PS3/Xbox 360「ACE COMBAT ASSAULT HORIZON」

河野一聡チーフプロデューサーに聞く本作の狙いとは?


発売日:未定

価格:未定



株式会社バンダイナムコゲームス 河野一聡氏

 今夏発表された株式会社バンダイナムコゲームスのPS3/Xbox 360「ACE COMBAT ASSAULT HORIZON(エースコンバット アサルト・ホライゾン)」。据え置きプラットフォームでは2007年のXbox 360「ACE COMBAT 6 解放への戦火」以来となる。

 なぜ「ACE COMBAT 7」ではなく「ASSAULT HORIZON」になったのか? 今夏以降公開された映像は何を意味するのか? 本作のプロデューサー兼ディレクターである河野一聡氏にお話をうかがった。



■ 「『破壊』や『シューティングの爽快さ』というコンセプトを非常に大事にしているので、先入観を持たないでほしかった」

● 公式サイトのコメントによれば、「ACE COMBATはもう必要ないのでは?」、「ブランドとして『ACE COMBAT』は弱まっていた」ということですが……?

 「ACE COMBAT ZERO」が終了した時点ぐらいからかな……例えば、販売本数的な部分でちょっと下がってきたり、「ACE COMBAT 6」はXbox 360だけの発売だったということもあって。実際に、「『ACE COMBAT』ってどうなの?」という調査を北米やヨーロッパに行って調べてみたり、ユーザーと会って話をしてみたりしたんですね。そうすると、予想以上に「ACE COMBAT」の知名度が低くて。特に欧州ではね。「僕らが思っている『ACE COMBAT』の認知イメージと海外は違うな」と。そのタイミングに弊社の上層部と、販売数の話や「『ACE COMBAT』、今後どうするんだ?」といった話になって。そこで、上層部としても発破をかける意味もあって「もう必要ないのでは?」といったやや過激な言葉が出たんですよ。

 そこに公式サイトのコメントにもある、「大きな進化を期待しているのに、挑戦がないのは裏切りだ」というファンの言葉があって。いろんなことが重なって、「ああ、これは今のタイミングで変わるべきだ」という思いが出てきて。課題はいつもあって、いくつかの要素が重なって、今回「踏み切らなきゃ!」というところに落ち着いた、という感じかな。

● タイトルも「7」ではなくて「ASSAULT HORIZON」にしたあたりもその「挑戦」ですか?

 挑戦の意味もありますし……最初は開発コードネームとしては「7」と呼ばれていたんですよ(笑)。それで、「まず中身を考えてみよう」という話になって、「ACE COMBAT」自体の魅力を分解してみようと。それがつらい会議で……。あらゆることを分解していって、「本当にそれは必要な要素なの?」という形で分解していって。最終的には「“空を飛ぶこと”と“撃つこと”はどっちが重要なの?」というぐらいまでシンプルに分解して。

 そこから「『ACE COMBAT』に必要な要素ってこれだよね」とか、「弱かった要素ってこれだよね」といったことを洗い出して、再構築していったんですよね。その結果、「これでゲームを作ったら、今までの『ACE COMBAT』なの?」って言われると、「ちょっと違うよね」、「かなり挑戦だよね」ということになって。そこから「名前を変えていこう」ということになったんです。

 ただ、今まで「ACE COMBAT」を支えてもらったユーザーさんたちにとっても「ASSAULT HORIZON」は大切なソフトになってもらいたいし、それははずしていないので、「ACE COMBAT」という冠をつけました。でも、「ACE COMBAT 7」だと、初めて「シューティングゲームが面白そう!」と思ってくれた人は、「7」というネーミングを見て、「どのタイトルから遊んだらいいの?」と困惑されがちですよね。映画の続編なんかもそうですが、「『2』が面白いらしいよ」となると、「『1』も見なきゃいけないの?」となる。それを何とかしたかったので、タイトルから番号を外そうと。本作は「破壊」や「シューティングの爽快さ」というコンセプトを非常に大事にしているので、タイトルから番号を外すことで、ファンの人にも、初めて知る人にも先入観を持たないでほしかったんですよ。

 だから「ACE COMBAT」というブランドを支えてくれた人たちへの思いと、続編だから、と思われる「入りにくさ」を排除したいということから「ACE COMBAT ASSAULT HORIZON」という名前でシリーズを「リバース」させたという形になったんです。

● 今までのシリーズでは、それまでにあった「ACE COMBAT」というコアがあって、その上に要素を積み上げていく、という作り方だったものを、今回は完全にバラバラに分解して、イチから作り直した形なんですね?

