WIN「ファンタジーアース ゼロ」3周年記念インタビュー
新クラス・新スキル投入など、激動の1年間を3社が振り返る


12月15日 収録

会場:ゲームポット本社


 株式会社ゲームポットが運営しているWindows用オンラインアクションRPG「ファンタジーアース ゼロ」(FEZ)は、この12月でサービス開始から3周年を迎えた。

 「FEZ」はサービス4年目に至っても、国産のアイテム課金タイトルとしては随一と言っていい人気を誇っている。先日のソネットエンタテインメント株式会社(ゲームポットの親会社)の中間決算発表では、ゲームポットの長年の稼ぎ頭だった「スカッとゴルフ パンヤ」を売り上げで上回っていることが発表され、好調ぶりを見せつけた。

 特に今年は、ゲーム内において大きなアップデートが次々と導入された。新クラス「フェンサー」、「セスタス」の実装を始め、既存の3クラスにも大きな調整が加えられたことで、1年前とは大きくバランスが変化した。この是非はプレーヤーの中でも意見が分かれるところだが、運営・開発陣は今年の動きをどう受け止めているのだろうか。関係3社の代表者に話を伺った。

 インタビューにお答えいただいたのは、ゲームポット企画・運営担当の劔俊彦氏、開発を担当している株式会社フェニックスソフトより、開発部プランナーの小林茂氏と鈴木秀和氏、「FEZ」ライセンス元である株式会社スクウェア・エニックスのプロデューサー小山博典氏と、アシスタントプロデューサーの李潤玉氏。




■ 3社がそれぞれに次のステップを踏み出した1年

左から、ゲームポット劔俊彦氏、スクウェア・エニックス李潤玉氏、同・小山博典氏、フェニックスソフト小林茂氏、同・鈴木秀和氏

――まずは先日のオフラインイベントについて伺います。1年ぶりのイベントでしたが、いかがでしたか?

劔氏: 「FEZ」では初めて、参加人数を制限させていただいてのイベントでした。今までは部隊などの仲間と一緒にご来場いただいたり、会場で顔合わせしたりと、イベントをきっかけにオフラインでも親睦を深められるいい機会にもなっていましたが、今回は抽選による事前予約という形式をとっていたためにそれが難しく、盛り上がるのかどうか少し心配していました。しかし実際に開いてみると、「バンクェット」の決勝は盛り上がり、アイテムチケットの交換も盛んに行なわれていて、いいイベントになったかと思います。今回は会場の都合上、人数を制限することで「国家対抗戦」というイベントもできましたが、今後はもっとたくさんのお客様に来ていただいて、なおかつ楽しんでいただけるようなイベントを考えていきたいと思っています。

――続いて、今年1年を振り返って、どんな感想をお持ちでしょうか。

劔氏: 今年は新クラス、新スキルといった、戦争に大きく切り込んでいくアップデート要素が多く、駆け抜けるような1年だったという印象です。運営としては、アップデート、イベント、不具合対応を始めとした、お客様へのフォローやサポートをもっとしっかりしたかったという反省点が多かったと思っています。

――ゲームポットさんはお話しいただく方が昨年と代わっているのですが、会社の中はどんな様子ですか?

劔氏: 私自身は2008年度初頭から「FEZ」チームにいますし、特に大きな動きがあったわけではありません。運営チームのメンバーはベテラン揃いのままです。またスクウェア・エニックスさんが今月から新たな動きができるということで、それに合わせる形でゲームポットのスタッフを増員しました。よりよいサービスを提供できるよう、チームの強化も進めています。

――フェニックスソフトさんはいかがですか?

小林氏: 先程ゲームポットさんのほうでもお話しされたように、今年は新クラスを2つと新スキルの大剣という大きな要素を複数実装でき、お客様に向けて多くのものを提供できたと思います。ただ、そのクラス・スキルのバランスや、実装直後の不具合などで、お客様にご迷惑をかけた部分がありましたので、こういった部分を改善し、来年も色々入れていけたらと思っています。

――フェニックスソフトさんは、去年はかなりドタバタした1年だったと思いますが、今年は落ち着いて開発に専念しているというところでしょうか?

小林氏: そうですね。アップデートを行なう上での流れがある程度確立されてきたと感じています。スクウェア・エニックスさんが進められているデータの分析のほうに、フェニックスソフトからも人を出していたり、フェニックスソフト内部でも日々のデータ分析をしたりしています。

――スクウェア・エニックスさんは、今年はあまり表に出てきた様子が見えなかったのですが、いかがでしょう?

