インタビュー

北米の老舗オーディオメーカー・Polk AudioのEd Johnson氏へインタビュー

Xbox One用ヘッドセット「4 shot」とXbox 360用の「melee」

Xbox One用ヘッドセット「4 shot」とXbox 360用の「melee」

Xbox One用ヘッドセット「4 shot」(Xbox 360用の「melee」も外観は共通)。こちらも落ち着きのあるシックな色合いのデザインになっていて、高級感がある

Johnson氏:では次に、ヘッドセットをご紹介しましょう。2種類あります。Xbox One用の「4 shot」と、Xbox 360用の「melee」です。いかがですか?

――デザインが落ち着きがあって高級感もある。非常に良いですね。

Johnson氏:よくゲーミングデバイスというと、SF的な、オプティカルでソリッドなものが多いですが、先ほどお話ししたように、ターゲットは成熟した好みを持つ大人達です。そこで、1960年代のレトロなテイストが感じられるようなものに仕上げています。ライフスタイルに溶け込むデザインです。

 マイクに特徴があります。いくつかあるのですが、まずイヤーカップから押すと出てくるマイクです。しまうときは押せば中に収納されます。もうひとつは、ケーブル途中にあるリモコンマイクです。そしてもうひとつ、フレキシブルアームのマイクを付けることもできます。「小さなマイクでは不安だ」という人はアームマイクを使うといいし、スマートフォンなどで使うなら、他の2つでいいでしょう。好みで使い分けられるようにしています。

――なるほど。いろいろな利用シーンで使えるようにしてあるのですね?

Johnson氏:接続はステレオミニプラグになっていますから、いろいろなものに使えます。ゲームに使うのはもちろんですが、音楽を聴く時にも役立ってくれますよ。音質の方も、ゲーミングデバイスとはいえ、我が社はオーディオ研究の歴史を持って取り組んでいます。

――Polk Audioは、スピーカーだけでなく、マイクの研究も長くされてきたのでしょうか?

Johnson氏:意外に思われるかもしれませんが、スピーカーとマイクというのは仕組みはほとんど同じで、実は大きさが違うだけなのです。音が入ってきて、磁石がそれを受け止め、その動きが信号をアウトプットしていきます。マイクの場合は音が入ってきて、それを送るというものですが、スピーカーの順序の逆を行なえばいいので。

マイクが3種類あるのが特徴で、ひとつはイヤーカップ脇にある収納式マイク、もうひとつはケーブル差し替えで取り付けられるフレキシブルマイク、3つ目は別のケーブル途中にあるピンマイクタイプ。好みや利用シーンに応じて使い分けられる
製品を手に取りつつ、懇切丁寧に答えてくれたJohnson氏。マイクについての質問では、図解も交えつつ、スピーカーとマイクの仕組みについて答えて頂いた

――この他に例えば、Microsoft側から「ゲーミング用のオーディオ製品なので、こうして欲しい」というようなオーダーはありましたか? 例えばゲームは長時間プレイするから、イヤークッションは蒸れないような素材にして欲しいとか。

Johnson氏:基本的な仕様はこちらがメインで進めましたが、そこからどんなリクエストがあったか、詳しくはわかりません。ただ、Microsoftの人達は以前から、うちの会社の「UltraFocus 8000」というヘッドフォンがとても気に入っていたようです。その特徴を活かしたヘッドフォンにして欲しいという話はありましたね。

――などほど。ビジネス的な繋がりよりも先に、開発者の方々が個人的に好きだったということだったんですね。それでは最後に、日本のゲームファン、オーディオファンに向けて、一言頂けますでしょうか。

日本市場に参入できる喜びを笑顔で語ってくれた

Johnson氏:日本の市場に参入できることに非常に喜ばしく思います。ここに至るまでに非常に時間がかかってしまいましたが、日本という国はテクノロジーに対して造詣が深く、通常は海外メーカーが参入するのは難しいとも言われています。ですが、弊社にはそういった要求に応えられるだけの高い製品力と技術力があります。これから日本の皆様に広く受けいれてもらえることを期待しています。

――ありがとうございました。

実際に「N1 surroundbar」でXbox One「Forza Motorsport 5」をプレイ!
専用DSPモードと独自のSDA Surroundシステムで、風を感じるようなくっきりとした定位感!!

Xbox One「Forza Motorsport 5」で、「N1 surroundbar」の音を体験!

