インタビュー
「マインクラフト」15周年記念インタビュー! Mojang Studios責任者が語るマイクラの“3つの価値”
2024年7月10日 00:00
- 【Minecraft】
- 2024年5月16日 15周年
Mojang Studiosのサンドボックスゲーム「Minecraft(マインクラフト)」は2009年に登場して今年で15周年を迎えた。世界中でプレイされ続け、累計販売本数は3億本を突破するなど、その人気は衰えるどころか今なお加速の一途を辿っている。例えプレイしたことが無くても、一度は「マインクラフト」の世界を目にしたことがあるだろう。
「マインクラフト」には特定の目標が設定されておらず、ワールドを探検し続ける冒険、作りたいものを作る建築、一人で遊んだり複数人で一緒に遊ぶなど、プレーヤー自身が自由に遊び方を決めることができる。6月には「トリッキートライアルアップデート」が配信されるなど、毎年進化を続けているのも「マイクラ」の人気が衰えない理由の一つだ。
今回はMojang Studiosの責任者であるÅsa Bredin(オーサ ブレディン)氏に話を聞くことができた。「マインクラフト」のこれまでと今回のアップデート、そして将来の展望など、これからの50年を見据えた「マイクラ」の裏側を紹介したい。
15年続いたのは“マインクラフトの魔法”。50年後も「マイクラ」をプレイしてほしい
――本日はよろしくお願いいたします。まず「マインクラフト」が15周年を迎えられたということで、おめでとうございます。
ブレディン氏:ありがとうございます。
――15周年を迎えたスタジオ内の雰囲気や、ブレディンさんのお気持ちを教えてください。
ブレディン氏:スタジオ全体として、本当にお誕生日会のようなお祝いの催しをやって、そして本当にマインクラフトがこの15年間続いたというところでお祝いをしました。これと同時に、ファンの皆様、またゲーマーの皆様からのフィードバックやエンゲージメントに非常に感謝しています。
――先日、新たにトリッキートライアルアップデートも配信されましたが、今まで携わってこられたアップデートや出来事の中で印象的だったことはありますか?
ブレディン氏:そうですね。これまで様々なアップデートのデザインを考えてきました。常に幅広い層のプレーヤーたちに応えられるようにという想いのもと、新しい機能や要素を加えるアップデートをしています。
個人的にはスニッファーがとても好きです。あともう1つ、6月14日に配信された「トリッキートライアルアップデート」の中にトライアルチャンバーというものがありますが、そちらもすごく気に入っています。
――15年という長い期間続けてこられた成功の秘訣や要因を教えてください。
ブレディン氏:成功の秘訣は私たちにも分からないというのが正直なところです。むしろ、これこそが“マインクラフトの魔法”ではないかと思います。
とはいえ、これだけ長く続いた要因の一つとして考えられるのは、私たちが大事にしている3つの価値ではないかと思います。1つ目はプレーヤーそれぞれが創造性を発揮できるということ。2つ目はプレーヤーの皆さんが自分の自己表現ができるということ。 そして3つ目は仲間と協力することです。
「マインクラフト」には終わりがなく、プレーヤーがしたいことを突き詰めてプレイすることができます。もちろん「エンド」はありますが、これは終わりではないです。ですので、私たちは新しいツールや新しいブロック、新しいモブなどをプレーヤーに提供し続けています。そうすることでプレーヤーそれぞれが自分の物語を遊ぶことができ、他のプレーヤーとも遊び続けられるのだと考えています。
プレイヤーは多くの方法で自己表現ができ、新しいプレイ方法を次々と見つけ続けています。そして、私たちはこのゲームを少なくとも50年先まで発展させ続けたいと考えています。我々の願いとしては、プレーヤーの皆さんに50年後もマインクラフトをプレイしてもらいたいです。
開発チームとプレーヤーで作っていくのが「マインクラフト」
――最新の「トリッキートライアルアップデート」ではアルマジロやブリーズ、ボグドなど様々なモブが追加されました。これらはどういった経緯で追加されたのでしょうか。
ブレディン氏:アルマジロは、2023年に開催された「Minecraft Live」の“モブ投票”によって、カニ、ペンギン、アルマジロの3つのうちからプレーヤーの皆さんに選んでいただきました。
他の様々なモブについては、開発チームでどれがアップデートコンセプトに沿ったものなのか、しかるべき形を見極めながら、どういったものを登場させていきたいのかという事を考えて追加しています。
――2022年に追加された「古代都市」に続いて、今回「トライアルチャンバー」が追加されたことで、より冒険要素が強くなり仲間と遊べる要素が増えました。今回のトライアルチャンバーの大きな狙いは何でしょうか。
ブレディン氏:先ほど紹介したように「マインクラフト」には3つの価値があると思っています。今回のトライアルチャンバーは、マルチプレーヤーで遊んで仲間と協力することに狙いを定めています。
それ以外にもクラフターブロックが追加され、クラフトを自動化させたいプレーヤーやトラップを作るのが好きなプレーヤーにはたまらないかと思います。また、銅ブロックや凝灰岩の新たなレシピも登場し、様々な建築物を作り上げたいプレーヤー向けの要素も追加しています。多種多様なプレイスタイルに応えることができるように、この3つの価値を大事にしながら作っています。