李氏: 今年は表に出ない代わりに、裏で苦労していました。スクウェア・エニックスのほうで、今年に入り1年ほどかけて、今のお客様がどういう状況にあるのか、データを分析し裏付けを取ってから今後の方針を決めるという体制を作っていくことになりました。例えば、これまではお客様の意見や反応をゲーム内の声や掲示板、SNSで聞くしかなかったところを、どうやったらデータからも汲み取れるのか、その方法を見つけ出す専門チームを用意し、過去の分も含めて常にデータの収集、分析、マーケティングを行なっていました。そこから個々のアップデートで、初心者向け、上級者向けという要素をバラバラに考え、どういう順番で入れていくかというのは、主にスクウェア・エニックスが打ち出しています。そうしてアップデートスケジュールを考えつつ、そこから出てきた結果をどうやって分析するのか、という体制を整えて終わったという1年ですね。

――「FEZ」のユーザー数や同時接続数について、今年は70万ID突破の発表もされましたが、この数字は順調だとお考えですか?

劔氏: 新規のお客様の数は順調だと考えています。ただアクティブのユーザー数ついては、想定よりも上がり方が鈍いかなというのが個人的な感想としてあります。運営のほうで、お客様にもっと遊びやすい環境を提供するための施策を、2009年末から2010年にかけて実行していきたいと思っています。もちろん、新規のお客様の獲得についても、2009年度中にもうひと動きできないか検討しているところです。

李氏: 大きなプロモーションを行ない、新規のお客様を獲得していくというところについては順調なのですが、その方々を定着させる部分が弱いというのが、分析結果からも出てきています。それに対する施策も既に打っていますが、2009年度中にもう1つ、新しく「FEZ」を始めたお客様でも楽しく遊べる環境を作るという施策を考えています。




■ 調整が繰り返された新クラス、新スキルの狙いは?

当初は「フィニッシュスラスト」の攻撃力の高さが際立っていたフェンサー

――今年のアップデートについて順番にお伺いします。まずは新クラスのフェンサーが最初に実装されました。こちらは実装してから今までに色々と変化していますが、現状はどういう風に受け止めていらっしゃいますか?

鈴木氏: そもそも3クラスのバランスを取る流れがあった中に入れたので、とても難しい実装だったと認識しています。コンセプトは、機動力のある、敵を翻弄するようなクラスであるというところはぶれていません。しかし、実際に実装した時にどういう立ち回りをされるかを見た上で、何度か調整させていただきました。これを事前に予想するのは非常に難しいところでした。ただ、フェニックスソフトでもこの反省を活かし、大剣やセスタスの実装の際には、よりお客様が遊ぶ時の立ち位置を分析した上で実装するという形を作れたと思っています。ちょっと挑戦的な部分が大きかったのかなとは思いますが、今後もお客様の声を受けて、目立つ部分は調整して、よりよいクラスの立ち位置を目指していきたいと考えています。

――当初のコンセプトには高い攻撃力というものもあったと思いますが、その代表である「フィニッシュスラスト」の攻撃力がかなり下方修正されました。この意図を教えてください。

鈴木氏: フェンサーの攻撃力だけが落ちたわけではなく、全体的なバランス調整を行なった上で、この状態になっています。死にやすくなれば、それだけ戦っている時間が短くなってしまい、お客様のストレスとなります。よりよく戦いを楽しむためには、すぐ死んでしまうというバランスではいけないのだろうと考えています。

――全体的にダメージを低減させている中で、フェンサーも今のようになっているというわけですね。

鈴木氏: そうですね。最初から比べれば確かに違うのですが、バランスを取った上での立ち位置になっています。

――当初のコンセプトは、今後も変えずにいくのですか?

鈴木氏: はい。今後色々なクラスやスキルが入ってくると、必ず他に影響してしまうので、そこを見ながらにはなりますが、立ち位置が引き立つように、あるいは立ち位置を邪魔しないような関係を目指して、調整していきます。


「バンクェット2009」においても猛威を振るっていた大剣

――次に大剣について伺います。新スキルとして3つ入ったわけですが、これも大幅な調整がありました。この辺りの意図を改めて教えてください。

鈴木氏: 大剣は両手武器と重なる部分が多い武器になっていますが、当初は目論んでいた差別化を図れていませんでした。両手と大剣が互いに引き立つよう、違う立ち位置となるベクトルを目指して調整していきました。

――大剣と両手の立ち位置の違いとはどういうところですか?

鈴木氏: 大剣は、大きな攻撃範囲を持っているのが1つの特徴です。対して両手は、自ら斬り込んでいくような立ち位置があります。そこが最初の大剣では喰い合ってしまったので、お互いが引き立つバランスを目指しています。なかなか見えづらい部分だと思うのですが、今後も分析を続けて、明確な立ち回りにできればと思っています。

――ユーザーの数を見ていると、両手よりも大剣がかなり多い状況です。その点についてはいかがですか?

