【第9幕】
Reported by:ジョン・カミナリ
logo design:フランチェスコ・アッカッターティス

 電遊。辞書に載っていない造語である。電気的な遊び。いわゆる、テレビゲーム。道。その道を、自分の価値観だけを信じて最後まで歩むのが、侍精神である。電遊道は、妥協を許さないサムライゲーマーが歩むべき道。他人に影響されることなく、自分のゲーマーとしての信念を貫き通せばいい。たとえ、ゲームが別の道に進んでも、自分の好きな道をずっと信じ続けるのみ。たとえ、“これこそがゲームの未来形だ!”と言われても、自分の好きなゲームライフを思う存分楽しむのみ。

 この連載記事では、毎月1回、僕のゲーマーとしての物語、そしてゲーマーとしての哲学や信念を独特なスタイルで紹介していきたいと思う。日本のゲームに大きく影響を受けた僕のゲーマー人生を、イタリア人としての個性を生かして面白く語りたいと思う。あるときは、話題沸騰中のニュースについて掲載ギリギリのところまで正直な感想を書いたり、またあるときは、今でも心に大切にしまっている過去の作品を振り返ってみたいと思う。

 1番注目して欲しいのは、「イタヲタのレトロなゲームライフ」というコーナー。僕のオタクとしての青春を文章と漫画を交えて懐かしく振り返りたいと思う。連載の途中で新しいコーナーも生まれるのかもしれない。回を追う毎に中身が変わったり増えたりするのかもしれない。とにかく、サプライズたっぷりの連載を目指しているので、末永くこのページの中で付き合って欲しい!

ジョン・カミナリ(芸名)
国籍:イタリア 年齢:35歳
職業:俳優、声優、タレント、テレビゲーム評論家
趣味:テレビゲーム、映画鑑賞、読書(山田悠介)、カラオケ
主な出演作品:銀幕版スシ王子!(ペぺロンチーノ役、デビュー作)、大好き!五つ子(アンソニー・ジャクソン役)、侍戦隊シンケンジャー(リチャード・ブラウン役)、ピラメキーノ(テレビ東京、月曜~金曜 18時30分~19時放送中)
ブログ:ジョン・カミナリの、秘密の撮影日記
 イタリアで6年間テレビゲーム雑誌の編集部員として働いたあと、新しい刺激を求めて2005年に大好きな日本へ。子供の頃から夢見ていた役者の仕事を本格的に始める。堤幸彦監督の「銀幕版スシ王子!」で個性的なマフィアのボス、ぺぺロンチーノを熱演。現在もTVドラマやTVゲームなどで、俳優・声優として活躍中。日本語を勉強し始めたのは23歳のとき。理由は「ファイナルファンタジーVII」や「ゼノギアス」などのRPGの文章を理解するため。好きなジャンルはRPGと音楽ゲーム。「リモココロン」のような個性的なゲームも大歓迎。お気に入りのゲームは「ゲームセンターCX」と「ワンダと巨像」。芸名はイタリア人の友達に、本人が雷のように予想不可能なタイミングで現われるからという理由で付けられた。将来の夢は、「侍戦隊シンケンジャー」に出演した時から大好きになった戦隊モノにまた出演すること



【もくじ】
一刀両断~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~
傑作の如く~期待している新作TOP5~
過去の宝物~こよなく愛した過去の思い出の作品をピックアップ!~
イタヲタのレトロなゲームライフ~ハプニング満載のオタク人生~



■ 一刀両断 ~話題のゲームニュースについて鋭くコメントしちゃうぞ!~

 話題のニュースや注目のテーマをピックアップして僕の率直なコメントを載せたいと思う。また、現在のゲームが抱えている問題を解決するアイデアや提案も、このコーナーを通じて考えてみたいと思う。ゲーマーの皆が納得できる未来の為に!

其ノ一:~家庭用ゲーム機を超越する史上初の携帯ゲーム機が誕生!?~

 「PlayStation Meeting 2011」で初披露されたPSPの後継機、コードネーム「Next Generation Portable(NGP)」。正直なところ、ここまで進化するとは夢にも思わなかった。グラフィックスの進化だけでないことは一目瞭然だ。ユーザーからの要望に徹底的に応え、PSPの全ての課題が克服されたと言っても過言ではない。

 まず、据え置きのプレイステーションシステムの操作性を再現すると言われている2つのアナログスティック。画面の左右に備え付けることにより、FPSやアクションゲームでの操作性が圧倒的に向上することは間違いない。左のスティックで主人公を操作し、右のスティックでカメラを自由自在に動かす。家庭用ゲーム機と同じ感覚で電車の中でもゲームを楽しめるようになるわけだ。

 ただ個人的には、2つのアナログスティックよりも本体背面のマルチタッチパッドの存在に衝撃を受けた。マルチタッチパッドは、指などで触れることにより直感的に操作することができる。「Little Deviants(仮称)」というゲームでは、バックタッチパッドを指でつつくことでフィールドを盛り上げ、キャラクター「Deviants」をボールのように転がしていく。