 いつもだと分解の仕方も、コアの部分を残しているんですよね。あのシステムで、「僚機を付けますか」とか、さらにストーリーをダイナミックにしたり。今回は先ほども言ったとおり、コアの部分も禅問答に近い嫌な(笑)会議で分解してみて、考え直してみたというスタイルです。

 分解していったときに「あ、『ACE COMBAT』って、結局、快感ゲームじゃん」というところに落ち着いたんです。「要は気持ちいいんだよ、このゲームって」という。そこで「気持ちよさって何で構成されているか?」って洗い出していくと、例えば「気持ちいいって言ってるけど、破壊のリアクションが弱いゲームだな」とか「気持ちよさをうたっているわりには、初心者が入りにくい操作系だな」とか、いろんな弱点が浮かんできて。そこを根こそぎまったく新しいアイデア――「Close-range Assault(クロスレンジアサルト)」で解決できる。いろんなことが一気に解決できる、という状態になったんです。


■ 「『かっこいい』とトレーラーを見て思ってくれて、買ってくれた人がそのままそれを遊べます」

● 今作のコアになる「Close-range Assault」は、具体的にどういったものなんですか?

 これは、新しいシステムですね。先ほども言ったとおり、バカスカ撃ってドカーンってなって、気持ちいいという「快感ゲーム」を、「ACE COMBAT」のスタイルで保証するとなったときに、今までのシステムでは十分に表現しにくかったので、まったく新しいものですが、まだ語れません(笑)。概念的にはいろいろ遠まわしに言ってますが。

● もうちょっと今までのシリーズとの違いみたいなものを教えてもらえると(笑)。代を重ねるごとに、リアリズムとゲームとしての遊びの部分の両立が悩ましかったと思うんですが……。ハイスピードで飛んでいる戦闘機同士の戦いを再現するとすれば、先ほどおっしゃった「破壊のリアクションが弱い」ゲームになってしまう。だから映画のように、現実にはありえないけれど、あえて近接戦ということになると思うんですが、今作の「Close-range Assault(クロスレンジアサルト)」でそれを実現することで、新しい快感が味わえるという感じですか?

 「快感ゲーム」というコンセプトを先に立てたとき、そのどっちを選ぶか? という課題はありますよね。

 リアリティを求めると、「ファーストルック、ファーストキル」で、できれば敵機の姿を見ないで撃破したいので……もちろんその快感もあると思うんですよね。でも、今までのシリーズのトレーラーを見たとき、お客さんが盛り上がってくれたことも事実じゃないですか。でも、これが、いざゲームをプレイすると、「こんなトレーラーみたいなプレイにならないじゃん!」となっていたわけです。今回のトレーラーは「そのままこれが遊べますよ」というシンプルな話です。「かっこいい」とトレーラーを見て思ってくれて、買ってくれた人がそのままそれを遊べますよ、という実は当たり前の作りになっています。

 ただ、懐は深いゲームにしたいということもあるので、遠くからミサイルを“バシュー!”と撃って当てる、といった気持ちよさも欲しい。なので、長距離射撃の自由度も持たせてあります。

 FPSやTPSで言うところのスナイパーライフルとショットガンの2つの要素をどうバランスをとってどう落ち着けるか、という形に近いかと思います。すべてがクロスレンジでもないし、すべてが遠距離戦というわけでもないです。

