コメディアンBJ Foxの脱サラゲームブログ

連載第14弾

僕の知らない間にクレイトスがイクメンになっていた! パパ・オブ・ザ・イヤー「ゴッド・オブ・ウォー」

 コメディアンとしての年末年始の1番のメリットは、お客さんから何も愚痴を言われずに、その年の古いネタを使い回せることだ。普段なら、変な顔で迎えられる古いネタや、場合によっては(言い換えると、お客さんの酔い具合によって)「古いんだよ、それ」というヤジが飛んでくるようなネタを「この一年を振り返って見よう」という形で平気に蘇らせることができるのだ。

 僕が12月にやった最後のライブのネタはというと、

・映画「ブラックパンサー」(白人のマーベルファンとしてあの映画を好きになるには相当プレッシャーがあった!)
・ロシアワールドカップ(ロシア対サウジの開幕試合がどこまでもブラックだったな!)
・是枝監督の映画「万引き家族」(安全ボケな日本の犯罪映画の中の犯罪でもライトな方)

など、どれもあまりタイムリーじゃなかったけど、年末年始のおさらいとしてスルーできたし、正直、そのネタと“最後の別れ”として楽しかった。

 さて、ゲーマーとしても、年末年始は楽しい時期だ。Game of The Yearで自分が見逃したタイトルをチェックして、ホリデーシーズンの新作ラッシュを終えてプチ冬眠するゲームメーカーから新作が少なめな1月、2月にそのタイトルがプレイする余裕もある。

 僕の場合、一番プレイし逃したタイトルは、やはり「ゴッド・オブ・ウォー(God of War)」だった。失礼しました「The Game Awards 2018」のゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞した「ゴッド・オブ・ウォー」だった。

【ゴッド・オブ・ウォー】

 「ゴッド・オブ・ウォー」に関してはプレイし逃していただけではなく、情報もほとんどフォローしていなかった。2008年にリリースされたPSP版以降、シリーズから離れてしまい、関心が低かった僕にとっては、発売前まで注目タイトルじゃなかったし、発売後のレビューがあまりにも好評すぎたため、プレイすると覚悟してネタバレを避けようと、記事を読んだり、動画を見ていなかったんだ!

 そして情報が全くない状況でスタートしたら、最初から驚きの連続だった。何これ。ゲームのシステムも、シナリオも、舞台も、過去のシリーズとは全然違っていた。シリーズに関しての自分の記憶を疑うほど、違う。今までは、アクションをメインに、物語性を後にしてきた「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズのストーリーは、正直そんなに覚えていなかったけど、古代ギリシャの神話の話だろうだったよね? でも、これは、ノースだろう! しかも、息子もいる? 奥さんが死んだ? その前の作品にでも、そういうエピソードあったっけ? 誰かに殺された? とにかく疑問だらけで、ストーリーに引っ張られていった。

【プロローグシーン】
クレイトスの奥さん、そして息子の母親の火葬のシーンでこの「ファミリードラマ」がスタート

 話は変わるけど、一般の日本人が持つギリシャ神話や古代スカンジナビアの知識レベルがどこまでなのか知らないんだけど、イギリスでは結構学校で教わる。ギリシャの神々の話は、小学生が読んでいる絵本やコミックスの材料ともなるし、意外とカルチャー的に絡み合い、自然に伝わってくる。

 たとえば、「3月」は英語では「March」と言うけど、その由来は「Mars(火星)の月」から来ていて、そのMarsもオリジナルの「戦の神」であるアーレスのラテン語の呼び方だ。そして、「木曜日」の「Thursday」も由来が古代スカンジナビア神話の有名人のThorにあるらしい。こういう風に、好きな「キャラクター」が、「スマブラ」のごとく一緒に組み合われることで、子供にとっても非常に興味深く、楽しく、なぜか奥深くても感じられたものだ。

