インタビュー

「バイオハザード RE:2」クリエイター合同インタビュー

門井ディレクター「ゾンビをもう一度恐怖の対象として作り直したい」

【バイオハザード RE:2】

2019年1月25日発売予定

7,222円(税別、ダウンロード版)より

 サバイバルホラーの金字塔「バイオハザード2」が、「バイオハザード RE:2」となって21年振りに復活する。「バイオハザード7」にも採用されたREエンジンを採用し、固定カメラに代表される当時のハードウェアの制約から来るゲームデザインを撤廃し、“現代向けの「バイオ2」”として作り直しているのが最大の特徴となっている。

 GamescomではXboxブースでレオン編をプレイアブル出展し、さらにメディア向けには新たにクレア編を公開。開発が順調に進んでいることをアピールした。クレア編については体験レポートで詳しくお伝えしたのでそちらを参照いただくとして、本稿ではクレア編の試遊に合わせて行なわれた日本メディア向けの合同インタビューの模様とお届けしたい。

 合同インタビューなので、話が飛び飛びとなっている点は御容赦いただきたいが、筆者は主に、グラフィックスの進化について質問を重ねてみた。特にGamescom前日に行なわれたNVIDIAの発表会で、「バイオハザード RE:2」がGeForce RTX対応タイトルとしてプレイアブル出展されており、その内容について確認することができたのは収穫だった。東京ゲームショウでもプレイアブル出展を予定しているということで、その事前情報としてお楽しみ頂きたい。

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リメイクの内容について「わかりやすく全体を再構築」

「バイオハザード RE:2」プロデューサーの神田剛氏(右)、同ディレクターの門井一憲氏(左)
終始笑みを浮かべながら手慣れた感じでインタビューをリードしていた神田氏
意外にもインタビューはほぼ初めてという門井氏。最初は少し硬い印象だったが、徐々に饒舌になってくれた

――Gamescomでクレア編を試遊することができましたが、「そう来たか」と思いました。予想の斜め上を行く内容で、ネタバレ的な部分は大丈夫なのかと心配になりました。

神田剛氏:そこは大丈夫です(笑)。今回初めてクレアのゲームプレイをご紹介したんですが、動いているものをまず見ていただいて迫力を感じて貰えたらと思います。やはり戦闘の中身は体験していただかなくてはわからない部分だと思いますので、我々が多く語りすぎると攻略、ネタバレになってしまうんで、まずは見た目のインパクトを感じていただきたかったです。

門井一憲氏:そう来たかというのはどの辺がですか?

――いきなりGが出てきたんですが、最初から弾がかなり豊富だなと思いました。

門井氏:ああ、あれは体験版用に調整したものです。実際の製品版の内容とは違います。

神田氏:場所的には警察署の地下エリアで、クレアがあそこに行き着いてG(G生物)と戦うところを切り出した形です。

――オリジナルでは、クレアの表ではGと戦ってなかったと思いますし、裏でGと戦った後に署長と出逢う事はなかったと思うんですが、ストーリー展開も少し違うところがあるんでしょうか?

門井氏:大きな流れは一緒なんですけど、こっちで起きていたことをこっちに変えたりといったアレンジをして通しでゲームとしてわかりやすくというところを含めて全体を再構築しています。

――シェリーがオリジナルと比較するとちょっと大人びている印象を受けました。

門井氏:原作では12歳とは思えない雰囲気でしたので、12歳相当にデザインし直したのと、服装も前回はアニメチックだったので現実的な服装に替えました。

神田氏:見た目はやっぱり違和感が出ないようにその時代設定を少なからず反映したものになっています。

――シェリーは、「バイオ6」にも登場しますが、そのあたりも意識したデザインになっているのでしょうか?

門井氏:「6」に登場する大人のシェリーは正直意識していなかったですね。顔は若干あるかもしれませんが、服装については意識していませんでしたね。セリフについても同様です。

――今回、弱点を狙うという新しいおもしろさがありますが、Gの容貌についても弱点を狙いたくなるようなデザインというか、動きをしたりなどそのあたり意識されているんでしょうか?

