信するほど映像が美しくなく、視聴者とのコミュニケーション要素に関してもPCに今一歩劣るところがある。なぜPS4本体だけで配信するよりPCを使ったほうがいいのかの理由は明白で、PS4単体よりPCのほうがパワーもあり、マウスを使ったPCのインターフェイスのほうが、利便性が高いからだ。

【第1回目のおさらい】

・PS4だけで簡単に映像を配信できる!

・でも配信映像は、PCを使って配信する方が美しい!

□プレイステーション 4のゲーム配信で、PCを使ってワンランク上のクオリティを目指す!
【連載第1回】「モンハン:ワールド」の実況配信をしてみたいけど、どうすれば良いの?
https://game.watch.impress.co.jp/docs/kikaku/1156320.html

ちなみに今回の企画で配信のために使用するノートPC「STYLE-14FH054-i7-UHSS [Windows 10 Home]」。基本構成はCPUがCore i7-8550U、GPUがインテル UHD グラフィックス 620、メモリは8GB、SSD 240GB、14型の非光沢カラー液晶(1,920×1,080ドット表示)の液晶を搭載した、価格も94,980円(税別)の手頃なモデルだ。これくらいのPCでもワンランク上の配信を目指すことはできる

□STYLE-14FH054-i7-UHSS [Windows 10 Home]
https://www.pc-koubou.jp/products/detail.php?product_id=628519
□14型ノートパソコンのページ
https://www.pc-koubou.jp/pc/note_14inch.php

「NottinTV」ではどうやってゲームの生配信を行なっているのか?

 さて今回、NottinTVさんのお宅にお邪魔してまず目に入ってきたのが、部屋中に張り巡らされている緑の布。テレビなどでよく「クロマキー」として紹介されることもあるのでご存じな人も多いと思うが、NottinTVさんはゲームの配信画面に自分を写すために使っているのだという。

 例えば自分の映像だけをゲームの映像と合成し、配信画面の端にテレビ番組のワイプのように挿入して配信するとき、自分の周りの部屋の様子などが邪魔だったりする。このとき自分の背景が緑や青色一色だと、自分だけを切り抜きやすいのだ。一昔前の特撮映画などの撮影現場映像などで見た人も多いだろう。

 NottinTVさんの家にはPCが2台ある。1台はメーカー製のゲーミングPCだが、もう1台は自作したもの。これはPCゲームを配信することもあるからだ。1台でゲームと配信をこなすには、ハイスペックマシンといえども力不足。やはり配信専用のPCが必要となってくる。プレイステーション 4についても同じで、「配信専用のPCを用意した方がいいですね」(NottinTVさん)とのこと。

 NottinTVさんの配信スタイルは、ヘッドセットをして、独立のマイクを立てて駆使するというもの。スピーカーでゲームの音を流してその音をマイクに拾わせるという方法もあるようだが、「ヘッドセットは、配信中に他の音をマイクに乗せないためにも、結構重要であり必須だと思います」とNottinTVさん。

 NottinTVさんがゲーム配信を始めたのは、キャプチャーボードを買ったことがきっかけ。「これでゲームの映像をPCに写せるんだということに気づいたんです。これならば(ゲームの映像の)配信ができるぞと。当時はWiiの時代で、10年弱前ですね。『NO MORE HEROES』を配信したのが初めでした。当時は、D端子のキャプチャーボードでした」(NottinTVさん)。ニコニコ動画やTwitchが出る前の話だ。その当時はゲーム配信で稼いでいる人はまだ多くなく、みんな趣味で配信していた。

 そのうちにいろいろなゲームを配信し始めて、プレイステーション 3、PCのMMORPGなどを配信していくようになる。当時使っていた配信サイトは「PeerCast」だ。「ピアツーピア通信で映像やストリーミングを流していたんです。ただしファイヤウォールのポート開放などが必要で、(映像配信も見る側も)敷居が高かったですね。なのでコアなユーザーしかいないんですよ。とても濃いコミュニティでしたね」(NottinTVさん)。そのあとUstream、ニコニコ生放送、Twitch、YouTubeへとプラットフォームを移しての活動となる。

