インタビュー

「World of Tanks1.0」Alexander de Giorgio氏特別インタビュー!

雪の表現など、Coreエンジンによって満足のいく表現に到達できた

3月22日 収録

【World of Tanks1.0】

3月27日 アップデート実施

 2011年のサービスインから8年が経過したマルチプレイ戦車戦ゲームの金字塔「World of Tanks」。本作が満を持してver1.0へと進化する。すでに完成されたゲームシステムなど基本的な楽しさはそのままに、グラフィックス、サウンドの強化など、より新しいゲーム体験をプレーヤーに提供するべく行なわれたバージョンアップだが、何が変わり、何が変わらなかったのか? そして今後どのように進化発展していくのか?

 3月22日にタイで行なわれたメディアツアーで、アジア地域のRegional Publishing DirectorであるAlexander de Giorgio氏(以降アレックス)に「World of Tanks1.0」とその根幹をなすCoreエンジンについてお話を伺った。

アジア地域のRegional Publishing Directorを務めるAlexander de Giorgio氏

Coreエンジンの開発によって、よりエモくなった『WoT』

―― 今回のAPACメディアツアーがタイで行なわれた理由はどのようなものなのでしょうか?

アレックス氏: 「World of Tanks 1.0」のイベントは各地で行なわれているのですが、タイで行なうということがこれまでありませんでした。タイを選んだ理由のひとつに「戦車に乗れる」ことがあります。私たちはプレスのみなさんに戦車に乗っていただきたいという思いがありました。APACエリアだと、タイとオーストラリアしか戦車に乗れる国がなく、そのなかでオーストラリアでは距離的な問題など少し難しいところもありましたので、タイになったわけです。イベントを実施した施設も見学できますし、場所としても特徴的ですし。私たちのゲームとしてもつながりの深い場所と言えると思います。

―― タイでの「WoT」のユーザーはどれくらいいらっしゃるのでしょう?

アレックス氏: アジアではタイのユーザーは大きな規模として存在しています。それもタイを選んだ理由でもあります。タイでイベントを行なったということをタイのユーザーに向けて発信することにもなります。

―― 「WoT1.0」のイベントはタイ以外でも行なわれているのでしょうか?

アレックス氏: そうですね。北米や欧州ではそれぞれイベントを行なっています。ただ、プレスを招待してというイベントはアジアだけです。プレス向けということですと、非常にプレミアムなイベントとなっています。欧州も北米も大きなエリアなので、みなさんを1カ所に集めるというのが難しくもあります。「WoT1.0」に関しては、アジアのユーザーを増やしていきたいという考えがあり、アジア向きにしたかった。それもあって、アジアでこういう特殊なイベントを行なったわけです。グローバルなリリースですが、APACにとって大事なリリースですので。

―― 「WoT1.0」の最大のウリはなんでしょうか?

アレックス氏: エモーショナルです。没入感といいますか、グラフィックスやミュージックなどテクニックの部分も大事ですが、これまでと同じように遊んでも違った体験を感じることが最大のポイントです。より一層ゲームに入り込めることを重点として開発を行なってきました。Coreエンジンという自社開発を行なってきたエンジンが私たちとしては1番の魅力だと思っています。

 3年間の開発期間で、当初どのようなものになるのか想像もできませんでした。最初ミンスクで行なわれた開発とパブリッシングの会議の席上ではこのようなものになるとは正直想像もしていませんでした。ただグラフィックスがきれいになるだけなんだろうくらいの印象です。それが3年の期間を経て今になってみれば、この3年は非常に有意義で、ゲームの拡張性などの成果が得られたと考えています。

―― Coreエンジンによってできるようになったことはなんでしょうか?

アレックス氏: マップ自体の製作と構想は3年前から行なっていましたが、雪の表現、戦車が雪と接触したときに起きる反応などの部分が当時はまだできていませんでした。それがCoreエンジンによって、満足のいく表現に到達できたと考えています。

 もうひとつはHavok Physicsを導入したとしても使えない項目が多かった。それはクライアントが重くなってしまったりと、ゲームプレイのストレスにつながる部分です。Coreエンジンと組み合わせることで、Havokでこれまで使えなかったものが使えるようになり、たとえば建物が崩れるとか、戦車がぶつかったときに起きる物理的な動きがより導入できるようになりました。新マップはもちろんリモデルされたマップでもそういった細かいエレメントがたくさん表現できるようになりました。

 それを踏まえてなにが1番大事なのかといえば、ゲームプレイはこれまでと変わらないということです。8年間遊んできたユーザーが違和感を覚えてしまってはいけない。「WoT1.0」によって私たちは生まれ変わった印象持っていますが、以前からプレイされているユーザーがよくなっていると感じつつ、「WoT1.0」というゲームの根幹が変わっていないようにアプローチしています。

 「WoT1.0」のベータテストのフィードバックで1番多かったものが、マップが変わってしまってこれまでの作戦が使えなくなったというものでした。ところがこれは勘違いで、ライティングやグラフィックスが変わったことでできないと錯覚してしてしまっているんです。実際は何も変わっていません。ですのでプレイしていただいて、変わっていないことを実感していただければと思います。

―― Coreエンジンは拡張性と発展性に富んだエンジンだと伺っていますが、今後どのように発展し、拡張していかれるのでしょうか?