――ちなみに今回オオカミに様々な種類が追加されました。こちらはどういった経緯で追加されたのでしょうか。
ブレディン氏:今回のアップデートでは様々な要素が追加されました。トライアルチャンバーやクラフターブロック、様々なモブ、その開発全てにおいて、常に目標を念頭に置いています。そしてゲームのコアをどこに持っていくのかというところで、常にプレーヤーコミュニティのフィードバックを大事にしています。
オオカミの種類を増やしたのは、コミュニティからのリクエストがあったからこそ実現できたものです。そしてリリース後、情報があっという間に拡散されました。今後もコミュニティの要望やフィードバックを大事にしながら開発を進めて行きたいと思います。
――なるほど、コミュニティの声からの着想だったのですね。
ブレディン氏:もちろん、開発チーム内でも数え切れないほどのアイデアがどんどんと出ています。その中で常にできること以上のことをやりたいと思っているので、それを絞り込むのが私たちの課題の一つだと思います。
現在はゲームディレクターがクリエイティブの先頭であり、その方がコアとなるアイデアを持ってきます。それに加えて、チームのみんなからのアイデアが続々と寄せられてきます。チーム内の巨大なワークショップでインプットして、アップデートのテーマを見つけたり、アイデアを試したりします。
例えば、スナップショットやベータ版のリリースからフィードバックを取得し、そのフィードバックをゲームに反映させます。これをゲーム開発の反復的なプロセスとしていて、チーム全体が関与しています。
――チーム全体でアイデアを出していくんですね。
ブレディン氏:そうですね。このプロセスを行うために、開発チームの全てのメンバーが関与しています。
――開発チーム全体でもアイデアを寄せるとなると、その数は無限になりますね。
ブレディン氏:はい。これは私たちの多様性と包括性を重視する信念から来ているかと思います。イノベーションを推進するには様々なアイデアが必要だと信じているので、バックグラウンドや性別など、色んな背景を持つ人々がいる非常に多様なチームとなっています。
そして、一人だけで最高のアイデアを出すということはやはり難しく、多くの人の意見に耳を傾ける必要があります。そこからチームで作り上げていきます。
今後はスピンオフ作品以外にもエンタメに力を入れて、次のステージへ
――マインクラフトといえば、「Minecraft Dungeons」、「Minecraft Legends」といったスピンオフ作品も存在します。今後のスピンオフ作品の予定を教えてください。
ブレディン氏:そうですね、「Minecraft Dungeons」と「Minecraft Legends」は異なるジャンルとして提供しています。Dungeonsに関しては戦略的なゲームですし、プレーヤーに多くの機会と異なるプレイスタイルを提供しています。どちらもプレーヤーから非常に好評でした。
私たちはプレーヤーのための新しい体験を創造する機会を探っています。まだ詳しいお話はできませんが、常にそうした機会を探しています。またスピンオフゲームもですが、今後はフランチャイズをどんどん拡大できればと考えています。
もちろんゲームの引き続き開発を進めていきますが、それだけでなくエンターテインメントの領域にも進出していきます。既にワーナー・ブラザースと共同製作した映画を発表していますし、先日にはNetflixと共同で制作するアニメシリーズも発表しました。今後はそういったエンタメもやっていければと思います。
ゲームを超えたエンターテインメントという領域が拡大する中で、ファンの皆さんとの接点をどんどん増やすことができたら嬉しいです。
――今後の「マインクラフト」の展望を教えてください。
ブレディン氏:「マインクラフト」というゲームは、派生していく全てのコンテンツの核になっています。ただ、そのプレーヤーやファンがもっと多くのものを望んでいることもわかっています。私もそうですし、私の子どももそうですが、みんなマインクラフトと共に育ってきました。
なので、次世代の子どもたちが「マインクラフト」やそのスピンオフ作品とともに成長してほしいと思っています。皆さんが「マインクラフト」に触れる機会を増やすという意味でも、様々な領域で拡大できればと思っております。先ほども述べましたが、少なくとも50年先まで「マインクラフト」を成長させ、拡大し続けたいと考えています。
――最後に日本の「マインクラフト」ファンやクラフターの方たちにメッセージをお願いします。
ブレディン氏:日本には熱狂的なプレーヤーの皆さんがいらっしゃることを認識しています。私も配信で非常に盛り上がっているところを見ました。ファンでいていただいて、本当に心からの感謝を申し上げたいです。引き続き「マインクラフト」を遊び続けて、またフィードバックもいただければと思います。派生コンテンツが今後もっと拡大する中で、ワクワク感を皆さんにお届けしていきたいです。
本当にもう信じられない、素晴らしい15年をお祝いすることができました。今後は次の50年後に向けて、素晴らしいゲームと、派生コンテンツを提供していきたいと思っています。
――ありがとうございました。
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