【特集】

【年末特集】年末年始に読んで欲しい2023年アニメ化やドラマ化されたマンガ5選

「フリーレン」や「ばらかもん」など話題の作品やちょっとアングラな作品まで紹介

 2023年も残すところあと少しとなり、今年も様々なマンガが世間を賑わせた。特に今年は「推しの子」や「葬送のフリーレン」などがアニメ化をきっかけに話題にのぼることも多かったように感じる。マンガを読まない人でも名前ぐらいは聞いたことがあるタイトルもあるのではないだろうか。

 今回は2023年に流行ったマンガや2023年に映像化された作品を中心に筆者が年末年始にぜひ読んでほしいと思う作品を5作品ピックアップした。アニメ化やドラマ化されたものなどを中心に筆者がオススメしたいマンガとなっているのでチェックしてみてほしい。

推しの子

出版社:集英社(週刊ヤングジャンプ)
原作:赤坂アカ/作画:横槍メンゴ
既刊13巻(現在連載中)

推しの子
あらすじ

 田舎で産婦人科医をしていた雨宮吾郎は、幼くして亡くなった患者さりなの影響でB小町というアイドルグループの星野アイを推していた。そんな雨宮のもとに活動を休止した星野アイが患者として訪れる。彼女は妊娠しており、アイドル活動を続けるために極秘に出産しようしていた。アイの心意気に感化された雨宮はアイの出産に全力で協力するが、アイが出産する日に、アイのストーカーによって殺されてしまう。

 薄れゆく意識の中で死を悟ったが、気が付くとアイの子ども星野愛久愛海(ほしのあくあまりん)として転生していた。今度はアイの子どもとしてアイのアイドル活動を応援していたが、アイがドーム公演を控えたある日、今度は目の前でアイがストーカーに殺されてしまう。

 雨宮として生まれ変わったアクアは、アイと自身を殺したストーカーにアイの居場所を教えた本当の黒幕が芸能界にいると考え、その人物への復讐を誓う。

おすすめポイント

 2023年にアニメ化された本作。かわいらしいタイトルと絵柄とは裏腹にかなりダークな内容となっている。星野アイを殺した実行犯のストーカーを焚き付けた黒幕に対する復讐の物語だが、その復讐の中には主人公のアクアの前世であり、星野アイの担当医でもあった雨宮吾郎自身の復讐の物語でもある。雨宮吾郎も星野アイを殺したストーカーに殺されており、星野アイの居場所を教えた黒幕に対してアクアは2重の意味で復讐をする動機がある。死んですぐ推していたアイドルの子どもとして生まれるというファンタジー的な要素と、自身と母親を殺した黒幕に復讐を企てるというダークなサスペンス要素が混ざる唯一無二の作品となっている。物語の中に芸能界という世界が入っていることで、華やかかつ少し闇のある物語が読者をより引き込んでいくと感じている。

 アクアとともに双子として生まれてきた妹のルビーも前世の記憶を持っているが、アクアほど復讐に心を燃やしてはいない。その分、芸能界でアイドルという仕事をしたり芝居で星野アイを演じることになったことで、母親であり、自身が推していたアイドルがどういう気持ちでいたのかに寄り添う形になっており、ルビーがいることでより星野アイという存在がどういう風に生きていたのかが垣間見えるようになっている。

 主人公はアクアとなっているが、アクアとルビーの2人の視点から見ることでより星野アイという伝説のアイドルをより感じることができる。復讐を中心とした物語であるが、ルビーには芸能人としての苦悩や人間関係での葛藤といったところも描かれており、復讐の物語とともに芸能界の裏側も描かれている。

 異世界への転生ではなく“現実世界から現実世界への転生”と復讐劇、そしてアイの子どもたちの成長、そしてアイというアイドルの本質に迫る物語は唯一無二の作品だ。

葬送のフリーレン

出版社:小学館(週刊少年サンデー)
原作:山田鐘人/作画:アベツカサ
既刊12巻(現在連載中)

葬送のフリーレン
あらすじ

 本作は魔王を倒した勇者一行の魔法使いフリーレンが、勇者が没した後に魔王を倒すために勇者たちと旅した道を再び辿るファンタジー。フリーレンは人間よりも長い時間を生きるエルフで、勇者ヒンメルたちと10年間旅した道のりを、魔法使いフェルンと戦士シュタルクとともにその足跡を辿る。