鈴木氏: お客様の選択肢が広がるようにしたいと思っています。どこか1つに偏ってしまい、遊び方が固定されるのは、「FEZ」全体の遊びが狭まっているのだと認識しています。そうならないような調整は必要だと思っています。


建築物を修理するなど、従来のクラスとは異なる立ち位置を得たセスタス

――では次に、2つ目の新クラスであるセスタスについて伺います。建築に特化した面白いクラスになっていると思いますが、歩兵で戦うには非常に厳しいという声もあります。この辺りはどうご覧になっていますか?

鈴木氏: 歩兵としては他のクラスを超えないように、狙ってそうしています。今までのクラスは前線で戦うことに焦点を置いていたのですが、このクラスに関しては建築物に対して影響が大きいという、今までのクラスとは違った戦い方を追求できるクラスになっていると思っています。現状のセスタスに手を入れることは、まだ検討している段階です。

――1つ気になるのは、対建築物の攻撃力が両手と変わらないか、若干劣っているところです。アロータワーの強化や、建築物の回復もできるという特徴はありますが、この点はいかがでしょうか。

小林氏: 両手・大剣とは大体同じか、少し強くなるようには設定してありますが、大きな差が出ていないのは確かです。そのあたりの差別化が必要かとは思っています。

――他にも今年は、既存のスキルに色々な調整が入りました。中でも大きいのは、凍結とスタンの効果時間の短縮だと思いますが、この辺りの意図を教えてください。

鈴木氏: 先程も申し上げた、即死しづらくして長く戦いを続けさせたいという方針のもと、バランスををとっています。

――片手は最も特徴的なスキルだった「シールドバッシュ」が純粋に弱まってしまっただけになっていると思うのですが、この点についてはいかがですか?

小林氏: 1回の「シールドバッシュ」で止められる時間が減ってしまっているのは確かです。ただ片手に関しては、「ガードレインフォース」の耐性上昇値を上げて、長時間前線で留まれるような形にしています。複数のキルであっという間に前線が動くということではなく、じわじわと押したり引いたりして楽しめるような形を目指していて、片手はその基点となるキャラクターとして位置づけています。

――もう1つの凍結については、「アイスジャベリン」が凍結4秒になるなど、相当短くなっています。これは現状をどう見ているのか教えてください。

小林氏: むしろ、これまでの凍結時間が長すぎたと感じています。1度にかなりの人数が巻き込まれると、その後何人かが攻撃されて、何人かはずっと1カ所で何もできないで留まっていることになります。この部分でのストレスは、受けた側にとって非常に大きなものだと考えています。「シールドバッシュ」でのスタン時間を含め、動きを止められる側のストレスと、止めて連携する側の楽しさの間を見て、この数字を出しています。

――今の数字で妥当だと思われますか?

小林氏: そうですね、今のところは目的どおり機能しています。ただ、バランス調整という意味では、これからも継続的に見ていかなければならないと思っています。これまでは複数箇所を1度にバランス変更していましたが、今後は少しずつ行なう方向で考えています。

――他の修正点では、スカウトも大きく動いています。「ハイド」時の移動速度が上がったり、「パニッシングストライク」のスピードが変化したりしました。この意図と、現状認識を教えてください。

鈴木氏: スカウトのシェアを広げて戦争のバリエーションを広げたいという狙いから、「ハイド」からの連携などの部分を広げて使いやすさを出すために、そういった調整をしています。今は色々な反響をいただいていて、今後の調整を検討していく必要があると思っています。

――短剣スキルは色々と調整されましたが、弓スキルはあまり修正されていません。

鈴木氏: 弓は特に問題視していません。そもそもが安全圏から撃てるというスキルですので、これを強化という方向では考えていませんし、逆に大きく弱体化するほどの強さでもないと今のところは見ています。

――あとは、火系ソーサラーですね。ソーサラーの3つのスキルツリーにおいて、ダメージの主力である火系、というアドバンテージが薄れていると感じるのですが、その辺りはいかがですか?

鈴木氏: 今後の調整が必要だとは思うのですが、まずは全体として即死しにくくすることを優先しています。瞬間ダメージは減っていますが、持続ダメージでトータルのダメージ量はあまり減らないような調整を入れることで、引けば留まれるというバランスを目指しています。

――わかりました。今年はこれらのスキル・クラス調整において、テストサーバーをおいたり、ユーザーテストルールを設けたりして、先にユーザーが触れる環境を用意されました。この施策についてはどうお考えですか?

