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角川ゲームス、代表取締役社長・安田善巳氏インタビュー

「LOLLIPOP CHAINSAW」開発の内幕から今後の展望までを聞く


6月25日 収録



 角川グループのゲーム事業を強化するため、2009年4月に設立された株式会社角川ゲームス。角川書店、アスキー・メディアワークス、エンターブレイン及びキャラアニの家庭用ゲームパブリッシング事業を担うなど、ゲーム事業に一体的に取り組むとともに、株式会社プロペや株式会社グラスホッパー・マニファクチュア、株式会社エクスペリエンスといったグループ外の開発スタジオとも連携して、新作タイトルの開発にも取り組んでいる。

 設立から3年あまりの間に数々のタイトルをリリースしてきたが、今月にはグラスホッパー・マニファクチュアと共同で制作した完全オリジナルの新作タイトル「LOLLIPOP CHAINSAW」を発売。昨今は苦戦傾向にある新規IPながら、“ハッピー・ゾンビエンターテインメント”というインパクトのあるゲーム内容で国内外から好評を博している。

 今回は角川ゲームスの代表取締役社長である安田善巳氏に、「LOLLIPOP CHAINSAW」の制作にまつわる裏話から、同社のゲームパブリッシャーとしての方針や目指しているところまで伺った。



■ ワーナーと良好な関係の中で開発した「LOLLIPOP CHAINSAW」

角川ゲームス代表取締役社長の安田善巳氏。以前はテクモ株式会社の代表取締役社長を務めていた

――「LOLLIPOP CHAINSAW」の発売おめでとうございます。発売されての感触はいかがですか?

安田氏: ワーナー・ブラザース・インタラクティブ・エンタテインメント(以下、ワーナー)さんが世界各地に初回出荷を続けている状況ですね。ある程度落ち着いたところで数字は発表させていただければと思います。当初、我々が見込んでいた数字を初回出荷の段階で突破していますので、好調な出だしを切れたと感じています。

――海外での評価はいかがでしたか?

安田氏: 正直、好きな人と嫌いな人がはっきり分かれると思っていたんですけど、Amazonなどのユーザーの評価を見ると予想以上に高い評価をいただく一方で、各Webサイトの評価を見ると極端に低い点数の方もいらっしゃって、そこはある程度想定通りかなという感じですね。総じて好評ではないかと思います。

――日本と海外のゲームユーザーでは好みが異なるため両方で売れるタイトルというのは難しいと思うのですが、海外でも売れて、日本でも売れるタイトルにチャレンジした理由というのはあるのでしょうか?

安田氏: 角川ゲームスは海外のパブリッシャーさんととても良好なリレーションシップを構築していまして、それが角川ゲームスの強みの1つだと思っております。現在の非常に厳しい市場環境の中で、特にハイデフのゲームでオリジナルの新しいIPのプロジェクトを立ち上げ、投資を回収することを考えた場合に、やはり海外の市場でもしっかりとした実績を狙えるということが必要不可欠ですが、その我々の良好な関係を「LOLLIPOP CHAINSAW」にも活かしていくことで、海外での成功も目指せるのではないかと考えました。

 さりとて、海外のパブリッシャーも今現在は新しいIPに挑戦するということについては、総じて保守的な状況ですね。いわゆるコンソールゲームで新しいIPを武器にしてチャレンジしていくパブリッシャーを見つける必要があったのですが、たまたま私とワーナーさんが旧知の間柄でしたので、幸運だったかなと感じています。

 ワーナーさんは今年のE3で、プラットフォーマーのプレゼンテーションにも積極的に出ていらっしゃいましたけれども、このご時世では数少ない、コンソールゲームで事業領域を拡大することに積極的なゲーム会社です。「LOLLIPOP CHAINSAW」についても、全社を挙げてこのタイトルの知名度を上げていこうという姿勢で、販売やプロモーションに全力で取り組んでいただけたと感じています。

――ワーナーは映画という事業を土台として持ちながらゲーム事業にも参入しているという印象ですが、ワーナーさんとしてはオリジナルコンテンツが欲しいということもあって提携されたという感じですか?