 フリーレンの目的はいろいろな魔法を集めることと人間を知ること、そして死者との対話ができる場所に行ってヒンメルとの再会を果たすこと。

 かつての仲間と旅した道のりを思いを託された弟子たちと歩き、魔族たちと戦いながら死者との対話ができる元魔王城を目指す。その道のりで、かつての仲間と昔出会った人たちなどに思いを寄せて、フリーレンは人を知っていく。

おすすめポイント

 2020年から連載が開始され、2023年にアニメ化された本作。勇者の死をきっかけに自身が勇者たちのことを知らず、知ろうとしていなかったかということに気が付いたフリーレンが、人間そのものを知るため再び旅に出る物語は、勇者たちと通った思い出と新しい出会いが交差しながら進んでいく。

 1000年以上を生き続けるフリーレンが勇者の死で知った無関心から来る後悔をきっかけに、人に興味を持ち不器用ながらも他人に対して寄り添う努力をしている姿は健気さが感じられる。

 基本的に他人の感情に鈍感で、寝坊癖や役に立ちそうにない魔法の収集癖、ミミックに必ず食べられかけるなど、かなり天然でかわいらしい一面を持っている。しかし、エルフの仲間を奪った魔族に対しては強い憎しみを抱いており、目の前に現われると容赦なく粉砕しようとする容赦ない一面もある。

 パーティの仲間から託されたフェルンやシュタルクと共に長い旅路を進んでいく中で、過去の自分と向き合い前に進んでいくフリーレンの姿は少し切なく愛おしくも感じる。ノスタルジーを感じたい人にもオススメの作品だ。

ばらかもん

出版社:スクウェア・エニックス(月刊少年ガンガン)
原作:ヨシノサツキ
全19巻

ばらかもん
あらすじ

 書道家の半田清舟(はんだせいしゅう)は、とある受賞パーティで自身の書を酷評した書道展示館の館長に手を挙げてしまう。その行為に見かねた半田の父親は、半田に自身の欠けている部分を見つけさせるため九州は長崎の五島へと行かせる。

 五島に到着した半田は内心反省はしていなかったが、五島で出会った少女の琴石なるをはじめとした島民たちと接していく中で少しずつ心が動いていく。都会では経験したことのない環境、五島で暮らしていくなかで半田自身も成長し、型に嵌っていた書道も変わっていく。

おすすめポイント

 2023年に俳優の杉野遥亮さん主演で実写ドラマ化された本作は、書道を題材としているが、書道についてというよりは壁にぶつかった青年が、新しい環境に身を置くことで“どう人間として変化していくか”というヒューマンドラマが描かれている。半田が引っ越してきた五島で出会った人たちや子どもたちとの交流の中で都会では経験してこなかったような田舎ならではの環境や人間関係に戸惑いながらも、経験と失敗を繰り返し人間として成長していくことで、それが書にも表われていくのが本作のおもしろいところだ。

 作中ではやんちゃな子どもたちが半田を振り回し、それに半田も全力で答える場面など、ほのぼのとした日常を楽しむことができる。半田の精神的な成長と、島の子どもたちの成長、それぞれの成長過程を見ることができ、どちらの視点も楽しめるものいい。挫折した半田と家庭事情が少し複雑になるが、作品自体はホームドラマのような温かさを感じられる作品となっているのも印象的だ。

フジテレビにて実写化され9月に最終回を迎えた

「ばらかもん」の試し読みページ

警部補ダイマジン

出版社:日本文芸社(週刊漫画ゴラク)
原作:リチャード・ウー/作画:コウノコウジ
既刊19巻(現在連載中)

警部補ダイマジン
あらすじ

 強い正義感を持った刑事の台場陣(だいばじん)は捜査一課のエースで、名前をもじって「ダイマジン」と呼ばれていた。しかし、台場はその強すぎる正義感のあまり法では裁けない犯人に対し、自ら手を下していた。そんな台場の犯行を知った警視庁捜査一課特命捜査対策班の室長で警視の平安才門(ひらやすさいもん)は台場を自身が率いる未解決事件専門の「特命捜査対策班」に移動させる。

