【特集】

【夏休み特集】夏を感じられるマンガ作品6選。ホラーにアウトドア、スポーツ、冒険!マンガで夏を満喫!!

 夏も盛り、お盆休みを迎えた方も多いかと思う。お盆休み中は、帰省したり国内外に旅行に行ったり、はたまた家でのんびり過ごすという方もいるはずだ。本稿では、そんなお盆休みのスキマ時間にササっと読めて、夏を感じられるマンガをホラーやコメディ、スポーツなどさまざまなジャンルからチョイスしてオススメしていく。

 今回は夏を感じられる数あるマンガの中から、往年の名作をあえて外した。筆者が直近10年ぐらいでおもしろいと感じた作品の中から6作品をチョイスした。まだまだ連載中の作品が多くなっているが、まだ巻数が少ない作品や上下巻で終わっている作品も選んでいる。中には巻数が多いものもあるが、時間があるときに読んでみてほしい作品ばかりなので、興味が湧いた方はぜひ手に取ってみてほしい。

光が死んだ夏

出版社:KADOKAWA(ヤングエースUP)
作者:モクモクれん
既刊3巻(現在連載中)

「光が死んだ夏」コミックス1巻
あらすじ

 「閉塞感漂う田舎町」で、よしきと光は幼馴染として暮らしてきた。高校生となったある日、光が一週間山で行方不明になる。光は無事に帰ってきたが、よしきは光が別の「ナニカ」であることに気がつく。それでも光を必要とするよしきとよしきからは慣れたくない光の姿の「ナニカ」はいびつな関係のまま日常を過ごしていく選択をする。よしきはナニカを「ヒカル」と呼び一緒に生活を送るが、少しずつよしきの周囲で不気味な出来事が起こり始める。

 本作は「このマンガがすごい!2023オトコ編」で第1位を獲得している作品だ。本作の魅力は登場人物と謎の怪異「ヒカル」が、どちらも成長過程にあるというところだ。現役の高校生であるよしきや友人たちの少し怖いもの知らずなところと、大人になりかけたことで現れる行動や発言へのブレーキ、葛藤というところ、そして光の姿を借りた謎の怪異「ヒカル」のよしきと一緒にいるために一生懸命現代社会に馴染もうとする姿は面映ゆい。

 特に本作ではよしきとヒカルが共依存のような関係に描かれており、お互いのため、そして自身が相手と一緒に居るためにさまざまな思案を巡らせていく。そこに周囲の大人たちの思惑も相まってどんどんと話が複雑になっていくのがおもしろい。あくまでも2人だけの世界では終わらない感じがまたドキドキ感を誘う。

 光の中にいる「ヒカル」の正体だけでなく、よしきたちが住む村に隠された秘密などもとても気になる描かれ方をしており、これからの展開がとても楽しみだ。

 ただ怖いだけのホラーでもなく、青春と村のしがらみや閉塞感が混ざった本作は不思議なほどにその村の日常を感じることができる。日常の中にしれっと混ざった異物「ヒカル」を取り巻くキャラクターたちの中に、少しずつ違和感を覚えていく登場人物たちとよしきやヒカルとのやり取りを見ていると、この村の住人の中には怪異が近くにいることが当たり前の日常を過ごしている人たちが多くいるようにも感じられて、村の異様さも少しづつ浮き彫りになっているように感じた。

 執筆現在も連載中で既刊3巻となっており、現状サクッと読むことができる作品だ。よしきとヒカルの形容しがたい関係性とその2人を取り巻く世界と、ひと夏の事件を感じさせる村中に響く蝉の声がこの短い期間でどういう展開を迎えるのか楽しみになる。

□「光が死んだ夏」第1話試し読み

令和のダラさん

出版社:KADOKAWA(コミックウォーカー)
作者:ともつか治臣
既刊2巻(現在連載中)