 PSPの4倍の解像度を誇る5インチの有機ELディスプレイもマルチタッチに対応しているが、バックタッチパッドを追加することにより、画面を部分的に手で隠すことなく、裏からゲームフィールドとインタラクトできるようになった。革新的とも言えるバックタッチパッドの搭載により、SCEは他の携帯ゲーム機に大きな差を付けたと思う。

 開発者の工夫次第では、アナログスティックとバックタッチパッドの併用により、これまでにはあり得なかった快適な操作システムが実現することが容易に想像できる。さらにジャイロセンサー、加速度センサー、電子コンパスなどの内蔵により、これまで方向キー、あるいはL/Rボタンを必要としていた動作が、本体を傾けたり、本体を上下左右に動かすことで手軽に行えるようになる。

 弊誌で公開中の開発者のデモプレイ映像で僕が最も驚いたのは「みんなのGOLF NEXT(仮称)」のデモだった。もちろん、画面のタッチパッドを使った快適なクラブ選択も大きな進化の1つだし、キャラクターを指でつつくことでコミュニケーションを図れるという点も非常に魅力的だった。

 「みんなのGOLF NEXT(仮称)」で何よりも凄かったのは、ジャイロセンサーを活用し本体を上下左右に動かすことで、フィールドをぐるっと眺めることができるところだ。本体を上空に向ければ雲が見られるし、下のほうに向けるとスイングする前のボールの位置を確認できる。

2つのアナログスティックの搭載で、ゲームに合わせた操作方法の選択肢が増えそうだ斬新な操作方法を披露した「Little Deviants(仮称)」のデモは、ユーザーの想像を膨らませたのではないだろうか「みんなのGOLF NEXT(仮称)」を公園の中で遊べば、自分の周りにゴルフ場が広がっているような感覚を味わえるだろう。これも、ジャイロセンサーといった新機能のお陰だ

 だが1つだけ、操作について気になることがある。右スティックやフロント/バックタッチパッドなど操作システムが増えたことにより、手が余計に忙しくなるのではないかと心配している。特にそれを感じたのは「Uncharted(仮称)」のデモプレイを見た時だった。

 崖を登る時にはバックタッチパッドを使い、最後に主人公の背中を触ると彼が起き上がる。もちろん製品版では、アナログスティックやボタンでも同じ動作ができると思うが、大事なのは従来の操作システムと新機能を使った“新感覚操作システム”を提供することだと思う。頻繁な手の動きを面倒くさいと思うユーザーもいるので、伝統的な操作方法も選択できるようにするべきだと思う。

 ジャイロセンサーや加速度センサーを使った操作に関しても同じことが言える。例えば、通勤中の車内で遊ぶとなると、本体を左右に動かしたりすると、隣の人に迷惑がかかってしまうし、日本人の性格としてプレーヤー自身が恥ずかしくてその動きを控えたいと思うだろう。家で遊ぶときは気兼ねなく“新感覚操作”を楽しめるが、外出先では周囲の目を引かずに安心してプレイできるクラシックな操作方法が好まれるだろう。

「言い訳のできないハードができた」とコメントを残した名越氏
PS3からの移植がスムーズにできるという点も注目されている「NGP」。小島監督が披露した「MGS4」のリアルタイムデモが、欧米でも話題になっている

 操作性だけでなく、通信機能、グラフィックスでもPSPをはるかに凌駕する性能を持つ「NGP」。「龍が如く」シリーズの総合監督を務める名越稔洋氏は「言い訳のできないハードができた」とコメントした。僕も理想のポータブルゲーム機になるだろうと感じた。これほどの高性能、柔軟性、可能性を合わせ持った携帯ゲーム機は、前例がないと断言できる。本当の意味でメーカーの開発力が試される携帯ゲーム機になるだろう。

 おそらく「NGP」は、ゲーム史上初の家庭用ゲーム機と競合する携帯ゲーム機になるだろう。携帯ゲーム機としてはクオリティの高いゲームを電車に座って遊べると思うだけで、ワクワクしてしまう。少し大げさに言うと、「据え置き機ゲーム機はもう要らないんじゃないの?」と思わせるほどのすごいハードだと思う。

 欧米の記者やユーザーは、「NGP」にどんな印象を持ったのか反応を調べてみた。ジャーナリストはグラフィックスや解像度といった性能の高さはもちろんのこと、画面を手で隠さずにタッチパネルの良さを体験できるバックタッチパッドの搭載も絶賛している。PS3と全く同じ感覚でゲームの操作を楽しめるようになる2つのアナログスティックも大きな進化として、欧米人も考えている。

 一方では、ユーザーの間で不満点も挙げられていた。UMDドライブが廃止されPSPのUMDを使えないのが残念という声が相次いでいる。

 そして、1番の疑問点は価格だ。これだけ高性能なハードは、400ドルはするだろうと多くのプレーヤーが懸念している。それに対して、600ドルでも絶対に買うと宣言した熱烈なPSPファンもいるようだ。

