インタビュー

「セガ3D復刻アーカイブス」インタビュー第3弾!

「スペースハリアー Ver.2」ではサウンドの再現性をさらに向上!

「スペースハリアー Ver.2」ではサウンドの再現性をさらに向上!

並木氏: ただその一方で、プログラムの限界というか、当時の技術的な限界で、オリジナルサウンドの再現性という点では、いろいろ課題も残されていたんです。「スペースハリアー」のBGMとSEの部分ですね。BGMはそれなりに納得いくレベルにはなっていたと思うんですけれども……。

奥成氏: PS2版と比べると断然違いますよね。アンプなどの違いはあると思いますが。

並木氏: Wiiの「バーチャルコンソール」のものよりもよくなっていたと思います。

 「3D スペースハリアー」はこのサウンドの再現に関しても、いろいろあったんですよね。「バレル」の「ビュゥゥーン」という登場するときのSEはSSGの音(※)なんですけれども、鳴りっぱなしになって「ブゥゥゥゥゥン」ってずっと言っちゃうやつですね。奥成さんも皆さんもそれをずっと気にされていて。Wiiの「バーチャルコンソール」版まではそのままだったんですよね。それは自分がまだエムツーに入社する前で、ベイシスケイプさんで専属作家という形でお仕事している時代だったんですけれども、「3D スペースハリアー」のときは、「それを何とかしたいね」ということで、齊藤君も自分もいろいろ調べて、元のトラブルをいろいろ直してみたりとか、こまごました修正や調整をやっていました。

※アーケード版「スペースハリアー」のサウンドはYM2203(OPN)+PCMで構成されている。YM2203は4オペレーター3チャンネルのFM音源だが、PSG音源互換+αの機能を持つSSG機能も搭載されている。

 「3D スペースハリアー」ではどうしても、「こちらを立てれば、あちらが立たず」といったことがいくつかありまして、マニアックな方々がご指摘されていた「トモス」のSE、と「ルーパー」や「ビンズビーン」のSEの再現度は、いろいろな部分のトレードオフであきらめざるを得なかった事情がありました。

奥成氏: その中で「トモス」は最後なんとかなったんですよね。

並木氏: 「こちらを立てれば、あちらが立たず」の結果、「トモス」を立てたことで「ビンズビーン」が……ということになったんですね。頭の音が欠けたように聞こえるという。

 その部分に関しては、「スペースハリアー」の「Ver.2」では「絶対何とかしたいね」とスタッフ一同決めていたところだったので、最後、齊藤君がビシッとゴールを決めてくれましたね。僕の方は指摘だけは昔からしていたので、指摘しても具体的に何をどうすればいいのか、はメインプログラマが……というか、サウンドのコア部分を書いている齊藤君が……メインなのにサウンドのコア部分も担当していて、齊藤君はあらゆることを抱え込んでいたので……3D復刻プロジェクト=齊藤君みたいな感じですね。プログラム的な部分や技術的な部分に関しては。彼自身が最後に追い込んで「トモス」も立つし、「ルーパー」、「ビンズビーン」も立つし、という状況にできて本当によかった。

堀井氏: 「Ver.2」で処理速度が稼げた、という部分はでかいですね。

並木氏: 処理速度が稼げないと、単純にそれのための作業に追われて、サウンドの再現性を追いかけるとか、深いところまで探るというところまで作業ができないんですよね。齊藤君というマンパワー1人ですから。ウィザードというか……。

堀井氏: ウィザードだね、本当に。そういう意味では、並木さんははたから見ていて、毎回携帯機であるが故の電池の持ちとか、非力なCPUと毎回戦って、まず、表示をきっちりするとかから始まって、残ったCPUパワーから音をどうするか、というところでいろんなやりくりをして、ストレスを溜めながら、皆さんの耳に届くものをなんとか作っていく、という感じがしていました。期間もギリギリなんですよ。処理速度が間に合ったところで初めて音のチューンもできるので。