 Twitchの時はリスナーが300人程度で細々と配信していたそうだが、YouTubeで「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」を始めたときに視聴者が集まりだし、1,000人、2,000人と視聴者数が伸びていった。「Twitchで『Pokemon GO』をプレイしたとき1,000人くらいの視聴者が集まったことがありますが、細々とやっていた感じ。まだ収益はありませんでした。稼げるようになったのは最近ですね」(NottinTVさん)。

NottinTVさんの配信スタイル
PS4のほか、配信専用のPCが用意されている

 PS4での配信だが、配信専用のPCを使うため、ビデオキャプチャーユニットを使っている。NottinTVさんが使っているのは「MonsterX U3.0R」。PCとはUSBで接続されている。ディスプレイは2台用意されており、パススルー出力で写すとともに、配信用の画面が見えるようになっている。

 配信に使っているソフトは「XSplit Broadcaster」。HDMI経由でキャプチャーユニットから出力された音を聞きながらのゲームプレイだ。「人によってはゲームの音を入れて配信の音に分配する方法もありますが、それだと配線が二重になってしまうので使っていません。一長一短ですけど」(NottinTVさん)。

 ちなみにNottinTVさんがメインにしているのは「YouTube Live」。主に生配信を行ない、動画を撮影して配信することはそれほどやっていないという。

 「XSplit Broadcaster」では、配信の際の遅延設定も可能。そのほかゲームタイトルなどを表示させる設定をしてから配信を開始する。なおYouTubeやTwitch、ニコニコ生放送などといったサイトごとに配信用のプロファイルが設定できるようになっている。

 NottinTVさんが「XSplit Broadcaster」を選んだのは、サイトごとに設定を保存できるから。「配信する人が使われているソフトに、もう1種類『Open Broadcaster Software』(OBS)というのがありますが、こちらは無料です。ただOBSの場合は出力設定が1つしか記録できないので。いろいろなサイトで配信する人は「XSplit Broadcaster」の方がいいですね。毎日やっていることですし」(NottinTVさん)。ちなみに「XSplit Broadcaster」は有料で、3カ月ライセンスだと8.32ドル必要だ。

 なお「XSplit Broadcaster」にはさまざまな表示機能があり、Webサイトを写したり、コメントを流すこともできるのが利点だ。「PS4でもゲーム画面を小さくしてコメントを出すことができますが、専用ソフトならコメントの背景を透明化することもできるので便利です。また、チャンネル登録してくれたときに、(お知らせとして配信者に)通知が出るのもいいです。ファンを増やすのにはPCでの配信が有効です」(NottinTVさん)。そのほか配信準備中にスライドを写すことができるのも便利な点と言える。

 またPS4の場合は、ゲームごとに配信を区切らなければいけないので、シームレスな配信ができない。その点は専用ソフトであれば視聴者が離れることもなく、次々と違うゲームを配信することができるわけだ。

NottinTVさんが使っているキャプチャーユニット「MonsterX U3.0R」
配信ソフト「XSplit Broadcaster」の画面。左下にクロマキー合成したNottinTVさんの顔が表示されている
NottinTVさんがメインで配信を行なっているのはYouTube Live
「XSplit Broadcaster」には配信サイトごとにプロファイル設定が可能。毎日配信する人にとっては便利

 配信の際には技術的に困ることが多いそうで、1番困ったのは音声が出ないこと。OSやソフトのサウンド設定で再生デバイスを選び間違うと聞こえなくなってしまう。加えて配信ソフト側の設定もあるので、そのあたりの設定はしっかりとしなくてはいけない。