 また、バッテリーの寿命についても心配している。少なくとも5時間は続けてプレイしたいというのが主な希望だ。それから、ゲームのラインナップについてもPS3からの移植版をなるべく抑え、「NGP」の特徴を活かしたオリジナルソフトの開発に集中して欲しいなど、幾つかの要望が述べられている。

 ソフトと言えば、小島監督の興味深い発言が欧米人の間で話題を呼んでいる。PS3でゲームを始め「NGP」を持って外出する。移動中や外出先で同じゲームを「NGP」でプレイする。小島監督の考えた“国境なきゲーム未来像”が本当に実現するかもしれないということに対して、欧米人は感激したようだ。

 僕も「NGP」の価格については少し心配している。これだけの“モンスターマシン”だと、価格も“モンスターレベル”になる可能性が高い。価格を予想するのは難しいが、個人的には3万円程度だと本当にありがたい。が、4万円前後の価格になってしまうような気がする。

 とは言え、これだけ素晴らしい性能と革新的な機能を持った携帯ゲーム機の為なら、お金を惜しんではダメ!という見方もできる。いずれにしても、これからの展開や新情報にも注目していきたい。

UMDの廃止については賛否両論だが、新型小型カードの導入でロード時間が短縮されたり、バッテリーの寿命が延びるなどの恩恵を受けられると思う有機ELディスプレイにも、マルチタッチに対応したタッチパッドが搭載されている通信面では、3Gの導入でレベルの高いレスポンスとリアルタイム性を実現。新たなユーザーインターフェイス「LiveArea UI」も注目を浴びている

□プレイステーションのホームページ
http://www.jp.playstation.com/
□関連情報
【2011年3月4日】西川善司の3Dゲームファンのためのグラフィックス講座【GDC特別編】
今さら聞けないNGPスペック講座
そのスペックは携帯ゲーム機としての新しい遊びを訴求するためのもの
http://game.watch.impress.co.jp/docs/series/3dcg/20110304_430907.html
【2011年1月28日】SCEI、「PlayStation Meeting 2011」開催
PSPの後継機「NGP」の機能を実際にデモンストレーション
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110128_423155.html



其ノ二:~3DSの発売に長蛇の行列!購入者達の要望とは?~

新作ソフトや新ゲーム機を買う為に我慢強く行列に並んで何時間も待てる日本人。その平和なカルチャーは、イタリア人の性格では永遠に訪れないだろう

 2月26日に任天堂の新携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」(以下3DS)がついに発売となった。グラスレスの立体視、いわゆる“裸眼立体視”で話題を呼んでいる3DS。もちろん僕も、取材の為だけでなく購入する為にも、発売日に東京都内の量販店へと足を運んだ。選んだ店はヨドバシカメラマルチメディアAkibaだ。

 予約分だけが販売されるという噂が流れていたが、ソフマップなどとは違い、ヨドバシカメラマルチメディアAkibaでは当日分の早朝販売も実施された。既に弊誌で報道された通り、朝早くから長い行列ができた。正真正銘の“長蛇の列”。日本に来て5年も経つが、もう慣れたと思っても実際に“長蛇の列”を目の前にすると、いつも驚きを隠せない自分がいる。

 何故かというと、母国のイタリアでは有名なゲームソフト、または新ゲーム機が発売される時でも店頭に何時間も並ぶことはないからだ。どちらかというと、イタリアでは前金を払って予約するというシステムが主流になっている。もちろん、最初の購入者になる為に前日の夜から並ぶという発想もあり得ない。

 8時20分になった瞬間、ヨドバシカメラマルチメディアAkibaの扉が開いた。それと同時に店のスタッフはお客さんを6階のゲーム売り場へと丁寧に誘導し始めた。そして、10分も経たないうちに、3DS目当ての人々を1階にあるレジへと案内した。僕はペンとノートを手に出口の近くに移動し、3DSを購入したばかりのお客さんを“待ち伏せ”することにした。理由は、短いインタビューを行なう為だった。用意していたのは、以下の3つの簡単な質問。

Q1. 3DSのお気に入りの特長は何ですか?
Q2. 3DSの不安に思うところは何ですか?
Q3. 3DSの為に作って欲しいゲームとは?

 ちなみにほとんどの購入者は、20代~30代の男性だった。女性は少なかったし、子供連れの親が多いと思えば、そのほとんどは3DSではなく、同日に発売された「仮面ライダー」の新玩具を購入する為に訪れていたことがわかった。

特に人気を集めたゲームソフトは、「レイトン教授 奇跡の仮面」と「nintendogs + cats」だった。本体に関しては、「アクアブルー」モデルを選ぶ人が多かったと思われる

 お気に入りの特長に関しては、上画面がワイドになったことと、裸眼で立体的に見えるという答えがもっとも多かった。これについては、裸眼立体視がウリだけに当然の回答だと言える。2番目に多かったのは、通信機能の強化。例えば、常備された「すれちがい通信」に期待している(16歳の男子高校生)や、「すれちがい通信」や3Dカメラを活用した新しいサービスやゲームが誕生して欲しい(20歳の男子大学生)といった意見が目立った。