並木氏: そうですね。そういう意味では開発の本当に末期も末期、ファイナルの時期にならないと、齊藤君がサウンドの方に振り向いてくれる状況にはならなかったので。振り返ると「セガ 3D復刻プロジェクト」の第1期も第2期もすべてそうですね。「3Dベア・ナックル」のときは比較的早い時期から「サウンドの再現性の低い『ベア・ナックル』はやばいね」という意識を共通で持っていたのと、「3D ギャラクシーフォースII」の時は早くからストリーミングで行く方針が決まっていたので、そういう意味では多少余裕があったので、GAME Watchさんのインタビューでお話させていただいたとおり、作品の数を経ることで、サウンドのクオリティが向上していくという「成長期」だったのかなと。その成長期ってそこに留まらず、今回の「セガ3D復刻アーカイブス」までずっと成長を続けてきたのがすごいなと。

 なんとか、なんとか、ゲームが60フレームで回るとか、直さなければならないものに目処がついた、という時期に「じゃ、サウンド」ということで、本当に「じゃ、2日間、3日間ね」とか、限られた時間でディレクターにせっつかれながら、でも自分がやるべきこととしては再現性を上げる、という「この音のこういう部分が実際と違うんだけれども、これはこういうアルゴリズムによるのではないか、FM(音源)のこのレジスタの振る舞いのせいじゃないのか」というものを想像というか、あてを付けながら齊藤君に証拠としていろいろとつきつけていくと。そうすると齊藤君もそれに向き合わなければならなくなるから、その結果「ごめんなさいそれはできません」っていうのと、「直りました。再現性が上がりました」というようなやり方で。

 「3D スペースハリアー」のときは自分もエムツーに入ったばかりでしたし、サウンドディレクションもエムツーでは初、という状況でしたので、途中参加だったこともあっていろいろあきらめざるを得なかったこともあったんですが、今回、「セガ3D復刻アーカイブス」で再チャンスがあり、そこまでの経験を活かせたので、ビシッと今回の「スペースハリアー Ver.2」に対して「これでかなりのところまでいけたので、ぜひまた楽しんで頂きたいな」とサウンドを含めて思いますね。

―― ギガドライブの時期には「ローパスフィルター」(※)も入りましたし。「スペースハリアー Ver.2」でサウンドが変わって聞こえるようになったのはその効果もあるんですかね?

※ローパスフィルター……高い周波数の音をカットして、低い周波数の音をそのまま通過させるフィルター。詳しくは「3D アフターバーナーII」のインタビューを参照のこと。

並木氏: これまでこまごまいろんなことを進化させてきたプロジェクトだったので、今ご指摘いただいた「ローパスフィルター」のことを忘れていました(笑)。「ローパスフィルター」はギガドライブの「3D 獣王記」から導入したんですが、「スペースハリアー Ver.2」でも、基板から録音した音と、「3D スペースハリアー」の音を聴き比べて、このころはチップからそのまま出力したような音になっているなと。それがいい、悪いというのは別にしてですね。

 「Ver.2」の開発中も、齊藤君もフィルターを適用していなかったことをコロっと忘れていまして。自分が「サウンドを調整するにあたって、値を決めたいんで」という話をしたら「あ、そういえば入っていなかったですね。適用するまでに時間をください」と言われまして(笑)。入れる段になって「大体何kHzあたりに入れたらいいと思います」という話をメールにチラッと書いたんですが、大体6~7kHzあたりだったと思いますが、フィルターを適用してもらったら、齊藤君から「俄然本物っぽくなってウケました」みたいなメールが返ってきました(一同笑)。実際、自分でも聴いてみて、「こちらのほうがしっくりくるな」という感じで、今の調整になりましたね。