 そのほかありがちなのは、PS4が利用しているコピーガード機能の「HDCP」に対応していないキャプチャーユニットを使う場合は、この設定を外しておかないと画面が写らないということ。PS4の場合はこの設定が重要となる。

 またPCI Expressのキャプチャーボードを使っている場合は、ビデオカードのドライバとの相性などで画面が写らないこともあるとか。「いまはUSBになりましたから、手軽にできますけどね」(NottinTVさん)。

 なおPS4のゲームを配信する場合は、パススルー出力が重要だとNottinTVさんは語る。「USBで取り込んでPCに送りますが、パススルーして遅延がない状態でプレイする画面をテレビに出さなければいけないんです。最近ゲーム用のキャプチャーユニットであるとうたっている商品なら対応していると思いますが」(NottinTVさん)。例えば配信画面を使ってゲームをプレイすると、どうしても遅延が発生してしまい、ジャンプボタンを押したらキャラクターが一瞬遅れてジャンプするなどゲームプレイに支障が出ることがあるからだ。このため、パススルーしてゲームプレイをするため用のディスプレイと配信用のPC用ディスプレイを分ける必要があるのだ。

音声回りの設定は常にチェックしているという
PS4の「設定」-「システム」にあるHDCP制御の項目

 NottinTVさんの通信環境だが、やはり光回線。NTTのフレッツ光を使っているそうだが、マンション自体が光回線に対応しており、各部屋に光回線用のコネクタが配置されている。それが用意されていることもあって、いまのマンションに住むことを決めたそうだ。「世帯数が多いと回線が混んでしまうこともあるので、少ない個数のマンションに住むことも大事ですね」(NottinTVさん)。速度を測定してもらったが、平日午後の状態で下り400Mbps程度出ていた状況だった。解像度もフルHDで配信しているため、安定して解像度の高いゲーム映像を配信するのであれば光回線は必須だ。フレームレートも30fpsと60fpsでは見る側でも差がわかってしまうという。

 配信用に使っているPCのスペックだが、CPUはCore i7-6700K。ビデオカードはGeForce GTX 1080 Tiを搭載しており、メモリは16GBだ。「CPUに自信がある場合はx264を使えばいいのですが、CPUがそれほどでもないが、ビデオカードはGeForce GTX 10シリーズを積んでいるというなら、NVIDIAのエンコード方式である『NVEnc』を使うといいですね。ビデオカードの力でエンコードできますので。これを選ぶとCPU負荷がめちゃくちゃ下がります」(NottinTVさん)。なお配信で困るのは熱対策。PCとPS4を2台を付けるとさすがに部屋が暑くなる。「エアコンの温度を下げてやってますけど暑くなりますね(笑)」。

 映像については、専用のWEBカメラを、机から伸びているアームに取り付けて写している。使っているのはマイクロソフトの「LifeCam Studio」。そのほかロジクールのものも所有している。配信の際には顔だけでなく、どうやって操作しているかを見せたいという理由から手元を写すこともあるという。「『コール オブ デューティ』を配信する人は、手元を写す人も多いですね」(NottinTVさん)。

NottinTVさんが使っているマイクロソフトのカメラ
音声は専用のマイクを使って配信している

 「PCで配信すると、映像が綺麗なのはもちろん、画面をいろいろ写したりと自由度が高いのが1番のメリットですね」とNottinTVさん。本格的なゲーム配信を始めるためには、やはりPCで配信した方がよいというのが今回の結論だ。

 次回は実際にPCを使って「モンスターハンター:ワールド」を配信する方法について、どのような機種を使っていったらよいのか、詳しく解説していく。

【ゲーム映像の配信について】

 映像配信に関しては、無制限にゲーム映像の配信を行なって良いというわけではない。ゲーム制作者の権利に配慮する必要があり、YouTube、ニコニコ動画、Twitch、OPENREC.tvは、それぞれゲーム会社などと取り決めを行なっているので、配信前に、事前に確認して配信を行なえるタイトルや範囲などを確認しておくと良いだろう。