「令和のダラさん」コミックス1巻
あらすじ

 山村の一角にある祟り神を封じていた祠がある嵐の夜に決壊した。その山を管理している三十木谷(みそぎや)家の姉弟は決壊を見に行った祖父を追いかけて嵐の中、山へと入る。姉弟は踏み入れた山で出会ったのはその祠に封じられていた上半身が女性m下半身が大蛇の姿の祟り神「屋跨斑(やまたぎまだら)」と出会う。しかし姉弟は慌てるでもなくしれっと屋跨斑の存在を受け入れてしまう。むしろ彼女に「ダラさん」という愛称までつけて自由奔放に振り回す。

 祟り神「屋跨斑(やまたぎまだら)」のダラさんと、ダラさんの祠を管理してる三十木谷家の子ども2人によるドタバタ怪異コメディの本作。表紙のおどろおどろしさからは想像もつかないコメディマンガとなっている。

 祟り神で異形の姿をしているダラさんに対して、全く恐れることなく無邪気に接する姉弟。その無邪気さゆえに怪異であるはずのダラさんがツッコミ役になってしまう。自由で物怖じしない姉弟に振り回されるダラさんが非常に愛らしいほか、本作で登場する人間側がかなり個性的なキャラクターが多いため、ダラさんの真面目な人柄が浮き彫りになり、ダラさんがとても人間らしく感じられる。

 また、話が進むごとにダラさんが人間だったころの話が盛り込まれており、どうしてダラさんが屋跨斑という祟り神になったのかも描かれている。人間だったころのダラさんの話から祟り神になったダラさん、そして現代までが地続きに繋がっているため、コメディなだけでなく怪奇現象や呪物といった怖い話もちゃんと出てくる。そのストーリーのギャップにドキッとする上、よりダラさんの怖さを感じられる。

 コメディとホラーが絶妙なバランスで組み込まれており、人間側がボケ役、怪異側がツッコミ役という読者からしたらツッコミどころ満載な設定や、姉弟に振り回されていくダラさんの可愛さに病みつきになること間違いなしの作品だ。

□「令和のダラさん」第1話試し読み

サマータイムレンダ

出版社:集英社(少年ジャンプ+)
作者:田中靖規
全13巻

「サマータイムレンダ」コミックス1巻
あらすじ

 2018年7月22日、主人公網代慎平(あじろしんぺい)は幼馴染の小舟潮(こふねうしお)の訃報の連絡を受け、葬儀に参列するために2年ぶりに東京から生まれ育った故郷の和歌山県にある日都ヶ島(ひとがしま)に帰省する。潮は海の事故で亡くなったと聞いていたが、葬儀に参列した親友の話で潮の死は単なる事故死ではなく不可解な点があると知る。潮の死の背後に他殺の可能性が浮上する。

 そして、島に伝わる「影」と呼ばれる怪現象と潮の死が繋がり始めた時、慎平は「影」の思惑に巻き込まれて死亡してしまう。しかし、死んだはずの慎平が次に目覚めたのは、なぜか島に帰ってきた日に乗っていたフェリーの上だった。慎平は謎のタイムリープを繰り返しながら、潮の死の真相と影の正体に迫っていく。

 幼馴染の葬儀という衝撃的な状況から始まる本作品は、その衝撃をさらなる衝撃で塗り替えていく展開に常にドキドキハラハラできる作品となっている。

 何度も同じ日を繰り返すように見えて、慎平が何とかして現状を打破していこうともがいて奔走する結果、少しづつ変化していく展開に読んでいて胸が熱くなる。ただ、その胸が熱くなる展開を容赦なく「影」という存在が読者ごと絶望に落としていく。この繰り返しが読んでいて苦しくも、慎平がどう切り抜けていくのかワクワクする。

 タイムリープにより長い長い3日間を繰り返していくが、物語が進むにつれて今まで見えなかったキャラクターたちの視点や行動、感情が見えてくるようになってくる。その瞬間はわからなかったことが、後々になって裏で繋がって解明されていくのは、アハ体験のようで読んでいて気持ちがいい。