劔氏: 運営・開発側が目指したものと、実際にプレイされたお客様の到達した部分のずれが、本番ワールドへの実装前に見られるところは非常に有意義です。しかし、ユーザーテストをやるためには2週間の上乗せが必要になり、アップデートのスピード感がどうしても失われてしまうところが懸念点です。例えばフェンサーの場合、発表から実装までにかなりの時間がかかったのですが、そういった部分でお客様が待ちくたびれてしまうところもあったかもしれないと思っています。

李氏: ユーザーテストに参加してくださる方というのは、熱心にゲームを遊ばれていて、ある程度のスキルがある方が集まって来られます。その結果をアップデートに反映してみたところ、ユーザーテストで出た意見と、もう少しカジュアルに遊ばれている大多数の方の意見は違う場合がある、というのが調査の結果判明し、サイレントマジョリティを見落としていたという反省点があります。今後はおそらくテストサーバーを立ててやるより、実装の都度データの分析を行なって対応していくと思います。

小山氏: ユーザーテスト自体は有益だと思っているのですが、全体の意見が反映されていないのは間違いないので、それをできるだけ反映させられるやり方を徐々に探っていくことになると思います。

李氏: アンケートでも工夫しています。フェンサーの調整を入れた時は、フェンサーをやっているのかいないのか、主に使っているのはどのクラスなのか、訓練場ルールでテストプレイをしてみたのか、そうではなく現状の戦争中でのフェンサーに対する意見なのか、「FEZ」歴がどれくらいなのか、といったものを全部分けて集計しました。結果は面白いもので、この立場の人はこう思っているけど、こちらの人はこう、といった違いが出てきたので、そうやって裏づけを取るために、データの収集はこまごまとやっていきます。




■ 市街地戦、新装備、新ボイスなど多数のアップデートについても質問

大きな高低差のある市街地マップ。戦い方が大きく変化したことで、ユーザーの評価も割れている

――では次です。新マップとして市街地が入りましたが、これはユーザーさんの反応も含めてどう見ていますか?

鈴木氏: こちらの想像を超えた建築の建て方や、攻め方がでてきて、我々としても驚きのある新しい戦場になったと思っています。従来のマップにもいい部分はあるのですが、今後も新しい戦い方ができるようなマップを目指していくため、その中での施策という位置づけです。

――昨年から高低差の大きなマップが作れるようになったと伺っていて、それも含めての市街地だと思うのですが、今後もこういう高低差を活かしたマップを増やしていきたいということですか?

鈴木氏: そうですね。具体的にどうとはまだ言えなのですが、バリエーションとして高低差だけでなく、今までの形状とは違ったものができないかというのを模索している段階です。高低差にこだわるわけではなく、バリエーションを広げていきたいと思っています。

小林氏: 市街地での戦い方は、お客様も普通の戦場とは違った楽しみ方をされている印象があります。ただ、これまでやってきたものとはかなり形が違いますので、もっと調整は必要だと思っています。どちらかが勝ちやすいという偏ったバランスにならないようには注意していきます。


もはや防具とは言えない着ぐるみも登場。画像はウルサセット(男性共通装備)

――次に装備品関連について伺います。今年はクマとウサギの着ぐるみや、顔が月のようなものが出たりと、今までの世界観とは随分違ったものが入っています。これはどういった狙いがあるのでしょうか?

李氏: 着ぐるみは賛否両論出るだろうなと思いながらやってみたチャレンジでしたが、今は特徴的なものが多くなってきています。時々、今までの「FEZ」の装備とは違うものを入れてみて、その反応を分析し、「こういうものが好まれているのか」といった情報が取れるということもあります。絶対に売れるであろうという装備だけを出していくわけではなく、その中でどれか1つでも、1人のお客様にとってとても気に入る装備が出てきてくれればいいなと思っています。ナンバーワンよりオンリーワンですね。月には私もびっくりしましたけれど。

小山氏: あれは9月なので、お月見です。

――今、その理由を初めて聞きました(笑)。

小林氏: おそらく、お客様の話題に上がるのは共通装備だと思います。共通装備に関しては、普段とは違ったものを出しています。

――元々はファンタジー系べったりなゲームでしたが、最近は無難な鎧やローブがないので、それはそれで気になっています。

李氏: そういう意見もあれば、出さないといけないなとは思います。まだデザイン段階ですが、1月の装備品はご期待に沿えるものになっているかと思います。

小林氏: ただ日本刀や扇も入っていますので、まだまだ色々やれるかなと思います。限界に挑戦する話ではありませんが(笑)。

――次はボイスについてお尋ねします。システムとして入ったのは昨年ですが、今年はアンケートを取ってから実装されたという流れがあります。この辺りの反応はどう受けとめていますか?