「Ver.2」ではショット音のSEボリュームが独立している

―― 「Ver.2」では効果音も調整できるようになったり、ショット音の調整も独立したりとまたパワーアップしましたよね。

奥成氏: 「3D スペースハリアー」で連射したときのキャノンのショット音がうるさく聞こえる件に関しては、「SEが強いアーケードらしいバランスだ。気になるけど直せるはずがない」という状況でした。「3D スーパーハングオン」を経て、BGMをストリーミングにした「3D ギャラクシーフォース」で初めてSEのボリュームを独立させて変更できるようにしたんですが、あれで「やっぱり個別にボリュームを変えられるのはいいね」という空気になったので、「3D アフターバーナーII」の時は「なんとかできないか」という話をしてみたところ、第1期と第2期の開発期間の間に、そこを齊藤さんが「ミラクった」という(笑)理解なんですけれども。

並木氏: 本当に齊藤君様々ですね。SEの音量調整ができるようになったのも、齊藤君テクノロジーなんで。

堀井氏: できるわけないから普通は(笑)。

奥成氏: だって同一プログラムで鳴らしているものを分割するわけですから、手作業ですよね。

並木氏: わりかし力技でやっているんじゃないかな。

アーケード版筐体。操縦桿にはトリガーと親指に当たる位置にボタンがあり、さらに本体左右にもショットボタンがあった

―― 今回、ショットの環境音もトリガーと本体ボタンとアサインを振り分けてノーマルと連射と音が違うことになりましたが……。

並木氏: 松岡さんと話し合いまして、「トリガー音がやかましい」という話を(インタビュー第2弾を参照)お客さんから頂いたという話を聞いて、「変えたほうがいいんじゃないか」と2人で話をしている時に変更することは決めたんですが……。提案したのは自分だったと思うのですが、理由があって……実機のトリガーは連射するのには向いていないんですよね。連射に向いているのは操縦桿の脇についているボタンだったので、そちらを連射ボタンの環境音にアサインして、トリガーのほうはワンプッシュの方にアサインすれば、丸く収まるんじゃない? と思ったんですよ。

 「スペースハリアー」には操縦桿のトリガーと、親指にもショットボタンがあったはずなんですが、親指の方は使わずに本体のショットボタンを押していたと記憶しています。操縦桿のボタンの音も収録してはあるんですが、アサインしていませんね。

奥成氏: 「スペースハリアー」でのプレイスタイルがもともとそういう形式でしたもんね。最初プレイするときは操縦桿のトリガーをカチカチ引いてるんですけれども、「これじゃ連射できない」ってことで、モニタ横の本体のショットボタンに手が伸びる……という。

並木氏: 本来の姿になった、という感じですかね。ただ、実際に筐体を真横に置いて、乗りながら開発できていれば、そういうところにもいろいろ心が行き届くとは思うんですけれども、さすがにそういう状況には今の世の中ではできないので……。

堀井氏: そうだねー。モノがないもんね。

並木氏: だから、スタッフ同士で「こういう要望が来たけれどもどうする?」という中でのキャッチボールの中での気づき、というか「こうすればいいよね」というアイデアが浮かんだりしてきましたね。それは開発初期だろうが末期だろうがおかまいなしに、割とそんな感じで。うちの会社は。

―― (笑)。

堀井氏: いいことなのか悪いことなのかは僕にはわかりませんが、僕は「GOGO!!」という感じです。

並木氏: 奥成さん的には肝が冷える話なんだと思うんですけれども。

奥成氏: でも、今回の「ショット音を変えて」と言ったのは僕ですからね。

並木氏: あれは本当に最後の最後でしたよね。

奥成氏: あれはファイナル(ROM)の1週間切ったか切ってないか、という時期でしたね。動画を公開してから3~4日ぐらいの時期にYouTubeでの書き込みに気づいてからだったので。