安田氏: そうですね。どちらかと言えば豊富なキャラクタゲームのラインナップをお持ちですので、コアゲーマー向けのハイエンドゲームを探していらっしゃったと思います。角川ゲームスを立ち上げたときに、ワーナーさんと私とで「ぜひ一緒に仕事しようよ」という話し合いをしたことがありまして、その時に日本のゲームを一緒に世界へ持っていこうというお互いの雰囲気がありました。彼らはすでに北米と欧州ではスタジオの買収を行なっていて、世界にもう1つ開発拠点的なアプローチをするとしたら日本だろうと思考されていましたが、日本のゲーム業界との接点は薄く、私に相談されたこともあって、「じゃあ僕が提案するよ」という話になりました。

――角川ゲームス設立当初から海外には打って出るという方針だったんですね

安田氏: そうですね。ただ、ワーナーさんが乗ってくればということで。彼らもよく口にするんですが、グリーンライトコミッティという経営幹部によるゲームプロジェクト立ち上げの可否を判断する意志決定会議がありましてね。日本はもちろん世界中の様々なパブリッシャーや開発スタジオから提案があるらしいのですが、基本的にはほとんど断わっていると聞いていますから、狭き門であることは間違いないですね。

――では「LOLLIPOP CHAINSAW」もその会議にかかったわけですよね。1発で通りましたか?

安田氏: 1発で通りましたね。これはもう須田さんの強さなんですけれども。プレゼンテーションをしたのは僕と須田さんなんですが……なんて言えばいいのかな、“掴む”っていうんですかね。「可能性があるタイトルである」と感じてもらうために、経営陣の心を短時間で掴むのは、須田さんはものすごく力があって。しかも、タイトルがあまり深刻でもなくバカ笑いするようなタイトルでしたからね。まず、緊張感漂う経営陣の中で、コンセプト映像をお見せしたのですが、Martin Tremblay社長が大笑いされて、「これはクレイジーだ。凄い」と反応され、その場にいらっしゃった経営陣全員も馬鹿笑いとなりました。そして、プレゼンを終えたあとは、拍手喝采でしたから(笑)。


【LOLLIPOP CHAINSAW】
これまでのゾンビゲームにはない、キラキラピカピカ、星やハートが飛び交い虹が架かるという、まさにハッピー・ゾンビエンターテインメントと言うジャンルがぴったりなアクションゲームに仕上がった

――プロジェクトのスタート当初から順風満帆だったというわけですね

安田氏: そうだったんですが、実は条件を合意するまでにかなりの時間がかかりました。当たり前の話ですが、ワーナーさんもできる限りリスクをとりたくないので。しかし、ワーナーさんに本気になってもらわなければ新規IPが成功することは難しいことを認識していましたので、粘り強く折り合う条件を交渉しました。その結果、彼らに重要性の高いタイトルとして、本気で取り組んでいただけました。


安田氏は常に言葉を選びながら、わかりやすく質問に答えていった

――海外に比べて日本国内で浸透させるのは難しかったと思うのですが、比較的マスな方向で受け入れられているというのはどのように分析していますか? また広告宣伝にあたって、どのような工夫をされましたか?

安田氏: 今回の須田さんと一緒に掲げた目標は2つあります。まず、須田さんのゲームを、どうやって幅広いアクションゲームユーザーさんに遊んでいただけるかというのが1つ目の目標でした。須田さんのゲームについては、私なりにプレイしてよく理解しているので、何度も話し合ったんですけれども、ゲームのコアメカニクスといいますか、アクションゲームとしてのクオリティを上げることが目標となりました。これは国内での実績数字を見ますと1歩前進できたかなと感じています。

 2つ目の目標は、ゲームから新しいヒロインのキャラクターを生み出すというテーマだったのですが、これについてはしっかりと手応えを感じていますので、うまくいったんじゃないかなと思います。