 不安に思うところに関しては、僕と一致する回答ばかりだった。まずは、「3D酔い」(23歳の女性フリーター)や「目が疲れる」(26歳の男性会社員)など。3DS本体の機能として3Dボリュームをオフにすることも可能だが、3Dの豪華さに慣れると元に戻りたくなくなる気持ちになるのは当然だ。子供の目の成長に悪い影響を与えるのではないかと懸念している大学生もいた。次に、「携帯ゲーム機にしては少し高め」と「同時発売のゲームソフトのラインナップが満足できない」の2つだった。

 作って欲しいゲームや続編は?という3つ目の質問に対しては、裸眼立体視を活かしたスポーツゲーム、リメイクではなく新しい「ゼルダ」、「ドラゴンクエスト」などの有名なRPGシリーズの続編、「ポケモン」の新作(9歳の小学生)、「競馬ゲーム」(40代の男性会社員)、「トモダチコレクション」の続編(女子大学生)など様々な要望を聞くことができた。

 このほか、シリーズやジャンルを問わずとにかく大手メーカーのコラボレーションで面白いソフトを作って欲しいという、非常に興味深い回答も得られた。また、23歳の男性会社員は「スマッシュブラザーズ」の続編で早く遊びたいと、目を輝かせながら言っていた。

 インタビューした購入者の意見に、僕はほぼ賛同している。特に、ソフトのラインナップについては僕も疑問に思っている。サードパーティーのゲームソフトの販売本数を伸ばしたいという戦略は基本的に正しいと思うが、万人受けする任天堂の看板タイトル(「スーパーマリオ」か「ゼルダ」シリーズ)で遊びたかったという想いもある。

 そんな筆者には朗報といえる出来事として、3月17日には「スティールダイバー」という任天堂からの“援軍”が発売される。だから、心配することはないと思う。焦らずに3DSの新しい機能に慣れながら、サプライズの多い未来を待とうではないか!

今回の3DS発売日の取材はとても勉強になったと思う。報道者としても購入者としてもマナーを守ることの大切さを再確認できた

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□ニンテンドー3DSのページ
http://www.nintendo.co.jp/3ds/
□関連情報
ニンテンドー3DS記事リンク集
http://game.watch.impress.co.jp/backno/3ds/



■ 傑作の如く ~期待している新作TOP5~

 僕が期待している発売前後の新作TOP5。さまざまな情報をもとに、各ゲームのシステムやグラフィックスといった要素の中で僕が魅力的に感じたところを紹介していく。必ずしもメジャーなタイトルではなくて、逆に注目して欲しいマイナーな作品をピックアップすることもある。

(c) 2011 SQUARE ENIX CO.,LTD. All Rights Reserved.
ILLUSTRATION / (c)2010 YOSHITAKA AMANO

1位:ファイナルファンタジーIV コンプリートコレクション
   プラットフォーム:PSP
   発売元:スクウェア・エニックス
   発売日:3月24日
   価格:5,990円(UMD版)
      4,980円(ダウンロード版)
   CEROレーティング:A

 アクティブタイムバトルで戦闘の常識を変えた「ファイナルファンタジーIV」。10数年後のストーリーを語る「アフターイヤーズ」と同時収録でPSPで発売されることになった。僕が何よりも注目したのは、新たに描きおこされた2Dグラフィックスと、2つの作品を繋ぐ追加シナリオの存在。「アフターイヤーズ」の新規オープニングCGムービーも必見だ!

□スクウェア・エニックスのホームページ
http://www.square-enix.com/jp/
□関連情報
【2011年1月21日】スクエニ、「ファイナルファンタジーIV コンプリートコレクション アルティメット パック」
同梱されるサウンドトラックの追加楽曲12曲の曲目リストと同梱物のイメージ画像を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110121_421891.html

(C)2011 Nintendo
※ニンテンドー3DSの3D映像は本体でしかご覧いただけません。
画面写真は2D表示のものです。

2位:スティールダイバー
   プラットフォーム:3DS
   ジャンル:アクション
   発売元:任天堂
   発売日:3月17日
   価格:4,800円
   CEROレーティング:A

 このゲームには、人の目を引くようなキュートなキャラクターは登場しない。凝縮されているのは、3DSの個性をフルに生かしたゲーム性だけだ。複数のモードで遊べるが、僕の一押しは「潜望鏡モード」だ。本体を左右に動かすと、ゲーム画面の視点もそれにリンクし動いていく。ジャイロセンサーの搭載が可能にした、新感覚の遊びに期待度が高まる!

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□関連情報
【2011年2月25日】任天堂、ニンテンドー3DS「スティールダイバー」
ジャイロ機能を使って敵艦を探すなど3タイプの潜水艦ゲームを楽しめる
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110225_429158.html

(C)Spike Co., Ltd. Developed by ACQUIRE Corp. All Rights Reserved.