神田氏:そうですね。

門井氏:今回登場するGは、元のデザインにも大きな目が合ってこれは狙いたくなるよなというところで、逆の発想ですね。弱点を作りたいから目を描いたんではなくて、目があるから弱点にしようと。今後の戦闘も流れで狙って撃つという遊びをできるようにゲームデザインを変えています。

――今回の試遊で、手榴弾の使い方がややトリッキーだなと思いました。武器のようにスロットに装備するのかと思いきや、ナイフと同じ役割なんですね。

神田氏:はい、捕まれた時にも使えるアイテムになっています。

門井氏:メインウェポンとサブウェポンという2つのカテゴリがあって、メインは火器を装備して、サブ武器はナイフとか、手榴弾で、装備しておくと緊急時に反撃できるというものになっています。

――過去の「バイオ」シリーズではそのような使い方はなかったと思うんですが。

門井氏:これは「バイオ1」のリメイクで同じようなネタがあって、「バイオ1」では完全に受け身的な使い方しかできなかったんですが、今回はそれに加えてナイフを振ったり、手榴弾を投げたりといった能動的な使い方もできるようになっています。

――ガンパウダーについて、組み合わせが色々ありそうですね。

門井氏:今回は組み合わせによって3種類の弾薬が作れます。多めに手に入るガンパウダーだけだとハンドガンの弾になりますが、ガンパウダーと、あまり手に入らない強化火薬を組み合わせるとそれなりに強い弾ができて、強化火薬同士だとかなり強い弾になります。今の手持ちで組み合わせておいて無難な弾を作っておくか、強い武器のためにとっておくか駆け引きになります。

神田氏:リソースマネジメントが重要になっていて、お好みの武器を使うためにどのように戦略的に、どこで組み合わせていくのかというのもゲームの楽しみになっています。

――ハーブも赤と緑がありますが、この組み合わせも楽しそうですね。

門井氏:緑と緑だと1個ずつ使ったときと同じ効果なんですけど、アイテム欄を1個減らせるというメリットがあります。今回はブルーハーブという毒消ししか効果の無かったハーブが、赤と組み合わせることでしばらく防御力が上がったりする効果が得られます。これはシリーズ初ですね。青に使い道があるという(笑)。

――メディア関係者がプレイするのを見ていて、どのような感想を持ちましたか?

神田氏:まだじっくりは見れていなくて、PR担当によると、もっとやりたいという意見が多かったみたいです(笑)。メディア限定のクレア編は、難易度的に歯ごたえがあるので、Gを倒すのは難しいかなと思っていたんですけど、結構遊ばれている方が多いみたいで、多くの方が攻略に成功していました。その上で、その先をもっとやりたいという意見が多かったようです。

――これからクレア編を試遊する人に向けてアドバイスは何かありますか?

門井氏:クレア編を試遊する際は、ぜひクレアをじっくり見ていただいて、クレアのことを好きになって貰いたいですね。じっくりカメラを回していただいて。

――ほー、ちなみにそれはどうしてですか?

門井氏:クレアってこれまで静止画でしか発表されていなかったので、ユーザーさんの間で評価が分かれているんです(笑)。

神田氏:それを凄く気にしていて。大丈夫ですよ!(笑)。

最大の強化点は「ゾンビ。」もう1回恐怖の対象として作り直す

――「バイオ2」のリメイクということで、あらゆる要素がグレードアップしているわけですが、開発チームの皆さんが一番進化したと感じている要素はなんですか?

門井氏:やっぱりゾンビですね。ゾンビってこれまで無数のゲームに登場してきて雑魚っぽい扱いをされてきたわけですが、もう1回恐怖の対象として作り直そうというコンセプトがあって、それを実現するために、ゾンビの挙動や、傷つき方、倒れたときのラグドールなども含めてこだわって開発しています。

神田氏:ゾンビがホントにしぶとく、恐い存在になっていると思います。ゾンビが「バイオRE2」の顔といってもいいと思います。

――実際に対峙してみて、動きも通り一遍ではなく、複雑な動きをしている印象ですが、ゾンビのAIはどれぐらい進化しているんですか?