 これらを実現するために、どのように取り組んだのかですが、海外はワーナーのMartin Tremblay社長自ら「2012年の戦略タイトルとして取り組む」と言っていただいたので信頼し、お任せしました。一方、国内ですが、今回の「LOLLIPOP CHAINSAW」について言えば、様々な話題を提供してゲームタイトルに対する注目度を高め、そこからゲームユーザーにこのゲームを知ってもらおうというアプローチをいたしました。

 そのためにまず行なったのが、魅力ある商品コンセプトを生み出すということです。日本のユーザーの情報感度が高いということは理解しておりますので、海外版の仕様はすべて日本版に取り込むため、CEROのレーティングでいえばZ版(18歳以上対象)とD版(17歳以上推奨)のゲーム内容を同梱したPREMIUM EDITIONというパッケージを発売させていただいたというのが1つです。

 もう1つ、新しいヒロインを生み出したかったので、主人公のジュリエットの声優さんというのはとても重要な役割を果たすだろうと思っていました。人気と実力が抜群にあって、しかもできればちょっと違ったタイプの声優さんを2人揃えようと。そこも話題作りに使えるんじゃないかなということで、ダブルヒロイン声優という新しい手法を取り入れました。あとユニークな遊び方をしていただこうということで、最大で25着ものコスチュームプレイを盛り込むというところも、魅力ある商品コンセプトを生み出そうとして最初に固めたところですね。

 次に行なったのが宣伝・プロモーション活動ですが、多様なバリエーションのあるPV(プロモーションビデオ)を公開して、日本とアメリカから隙間なく交互に花火を打ち上げようとしたわけですが、その結果、角川ゲームスとワーナーさんとのコンビネーションによって、PVがほぼ毎週1回更新されているという状況を約3カ月間作ることができたということも、大きな話題作りになったんじゃないかなと思います。

 あとワーナーさんから始められたことですけれども、現実の世界に主人公のジュリエットを生み出そうということで、ジュリエットのイメージガールをさまざまなイベントに露出させたということですね。宣伝のシンボルを生み出して、それを拡散させていくという戦略をとりました。実際はユーザーのみなさんに評価していただいたほうがいいんじゃないかなとは思いますが、無名のオリジナルタイトルにしては、ゲームユーザーの方々に話題にしていただいて、多くのアクションゲームユーザーの方に関心を持っていただけたのではないかなと思っております。

 それができたところで、最終局面では体験会を開催して触っていただき、ゲームのおもしろさや魅力を伝えていく取り組みに注力しました。

――「LOLLIPOP CHAINSAW」ではグラスホッパーさんと新規IPを開拓したわけですが、今回のノウハウを活かして、今後ほかの開発会社とも組んでいきたいと考えていますか?

安田氏: グラスホッパーさんとは、共同開発第2弾となる「KILLER is DEAD」というゲームの開発が佳境に入っています。それ以外にも、たくさんの開発スタジオさんからご提案をいただいておりますが、多分に我々のリソース不足という問題がありまして、1本1本一生懸命手作りでプロデュースするがゆえに、どうしても同時に多数のタイトルを併走させることは難しいというのが現状です。その点については、我々のリソース拡大が先決です。とはいえ、いろいろな将来の可能性についてはもちろん探っていきたいですね。

 実際のところ、開発スタイルとしては、共同開発というプロジェクトもあれば、我々自身の開発ラインによるオリジナルタイトルもあります。また、将来的には、グループ会社のIPを活用したゲームを作っていくといったことも視野に入れていますので、360度見据えて走りながら考えていこうかなと思っています。


【LOLLIPOP CHAINSAW】
日本と海外で同じバージョンで出すという挑戦は、苦労の連続であったと共に、同社にとって大きな財産となったようだ

――海外のメーカーと組まれたわけですが、海外のメーカーならではの苦労や印象に残ったことなどはありますか?