3位:侍道4
   プラットフォーム:PS3
   ジャンル:アクション・アドベンチャー
   発売元:スパイク
   発売日:発売中(3月3日)
   価格:7,770円
   CEROレーティング:D

 スパイクの人気シリーズ「侍道」の最新作。今回、勢力の1つとして「外国」が登場するので、異国文化に染まっていく街並みが見所だといえる。システムに関しては、ナンパ文化の盛んなイタリアでも大ヒットしそうな「今夜、お待ちしておりますシステム」が楽しみだ。若い別嬪さんだけでなく、年配の方もナンパできるそうなので、熟女好きも要注目だ!(笑)

□スパイクのホームページ
http://www.spike.co.jp/
□関連情報
【2011年2月25日】スパイク、PS3「侍道4」
道場を復興させることや、釣りについて紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110225_429568.html

(C)SEGA

4位:龍が如く OF THE END
   プラットフォーム:PS3
   ジャンル:アクションアドベンチャー
   発売元:セガ
   発売日:3月17日
   価格:7,980円
   CEROレーティング:D

 ゾンビの登場で話題になっている「龍が如く」シリーズのスピンオフ的な新作。従来の武器はもちろんのこと、今回は戦車や装甲車など、様々な乗り物で戦場を駆け抜けるというのが革新的だ。さらに、初登場の「神室町アンダーグラウンド」も面白そうだ。形の変わる地下ダンジョンを訪れ、相棒と一緒に通常より多くの経験値が獲得できるので便利!

□セガのホームページ
http://sega.jp/
□関連情報
【2011年3月2日】セガ、PS3「龍が如く OF THE END」
無料体験版をPSSにて3月3日より配信開始
ゲームの内容がわかる最新PVを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110302_430497.html

(c)2011 Marvelous Entertainment Inc.

5位:イケニエノヨル
   プラットフォーム:Wii
   ジャンル:呪いのゲーム
   発売元:マーベラスエンターテイメント
   発売日:3月24日
   価格:6,090円
   CEROレーティング:C

 ゲームシステムの面でも満足できるものになるか正直わからないが、画面写真から醸し出される雰囲気は申し分ない。不気味な屋敷をWiiリモコンで快適に探索し、5人のキャラクターのストーリーを体験できる。1人称視点により恐怖度はさらにアップするに違いない。オバケがいつ出るのか、スリル感をたっぷりと味わえるホラーアドベンチャーになりそうだ。

□マーベラスエンターテインメントのホームページ
http://www.mmv.co.jp/
□関連情報
【2011年1月28日】マーベラス、Wii「イケニエノヨル」
謎の少女とイエローの関係とは?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110128_423404.html



■ 過去の宝物 ~こよなく愛した過去の思い出の作品をピックアップ!~

 ゲームは技術的に進化する。グラフィックスが綺麗になる。ポリゴンの数が増える。ゲーム内の景色が実写と見間違えるほどリアルなものになってきている。しかし、時代が変わっても必ずしも進化しないものもある。それはゲームの面白さだ。昔のゲームはグラフィックスはシンプルだが、面白さでは今のゲームに負けていない。いや、それに勝る特別な何かを持っている作品もあると思う。秋葉原のゲームショップや家庭用ゲーム機のオンラインストアで安く購入できる過去の傑作は山ほどある。このコーナーでは、僕が愛した昔のゲームをピックアップしていきたいと思う。具体的なゲーム内容よりも、僕のその作品に対しての気持ちを伝えることができればと願っている。

かまいたちの夜2 ~監獄島のわらべ唄~
プラットフォーム:PS2(PSP)
ジャンル:サウンドノベル
発売元:チュンソフト
発売日:2002年7月18日(PSP版、2006年)
価格:7,140円(PS2 the Best版は3,150円)

 ゲーマーの道に必須だと思うジャンルがある。それはサウンドノベル。1992年にスーパーファミコン用の「弟切草」で生まれた、チュンソフトの新ジャンル。ちなみにサウンドノベルという言葉自体が、チュンソフトの登録商標だ。

 サウンドノベルとは、名前が示す通りサウンドやグラフィックスを盛り込んだ“電気小説”だ。紙の媒体で実現できないようなビジュアル的な演出も見どころの1つ。プレイ画面には、文章のほか、キャラクター達のシルエットや訪れている場所のイラスト/写真などが表示される。

 ゲームでは、物語の途中に表示される複数の選択肢から返答を選ぶことで、プレーヤーがストーリーの展開に様々な影響を与え、作品によっては100以上のエンディングに辿りつくことができる。ホラーテイストの作品が多いジャンルだが、「街」や「428」といった、ヒューマンドラマにも焦点を当てた異例の作品も見られた。

 チュンソフトのサウンドノベルをすべて遊んできた僕だが、特に体中に衝撃を走らせたのは2002年の夏に発売されたプレイステーション 2用の「かまいたちの夜2 監獄島のわらべ唄」だ。サウンドノベルというジャンルがここまで来るとは、まさに衝撃と驚きの連続だった。