インタビューの後に、実際に「N1 surroundbar」の性能を体感させて頂いた。使用したのは、Xbox One「Forza Motorsport 5」で、音だけでなくコントローラーにも「Thrustmaster TX Racing Wheel Ferrari 458」を使用しての、贅沢な環境でプレイさせて頂いた(ステアリングコントローラーの「Thrustmaster」のフィーリングの良さについても、たっぷりお伝えしたいところだが、今回の主旨はサウンドなのでそこは割愛させて頂く)。

 「N1 surroundbar」からのサウンドは、音の厚み、伸び、低音の響きと、いずれの点でも申し分なし。静かなBGMでもすっきりと聞ける。しっとりとした聴き心地が、さすが老舗の手がける高級オーディオといったところだ。

 その上でまず驚かされたのは、“音の方向がくっきりとわかる”ということ。インタビュー中に出てきた、余計な聞こえ方をキャンセルする「SDA Surroundシステム」の効果かもしれない。

 それが最もはっきりと感じられたのは、“車を抜いていく時の横にいる存在感”。これがものすごい。例えるなら、物理的に多数のサラウンド用スピーカーを配置しているような聞こえ方に近いのだが、右横に接触するぐらいの距離に他車がいる時、くっきりと右耳そばに音が聞こえてくる。もちろん左耳には全く聞こえないというようなやりすぎ感があるデジタル的な処理のされ方ではなく、現実のようなリアルな聞こえ方にチューニングされている。これが「余計な聞こえ方を打ち消す」という「SDA Surroundシステム」の効果というわけだ。

 この効果はインタビュー中にJohnson氏が話していたように、事前知識がなければ気づかず、「不思議なほどに音がくっきりと聞こえるスピーカー」という印象に落ち着くかもしれない。それぐらいに自然で、特におかしな聞こえ方をするということもなく、ただ純粋に、音の方向がくっきりわかる。

リモコンのDSPモード切替ボタンには「Halo」と「Forza」のロゴが使われている

 続いて、「Haloモード」や「Forzaモード」といったDSPモードを切り替えて比べてみようと、リモコンを手に取ってみた。すると、リモコンのボタンにそれぞれのタイトルロゴが使われているのが見えた。これについてもお話を伺ったところ、パッケージに印刷するレベルではなく、製品そのものにロゴを使えるというのは、なかなか無いことだそうだ。単純なライセンス取得レベルではなく、密接な関係性があってこそのものだという。

 そうしたところにまたも感心しつつ、DSPモードを切り替えていく。まず「Forzaモード」は、他のモードと比べると“エンジン音がくっきり大きく中心に位置するような聞こえ方”になり、BGMは控えめで外に流れている音のように(周囲で聞こえているような広がり方に)変化していた。

 専用DSPモードの効果は、言うなれば「音の距離がより正確になる」もののように感じられた。エキゾーストノートとタイヤのスキール音が大きく、近い音に聞こえ、他の音が周囲から包んでくるように薄く聞こえてくる。前述の「SDA Surroundシステム」と合わさって、音のリアルさを圧倒的に高めていた。

 ちなみに「Haloモード」にもDSPモードを切り替えてみた(ただし、プレイタイトルは「Forza Motorsport 5」のままではあるが)。すると、音の広がり感が控えめになり、音質も固めになって、いわゆる効果音が強調されるような聞こえ方になった。おそらくだが、前述の音の距離の適正化に加え、銃声や足音が強調されるのではないだろうか。

本体側の操作ボタンと、背面のインターフェイス部分。接続は光デジタル、アナログ、APTx Bluetoothの3系統
ソースやDSPモードの切替え時には、写真のように前面のLEDがイルミネーション的に光って知らせてくれる。「Haloモード」では青点滅、「Forzaモード」では赤が波打つように点灯する(シネマやコンサートでは紫に光る)

 このように、「N1 surroundbar」はプレイ体験を何倍にも高めてくれていた。そこにはもちろん、ステアリングコントローラーの「Thrustmaster」の力もあったのだが、音の力も絶大だ。逆の言い方をすれば、ステアリングコントローラーを用意したのなら、音もぜひともこだわりたいというもの。Xbox Oneだけでなく、他のゲーム機や映画鑑賞、テレビ視聴にも使え、いずれのサウンドも圧倒的に豊かにしてくれる。音に物足りなさを感じている人や、最高の環境で楽しみたい人はぜひチェックして頂きたい。

(山村智美)