門井氏:モーションパターンも豊富です。ただの歩きにしても色んなバリエーションを持っていて、同じ行動は取らないようにしていますし、手の動きなどはキチンと計算して処理しています。そういった部分も含めて見た目から恐怖の対象になるようにしています。

――プレイする度に、ゾンビとのバトル展開が変わるような感じですか?

門井氏:そうですね。一度倒して、部屋に逃げてまた戻ったら、別の所に移動していたということはあります。

神田氏:死んだと思っていてもまだ生きていて、しぶといです。なかなか安心できないという。

門井氏:普通ラグドールで倒れるとそれは死んだ表現なんですけど、「バイオ2」ではその後に復活するという。相当しぶとい感じになっています。

――レオン編をプレイしていた時も、もう死んだと思って通り過ぎようとしたら起き上がってきて驚きました(笑)。

神田氏:いきなり足を捕まれたりしますからね。

門井氏:オリジナル版では倒したら血が広がってわかりやすかったんですけど、今回はあえてそういった表現は入れていません。

――グラフィックスの進化について教えて下さい。「バイオ7」と比較してどのあたりが進化しているのでしょうか?

門井氏:「バイオ7」では、FPSなので自分のキャラクターが見えなかったり、敵もゾンビみたいに多くのバリエーションがないクリーチャーだったんですけど、今作ではキャラクターの部分は「バイオ7」より深く掘り下げて、衣装のディテールや、ゾンビの欠損表現など細部に至るまでこだわっています。

――GamescomではNVIDIAが新しいGPUとしてGeForce RTXを発表して、会場の試遊エリアにも「バイオ2」もありました。「バイオ2」のRTX対応では、具体的に何が変わっているのでしょう?

神田氏:今回NVIDIAさんが発表されましたが、事前に情報はいただけていなかったので、まずはRTXで動いていますという出展になっています。現時点ではRTXならではの表現なり、技術的なものが実装されているわけではありません。

門井氏:レイトレーシングは使っていません(笑)。

――やはりそうなんですね。いくら見ても違いがわからなくて、これはぜひ聞いてみようと。

門井氏:そうなんです(笑)。とりあえず、GeForce RTXで快適に動いていますというデモです。

――では今後、レイトレーシングをはじめとしたGeForce RTXならではの表現を磨いていく予定ですか?

神田氏:そこをどうするかは現段階では未定ですね。ただ、PC版に関しては、ネイティブ4Kのレンダリングに対応します。その環境でいかに安定して60fps出せるようにしていくかは、当然調整していかなければならない所だと思います。

注目して欲しいのは“人間ドラマ”

――ストーリーについて違いはあるんですか?

門井氏:物語の展開は1つですけど、レオンとクレアをプレイする事で感じ方が変わるように作っています。ストーリーの大筋は同じです。

――今回、クレアに加えて、シェリー、署長など様々な登場人物が出てきました、キャラクターについて注目して欲しいところはありますか?

門井氏:今回は人間ドラマとして盛り上がるように、原作からアレンジしたり、順番を変えたり、通しでしっかりとしたストーリー性を感じられるようになっています。今回の体験版ではあえてストーリーの多い部分をピックアップしましたので、そのあたりを是非見て貰えたらなと思います。

――署長が今まで以上にイヤな奴になっていて、ガンガン脅したり蹴ったりしていて、こいつむかつくなという感じはプレイしていて思いましたね。

門井氏:署長は原作より出番多いです。ここからクレアがどう反撃していくのかというところですね。原作をプレイしている方も、「あれこんな展開だったっけ?」と思いながら遊んでいただけると思います。

――Gを倒した後で駐車場のシーンで、いつ犬が出てくるんだろうと怯えながら遊んでいましたが、先に進むことの恐怖なんかは意識しながら作っていっているのでしょうか?