 実は台場が手を下した悪人は元警察官であり、未解決だった幼女連続誘拐殺人事件の犯人だった。元警察官ということで容易に逮捕できない人物ではあったが、この男を殺した事で台場は想像だにしない事態に巻き込まれていく。

おすすめポイント

 現場のエース(台場陣)×警視(平安才門)というバディが活躍する本作は、今年テレビ朝日で実写ドラマ化された。王道の警察バディものであり、行き過ぎた正義感から起きる行動や警察内部の闇などダークな側面も描かれている。爽快とは言えないが、ダメなことだとわかっていても自身の信念を貫きながら進む2人の姿は読みごたえがある。正義感が強く大雑把なところがある台場と、狡猾で人を信じない平安というコンビは、性格が真逆の2人が奇跡的にかみ合って事の真相に向かっていくのがおもしろい。主人公の台場は正義感が強すぎるあまりに殺人を犯してしまうが、ユーモアのある性格をしており、憎めない人物となっている。

 また本作は過去に起きた実際の未解決事件などをモデルとした事件描写もあり、少しだけ現実を感じることができる。

 本作の中では警察以外の怪しい組織も登場し、少しストーリーが複雑化しているが、じっくり読んでいくとかなり読みごたえがある。警察物やアングラな雰囲気が好きな方におすすめの作品だ。

実写ドラマでは主人公の台場陣を生田斗真さん、平安才門は向井理さんが演じた

ラストカルテ―法獣医学者 当麻健匠の記憶―

出版社:小学館(サンデーうぇぶり)
原作:浅山わかび
既刊7巻(現在連載中)

ラストカルテ―法獣医学者 当麻健匠の記憶―
あらすじ

 高校生の当麻健匠(とうまけんしょう)は、ある事件をきっかけに「法獣医学」という言葉を知る。「法獣医学」は死んでしまった動物がどうして死んでしまったのかという原因究明をする学問だ。どうして死んだのか原因を突き止めることは、周りの動物や人間が生きるために必要な学問だと知った当間は、「法獣医学」を教えてくれた同級生の茨戸とともに獣医学部へと入学する。

おすすめポイント

 法獣医学というあまり聞き慣れない学問がテーマの本作。アニメ化や実写ドラマ化はされていないが、環境省とのタイアップが行なわれており、マンガは読んだことがなくても駅のポスターを見かけた人もいるかもしれない。

 本作では複数の動物たちがリアルな描写で描かれており、動物がどうして死んでしまったのかというところにしっかりフォーカスが当たる。しかし、それだけではなく、死因の直接的な原因だけでなく、そこに至るまでの動物の行動や人間やその他の自然現象との接触などを考察してされていく。

 主人公の当麻は動物の死因というよりも、死んでしまったこの動物は死の間際に何を見ていたのかというところに興味があり、少し着眼点が異なることもある。ただ、純粋にどうしてという気持ちが勝るだけで、死に対して悲しみがないわけではない。少し誤解されやすい性格だが、動物の死に対しては真摯に向き合っていく。また一緒に進学した茨戸も口数が少ないが、誠実で真面目な性格をしている。2人ともお互いをよく見ており、想像以上に理解しあっているので、見ていて安心感がある。学生らしからぬ落ち着いた2人ではあるが、一方でまだまだ幼さもあり、物語の中で大学生らしさを感じられるのがいい。

 動物たちの死という少し重いテーマではあるが、言葉を話すことができない動物たちの最後に少しだけ触れることができるという意味でも本作は一度手に取ってみてほしい作品だ。

こちらはアカミミガメ、アメリカザリガニの野外放出・輸入・売買等の規制開始を告知する「ラストカルテ」のポスター

 今回は2023年にアニメ化やドラマ化をされた作品を中心に紹介した。もちろん今回紹介した作品以外にも「薬屋のひとりごと(スクウェア・エニックス)」、「セクシー田中さん(小学館)」などたくさんのマンガが映像化されている。アニメやドラマは見たことがあるが、原作は読んだことがない方やタイトルは聞いたことがある程度の方も、ぜひ興味があれば一度手に取ってみてほしい。