● トレーラーで見たものが遊べるよ、というところが出発点なわけですね。

 だって、せっかく破壊してるのに、その様子を見たいじゃないですか。今までのシリーズだと、うまくなってくるとミサイルが当たる前に次の敵機を見てますからね。そういう快感もありますが、もうちょっと破壊のリアクションを見てもらえれば。

● 全体的なゲームの作り方として、今までのシリーズと変わったところはありますか?遠景モデルと近景モデルを使い分けたりする部分とか。

 いろいろあの手この手で、「まんま作ってます!」という力技でやっている部分と、作り手のうまいウソというか、自然に違和感なく見えるところはそのように……リソースは決まっているので、その配分を変えているといった感じですね。

 視点からの距離に応じて3Dモデル精度を切り換えるLOD(Level of Detail)に関しても、今までのシリーズよりさらに近景用のモデルを作ったりはしていますね。やっぱり今までよりモデルに寄ったりすることが多くなったので。特に背景にしても、今までの背景ではそれほど近寄ることがなかったじゃないですか。トンネル以外は(笑)。今回はすごいスピードで建物の間を抜けて、敵機を追い詰めて仕留めて破壊して……という一連の流れの快感を突き詰めているので、当然そこで見える物は頑張って作っています。

● グラフィックスのエンジンに関しては、新たに作っていたりしますか?

 そうですね。ホントの本当を言うと「全部捨てた!」というわけではないですが(笑)。

● バンダイナムコゲームスさんでも、最近は開発リソースの共有化だとか、効率化などが相当進んでいるようですが……。

 人体だとかシェーダーだとか、技術的なところは他のチームとの交流などは積極的にやっています。「ACE COMBAT 6」のエンジンでは実現できなかったことが多かったので、かなり手は入れていますよね。近距離戦闘だとか……。

● ここまで細かいモデルになってくると、今までのシリーズ以上に作業が大変そうなんですが?

 そこは、ビジュアルスタッフがうまいことやっていて、あまりコストをかけずに金属がねじ切れるところなどを再現しているんですよ。いろいろ秘密があるんですが。ノンリニアでどう作るか、というところは力が入っています。

● 物理的なシミュレーションをガチガチにやっているということではないんですか?

 ある程度は計算していますが、ガッチガチにはやっていません。費用対効果で。計算コストをかけて、本当にそれに見合った効果があればそれでやればいいし。今求められているのは、その映像を見て「気持ちいい」と思ってもらえることなんで、その手段は、楽であれば楽な方がいいですよね。


■ 「人のにおいに関してはこだわっています」

● 「ACE COMBAT 6」では「空の集団戦」がコンセプトに挙げられていたと思うんですが、今回公開された映像では、個体の機体なりがかなりクローズアップされているようにも見えます。そのあたりは意識して変えていますか?

 そうですね。やっぱり最初の見た目、最初の1回の印象ってずっと続くじゃないですか。今回、「最初の情報公開で何を見せるのよ?」ということで、たとえば、ストーリーを見せるだとか、戦闘機が格好良く空を飛ぶシーンを見せたりだけとかだと、「ああ、見たことあるわ、それ、『ACE COMBAT 6』の続きね」と思われるじゃないですか。なので、最初の情報公開で、これだけクロスレンジで、これだけ破壊が……というメッセージを伝えられるようにやっているんですよね。これはある程度成功していて、「これは『ACE COMBAT』じゃない」とか「洋ゲーっぽい」だとかいろいろ言われていますが、それは、「ワールドクラスの最先端タイトルと感じてもらえるくらい変わって見えてるんだ、伝わってるんだ」と思っていて。

 それで、来年あたりには「ACE COMBAT」チームならでは、といったところを見せて、またひっくり返そうかな、と思ってますよ。とりあえず今は「変わった!」という1つのメッセージを見せたに過ぎません。

● 現在公開されているものでは、地名も現実にあるものになってますが、「ACE COMBAT X2」を除くと「ACE COMBAT」らしくない、というか珍しいことですね。

 「ACE COMBAT X2」では現実世界の中でのフィクション、というコンセプトですが、今回は現実というワールドを用意したからには、「Believable」と呼んでいますが、「信じてしまいそうになれるものにしよう」という話にしようとしています。アメリカの軍事小説家の方と合宿して「それは信じられない」、「それは現実に起こらない」といったことまで突き詰めながら、同時にゲームとしての面白さを大事にしながら、という形で作っています。「ACE COMBAT X2」とも違う作り方ですね。

● 今までよりもさらに現実よりのお話になるんですか?

