インタビュー
ヤスオは「LoR」でも"気持ちいい"!?「LoL」をベースにしたカードゲーム「リーグ・オブ・ルーンテラ」開発者インタビュー
2019年10月17日 13:21
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10月16日にライアットゲームズが配信した、10周年を記念した特別番組「Ask Riot」では、「リーグ・オブ・レジェンド(以下、LoL)」のIPを用いた新たなカードゲーム「リーグ・オブ・ルーンテラ(以下、LoR)」を始め様々な新規タイトルが電撃的に次々と発表された。
ライアットゲーム"ズ"はその社名に反して長年「LoL」1本のみを開発・運営してきたが、最近オートバトル系タイトルの「チームファイト タクティクス(以下、TFT)」を新たにローンチしたことで話題を呼んだ。そこからさほどの間を置かずして、「LoL」とは全く異なるジャンル、しかもストーリーテリングにも力を入れたタイトル「LoR」が発表されたことは大きな衝撃だったし、いち「LoL」ファン、そして公式ページに掲載されているチャンピオンのバイオや物語を読み込んでいる筆者としては端的に言ってメチャクチャ嬉しかった。
「Ask Riot」の上映とともに、東京・池袋で開催された10周年を記念するオフラインイベント「リーグ・オブ・レジェンド10周年感謝祭」の会場では来日したライアットゲームズの「LoR」シニア・ゲームデザイナー ショーン・リベラ氏と、ゲームデザイナー アレクサンドロス・リー氏にインタビューを行なうことができた。「LoL」というアクションゲームのIPをカードゲームで如何に生かしたか、「LoL」のストーリーとはどのように関わってくるのか、そしてそのシステムは……などなど様々なことを聞くことができたので、早速その模様をお伝えしよう。
ちなみに、インタビューは当日の発表やステージイベントをベースに行なっているので、是非そちらも合わせてご確認いただきたい。(参考記事)
「LoR」でも「ヤスオ」には夢がある……? 「LoL」をプレイしているときの"気持ち"をカードゲームでも再現!
――「リーグ・オブ・ルーンテラ」のタイトルコールが全世界で行なわれました。今のお気持ちを聞かせてください。
ショーン氏:とても興奮しています。発表だけではなく、やっと実際にプレイしていただけることになったので、その後のコメントとフィードバックを楽しみにしています。
アレクサンドロス氏:ずっと頑張ってきて、自分達が愛してクールだと思っているものを皆さんにシェアできることは非常にうれしいです。
――「LoR」の開発はいつごろから始まったのでしょうか?
ショーン氏:昔からカードゲームを作りたいという気持ちもアイデアもありまして、今お見せしているバージョンは2年ほど開発しています。
――「LoR」は"「LoL」らしさ"を意識したタイトルだと伺いました。アクションゲームの「LoL」らしさをカードゲームの「LoR」に落とし込むために意識したことはなんですか?
アレクサンドロス氏:「LoL」のチャンピオンが見た目だけカードとして登場する、というだけではなく、チャンピオンが使えるスキルや連携、周辺のキャラクターというものも非常に大事にしていて、そのチャンピオンを使っているときの気持ちを再現できるよう努めました。
例えば「ヤスオ」などは「LoL」において1人対5人ができるところ、全員をノックアップして倒せるという夢があるのが特徴だと思っているので、「LoR」でもそうできるようなスキルを持たせました。
――「LoR」は既存のカードゲームとどのように差別化を図りましたか?
アレクサンドロス氏:ひとつ大きなポイントは完全無料ということです。プレーヤーにとって1番困るのは、あるデッキを作りたいと思った時にかかるお金や時間です。様々なデッキや戦略を、試したい時にすぐ試せるようにするというのは大きなハードルではありましたが、どうしてもここを改善したかったんです。
あくまでプレーヤーに集中してほしいのは、「そのデッキを作るためにどれだけのお金や時間がかかるか」ではなく、「デッキをどのように組んで、どのようにうまくプレイするか」ということだったので、「LoR」はそれが実現できるようにデザインしています。
ショーン氏:ゲームプレイ上ではインタラクション(相互作用)ですね。例えば一方的なコンボに対して何もできずにただ攻め立てられるだけ、というのはプレイしていて虚しいものです。そういった部分をなくして、互いのプレイに対して応酬が発生するようなシステムにしました。
――対戦モードはどのようなものが用意されますか?
ショーン氏:ローンチ段階ではAI戦とマッチメイキングによる対人戦が楽しめます。11月のプレビューイベントではランダムなカードの中からデッキを組んで連戦するという「エキスペディションモード」を導入予定で、来年には「ランク」の実装を予定しています。
「ランク」の詳細については検討中ですが、例えばランクごとのボーダーが用意されたり、「LoL」と同じく自分の実力が示せるようなシステムにしたいと考えています。ただし、"勝つためには本当は好きではないデッキを使わなければならない"という自体は避け、デッキの多様性と、好きなデッキで戦う楽しさを確保できるようにもしたいと思いますので、検討を重ねています。
――カードやシステム、コンテンツなどのアップデートは、今後「LoL」や「チームファイト タクティクス」のように定期的に行なっていきますか?
