【特集】

「ゼーガペインSTA」が8月16日公開! 8月の舞浜が舞台の「ゼーガペイン」シリーズをいま知ってほしい【夏休み特集】

【ゼーガペインSTA】

8月16日 上映開始予定

 サンライズは、劇場アニメ「ゼーガペインSTA」を8月16日より全国22劇場にて上映する。本作は「ゼーガペイン」シリーズの新プロジェクト「ゼーガペイン PROJECT REUNION」の一環として、TVシリーズと「ADP」を復習する内容に加え後日譚「オルタモーダ編」を新たに描くアニメだ。

 これまで放送、上映した「ゼーガペイン」、「ゼーガペインADP」は現在バンダイチャンネルとdアニメストア(+dアニメストア for Prime Video)にて月額会員向けに配信しているが、今回の上映に合わせて過去作を視聴してみるのはいかがだろうか。「ゼーガペイン」シリーズを何周かしてきた者として、その魅力をまとめた。なお本稿は、「ゼーガペイン」本編を紹介する上で多少のネタバレを含む。

【『ゼーガペインSTA』本予告】

ループする仮想世界と荒廃した現実を行き来する「ゼーガペイン」という世界

 「ゼーガペイン」は4~8月をループする仮想現実のサーバ「舞浜サーバ」を舞台に描かれる日常と、「ナーガ」と呼ばれる科学者が解き放った侵略者「ガルズオルム」と戦う現実世界を行き来し、「なぜ人類が衰退したのか」、「『ガルズオルム』の真の目的は?」といった真相を追い求めるSFロボットアニメ。ループから外れた人間たちの葛藤や、戦いを通して成長する少年の姿を色濃く描く。2006年より小説、アニメ、朗読劇などのメディアミックスとしてサンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)が制作している。

 メディアミックス作品ではあるが、基本的にはアニメを追っていれば世界観のほとんどは分かるようになっている。2024年8月時点で「ゼーガペイン」、「ゼーガペインADP」の順に公開されており、「ゼーガペインSTA」がこの度公開される。

 「ゼーガペイン」本編は、舞浜の高校に進級したばかりの主人公キョウが、ある日ミステリアスな雰囲気の「ミサキ・シズノ」と出会う。キョウはシズノによって戦艦「オケアノス」へ導かれ、人型兵器「ゼーガペイン・アルティール」を駆り、「ガルズオルム」と戦う。最初は仮想世界でのゲームだと思っていたものが実は現実世界での出来事で、自分が過ごしていた舞浜はサーバの中で描かれるのみの仮想空間だった……という話だ。

 作品の時間軸は「ゼーガペインADP」、「ゼーガペイン」、「ゼーガペインSTA」の順となるが、最初は公開順に見ることをおすすめする。何も情報を持たない視聴者として「ゼーガペイン」本編を見始めると、同じく何も知らないキョウと情報の取得度合いがシンクロする。平凡な学生生活だと思っていたものは全てコンピュータが見せる幻で、現実世界は侵略ロボットによってほとんど破壊され尽くしていた……もしかして、破壊されていて自分が戦っている方が仮想世界なのでは? という、逃避のような感情を抱くキョウに感情移入できる。

 「ADP」は「ゼーガペイン」本編の前のループを描く劇場アニメで、キョウが最初から戦うことへ前向きに臨んでいる。本編であまり語られなかった「オケアノス」のメンバーとの関係も判明する。本編を見ていることが前提のストーリー展開のため、公開順に見ていく方が分かりやすい。

「STA」では戦士らしい表情を見せるキョウ

 「ゼーガペインSTA」は、「ゼーガペインADP」と本編を振り返る「レミニセンス編」と、「ゼーガペイン」の最終決戦を経て、8月のループから抜け出した舞浜サーバと「ガルズオルム」を撃退した現実世界を描く「オルタモーダ編」の2部構成で展開するという作品だ。「ガルズオルム」とは異なる敵が登場し、再び人類を侵略するという。

 「STA」本予告では、新たな敵が現実世界を侵食し、現実世界でもサーバ内でもないような空間で戦っている姿を確認できる。どんな戦いが描かれ、舞浜サーバを始めとした人間たちがどうなるかが楽しみだ。

新しい敵が襲来し、キョウたちと対峙する

現実と仮想空間の間で戦うストーリーが面白い

主人公機「ゼーガペイン・アルティール」
戦艦「オケアノス」

 キョウが乗るアルティールや戦う敵は舞浜サーバで遊べるゲーム「ペイン・オブ・ゼーガ」の乗機と同じ見た目で、自身はパイロットのように姿も変わっている。キョウは現実世界をゲームの仮想世界と思い込むが、「ペイン・オブ・ゼーガ」は現実世界の戦いをベースとしたパイロット育成プログラムで、「ガルズオルム」と戦う人間を見つけるためのものだった。