劔氏: 最初の10人の声優さんが、業界ではかなり豪華なメンバーでした。その次に入れる声優さんを選ぼうとすると、コアなファンが好むような人ですとか、特徴的なところに偏りすぎて、運営の独りよがりな選別になってしまう可能性が高くなっていました。そこで声優さんが好きで「FEZ」も好きな方々のトレンドは何だろう、というのを素直に聞きたいと思い、アンケートを実施しました。12月14日に実装したボイスの4人の声優さんも人気アンケートから選びましたし、その前の大塚明夫さんと釘宮理恵さんも人気アンケート上位でした。可能な範囲でスクウェア・エニックスさんと相談させていただいて、人気アンケートから実装させていただきました。

――以前、カジノに実装されたボイスチケットが入手できない状態で、今年のアニバーサリールーレットにもありませんでした。今後はフォローされるのですか?

劔氏: 今年のアニバーサリールーレットではあえて控えさせていただきました。12月14日に4つのボイスを追加することが決定していたのが理由の1つです。また今回のアニバーサリールーレットに関しては、事前に人気装備アンケートを取らせていただいて、そこから3つに分けて選出させていただきましたが、ボイスチケットはまだ数が足りません。「12月はボイス祭りでした」というのも楽しいのですが、もっといい別のやり方もあるのではと考えています。もし来年、アニバーサリー以外に出せる機会がなければ、間違いなく出すことになるでしょう。それ以外で何か機会があれば随時検討して、いい形でお客様に提供したいと思っています。もちろん新たなボイスは、来年以降も充実したラインナップを用意していきたいと思いますのでご期待ください。

李氏: 人気アンケートを元に、つい先日も新たに収録を行ないました。ご期待ください。

――次の質問です。先日、DirectX 9が必須になったと発表されました。これはなぜですか?

小林氏: 元々はDirectX 8.1対応としていたのですが、Windows 7も発売され、どんどんPCの環境が上がってきています。それに合わせて、ゲーム内の環境をよくしていきたいという考えがありまして、その中の施策の1つとして、DirectX 9への環境引き上げを行ないました。

――ユーザーに何かしらメリットはあるのですか?

鈴木氏: DirecrX 8.1は今では古すぎるAPIになってしまっているため、新しいハードウェアではあまり効率的ではなくなってしまっています。「FEZ」で示している最低動作環境でもDirectX 9に対応できるものですので、引き上げることになりました。

――急に画面が綺麗になったりはしませんよね?

鈴木氏: それはありません(笑)。内部的な処理が更新に合わせて効率化されていく、というところです。

――クライアントを高速化しましたという話もありましたが、あれは具体的には何をしたのですか?

鈴木氏: 描画において、無駄に何度も表示処理を行なっている箇所が複数あったり、効率的な描画処理を行なっていなかった箇所を修正しています。また、マップデータの処理も最適化しています。

小山氏: どんなロースペックのPCでも「FEZ」が動きますという状態になってくれれば、ユーザーを増やしていくことにも大きく貢献するので、パフォーマンスアップを頑張ってやっています。お客様からはあまり見えないところではありますが、高速化することで低スペックの方は遊べるようになり、高スペックの方はもっと描画範囲を広げられるようになるといえば、おわかりいただけるかと思います。この点は今後も継続して取り組んでいきます。




■ 「銃」の次は新ソーサラースキル。3つ目の新クラスは未定に

スカウトの新武器「銃」は、妨害・支援を主とした遠距離武器となっている

――それでは今後のアップデート計画についてお伺いします。まず直近の12月のアップデートについて教えてください。

小林氏: 24日に、スカウトの新スキル、新武器として銃を実装します。支援妨害系のスキルを持たせており、長距離から特殊な弾丸を発射します。例えば自分や味方が暗闇状態になった時に、閃光弾を撃ち出して、一定範囲内の暗闇を短時間解除させられます。「レイス」の「ダークミスト」などに対しても有効です。また閃光弾は「ハイド」で隠れているスカウトも見つけてしまいます。他には、これまで短剣スカウトのスキルとして「アームブレイク」がありましたが、これは完全に攻撃ができなくなってしまうので、それとは違った形で、攻性低下の弾丸も使えます。

――攻性の低下は新しいカテゴリですね。

小林氏: ダメージは下がるけれど攻撃はできます。ただ、効果自体はそれほど長くないので、味方がキルを取られそうな時に撃ってあげることで救けられるという、新しい救助支援です。さらに先程懸念されていた、火系ソーサラーを補助するオイル弾もあります。これを撃つと敵がオイル状態になって、その時に火属性のダメージを与えるとダメージが上がります。これらのスキル追加が「ハイド」に対する抑止力になるとともに、ソーサラーを増やす効果も見込めるのではないかなと思っています。

――スキルは全部で幾つ入るのですか?