ショーン氏:ユーザーを飽きさせないペースで行なっていきたいとは思っていますが、まだ発表したばかりということもありますので、どんなペースでやっていくかはまだチームで検討している段階です。
――アレクサンドロス氏はチュートリアル部分をご担当されたとのことですが、カードゲームの導入は覚えることも多く、チュートリアルを作るのも大変だったのではないかと思います。どのようなことを意識して、「LoR」のチュートリアルを作られましたか?
アレクサンドロス氏:仰る通りチュートリアルを作るのは非常に難しいことで、主に3つのことを考えながら作っていきました。まず1つはチャンピオンを中心にすること。なぜかというと、わかりやすい楽しさもあり、今後もデッキの中心となるカードなのでまずはこのカードを触ってみて欲しかったからです。2つめは、例えば長い長い説明を読んだ上でやっと「ラックス」で「ファイナルスパーク」を使う瞬間を味わえる、というのではなく、そういった楽しい瞬間をすぐに体験できるように作っています。
最後に、「LoR」にはたくさんのシステムが有るなかで、基本的なゲームのシステムを教えるチュートリアルをきちんと準備しています。現在のバージョンでは基本的なものが4つ、オプションのものが9つ、合計13個のチュートリアルを用意しています。ただし、もちろんカードゲームの経験者の方もいらっしゃると思いますし、すべてのチュートリアルを必ずプレイしなければならないということはありません。
――13個もチュートリアルがあるゲームはかなり珍しいと思うのですが、これはカードゲームの初心者に向けたものですか?
アレクサンドロス氏:もちろん初心者に対して丁寧にゲームの遊び方を伝えるというのは目的の1つでしたが、他のデジタルカードゲームから入ってくるプレーヤーの皆さまにも役に立つと考えています。なぜかというと「LoR」には他のカードゲームとは違うシステムもあるので、この部分を体験してもらうことで「LoR」というゲームを理解していただけると思います。
――基本的なカードの入手など、ゲームプレイに関わる部分は課金をしなくても十分に遊べるとのことですが、ではビジネスモデルはどのようなものになるのでしょうか?
ショーン氏:課金通貨として「コイン」というものが用意されています。アナログのカードゲームと同じように、プレイマットやカードスリーブ、ボックスなど、自分の好きなデザインのものを選んで使える、というのはとても大事なことだと考えていて、「LoR」でもこういったものを将来的を「コイン」で購入して、色々と変更できるようにしていきます。もちろんこれらは有料で販売もしますが、リワードのシステムで無料で入手できるようにもなっています。
また、カードを今すぐ欲しいというユーザーに向けて、固定された66枚のカードが入った「スターターパック」や、ワイルドカードを販売します。ワイルドカードは毎週「コモン」と「レア」のカードは6枚、「エピック」と「チャンピオン」は3枚まで購入できますが、枚数制限があるので課金することで一気にカードを手に入れられる、というシステムにはなっていません。
――見た目という意味では、チャンピオンのスキンなどもありますか?
ショーン氏:カードのデザインはプレーヤーにとって非常に重要なものだということは自身の体験からもわかっているので、チームとしては是非できるようにしたいと考えています。ただ、カードのデザインをどう変えるか、システム上どのように対応するかは検討している段階なので、詳細については現段階ではお話できません。
――今後「LoL」のように公式のeスポーツ大会を開催する予定はありますか?
アレクサンドロス氏:私自身eスポーツが大好きですし、ライアターとしても取り組んでいきたい部分ではあるのですが、今の所は全力でゲームを面白くするために磨いていく段階ですので、今の所は大会に関して言えることはありません。
――「LoL」や「TFT」などとの連携要素はありますか?
ショーン氏:「LoR」と「LoL」は同じ世界観を共有していますし、もちろん検討しています。ただ、例えば「LoL」のプレーヤーが何らかの報酬のために、本当はやりたくないのに「LoR」をプレイ"しなければならない"というのは絶対に避けたいので、どのような形で連携をするかは慎重に考えています。
――「LoR」は「LoL」プレーヤー、カードゲームの経験者、あるいはいずれも未経験のプレーヤー、どんな人にプレイしてほしいですか?