安田氏: 「LOLLIPOP CHAINSAW」のシナリオ監修にジェームズ・ガンさん(映画「スーパー!」の監督・脚本、「スリザー」の監督・脚本、「ドーン・オブ・ザ・デッド」の脚本など)を起用させていただいたんですけれども、その時にワーナーさんから言われたのが「日本のゲームは、総じてシナリオが海外の人にわかりにくいということがあるので、ぜひわかりやすく伝えるためにジェームズ・ガンというハリウッドの映画監督をシナリオのリライトに使わせてほしい」という話がありまして、これが深く印象に残っています。

 また、言葉だけではなく、国境や文化を越えた“感性の一致”を実現させる演出を、徹底的に追求することができたのは、ワーナーさんがパートナーであったからだと思います。笑いやギャグのツボを押さえたり、エロティックな表現をするにしてもどこまで表現できるのか、あるいはすべきかということは、私自身初めての経験でしたので。そこのところの判断は、ワーナーさんがいなければ間違いなくできませんでしたね。ここまで踏み込んでも何の問題もないというのは我々にとって驚きでしたし、彼らがそこまで言ってくれたので、ある一定の水準以上のはじけっぷりをゲームに植え込むことができたなと思いますね。

 この前、E3に行ったときに、ワーナーの「LOLLIPOP CHAINSAW」チームの皆さんから、「こんなに楽しくておもしろい仕事をやったのは久々で、ほんとにこういう機会を与えていただいてありがとう」ということと、「自分たちがなぜゲームビジネスに関わるのか、まさにその原点を自分たちに思い出させてくれた」と言ってくれたんですね。嬉しくて感動して涙が出そうになったんですけど、これはローカライズの段階からではなく、企画の段階から一緒に作っていったから、彼らにとっても自分たちのゲームだと思い入れを持ってもらえるようになったのだと思います。通常ですと、海外のパブリッシャーと一緒にそこまで踏み込んで制作するケースはありませんから、今回の「LOLLIPOP CHAINSAW」は特殊なケースなんじゃないかなとも思いました。


「LOLLIPOP CHAINSAW」は発表から順調に情報出しが行なわれていたが、一時期あまり情報が出てこないことがあった。実はその裏ではチアリーディングアクションの実装のため、開発のやり直しが行なわれていたのだという

――海外に打って出るためにはそこまで本気で膝つき合わせてやらないとという教訓でもあると

安田氏: そうですね。膝つき合わせてやることが、成功に対してより可能性を高めることは間違いないんじゃないかなと私自身は感じました。

 今、振り返ってみますと、角川ゲームスもグラスホッパーも、ワーナーさんから学ばせていただいたことは大きかったです。特に初期の段階からユーザーテストというのを繰り返しやっていただいて、フィードバックをいただいたんですけど、「ここのところが良くないからとにかく直せ」という曖昧なアドバイスではなく、「ここについてはこういうふうなアプローチの仕方がある」といった具体的なアドバイスをしていただいたので、とても助かったということがあります。

 一方で、当然ですが妥協はさせてくれませんので、僕も須田さんも真剣勝負でしたね。私自身も、約半年間、現場のミーティングに入って一緒に仕事をさせていただいたんですけど、ジュリエットのチアリーディングアクションの実装で迷走してしまって、とても危機的な状況になりました。普通ならば、もう納期も限られているので、その範囲内でできることをしようという方向に向かってしまいかねないと思うのですが、そういう安易な発想をワーナーさんがすべて打ち崩してくれましたので、腹をくくって一から作り直そうということで、そこまでに実装していた仕様をすべて捨てました。これは我々パブリッシャーにとってすごくつらいことですけど、同時に開発スタジオにとってもとても影響のあることでした。でも僕の判断を須田さんは気持ちよく受け入れてくれたので、こういうことが実現できました。

 言葉がうまく思い浮かびませんが、ワーナーさんは“先生”ですね。ゲームを創るということについていえば、我々にとって深く学ばせていただける機会だったのではないかなと思います。



■ ダンジョンRPGの大ファンだったことがきっかけで出会ったエクスペリエンス

個人的に最近おもしろかったのは「The Elder Scrolls V: Skyrim」や「Demon's Souls」だったという安田氏

――昨年、株式会社エクスペリエンスと家庭用ゲームソフト事業においての協業を発表されましたが、その出会いのきっかけは?