小林氏: 基本攻撃と合わせると6つです。また一部の弓スキルは共有しています。

――射程は弓スキルと同じくらい長いのでしょうか?

劔氏: そこまで長くはありません。


【銃スキル】
通常攻撃は弾は撃たず、銃剣を使う近距離攻撃「アシッドショット」は、敵の攻性を下げる新たな状態異常「アシッド」を付与する「オイルショット」を受けると「オイル」状態になり、火系の被ダメージがアップする
「ディジーフラッシュ」は範囲内の敵をのけぞらせ、さらに一定時間「ハイド」を使えなくする状態異常を付与する「ホワイトブロウ」は着弾地点に視界を遮る煙幕を発生させる「トライヴェノム」は「毒」状態を付与する攻撃を3方向同時に発射する


アクセサリとして実装される新しい髪形。画像は「チャイナシニョン・黒」

――わかりました。他にはどんなアップデートがありますか?

小林氏: 新たな髪形を追加します。アクセサリが11月から実装され始めましたが、12月はいわゆるカツラとして、髪型のバリエーションをアクセサリで出します。新しい要素として楽しんでいただきたいですね。

――容姿変更NPCで変更するのではなく、今あるアクセサリのカテゴリに装備するのですか?

小林氏: そうですね、その中に入る形になります。髪色も今までにないものが出ます。

――その先の来年以降のアップデートで、何か面白い話題があれば教えてください。

李氏: 来年1月には、クライアントがまた軽くなります。

――先程話されていた軽量化がさらに1歩進むのですか?

小林氏: 今までマップデータが非常に大きかったのですが、これをかなり小さくできましたので、クライアントのサイズが半分ほどになります。また、マップの描画処理も最適化できる箇所がありましたので、合わせて変更しています。

劔氏: 実はこれにDirectX 9が関わっています。この先クライアントを軽くしたり、最適化したりするためのアップデートを進めるために、前もってDirectX 9をお客様に適用しておいていただくのが目的でした。

――今後といえば、昨年は新クラスを3つと、既存クラスに新スキルを追加というお話しでしたので、新クラスがもう1つ残っているのと、あとはソーサラーに何かしら新スキルがあることになります。その辺りはいかがでしょうか?

李氏: ソーサラーの新スキルは、予定に入っています。

劔氏: 詳細はまだ構想中です。新クラスのほうは、まだ決まっていません。

小山氏: 新クラスに関しては、当初はロードマップを引いていたのですが、今年はバランスの問題が非常に大きく、仕切り直しています。新クラスはある意味、バランス調整された状態を崩すものなので、予想はしていましたがインパクトが大きかったです。セスタスは既に開発が進んでいたので、そのまま入れてしまいましたが、3つ目に関しては、しっかりバランスがとれた状態で、ユーザーさんの不満もある程度少ない状態になったタイミングで、改めてどうするか考えましょうという話をしています。

――フェンサーやセスタスは、スキルの選択肢が少ない状態になっています。スキルを追加する予定はないのでしょうか?

小山氏: 検討はしていますが、具体的に話が進んでいるわけではないですね。

――ではアップデートの話のついでに、年末年始にかけてのイベントなどで何か決まっているものがあれば教えてください。

劔氏: 例年ですと、大晦日の4時間くらいを使って、全ワールドの国家を2つに分けて戦うようなイベントを実施していました。今年は頑張った人が何かいいものを貰えるチャンスがあるという形にするため、「おみくじちゃん」のシステムを流用します。もらえるものは昨年、一昨年のイベントに倣ったものが出てくるかも、という感じのものを予定しています。今年は「この4時間だけ集中して遊んでください」というよりは、「好きな時間に遊んでいただくだけで、いいものが手に入ります」といった感じで、お客様に対してのお礼になるようなイベントを考えています。




■ 新たな大会形式や今後のルーレットの展開など細かく質問

――その他、気になるところをバラバラと質問していきたいと思います。まず召喚獣や建築物について、今年は大きな動きはなかったと思うのですが、この辺りはいかがですか?

小林氏: 召喚獣に関しては、まずは歩兵側をしっかりやってからかなと考えています。構想はいくつかあるのですが、各クラス、各スキルのバランスがある程度取れたところで、新召喚獣や新建築物も検討していきたいと考えています。


先日のオフラインイベントの企画の1つ「国家対抗戦」でも登場した「トライリス」。常態での実装は考えていないそうだが、イベントでは今後も使われそうだ

――建築物では、イベントで「トライリス」が入りましたが、あれを調整して本実装するような形は考えていないのですか?