アレクサンドロス氏:もちろん皆さんに楽しんでいただきたいです! 今までずっとカードゲームをプレイして来た方にもプレイして欲しいですし、「LoL」の世界観が好きでプレイしてくださるのであればとても嬉しいです。奥深さと入りやすさのバランスにはかなり気を遣っていますので、是非カードゲームをやったことがなかった方にも1度プレイして見ていただきたいです。
ショーン氏:戦略を考えるのが好きな方には色々なデッキを考えるのが好きな方にはそれを楽しめる環境をご用意しています。また、「LoL」で好きなチャンピオンがいる方には「LoR」ならではのセリフや攻撃方法を楽しんでいただけると思いますし、アートも沢山ご用意しています。どんなゲーマーであっても楽しんでいただける部分を用意しています!
ストーリーを知っていると思わずニヤリ!「LoL」の世界観をさらに深堀り
――ここ数年で「LoL」の舞台となる「ルーンテラ」のマップが公開されたり、チャンピオンのストーリーを刷新してバックグラウンドやチャンピオン、周辺キャラクターとの関係性がより明らかにされてきました。もしかしてこれは水面下で開発されていた「LoR」に向けたものだったのでしょうか?
アレクサンドロス氏:そういった側面もありました。「LoL」では最近ロア、物語について調整を行なっていますが、実は「LoL」のチームとは別に「ルーンテラ」の世界観を作るチームがあって、「LoL」だけではなく、「LoR」のリソースにもなっています。世界観を作り込んだ結果の1つとしてMarvelとコミックを出したりしていますし、様々なプロジェクトに繋がっています。
ただ、実はコミックにも登場した「ラックス」と「ガレン」の叔母「ティアナ」というキャラクターは「LoR」のチームが作ったキャラクターなんです。「LoL」のチャンピオンを作るチームや、「LoR」でカードを作るチームなど様々なチームがある中で、このように全てのチームがインスピレーションをシェアしあっていますので、将来的には例えば「LoL」で起きたことを「LoR」の世界の中で反映させたりしたいと考えています。
――その流れでいうと「LoL」では新チャンピオンとして「セナ」が発表されましたが、「LoR」では「スレッシュ」のランタンに取り込まれる前の「セナ」もカードとして登場していましたよね。ということは「LoR」は「LoL」より前の時系列になるのでしょうか?
ショーン氏:チームは「ルーンテラ」のタイムラインの色々なところからインスピレーションやアイデアを持ってこられると考えていて、カードゲームだからこそできることがあると思います。なので時系列にはこだわっていません。
例えば「セナ」は「ルシアン」を「LoR」のチャンピオンとして検討したときに、一緒に「セナ」を出したらどうなるか、ということを考えた結果登場することになったキャラクターで、「ルシアン」と「セナ」はお互いの死によってパワーアップするカードです。最初はそれぞれ1つの銃しか持っていないのですが、例えば「ルシアン」がパワーアップするときは「セナ」が死んでいるわけですから、アートが変わって2つの銃を持つことになるんです。そういった「LoL」ストーリー好きな方にとっては面白つくりになっている……と思いたいですね(笑)。
ちなみに、「ルシアン」は複数の味方が倒されることでもパワーアップするのですが、その場合は派手なアニメーションとともにパワーアップします。一方「セナ」が倒されたときはお互いに腕を伸ばして手を取り合おうとする……という特殊なものになります。また、「セナ」は現状「LoR」においてチャンピオンではありませんが、今日の「LoL」での発表の通り、今後はチャンピオンになるかもしれませんし、様々な可能性があります。プレーヤーの希望やフィードバックに合わせてカードやチャンピオンを作っていきたいと考えています。余談ですが、今日の「セナ」の発表は盛り上がってよかったです(笑)。
――それは盛り上がりますよ!個人的には「カイサ」が「LoL」に出てきたとき(注:「カイサ」は「カサディン」の娘で、「カサディン」のストーリーで存在はほのめかされていたものの生死は不明となっていた)と同じくらい驚きました。是非今後「カサディン」と「カイサ」のストーリーも掘り下げてほしいです。
ショーン氏:わかりました(笑)。
――地域でいうと、ビルジウォーターやピルトーヴァー、シュリーマなどがまだ出てきていませんよね。これらの地域は今後「LoR」に登場するのでしょうか?
アレクサンドロス氏:はい、現在の地域は6つですが、今後他の地域も出していきたいと思っています。また、ただ出すだけではなく、新しいメカニックやコンボなどとともに導入できればと思っていますし、「セナ」のようなことを他の地域でも実現したいです。
――最後に日本のファンに向けてコメントをお願いします。
アレクサンドロス氏:長い間このゲームを開発してきて、やっと発表することができて、我々はとても興奮しています! プレーヤーさんからはポジティブな意見も、改善したほうがいい点に対する意見も是非聴きたいと思っていますので、ぜひぜひプレイしてフィードバックをいただければと思います。
ショーン氏:我々が「これだ!」と思えるカードゲームをやっとプレイしていただけるようになりました。アレク(アレクサンドロス氏)と同じく、改善案や、楽しさを伸ばすための案などを聞きたいと思っています。是非意見をお寄せください。
――本日はありがとうございました。