 正体がよくわからない「影」と隣り合わせにいることで、いつ命を奪われてまたタイムリープしてしまうのかと序盤はハラハラするし、真相に迫っていけばこのまま上手くいけるのかとドキドキする。読んでいてとにかくドキドキハラハラが止まらない作品だ。

□「令和のダラさん」第1話試し読み

ふたりソロキャンプ

てんさいと出版社:講談社(イブニング→モーニング)
作者:出端祐大
既刊16巻(現在連載中)

「ふたりソロキャンプ」コミックス1巻
あらすじ

 1人でキャンプをするのが好きな樹乃倉巌(きのくらいわお)はいつものようにソロキャンプ場で楽しんでいた。しかしキャンプ場に来る途中で遭難しかけて、キャンプ場の受付時間を大幅にオーバーして到着した超初心者の女子大生草野雫(くさのしずく)の登場で巌の至福の時間は台無しにされてしまう。レンタル前提で自前のテントも持ってきていない雫を見かねた巌が仕方なく世話を焼いたことで雫にソロキャンパーの師となってほしいと懇願される。固辞する巌だが、不可抗力で雫の着替えを見てしまったことを脅され、渋々ふたりでソロキャンプを始めることになる。

 「ふたりソロキャンプ」は、ソロキャンプという題材の中に、キャンプとは何か、どうやって楽しむものか、どんなルールがあるのか、どんな道具を使うのかということが事細かに描かれており、キャンプをよく知らない人でも1からキャンプのノウハウを知ることができる作品だ。

 序盤は雫のあまりの強引さに気後れしてしまいそうになるが、読み進めて行くうちに雫の人間性が少しずつわかってきて可愛らしさを感じられるようになる。読者の視点と巌の感情の視点がかなり近いところにあるので、最初は雫に対して微妙な感情を抱いてしまうかもしれないが、巌と一緒に読者もほだされていくのでおもしろい。

 また、キャンプという題材から、キャンプをしない人にとってはとっつきにくそうに感じるかもしれないが、巌がキャンプのことを何も知らない雫に対して、1つ1つレクチャーしていくので、雫と一緒にキャンプに詳しくなっていくので問題ない。

 昨今ではオールシーズンキャンプを楽しむ人も増えてきているが、アウトドアを気軽に楽しめる夏だからこそ、読んでキャンプに思いを馳せてみてほしい作品だ。

子供はわかってあげない

出版社:講談社(モーニング)
作者:田島列島
全2巻(上下巻)

「子供はわかってあげない」コミックス1巻
あらすじ

 高校の水泳部の朔田美波(さくたみなみ)は屋上に見たことのある絵を見つけて好奇心で屋上へと上がる。そこには同学年の門司昭平(もじしょうへい)がアニメのキャラクターをキャンバスに描いていた。ひょんなことから出会った2人だがお互いがアニメオタクであることを知り仲良くなっていく。そんな中門司の家に行った際にとあるお札を見つけた朔田が、同じお札が5歳のときに離婚した父親から送られてきたと打ち明ける。お札を送ってきた父親を探すために、探偵の門司の兄も巻き込んで高校生の冒険が始まる。

 2020年に映画化された本作。新興宗教や超能力、離婚していなくなった父親とかなりハードな内容がふんわりとした作画で包まれている作品だ。

 高校生のひと夏の冒険を描いた本作は、劇的な展開こそないが、それ故に高校生のとてもリアルな心模様が描かれている。朔田の、父親に会いたいけど会ったら母親たちはどう思うだろうかと揺れる心情や、父親に聞きづらいことを聞くことを決めた決意、連絡が取れなくなった朔田を心配して行動に出る門司の覚悟など、読んでいて思わず頑張れと応援したくなるほど真っ直ぐに描かれている。

 高校生にしては少し純粋すぎると感じるかもしれないが、案外、人生はこういうものかもしれないと立ち返ることができる作品だと思う。大きなドラマがありそうで、そうでもなくて、でもちょっとした事件はいろいろ起きる。そういった高校生の日常が詰まっている作品だ。