 ことの発端は非常に面白い。冬山のペンション「シュプール」の連続殺人事件をテーマにした前作が大ヒットし、ゲームに勝手に出演させられていた同姓同名の人々が、原作者である我孫子武丸から、彼の別荘が建つ謎の島へと招待される。不思議に思った主人公の矢島透だが、ガールフレンド(恋人じゃなくて、女性の友達という意味)の小林真理と一緒に、タイトルの“監獄島”へと向かう。そこで、招待客を待っていたのは、不気味な唄になぞらえた残忍な連続殺人だった……。

プレゼンテーション動画は実写を使用している。その出来映えはゲームの領域を超え、世界の映画祭に出展してもおかしくないほど、芸術性に溢れている
本作は、ビジュアル的にも前作を遥かに超えている。背景は全て豪華なCGで制作されている背景にアニメーション(ループムービー)が加わり、様々な演出で臨場感がさらに増すキャラクターは水色のシルエットで表現されている。髪の毛が風になびいたりするなど、動きにも力が入っている

 ハリウッド発の名ホラーシリーズにも採用された“劇中劇”の工夫。映画の役者達が、映画と同じ事件に巻き込まれるという展開だ。もちろん、それは偶然ではない。なぜその奇妙な事件が起きているのか、プレーヤーは推理力を働かせながら、正しいと思う選択肢を選んでいく。もし、選択が正しければ、真犯人が明らかになるグッドエンディングへと辿りつくことになる。

 最初に遊べるシナリオは推理が試されるスリラー系だが、それをクリアすることによりホラーやサスペンスに焦点を当てた追加シナリオが遊べるようになる。目をつむりたくなるほどの残虐的なシーンが目立つ。さらに、チュンソフトのサウンドノベルのトレードマークとも言える、ちょっとエロチックなサブシナリオも用意されている。

 本作の1番の魅力は、シナリオとサブストーリーの豊富さだ。プレーヤーの選択肢によって、ストーリーは全く予想外の方向へと進むこともある。正しい選択肢がわかっても、その先を確かめる為にわざと間違った選択肢を選ぶのも本作の醍醐味だ。

 キャラクターの役割や性格が変わる展開もあれば、ホラー路線を一気に離れ、理不尽さやギャクに拍車をかけた物語へと発展することもある。プレーヤーはいつもストーリーに働きかけている感覚を味わい、普通の小説ではあり得ない遊びが誕生するわけだ。

本作では、初めてシナリオのマップともいえる「フローチャート」を使用でき、いつでもストーリーの好きな部分へと行き来できる。選択肢直前に移動すれば、新たな展開をすぐ楽しめるゲームを始めておよそ5分。物語の展開を元には戻せなくなるかもしれない選択肢が現われる。選択によっては……理不尽さ満載のバッドエンディングがプレーヤーに衝撃を与える!

キャラクターのセリフには、声をあててはいけないと思っている。声がないからこそ想像力が働き、プレーヤーは主人公になりきれると思う

 チュンソフトのサウンドノベルとしては、「弟切草」をはじめ、「かまいたちの夜」シリーズや「忌火起草(イマビキソウ)」なども発売されているが、個人的には「かまいたちの夜2」がもっとも面白かったと思っている。

 元々サウンドノベルというジャンルは、良い意味で地味なジャンルだ。サウンドやビジュアルは文章を補う程度だったが、その強さが文章そのものを超えてしまうと、文章が必然的に力を失ってしまう。

 なぜかというと、プレーヤー(読者)の目は文章ではなくて、背景の豪華な演出のほうに気を取られてしまうからだ。「かまいたちの夜2」で見られた文章と演出との絶妙なバランスは、昨今の作品では失われつつあると思う。

 非常に残念なことに、傑作であるチュンソフトのサウンドノベルは英語に翻訳されることはなかった。欧米のプレーヤーがこのジャンルの素晴らしさを知らずに、時が過ぎてしまったわけだ。欧米版が実現しなかったことには様々な理由が考えられる。

 まず、文章の量。それを翻訳するには、高い費用が必要になる。もう1つは、欧米人の抱えている、ゲームに対してのイメージに関係している。ゲームとは読むものではない。単純にアクションを楽しみたいという考えが根底にあるからだ。

 一方で、日本でもサウンドノベルと、そのジャンルが生み出した“息子達”が年々減っている。その代わりに、文章量を急激に抑え、動画で語られるビジュアルノベルが増えてきた。小説とゲームの両方が大好きな僕にとっては、サウンドノベルというジャンルが消えることは考えられない。これからも、チュンソフトの伝統が続くことを強く願っている。

【グッジョブ!】【異議あり!】
ストーリーもキャラクター達も秀逸PSP版には暴力と官能描写が削除
シナリオと選択肢が豊富暴力描写が万人に向いていない
文章と演出の一体感が絶妙 
コミカルなエンディングも最高 