 それが災いして、キョウは現実を現実だと気付けないまま「上海サーバ」の破壊を許し、オケアノスのメンバーの故郷や家族を消されてしまうが「次はリベンジしよう」と気楽に振る舞ってしまう。それが「ADP」時代から共に戦ってきた戦友を傷つけることとなる。そこで自身が2つの世界を行き来するデータだけの体であることを知り、激しい戦いへ繰り出していくのだ。

 そして、キョウはだんだんと世界の真実に気付いていく。「ゼーガペイン」の遠くに行こうとすると消えてしまう体、データを損傷して消える運命にある仲間、舞浜の外に出ようと鉄道に乗っても、やがて帰ってくること。8月31日から4月5日にループする舞浜サーバ。キョウは自分が感じた思いや痛みを忘れず、確実に成長しながら進んでいく。この2つの世界を行き来しながら両方の問題を乗り越えて成長していくキョウの姿が魅力的だ。

 本作のキャッチコピーは「消されるな、この思い 忘れるな、我が痛み」というもの。筆者はループによってリセットされる周囲の記憶や、データとして消えていく自分たちの戦い、それら全てを忘れるなという言葉と捉えている。本作は全編を通して、この言葉の意味を問いかけ続けているように感じる。

キョウの成長によって変化していく情勢

 個人的に好きなのは、「ゼーガペイン」本編でキョウの精神的な成長が重点的に描かれる点。はじめはゲームの世界の出来事だと思い、子供っぽくもあったキョウだが、やがて世界を救う使命に対するキョウなりの責任感が生まれていく。

 後半では幼馴染であり、キョウと同じく幻体である「カミナギ・リョーコ」と共に戦うが、リョーコは戦いの内で傷つきデータが不完全になってしまう。そのうちループを経験し、舞浜の友人たちや世界を守るために戦う決意をするのだ。その成長はめざましく、守りたいもののために懸命に戦うようになるキョウはとてもカッコいい。

 キョウは「ADP」では手練れのパイロットだったが、1度死んでいる。幻体となった人類を再生するための装置をあとちょっとのところで取り返せるというところでデータの欠損が起き、舞浜サーバで改めて体を修復する必要に駆られた。

 そうして復活したのが本編のキョウで、その戦いぶりや心根の強さを周囲の人物が信じているので、復活し記憶を無くした状態で奔放に振る舞うキョウに厳しく当たってしまう。本編でのキョウの振る舞いは、戦いも知らず平和に暮らしていた人物が、ある日突然いつも遊んでいるゲームにそっくりな別世界に連れてこられ「そこで戦ってください!」と言われたらどうなるかが細かく描かれている。

 個人的に序盤は上述したような奔放に振る舞うキョウ、厳しく当たるオケアノスの面々と少々やきもきする部分もあるが、第4話「上海サーバー」あたりから盛り上がり、エンジンがかかってくる。そのため、取りあえず4~6話まではしっかり見てほしい。そうするとキョウとオケアノスの仲間との関係や、舞浜サーバ内の人間関係がだんだんと分かってくる。

 「ゼーガペイン・アルティール」をはじめとしたメカデザインもユニークな見た目で面白い。本作のメカデザインは「機動戦艦ナデシコ」や「ベターマン」の中原れい氏、「トライガン」、「スクライド」の神宮司訓之氏、「エルドラン」、「バトルスピリッツ」のやまだたかひろ氏、「ブレイクブレイド」、「ガイストクラッシャー」などでメカ作画監督を務めた福島秀機氏が手掛けており、光をまとって戦う姿、それに伴う半透明の装甲や武装といった見た目が美しい。

エンディングまでしっかりと演出する細やかさも魅力

 「ゼーガペイン」本編のエンディングテーマ「リトルグッバイ」はED映像とともに見るとまた味わい深い。光となって消えていくキョウたち、散っていく花、顔だけが映るアルティール。そして何より、毎話EDへの入り方がすさまじく美しいのだ。EDへの入り前3分からEDだけ詰め込んだシーン集が欲しいくらいだ。これは特殊エンディングでも流れる「and you」、「ラストブルー」、「CESTREE」でも同じだ。

 20年近くたった作品だが、いまだに「ゼーガペイン」が好きな理由はこのEDと映像、入りのうまさにあるかもしれない。絶対にEDスキップはしないでほしい。

 放送当時近未来的な設定だった仮想空間で生きる、AIによる反乱、といった設定は現在あり得る話になりつつある。昨今、メタバースなど仮想空間も増えてきており、仮想世界に取り残された記憶だけの人類はそう遠くない未来発生しそうだと思えるし、AIの反乱によって破壊される人類世界、という構図もあり得なくはないと思える。

 「ゼーガペインSTA」が楽しみだ。TVシリーズのその後を生きるキョウがどんな成長を遂げたのか、新たな敵は何を思って戦うのか。7月29日に刊行した、「ゼーガペイン」本編のその後をリョーコの視点から描く小説「ホロニック:ガール」も合わせてチェックしたい。今、「ゼーガペイン」本編を視聴してみてはいかがだろうか。

「STA」でどんな戦いが描かれるのかが楽しみだ
プライムビデオで視聴する