 さらに1歩踏み込んだ、という形ですね。最初は「それで面白いものになるのか?」という部分はスタッフも疑問だったんですよ。飛びそうもない空中要塞、とか飛ばせないわけじゃないですか。

● 今までにあった「びっくりメカ」(笑)が出せない。

 「それで大丈夫なの?」というところはあったんですけれども、ストーリーテリングの部分やゲーム内容を詰めていくうち、「これなら大丈夫だ、十分できるな」というところまで来ました。今までの「ACE COMBAT」と比べてもドラマティックだし、演出も効いてるし……というものになるとふんだので、「それでいこう!」という踏み出し方ですね。まあ、いくら「Believableな方向に追い詰める!」とはいえ、ミサイルが100発とか戦闘機に搭載されちゃってますから、その時点で、ね(笑)。リアルな感じを味わってもらいつつも、ゲームとして楽しい、という落ち着け所は「ACE COMBAT」チームらしい感じになっていると思いますよ。

● それと、戦闘中に人を登場させていたりしますよね。今までも仲間を救出したり、サブウィンドウに登場させていたりしましたが……ベイルアウト(脱出)シーンは珍しいなと思いました。

 今回、主人公がいますからね。それと、ベイルアウトのシーンはインタラクティブデモです。……その辺が従来のシリーズでの弱いところの1つだったと思っているんですよ。結局、メカメカしいというか、人を感じない戦い、それが好きという人も多かったと思うんですが、戦闘機を愛している人じゃないと……人間のにおいがあまりにもしない、ある意味硬質なゲームになっていた。今回、ベイルアウトのシーンを表現してみたり、このあともいろんなシーンで人物が登場することになりますが、人をなめるようなカメラでのシューティングシーンなども取り入れてみたりすることで、ドラマシーンとのつながりがとてもスムーズになっています。

 戦闘シーンはとにかくメカ同士の戦い、地上に降りたらドラマ、また戦闘シーン……という流れではなくて、一体化して、戦闘シーンを遊んでいたらベイルアウトのシーンで人間臭さが出る。そのままカットシーンに入ってそのドラマがつながって、例えばヘリガンナーのシーンでは、人のにおいを感じつつシューティングシーンになる。また今度はドラマに戻って今度は戦闘機に乗って……その境界があいまいになることで、全体を通して「ACE COMBAT」ってまた変わったな、という印象になっていると思うんですよね。

● 今までのシリーズでは撃破シーンだとかはわりときれいに、という感じがしていましたが、今回、泥臭い、というか、人のにおいがするゲームにしているのかな、というのも狙っているところなんですね。

 人のにおいに関しては確かにこだわっていますね。そこも1歩踏み出したところで。空気感というものは今までのシリーズから大事にしてきていましたが、今回はノイジーというか。空を飛んでいて、高いところから「空がきれいだな」とか、「高々度から見下ろす街はきれいだな」というところは今までと一緒だけど、いざ街中で戦闘になったときに、今までのシリーズでは街が完璧にクリアできれいなままだったりして……人のいない街というか。「そこはちゃんとやろう」と。

● 作るものも増えた、という感じですか。

 大変になった、ということですね。やっぱり、街中とかでも、「道に車がないな」ということが気になったりして。「車置いていいですか」という話になって「車を置くなら、戦闘が始まって車は乗り捨てられているよね」、「車を整然と並べてもしょうがないよ」……という話までして、いろんなところに目がいってますね。それは目に見えるのは一瞬かもしれないけれど、一瞬でインプットされてしまうし、意識に1度刷り込まれると、それが続きますからね。そういう意味では細部まで気を遣っています。

 こういったところも効果的にやっていけたらな、と思っています。これも先ほど言った「分解」のところで、手を付けていない所の1つとして挙がっていたんですよ。「ACE COMBAT」が持っているいいところはガッツリ伸ばしていく。「残念」といったところも改良して伸ばしていく。そういった風に考えて作っていますね。


■ 「ユーザーのみなさんを“いい意味で裏切って”いきます」

● “遊び”という部分はこれから徐々に見せていくという感じですかね?