(C)2002 CHUNSOFT/我孫子武丸/田中啓文/牧野修

□チュンソフトのホームページ
http://www.chunsoft.jp/
□関連情報
【2011年2月1日】チュンソフト、Android Marketで「かまいたちの夜」配信
モバイルオリジナルを含む全10シナリオが登場
http://game.watch.impress.co.jp/docs/news/20110201_424042.html
【2002年8月2日】PS2ゲームレビュー「かまいたちの夜2 ~監獄島のわらべ唄~」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020802/kama2.htm



■ イタヲタのレトロなゲームライフ ~ハプニング満載のオタク人生~

 このコーナーでは僕のゲーマーとしての人生を懐かしさたっぷりで語っていきたい。毎回、特定の時代をセレクトして、自分の記憶への冒険をしたいと思う。最終的には1つのストーリーになる。僕というオタクのストーリー。僕という和ゲー好きゲーマーのストーリー。文章だけでなく、クライマックスのシーンをもっとダイレクトに伝える為に漫画も使うことにした。ちなみに漫画は、今イタリアで注目の若手漫画家に描いてもらった。とにかく、日本ではありえないシチュエーションについてたっぷり語っていくので、本当に面白いコーナーになると思うぞ!

今回の時代設定:1993年
イベント:スーパーファミコンのRPGフィーバーが始まる!
ハプニング:日本のRPGに特化した、噂の“ゲームショップ”を発見!

 「FINAL FANTASY IV」(以下FFIV)が発売されるまでは、RPGというジャンルの存在を全く知らなかった。いや、正確に言うと、テーブルゲームのRPGは、学校の友達がみんな遊んでいたから知っていたが、まさかゲーム機でもそのような体験ができるようになるとは、思ってもみなかった。

 スーパーファミコン(以下SFC)のゲームで遊ぶ楽しい日々が続いていた。僕のコレクションのほとんどは、アクションやシューティングゲームだった。高校生の最後の年。これで僕も卒業する。そして、大学という新たな敵が現われる。しかし高校を卒業しても、ゲームからはまだ卒業できない。おそらく、これからもずっと僕の人生に深く関わるだろうと思っていた。

 高校の友達もSFCを持っていて、「僕のゲー友を紹介したい」と言うから早速、友達の友達の家に遊びに行くことになった。「彼は僕たちと全然違うゲームで遊んでいるんだよ」という、友達の興味深いセリフを頭の中で何度も巡らせながら、目的地へと向かった。

 「エマちゃ~ん、僕だよ!友達を連れてきたよ。開けて!」
 インターフォンを鳴らした友達が大きな声で言った。

 扉が開けられた。これから僕の友達にもなるだろう。彼の名前は“エマちゃん”らしい。愛称のようだ。エマちゃんと言えば、エマヌエーレという名前しか思い浮かばない。エレベーターに乗っている間、「僕たちと全然違うゲームで遊んでいるんだよ」というセリフの意味について考えた。エマちゃんは、どんなジャンルのゲームで遊んでいるのだろう。ワクワク感は絶頂に達していた。

 エマちゃんの部屋に入った瞬間、まるで夢を見ているかのような感覚に陥った。マリオのポスターもあったが、部屋の壁に貼られていたのは僕が知らなかったゲームのイラストやキャラクターばかりだった。

 「エマちゃんはRPGのスペシャリストだってさ」

 RPG。ロールプレイングゲーム。架空のキャラクターになりきって、空前絶後の冒険を体験する。探索。戦闘。友情。陰謀。様々な要素が絡み合って、見たことのないようなゲームを生み出していた。

 「今、『FFIV』にハマっているんだよ」
 エマちゃんはいきなり頭文字でゲームのタイトルを略して言ってきた。

 エフ、エフ……フォー!? なにそれ?僕のリアクションを見かねたエマちゃんは、まるで賢者であるかのようにゲームのことを詳しく説明してくれた。

 「ファイナルファンタジー」というシリーズの存在を、エマちゃんが初めて教えてくれた。特徴的なバトルシステム、キャラクターを育成できる概念。僕の頭になかった知識ばかりで、とても勉強になった。言うまでもなく、その日からエマちゃんは僕の大切な友達になると同時に、彼のRPGフィーバーが僕にも移ってしまった。

 時は流れる。エマちゃんと一緒に新たなRPGを探す為にローマでの冒険を繰り返していた。噂のショップがオープンしたよという情報が入ったら、その存在を突き止め真偽のほどを確かめた。僕らはRPG中毒者になっていた。英語版だろうが、日本語版だろうが、セリフがわからなくても、新しいRPGで遊べるというイベントが何よりも大切だった。

 ある知り合いから突然、新情報が入った。
 「ローマの郊外に、日本のRPGの専門ショップが存在するらしい……」

 SFC用のRPGだけのゲームショップ。その文章を口にするだけで、何とも言えない幸せを感じていた。店の住所もゲットした。今日、ちょうど土曜日だから学校もないし、冒険に出かける時間もたっぷりある。エマちゃんとバス停の前で待ち合わせして、早速、紙に書かれた住所へと急いだ。