―― その当時のことをいろいろ考えると、理にかなっている修正になっているんですよね。

並木氏: いろいろシリーズをやらせて頂いて、いろんなことをその場の思い付きから始まってチャレンジして試行錯誤してきましたけれども、最終的には理にかなうものが1番しっくり来るというか。その理にかなうしっくりくるもの、というものも、実機を常に触れるというか、その当時のリアルタイムを経験できるような状況だったら自然にできるのかな、と思うんですけれども、時間を経て、タイムカプセルのような形でこうしてリリースするものなので、なかなかそのあたりは難しくなっているのかなという実感がします。ただ、理にかなった瞬間、やっぱり「ああ、いい実装になったな」とか、「あ、これだよね」ということになるなというのは、開発スタッフとしていつも感じるところですけれども、すごく大事なことなんじゃないかなと思います。

奥成氏: これは前回のインタビュー(第1弾)でもお話したところですが、パッケージタイトルとして、開発期間に半年なり与えられたとしても、ここまでの作りこみはなかなかできないので、これは2年の開発期間の中で……実際はその前のゲームギアの「バーチャルコンソール」とかも含めてなんですけれども、その期間で培ってきたノウハウが活かされた結果が、この「セガ3D復刻アーカイブス」として結実しているというところで。

 これは「セガ 3D復刻プロジェクト」がダウンロードソフトであったからこそ、だんだん知識が蓄えられた、というところはありますよね。同じような仕事をずっとやってきているから、ということはあると思うんですよね。3DSでも違うソフトを作っていたら、こんなにノウハウは溜まらないと思いますし。

堀井氏: そう言わざるを得ないですね。

―― あとは、1作1作世に出してきているから、その度にお客さんの反応も見ることができていますし。いろんな突っ込みもありつつ、ですから。

奥成氏: そうですね。効果音ボリュームの切り替えなどはまさしくそうですね。

並木氏: 今回、環境音も効果音もお好みのバランスに調節できますので、ゲームの方を合わせることで、ヘッドフォンをしていてもいい感じに遊んでいただけるんじゃないかな? と思っていますね。

奥成氏: そういえば今回は、「SEの再現度を上げる」ことと、「効果音の音を分割する」というリクエストは最初に出しましたが、SE音量とは別に「『ショット音ボリューム』を独立させる」ことはオーダーしていなかったんですけど、最初のROMから入ってましたね。「3D アウトラン」の時は、「エンジン音を個別に分けてくれ」と言ったんですよね。今回はそれを言っていなかったのに、ショット音ボリュームがちゃんと付いていたので、「ああ、ツーカーだなあ」という感じがしましたね。

―― (笑)。

並木氏: その辺はもう、何度も向き合っている齊藤君もそうだし、松岡さんもそうだし、自分もそうだし……。企画の段階、つまり企画書レベルでユーザーインターフェース画面にショット音ボリュームが入っていたので。「Ver.2」で真っ先に入れたかったんじゃないですかね? 齊藤君自身も自分でプレイする時用にボリュームを下げたものを作っていたかもしれない(笑)。

堀井氏: 彼ならやっててもおかしくない(笑)。ずっと開発中に音を聞いているので……。

並木氏: で、僕が逆に「なんでこうなってんの?」って聞くんですよ。そうすると、「ああ、それは今度こういう風にしようと思っているので、今はこうなっていますけれども……」という会話は本当に四六時中ありますね。

―― ああ……(笑)。それがいわゆる「こつこつ直してる」ってやつなんですね。

並木氏: 本当に「こつこつ」です。細かいことを拾い上げていったらこのインタビューが何日にもなってしまうレベルです(笑)。本当に「スペースハリアー」に関しては、2年前に手がけたということもありますし、自分は途中からの参加でしたけれども、入ってからもいろんな変化を遂げて……CPUパワーの問題から何から、「できっこないな」と思われていたものが、ガンガン改善されて「ついにここまで来たか!」という感じで。それを第1弾の「スペースハリアー」にフィードバックできたのは、すごく意義のあることなんじゃないかなと。「また『スペハリ』か」というのとも違うんじゃないかな、と思います。

堀井氏: そこは本当に「違うな」と思ってもらえればいいんじゃないかな、と思います。

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(佐伯憲司)