 そうですね。今言えるのは、ヘリコプターとか入ってますので……。乗ってシューティングしますしね。もちろんドッグファイト自体も「Close-range Assault」で変わっていますし。地上への攻撃も実は「Close-range Assault」で変わっている。このシステムの思想があって、いくつかの要素がぶら下がっているので……。

● トレイラーを見たとき「いろいろ変わったなー」という感じで口をぽかーんと開けて見てましたけど……ボタン表記が登場したり。

 誤解されてはいますが、あれはQTE(クイックタイムイベント)ではなくて、「Close-range Assault」の中の駆け引きの部分で。表現上はまだいろいろ考えようかなと。ボタンを表示されるのはみなさんあんまり好きじゃないのかなと。世界観がそがれるという感じですかね? もし、駆け引きしている最中にボタン表示が出ないとなると、そういう状態になったときにどう操作するのか、というのをあらかじめ頭に入れておかなければならないんですよね。それをよしとするのかどうか、ということがあって……表示物はまだこれからいじれますし。

● いい落とし所があればいいなと思うのですが。

 もう考えてはあるんですけどね。いくつか。とにかくあの映像はデモトレーラーだと思って欲しくなかった。リアルタイムで動いているゲームプレイ画面で、「これで遊ぶんです!」という。他にも、今作では「ブリーフィング」→「ミッション」→「デブリーフィング」というスタイルをやめたんですよ。そのままいろんなところになるべくシームレスでつながってほしいという。

● ハンガーにいって機体選択して……といったあたりも今までの流れと違うところもあると。

 機体選択も一連の流れの中でうまく選択させてあげたいという気持ちがあって。これからの開発進行度によって変わってくるとは思うんですが……いったんすべて分解したときに考え直しましたからね。「それは本当にベストな状態なの?」と。あの繰り返しも。

● 企画のスタッフも、プログラマーも大変そうな話ですね。

 それぐらいやらないと変わったことが伝わらない、ということですね。

● 今回、シリーズ初のマルチプラットフォームでのリリースですが、これは世界的な視点での判断ですか?

 当然広げたいですよ。せっかくこれだけ手をかけて新しいものを作って「いいものを作るんだ!」と頑張っているものを限定的にするよりは、スタッフとしては、「できるだけいろんな人に手にしてもらいたい」という思いは本音ですからね。

● ハードの違いはうまく吸収できていますか?

 チームがしばらく沈黙していたのは、そのへんに理由があります。プログラマーがうまくいかせるための時間をかけていましたから。「ACE COMBAT 6」が終わってからですが。この間にプログラマーが努力して、今の状態に持ってきたという。やっぱり時間はかかりましたよね。方向性を定めたりとか……。

 なんか、「旧作の引力」があって。何か迷うと、「前のやつが正解じゃないか」とぎゅーっと方向が、そっちに考えが流れて行っちゃうことが多かったんですよね。それを「そっちじゃない!」って引き戻したりするのにすごく時間がかかって。

 シリーズの制作を経験している人たちは、「とりあえず1度それはゲームとして成立しているし、いいものだ」というものがあるので、新しいことに挑戦して迷った時に、「ああ、前のやつに戻せば正解」といったところに戻ってしまいがちなんですよ。「いや、それは違う。旧作の引力にひかれちゃいけない。今回目指すのはこっちの、さらに先のところにある目標なんだから」と。作る方も「挑戦」と言っているのは、軽々しいものではなくみんなのメンタルの部分での「挑戦」というものが響いてるんですよね。

● ここまで来るまでに相当みなさん苦労されたんじゃないかと思うんですが?