 いろいろな要素が詰まっている物語だが、読んでいてスリルがあるというよりは、日常の延長線にある出来事による冒険物語という感じだ。それ故に読んでいてちょっと懐かしさすら感じられる。高校2年生という少しだけ大人の階段を上りだした年齢だからこその、ちょっとだけ周りが見えはじめているようなそうでないようなあいまいなところがよりリアル。

 ノスタルジーも感じられる作品となっているので、高校時代の懐かしさを思い返してみたい人にもおすすめの作品だ。

□「令和のダラさん」第1話試し読み

忘却バッテリー

出版社:集英社(少年ジャンプ+)
作者:みかわ絵子
既刊16巻(現在連載中)

「忘却バッテリー」コミックス1巻
あらすじ

 中学硬式野球界で誰もが恐れたシニアチームの最強バッテリーだった投手の清峰葉流火と捕手の要圭。中学時代に彼らと対戦して心を折られた山田太郎は野球を辞める決意をして、野球部がないと言われた都立小手指高校に進学する。

 しかし、そこで出会ったのは心を折られた最強バッテリーの2人だった。だた、知将と呼び声高かった要は記憶喪失により野球素人に変貌しており、家から徒歩5分という近さだけで高校を決めていた。小手指高校にはかつて清峰・要バッテリーに同じく心を折られ野球を辞めた天才プレーヤー・藤堂葵と千早瞬平も入学しており数奇な再会を果たす。

 要にくっついて入学してきた清峰だったが、清峰だけは野球をすることを諦めていなかった。出会うはずのない場所で巡り合った天才たちは、発足したばかりの愛好会のような野球部に入り、甲子園を目指すべく再始動をする。

 夏の風物詩の1つである甲子園を目指す高校球児たちを描いた作品で、先日TVアニメ化されることが発表された。

 本作は最強バッテリーだった投手の清峰葉流火と捕手の要圭の2人によって心を折られた元球児たちが同じチームで甲子園を目指すという作品だ。ただ、そのバッテリーのキャッチャーである要が記憶喪失になっているという思いもよらぬ設定がついているだけでなく、知将から寒いギャグを繰り出すアホの子と、キャラクター自体も変化しているため、序盤は野球ギャグマンガかなと勘違いしてしまうほどだ。

 しかし、物語が進むにつれて、この要のアホの子というのがとても大事なキャラクターだと気づかされる。本作は天才に心を折られた球児たちの物語で、心を折った側と折られた側が同じチームメイトとして練習を重ねていく。ギスギスしてしまいそうな関係性を上手く包んで1つ1つ解決へと導いていくのがアホの子で、野球を忘れてしまった要という存在だ。何より、投手の清峰がとにかく相手の気持ちを慮ることができないので、いろいろ火種を作ってしまいそうなところを要がうまく緩衝材になっているという印象を受けた。

 さらに物語が進むと、野球を忘れた要の野球に対する思いや過去にどう思っていたのかが描かれ始める。物語序盤では要がどうして記憶喪失になってしまったのか描かれていないが、物語が進むと記憶をなくす前の要という人間の輪郭がぼんやりと見えてくる。要というキャラクターの本質が見え隠れしてくると、バッテリーの相方・清峰の印象も変わってくるので不思議だ。

 甲子園を目指す中で天才と呼ばれた球児たちの人間模様がどんどん変化して仲間という存在になっていくのもおもしろい。野球が好きな人だけでなく高校球児たちの人間としての成長やトラウマ克服など成長物語が好きな人にもおすすめの作品だ。

まとめ

 今回は、スリルを感じられる作品や、高校生のひと夏の日常を感じさせる作品、コメディ作品までさまざまなジャンルをチョイスしてみた。

 今回紹介した作品以外にも、懐かしいあの夏の日に帰ってみたり、ドキッとするような怖い体験をしてみたり、手に汗握る熱い試合があったりと、夏を体感する作品はたくさんある。マンガの中でも十分に季節を感じられるので、この夏をより楽しみたいという方はマンガでも夏を満喫してみてはいかがだろうか。