劔氏: 「トライリス」は弊社が企画したイベントで、リスクが高いけれど効果が高い「オベリスク」といった建築物を使ったイベントをやりたいと提案させていただいてできたものです。今のところ、「トライリス」の実装は検討していません。ちなみにそのイベントについては、「トライリス」そのものに問題はなかったのですが、建っていた場所があまりよくなかったと思っています。運営としてもそこは精査して、もっと楽しめる形で再度お出ししたいと思っています。

――先日のイベントで行なわれた「国家対抗戦」もその答えの1つですね。

劔氏: そうですね。「国家対抗戦」では1つのキーとして役割を果たしてくれたので、他にも使い道があっていいのではないかと思っています。

――対戦イベントとしては7対7の「バンクェット」があるわけですが、「国家対抗戦」のようにもっと多人数の大会もできないでしょうか?

劔氏: 個人的には、最強国家決定戦みたいなものをやりたいと思っています。「FEZ」は50対50の戦争が柱なので、そこを狙った大会ができないかとは前々から検討しています。ただ動員するのが1チームにつき50人になり、さらに補欠をいれて、それでも実現できるのか考えている最中です。規模が大きすぎるのでオフライン大会では無理ですが、難しい、難しいと言いながら考えています。

――50人は確かに大変だと思うので、シャッフルトーナメントで17対17程度なら面白いかもしれないですね。

劔氏: 少人数での対戦も面白いのですが、建築物や召喚獣を駆使してこその「FEZ」だと思っています。その辺りを活かせる大会を実施したいですね。

――では次です。毎年伺っていますが、現状1つしかない戦争のルールを追加するという話はありませんか?

李氏: 検討材料としてはあります。基本50対50ではあるのですが、戦場によって別のパターン付けをできるのではないのかという可能性を模索している最中です。

劔氏: 実は去年やった75対75の特別イベントが、今後こういったことをやってゲームとして成り立つのかを見るテストを兼ねたものでした。現在もデータを蓄積しながら検討しています。

――戦術目標についてはいかがでしょうか。オフィシャルショップに新しい装備が入ったりはしていますが、何か仕様変更は考えていますか?

小林氏: こちらに関しても検討中です。単純にオフィシャルショップで新しい武器や防具をという要素以外に、何か追加できないかとは考えています。

――同様の話が続きますが、レベル40と部隊レベル5という頭打ちがありますが、これに何かしらメリットを与えることは考えていますか?

李氏: 先程の戦術目標などと全部をひっくるめて、何かしら総合的にできないか検討は始めています。レベルや部隊に応じてのメリットというと違う形になるのかもしれませんが、長く遊ばれている方や、戦争で活躍された方にメリットが発生するルールみたいなものを入れようかという話はあります。スケジュールもだいたい見える形になってきましたが、まだ検討が必要な内容ですので、実装の詳細な時期については未定です。

――では次に、ルーレットについてです。現状、当たりが出るほど次の当たりが出にくくなるという仕組みになっていますが、現在の仕様に何か手を加える計画はありますか?

劔氏: 仮に同じものが何度も当たるようにすると、リサイクルによるリングの増殖がありえるので、そういった点での変更は考えていません。ただ今のルーレットを、何かゲームとして新しいものに変えたいとは思っています。ルーレットも今の仕様が2年続いていますし、いい加減皆さん飽きられていると思っています。来年には、ゴールドコインを使った遊びを変えていきたいと考えています。その際には、当たりとハズレの関係が、ゲームのルールによって変わってくるかもしれません。

――ハズレアイテムの扱いについて、昨年は「役に立たないものは出さないようにする」ということから「サモンアタックゲイン」などが出なくなりました。現在出ているアイテムについてはどう思われますか?

劔氏: 私も個人的にルーレットを回して、倉庫の中に「ハイリジェネレート」がかなりの数あります。使えるアイテムなのは間違いないのですが、ありすぎるところは確かに問題なので、何とか改善したいと考えています。

李氏: もうちょっとバリエーションがあるべきではないか、という話は始めています。

――今出ているアイテムを、入れる、削るという話はありますか?「強靭の結晶&コインセット」などは非常に邪魔になるのですが。

李氏: ハズレアイテムに関しては全体的な調整を加えなければいけない、という話はしています。これはデータ面での裏づけも取れているので、変えるべきだと思っています。

――ワールドごとの人口の差が大きくなっていますが、この対策は何か考えていますか?

劔氏: 今ですと、ChokmahとGimelはがかなり人が少ないのは把握していて、そこに対して何らかのキャンペーンを打つべきかなと考えています。今年実施したワールド移住キャンペーンがシステムとして実装されているので、そこも活用したいところです。戦争がこれ以上起こせないという戦争待ちの人がたくさんいるワールドから、人が少なくて戦場がないから戦争ができないと言っている人達のところの橋渡しを、運営のほうでできればと考えています。

――ワールド移住キャンペーンについては今後も続けるつもりですか?