 ローマの寂れた郊外。閉まったシャッターが目立つ商店街。人の数も少ない。大丈夫かなと思った矢先、床屋さんと小さなスーパーの間に、怪しさ満載の店が姿を現わした。

 「エマちゃん、住所によると、あれがそうだけど……」

 床屋さんと小さなスーパーの間の店の看板を確認してみると“モレッティメガネ”。メ、メガネ屋さん?知り合いから聞いた噂はデタラメみたいだ。ローマにあるわけないだろう。SFC用のRPGに特化した店。夢は存在しない。そうだよ。信じた僕たちはバカだったよ。

 「カミちゃん、念の為に、店に入って、聞いてみようか?」とエマちゃんが提案してきた。
 確かめずに家に帰るのも悔しいので、エマちゃんと店の扉を開けることにした。

 すると、薄暗い店内が僕たちを迎えた。左手には埃が溜まったカウンターがあって、その前に立っているのがほとんどなくなった髪の毛をいわゆる“バーコード”にしたオッサンだ。メガネのレンズは分厚い。あたかもアニメの世界から出てきたかのような、とてもキャラの強いオッサンだった。

 後ろのショーウインドーには、いつの時代のメガネだろうと疑わせるほどの古いモデルばかりが並んでいた。とても喋り辛い雰囲気だが、沈黙を破ったのは勇気を振り絞ったエマちゃんだった。

 「友達からこの住所を貰ったのですが、情報によるとここは、ゲームを売っている店のはずです」
 蝋人形かのようにじっと立っていたオッサンは口を開けた。

 「例のアレね」
 「へえ?し、知っているんですか?」
 「知っているもなにも、ここがそうだから、知らないはずないだろう、坊やたち!」

 その瞬間、自分の耳を疑った。ここがそうだよって。しかし、そう言われても、ここは埃を被ったメガネしかないよ。ゲームは一体、どこにあるんだろう?

 「と言いますと、この店で確実にゲームを売っているということですか?」と、エマちゃんは真偽を確かめたい探偵かのように確認を求めた。

 そこでバーコードのオッサンが口を大きく開き、ある人の名前を呼んだ。
 「二ーーーノーーー!!」

 二…ノ…。誰だろうと想像を巡らせる暇もなく、店の奥から背の高い20代後半と思われる男性が現われた。この人が二ーノか?というか、この人は本当に僕の探している日本のRPGに詳しいのだろうか?

 「どういったご用件でしょうか?」
 僕たちに近付いた二ーノが、丁寧に聞いてきた。

 「あの、知っているかどうわからないんですけど、僕たちはSFCというゲーム機のRPGというジャンルのゲームを探しています」

 無駄に長いセリフで僕たちの求めている商品を説明すると、二ーノの目が光った。やっと僕の出番が来たといわんばかりだった。自信満々な表情で二ーノは店の右手のほうへと向かい、劇場を連想させる幕の前で足を止めた。

 そして、ショータイムだ!という司会者のような満面の笑顔を見せながら、そのすぐ隣にあった紐を力強く引っ張った。すると奇跡が起きた。夢にも見られないような宝物が、その輝かしい顔を見せた。

 その宝の正体は、見たことのないSFC用のRPGだった。少なくとも20本くらい新作RPGが並んでいた。しかも、同じソフトが何本もあった。この店はまさにRPGの工場だ。まさかあの噂が事実だったとは。しかも、日本のRPGの専門店が実は、メガネ屋さんだったとは。2つの顔を持つ、あそらくこの世に1つしかない店。僕たちはそれを発見できた。僕とエマちゃんだけの“オアシス”。

 ゲームのパッケージをよく見れば、珍しいタイトルばかりだった。カタカナを読めるエマちゃんの口から、ゲームのタイトルが次々と読まれていく。「アルバートオデッセイ」。パッケージの裏にある画像を見ると、目を見開いた。すごいグラフィックスじゃないか。漢字は読めないが、バトルシステムは面白いに違いない。

 熱気に満ちた僕のセリフに釣られて、エマちゃんは購入に必要な金額を財布から取り出した。迷いは一切なかった。なぜなら、僕たちは今、宝物を買おうとしているのだ。冷静に考えれば安いとは言えないが、宝物は値が付けられないほど貴重なものだ。

 「次は僕が買うよ。貯金が溜まったらね」
 僕も何か買いたかったが、豚ちゃんの貯金箱にはまだ半分しか入っていなかった。

 「それより、早く家に帰って遊ぼうよ!」

 寂しそうにゲームソフトにサヨナラを言っている僕を慰める為に、エマちゃんは元気な声で言ってくれた。そうだよね。夢のゲームショップ、いや夢の“メガネ屋さん”は消えない。ずっとかどうかはわからないが、しばらくは存在するだろう。店内の薄暗さや埃の溜まり具合は不安を煽っていたが、当分はつぶれないだろうと、僕たちは強く願っていた。これからもずっと、誰も知らないような謎のRPGを購入できるように……。




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(2011年3月4日)

[Reported by ジョン・カミナリ ]