門井氏:そうですね。原作ではカメラのカットチェンジで先が見えないところを作ることができたんですけど、今回は暗闇を作ってあえて見えなくしたり、曲がり角を増やして、曲がった先に何かいるんじゃないかと思わせたり、あとはどこにいるかわからないけど声は聞こえるだったり、様々な表現で恐怖を演出しています。

――現時点でダウンロードコンテンツ(DLC)について何かお話しできることはありますか?

神田氏:DLCについては、デラックスエディションにレオンとクレアの追加コスチュームと、オリジナルのBGMを同梱しています。BGMでは懐かしさを感じて貰えると思います。

――それはリメイク版を当時の音源でプレイできるということですか?

門井氏:はい、当時の音源です。BGMは原作では部屋に入ったら切り替わるというモノだったんですが、今回は当然そういう作り方ではなくて、プレーヤーや敵の状況に応じて変化するように作っているんですが、それをあえて昔のBGMに切り替えて、部屋に入ったらBGMが流れると言う風にもできます。

――オプション設定で切り替えて遊ぶわけですか?

門井氏:そうです。プチ情報なんですけど、BGMを切り替えると、タイトル画面で「バイオハザード2」という昔のタイトルコールが鳴ってくれます(笑)。

神田氏:標準では「バイオ7」みたいに声は付かないんです。

門井氏:イメージに合わないと思ってあえて入れていないんですが、DLCをダウンロードしてBGMを切り替えると懐かしいタイトルコールが鳴るという。

――そのDLCは単体でも買えますか?

神田氏:そのDLCはデラックスエディション用のものなので今のところ単体での販売の予定はありません。

――デラックスエディションなら昔を知っている人だとニヤリとできるわけですね。

神田氏:そうですね。そういうことも取り入れていきたいと思っています。

――その一方で、当然新規ユーザーの獲得も目指してのリメイクと言うことだと思いますが、新規ユーザーに対するメッセージは何かありますか?

神田氏:「バイオハザード」というとホラーというイメージが強いと思いますが、サバイバルホラーとしてのプレイフィールの部分で、今回採用したビハインドビュー(TPS視点)で体験するメトロヴァニアスタイルのゲーム体験は、新世代のゲーマー達にしっかり伝えていきたいところですね。

 あとはRE ENGINEで作っていますので、グラフィックスのクオリティの高さに加えて、サウンドについても前後左右からゾンビのうめき声が聞こえたりなど、臨場感の演出の部分で、クオリティの高いホラーゲーム体験が可能となっているので、ホラーゲームが好きで、「バイオ」をまだやったことがないという人はぜひ試してみて欲しいですね。

門井氏:「バイオ2」は知っているけど、昔のゲームだし、独特の固定カメラだしということで敬遠していた人もいると思うんですけど、今回は今ゲームを遊んでいる人が素直に操作できるゲームとして作り直していますのでぜひ試してみて欲しいです。

神田氏:当然武器も好きなところを狙って撃てますしね。そういう意味ではプレーヤーに自由に操作させる幅を与えているので、固定カメラが苦手で敬遠していた人はぜひやってもらいたいなと思いますね。

――東京ゲームショウでの出展計画が発表されましたが、見所を教えて下さい。

門井氏:期待に応えられるように頑張ります(笑)。

神田氏:現時点ではまだ詳細はお話しできないのですが、プレイアブルとステージも予定していますので、そこでE3、Gamescomときて、TGSではこれまで発表された情報のおさらいも含めて、国内ユーザー向けに最新情報をお伝えするつもりなのでどうぞご期待下さい。

――発売時期がホリデーシーズンではなく2019年1月になりました。なぜこの時期にしたんですか?

神田氏:良い質問ですね(笑)。実は発売日がオリジナルの「バイオ2」と同じ週なんです。

――では遅れたというわけではなく意図的なものですか?

神田氏:そうです。社内でディスカッションして決めました。ホントは20年後にしたかったんですが、21年後になってしまいましたが(笑)、同じ週です。21年前に発売日に買った方は、まさに21年後の同じ週にまた「バイオ2」を買うという懐かしさを感じていただけると思います。

――ありがとうございました。