 そりゃそうですよ。いつもどおり作ればある程度見えてるんですから(笑)。

● 河野さんは「ACE COMBAT 5」を制作されたあと、チームを離れてまた戻ってきましたよね? そこから「また新しいものを作ろう」となったときに、いろいろ考えられたと思うんですが、どの要素をどうまとめてどう作る、という部分を固めていくのはどうやったんですか?

 1回外に出て、「ACE COMBAT ZERO」や「ACE COMBAT X」、「ACE COMBAT 6」、「ACE COMBAT X2」には関わらず外にいたということで、ある程度客観視できた部分はあって。チームに入ったときにまずやったのが「分解」ですよね。ずっとチームにいた人間からしてみれば「なんで分解するの?」という感じでしょうけど、そこをじーっと「ACE COMBAT」というものを見つめなおしてみるっていう作業を一緒に経ていくことでわかっていくんですよね。

 いきなり「こうするんだ」、「こう変えていくんだ」って言われても「何をいってるんだか」ってなっちゃうんだけれども、一緒に分解していって「こういうことだよね」ということをみんなで共有してから組み立てなおしているので、そこで一体感というか、「そういうことなんだ」、「そういうことがやりたいんだ」というものが一緒に見えてくるんですよ。

 僕はちょっと遅れ気味にチームに参加したんですよ。そういう意味でみんなが迷っている状態の中に入って、状況を整理するところから始めたので、みんなも気持ち的に迷って不安なところから「じゃあちょっと、この人が言うことにも耳を傾けてみようか」というスタンスはあったんだと思いますけれど。

 今までのシリーズに関わっていたスタッフもいっぱい呼び戻しましたよ。「ACE COMBAT 04」とか「ACE COMBAT 5」とか「ACE COMBAT ZERO」に関わっていたスタッフも「お前も道連れだー!」って(笑)。これから開発者インタビューがあるとすれば、歴代の「ACE COMBAT」シリーズに関わっていた懐かしいメンバーが並ぶことになるんじゃないですかね。

● 面白い現場になっていそうですね(笑)。

 ビジョンが共有できている人はどんどん「これ作りましょうー!」ってどんどんやっていますし、いまいちピンとこない人たちも目をつぶりながら前に進んでいるという形ですよね(笑)。その人たちも今のユーザーさんたちの反応を見て「伝わったんだ」っていうほっとした気持ちになってみたり。

● そうなると、「ACE COMBAT」チームならでは、の部分も楽しみになってきました。

 今「全然違うじゃねーかー! こんなの『ACE COMBAT』じゃない!」って言っている人たちがどんな反応をするのか楽しみですね。やっぱり驚きがないと。そんな素直な(笑)プロジェクトじゃないので。

● これからさらに全貌が見えてくるまで、ユーザーさんも楽しみにしていると思います。「ACE COMBAT」のファンの人たちは、今までもいい意味で予想を超えたものを「挑戦」という部分を含めて見せてもらってきたし、それからいろんな想像を膨らませて発売日を楽しみにしてきたと思うので。

 僕も反応が楽しみでもあり、怖くもありという感じです。どう受け入れられるのか。これからも、ユーザーのみなさんを“いい意味で裏切って”いきますので(笑)。

● どうもありがとうございました。




■「エースコンバット アサルト・ホライゾン」河野プロデューサーサイン入り特製ビジュアルをプレゼント!

河野プロデューサーにその場でサインしていただきました

 バンダイナムコゲームス様より、インタビュー時、河野プロデューサーのサインが入った、本作のトレイラー映像を切り出した特製ビジュアルをご提供いただきましたので、3名の方にプレゼントいたします。奮ってご応募ください。


【応募方法】

応募締切  :10月29日 13:00 まで
当選発表  :発送をもってかえさせていただきます
応募方法  :下記のフォームに入力して、送信してください

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(2010年 10月 22日)

[Reported by 佐伯憲司]