劔氏: 時期とワールドの状態を見ながら、行ないたいと思います。

――今のところは、人口が多いワールドもキャパシティ内なのでOKという見方ですか?

劔氏: 今のところはそうです。ただキャパシティさえOKなら、人口が少ないワールドは見なくていいということではないので、全体を見たうえで判断していきたいと思っています。

――あとワールド移住の際、所属国も変えたいという声があると思うのですが、それは可能になりませんか?

小林氏: 国の変更はかなりリスクが高いのです。例えば、あるワールドで弱い国に居た方々が、別のワールドに移る時は、やはり強いところに行きたいと考えてしまい、移転先のパワーバランスが崩れる可能性があるので、非常に難しい問題だと思っています。実施するとしても、かなり検討する必要があるものだと認識しています。

――では次に、チート対策の現状を教えてください。現在は自社のプロテクトツールが入っていると伺いましたが、その辺りも含めて現状どうなっているのでしょうか。

劔氏: まずチートに関しては、プロテクトツールで弾けるところは弾いて、弾き切れない部分もログを元に調査し、アカウント停止を行なっています。一時期かなり酷いチートがあって、GMといたちごっこを繰り返した日がありましたが、あの件については、どのISPを使っているかまで特定できていながら、ISPから情報を開示していただけませんでした。現在はしかるべき機関に情報の提供と法的な対応の相談を行なっているところです。それ以外のチーターに関しては、適宜アカウント停止などの措置を行なっています。

――チートに対するシステム的な対応も進んでいるのですか?

小山氏: 先程話したように、どうしてもいたちごっこにはなるのですが、チートの方法を解析して、その対処を随時打っています。

李氏: 長く「FEZ」を遊んでいたのに離れていったユーザーさんを含めて調査した際に、チート対策が緊急課題であるというデータが出てきました。ゲームポットさんには、対策の強化をお願いしていて、来年以降は今のキャストGMではなく、もっと取り締まるためのGMの人数を増やしていただけるよう話はしています。

――最後の質問です。SNSについては何かアップデートの予定はありますか?

劔氏: 重いという問題の改善をしていくのはもちろんですが、その他にも今後どうするかを、SNSの開発会社さんと相談はしています。ゲーム内のアップデートとSNSのアップデートを連動させたものを提供したいと考えています。

――わかりました。では最後に、ユーザーに向けて一言ずつメッセージをお願いします。

鈴木氏: 今後も新しい要素を実装する予定ですので、前回の反省を踏まえて、戦争を楽しめるという土台を真っ先に考えて対応していきたいと思います。そこを大前提として、その先も色々な遊びを増やしていければと思います。今後もご期待ください。

小林氏: 今年1年の中で、お客様の声などを色々見てきた中で、もっと期待に答えられるように、より多くのお客様に面白いゲームだと思って長く続けていただけるように、調整や新規実装を行なっていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。

小山氏: 今年は1年を通して大きなアップデートが続いて、そちらの方に集中してしまったために、お客様の声をきちんと聞き取ったり、対応したりといった点で、スピード感がなかったところがあります。来年も大きなものを入れていきたいと思ってはいますが、それよりもお客様が求めている質を上げていくこと……それは開発の質であったり、運営の質であったり、そういったものを向上させて満足度を上げていくことを目指して頑張っていきたいと思っています。

李氏: 今年1年は色々なデータの収集や分析、それに基づいた結果の裏づけをコツコツやっていました。今後のアップデートでは、既存のお客様にとっても、新たに入ってくる方にとっても、きちんと土台ができあがっていて、楽しんで遊んでいただける環境をまずは整えたいと思っています。今後の目標としては、世界にどんどん「FEZ」を広めていって、いずれ世界統一決戦のような、真の意味でのワールドマッチができるよう、「FEZ」を次のステップに進めていけたらと思っています。

劔氏: ゲームポットとしては、お客様に満足していただけるゲームを提供していけるよう、さらに努力してまいりたいと思います。今年を振り返ると、運営としてフォローの至らなかった点や、もう少し上手くできたのではないのかという点が数多く見えています。2009年に残したものを、2010年の課題として、まずはその課題をきっちりこなしていきます。その上で、ゲームポットはゲームのアップデートだけでなく、お客様に安心してプレイしていただける環境をきちんと提供できるようにしたいと思っています。チートやBOTもそうですし、暴言などのハラスメントについても、きちんとフォローに回れる体制を作り、安心して遊んでいただいて、楽しかったと思っていただけるよう、サービスのクオリティを上げていきたいと思います。

――ありがとうございました。


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(2009年 12月 28日)

[Reported by 石田賀津男]