安田氏: 昨年、パブリッシングについてご相談があったのがお会いさせていただくきっかけだったんですけど、私自身がダンジョンRPGの大ファンで、実はお会いする前からエクスペリエンスさんのゲームは触ったことがありまして、荒削りなんですけどもレベルアップ要素やキャラクタの成長といったバランス調整が非常に優れた開発スタジオだなと思っていました。

――エクスペリエンスに限りませんが、角川ゲームスがパブリッシャーとして、デベロッパーに求めていること、重要視していることは?

安田氏: 個人的な見解になりますが、成長市場に身を置くとか、優れた枠組みを作るとか、いわゆるビジネススクールの教科書みたいなアプローチよりは、当初掲げた目標というものを最後まで諦めず、貫き通すということのほうが、特にエンターテインメントを生み出すという仕事においては、結果を左右するとても大きな要因であると、私が肌で感じております。ですから、苦しいときに誰と一緒に苦しみを共有するか、誰と一緒に喜びを共有するかということは、とても大切なことと感じています。つらいときにこそ、信頼・尊敬しあえるパートナーでなければ、いい仕事はできないというのが私の持論ですね。

 もう1つは、プロデューサーの仕事は何かと言うと、物を創ることではなくて、付加価値を生み出すことですから、我々と組むことによって新しい付加価値を生み出すことができるかどうか。それぞれの開発スタジオさんが持っている伸びしろを我々が引き出すことができるかどうか。そういうところの見極めをとても重要視しています。


株式会社エクスペリエンス代表取締役社長の千頭元(ちかみ はじめ)氏。安田氏は、ダンジョンRPGの制作に対して、同社は強い実力を持っていると評価しているようだ

――エクスペリエンスのどこにその魅力を感じられましたか?

安田氏: 10年以上もダンジョンRPGを作ってこられているという、彼らの開発に対する豊富な経験と、私の記憶が間違っていなければ、従来型(タイルマップ、ターン性、パーティー制)のダンジョンRPGに、キャラクタに萌え的な要素を入れてキャラクタメイクできるといった新しい風を吹き込んだのが、彼らの前身である開発チームが2005年に制作した「ウィザードリィ エクス」だったんじゃないかなと。この流れの中で、ダンジョンRPGの分野にさまざまなアプローチが行なわれ、「世界樹の迷宮」などのように大ヒットするゲームが出てきたのではないかと記憶しています。そういうところが彼らの魅力であり、今後も彼らはそのような取り組みを我々と一緒にやってくれるんじゃないかなと期待しています。

――協業することのメリットや強みは?

安田氏: 結果がでなければいつまでもパートナーシップを続けていくことは難しいという緊張感が、前向きに真摯にゲームに取り組むことの原動力になるんじゃないかなというのが1つです。それから、戦略的に提携している家庭用ゲームのタイトル以外には基本的にはフリーハンドですから、開発スタジオにとっても自由度が高いというメリットがあるんじゃないかなと思います。

――そこでは特にジャンルはこだわらないと

安田氏: はい。ジャンルにこだわらないというよりは、我々には得意ジャンルが少ないというのがありまして(笑)。


【円卓の生徒 The Eternal Legend】
PSP用ファンタジー・ダンジョンRPG「円卓の生徒 The Eternal Legend」。2012年10月発売予定。「(各新作を)プラットフォームを代表するダンジョンRPGに育てていければと思っている」と鼻息も荒い

――角川ゲームスとしての強みと、足りない部分は?