アレックス氏: 先ほども申しました通り、Havokでできなかったことができるようになりましたのでやろうと思えば何でもできるようになったということが大きな拡張と発展だと思います。

 例えば、破壊系の動きですが建物を破壊するというこれまでのものに加えて、マップ自体を変えることができます。砲撃で抉るとか、地形を変えるといったことです。ほかにも天候の変化、雨、雪、強風が吹くといったことも導入できます。これまで入れていなかったものが入れられるようになっています。

 これによってさまざまなに自由度があがったことが大きな点です。ただ、できるようになったことがすぐにやるということではないことです。ゲームのバランス、クライアントの重さなどを検証しながらプレーヤーが楽しめるようにひとつひとつエレメントを追加していきたいと考えています。

―― Coreエンジンがほかのタイトル「World of Warships」やコンソール版の「WoT1.0」に導入される予定はあるのでしょうか?

アレックス氏: それぞれが独自に開発を行なっていますので、現在は「WoT」のみの実装です。ただ自社開発のエンジンなので、ほかのタイトルに使うことも難しくはありません。いまは「WoT」でどこまでやれるかを検証していきたいと思っています。ほかのチームが興味を持って、使いたいといえば今後導入される可能性はあります。

アジアの新規ユーザーに向けて新たなプロモーションを準備中

―― 先ほど「WoT1.0」はアジアを重点地域と考えているとおっしゃっていましたが、具体的になにかアジア向けの施策を考えているのでしょうか?

アレックス氏: 「WoT1.0」は新規ユーザーの獲得を目指していまして今後追加される新フィーチャーに関してはアジア向けのものも入ってきます。「WoT」を検索すると日本だけで見ても「5年も前のタイトルなのか……」と思われてしまうかもしれません。我々は「WoT1.0」を新作と考えていまして、初めて「WoT」を1.0で知るユーザーに新しいゲームとしてやってみようと思っていただけるようにプロモーションしていきたいと考えています。

 「WoT」がサービスインしたときにはチュートリルもほぼない状態でした。それが昨年新規ユーザー向けにブートキャンプを実装してよりゲームについて学べるようになりました。これが新規ユーザーに人気で、どんなゲームかわかるようになりましたし、プレイするうえでも助かっているという声をいただいています。特にアジア地域ではこのモードが好まれています。そういった新規ユーザーに向けたコンテンツをやっと私たちのタイトルでも準備できるようになりました。「WoT1.0」では新しく遊んでいただくユーザーのプレイのきっかけを準備できればと考えています。

―― 「WoT1.0」では低スペックのPCでもある程度のグラフィックを楽しめますが、そういったことも新規ユーザー向けのアピールポイントなのでしょうか?

アレックス氏: アジア地域は国によってPCの平均スペックが大きく違います。新規のユーザーをアジア地域で獲得するためには、PCスペックの垣根を取り除きたいと考えています。「WoT1.0」によって効率化することで、ハイエンドPCをお持ちでないの方でも気軽に参加していただけるようにということが大きな目標のひとつでした。「WoT1.0」によってクライアントも大きく変わりますので、フレームレートの安定などどのようなPCでも不満なく遊べるようになっています。これによってアジアでのプレーヤー人口も大きく伸びるのではないかと期待しています。

―― アジアをターゲットにされるとなるとソロプレイの可能性についてお聞きしたいのですが、コンソール版の「War Stories」のようなモードは実装されるのでしょうか?

アレックス氏: 可能性としてはあります。いろいろとテストしているなかで「War Stories」も面白い試みだとおもっているのですが、今後の話として具体的なことは何もないのですが、可能性はありますね。対CPU戦であるPvEから対人戦であるPvPに移行するとゲームの印象ががらりと変わります。もともとがPvPのゲームですし、PvPも遊んでもらいたいんですが、それで全くの別のゲームに思われてしまうことは避けたい。「WoT」の当初の軸がぶれないようにしていきたいと考えています。

―― 現在アジアでは日本と中国のツリーが実装されていますが、今後ほかの国のツリーが実装される可能性はあるのでしょうか?

アレックス氏: 考え方が2つあって、特徴的なプレミアム戦車を実装する方法と、ツリーを実装する方法ですね。新規コンテンツとしてすでにあるツリーの拡充の話もありますし、今年の展開はすでに決まっていますので、来年そういうものが実装される可能性はあります。

―― 自分でツリーを組めたら面白いですね。

アレックス氏: いいアイディアですね。いろいろな国の戦車が集まるツリーというのは可能性としてありますね。

―― 「WoT1.0」が実装されたわけですが、「WoT2.0」でやってみたいことはありますか?

アレックス氏: 「WoT2.0」で何がしたいというのはまだ考えるポイントではありません。

 「WoT1.0」によってできることは増えましたので、「WoT1.0」から「WoT2.0」に向けてやっていきたいことはります。PvPメインのゲームですので、モードを増やしていくであったり、ルールを増やしたり、ゲームの土台はできましたので、プレーヤーが楽しめる方法を変えていきたいとは考えています。もしかしたらPvEを使ったものになるかもしれません。ゲーム内キャンペーンであったり、モードであったりを変えていきたい。多くのものを変更していったり追加していきたいと考えています。

 アジアにおいてはe-Sportも盛んですので、いろいろと変更を加えてはいますが、より一層「WoT」を盛り上げていきたいと考えています。私の考えとしては、「WoT」はニッチなゲームですので、一部の方には大人気ですが、その先に行きたいと思っています。ニッチなジャンルからより多くの方に遊んでいただけるようにすることが大きな目標です。

―― ありがとうございました。