安田氏: 角川ゲームスはパブリッシャーであると同時に、プロデュース事業を中核においてますので、付加価値を生み出すということについて、貪欲であることですね。プロデュース事業を展開する以上、我々も結果に対して責任を負う必要がありますので、まず我々がそれなりのインテリジェンスを持ち、マーケットを見たときに可能性がしっかりあって、我々がこういうことを提供すれば、より良いものになり、良い結果を生み出すのではないかという期待値を見極め、それを実現することに貪欲であり続けたいと思います。

 それからもう1つ、我々の最大の強みは、角川ゲームスが右肩上がりの時代ではなく、厳しい事業環境下で生まれたゲーム会社であることですね。まず成功体験というものを持っていませんから、フレッシュな発想で品質を上げていくとか、ゲームの魅力を付け加えていくということに対して、ひたすら真剣に真面目に取り組んでいく気概があります。また、挑戦者であるがゆえに、もともとオリジナルタイトルを作るという高いリスクを背負っていますから、挑戦者ならではの創意工夫について、他の方々よりも何倍も努力しないと成功しないという意識を持っています。このような、我々の挑戦者としての持ち味こそが、角川ゲームスの最大の強みなんじゃないかなと思います。

 一方で弱みというと、まだ新設会社ではあるんですけど、「塞路を作り、壁を立て、繋がらない」という言葉に象徴されるように、部門間の積極的な連携がまだまだ足りていないことが弱点ですかね。

 ただし、ヒット商品が生まれると、それに合わせて人の働く意識が変わっていきますし、仕事の仕方も変わってくると思いますので、今回の「LOLLIPOP CHAINSAW」の経験が角川ゲームスをより強くしていくような礎になればいいかなと思っています。


【剣の街の異邦人】
現在絶賛開発中のXbox 360用ダンジョンRPG「剣の街の異邦人」。どのような新規要素が盛り込まれていくのかが楽しみなところだ

――パブリッシャーとして外部の開発スタジオと協業して新作タイトルをリリースされていますが、社内に独自の開発ラインを持つ予定などはありますか?

安田氏: 各方面の方々から一体どういうゲーム会社を目指していくのかということを、よく尋ねられるのですが、これについては、北米や欧州のパブリッシャーや開発スタジオの事例をケーススタディしながら、これまでの形や姿とは一味違うゲーム会社を模索していきたいと思っております。

 それから開発ラインについてですが、実はすでに作っていまして、角川ゲームスが企画したオリジナルタイトルの開発に入っております。そう遅くないうちに発表できると思いますので、ご期待いだければと思います。

――これまでとは違うゲーム会社というのはどんなイメージでしょうか?

安田氏: 基本的には、完全内製型の開発スタジオではなく、外部の開発スタジオとの開発連携を円滑に行なう開発環境を持ち、特定の分野については独自のエンジンやライブラリを持つゲーム会社でしょうか。ミドルウェアとかエンジンというものが、汎用性を持つか、独自性を持つかということに着目しているわけではありません。汎用性の高いエンジンは積極的に活用していきます。しかも、いわゆる完全な内製の開発スタジオとは違うスタイルを模索したいと思っています。

――角川ゲームスの今後のアピールポイントをお願いします

安田氏: 「LOLLIPOP CHAINSAW」を発売した後、さまざまな反響をいただきました。もちろんほめていただくこともありましたけど、私が嬉しかったのは、「ここがダメだ」とか「ここを直せ」とか、「次回作を作るならこうしろ」っていう要望を言っていただいたゲームユーザーがたくさんいらっしゃったことです。

 ユーザーの皆さんの意見は、しっかり受け止めたいと思います。また、第三者に客観的に分析していただくことをお願いしていまして、その報告をお聞きし、「LOLLIPOP CHAINSAW」プロジェクトの総括をまずはしっかりとしたいですね。

 その一方で、「LOLLIPOP CHAINSAW」でユーザーの皆さんからいただいた課題は、現在制作中の「KILLER is DEAD」にできる限り反映していくことを、須田さんと話し合っています。

 さらには、先般発表しましたDRPG PROGRESSをはじめ、すでに発表させていただいているプロジェクトを着実に進めながら、これからもゲーム事業に積極的に取り組んでまいりますので、よろしくお願いいたします。


(2012年 7月 2日)

[Reported by 滝沢修]