【木曜日!】
マイティーソーだ!雷の神、アベンジャーズの一メンバー、そして英語の「木曜日」を名付けた、幅広く実績を残した神だ

 本題に戻るけど、新生「ゴッド・オブ・ウォー」は、ビジュアルも素晴らしい、システムも本来のシリーズからだいぶ違うが、文句なし。かえって、ある意味で戦いの操作が易しめになっていて、ビギナーでもアプローチしやすい「ダークソウル」みたいな感じ。チャレンジ性も十分あるが、超デカめの敵との戦いの最後に、R3ボタンの押しで「ゴッド・オブ・ウォー」らしい“グロ美しい”アニメーションが開始された瞬間に、Nintendo Switch版「ダークソウル」のプレイで今でも溜まっているストレスが少しずつ解消されていく感じもある。

【ゲームの難易度は易しめ】
コンバットは、易しめの「ダークソウル」だなぁ。チャレンジ性は十分あるけど、「ゴッド・オブ・ウォー」的なグロモーメント(以下略)は、ストレス解消ともなる

 でも、そのビジュアルやシステムよりもエンジョイしているのは、ストーリーだね。以上にも述べたが、奥深いものがここにある。神々の戦いの裏に、人間性が潜んでいる。主人公のクレイトスと息子のアトレウスの対話が、なんか不慣れなんだけどとてもハートウォーミング。大学生の友人と久しぶりに会う感じだ。思い出では、飲みすぎたり、おもろいヤツだったけど、久々に再会すると、赤ちゃんを抱きながら自分の奥さんの前で真面目かつ不器用に振り舞っているのようなものだ。とはいえクレイトスはところどころ、昔の性格がまた浮上してくるんだけど(主に格闘のシーン!)、すごく成長してきたなぁ、と感心させられる。今までに怒りだけで燃えていた目つきの裏に、愛や心配が漂っている。いわば、大学時代に顔に入れたタトゥに対して深く後悔しているようなもんだね。

【ジブリ的な美しいビジュアル】
ビジュアルは美しくて、たまにはジブリ的な描写も出てくる。「ジブリ」×米ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」って感じ

 でも、クレイトスパパは本当に頑張るし、一生懸命に頑張っているクレイトスパパを見ていることも楽しいものだ。行方不明となったアトレウスへのパニック、病にかかったアトレウスへの心配、奥さんの死を口にうまく口に出せないほど悲しいクレイトスを見ることも正直悲しい。クレイトスの“そのままのクレイトスの声”と好奇心に溢れている、微妙に現代っ子っぽい声を持っているアトレウスの掛け合いも、うまいことにバランスがずれて、面白い。

【クレイトスパパ】
知識を息子へ受け渡すクレイトスパパ。最近の親たちは、ただ子供にiPadを渡しているだけのように見えるんだけど、クレイトスパパは根本的なスキルを教えている

 なんか、そろそろ僕の人生の次のイベントは子供だなあ、と思う年頃になっている筆者は、この連載でこのような物語性のある作品についに手が行ってしまうね。パパといえば「レッド・デッド・リデンプション」のジョン・マーストンと、「ラスト・オブ・アス」のジョエルだけど、クレイトスも頑張っているね。

【タトゥ】
父親に相応しくない、若い時期に入れたタトゥを後悔していないクレイトス。息子のアトレウスと温泉に入る楽しさを味わえないんだ……

 ところで、イギリスにはニール・ガイマンというSF小説家がいる。彼の一番有名な作品に「American Gods」という小説があり、イギリスでドラマ化され、Amazon Primeで配信されている(僕は小説は読んで、ドラマはまだだが、好評だ!)。その小説のシナリオでは、今まで「神」や「神話」が、全て実際に生きており、神々のパワーは人間の祀る強さに依存するという設定になっている。つまり、昔の神々の伝説が薄まり、祀られなくなると、どんどんパワーも薄くなり、最終的に消えていってしまう。小説では、現代人が昔の神話の代わりに「メディア」や「グローバル化」を祀っているので、神々が現代社会の「American Gods」と戦っているものだ。ソーの父神のオーディンは、若手「インターネット君」の戦いの話で、非常に興味深い。

【他の神々との遭遇】
古代ギリシャとスカンジナビアの神々の初対面だ。うまくいくかなぁ?クレイトスの表情から見るとあまりうまくいかないと言えるが、基本的、クレイトスとの初対面はいつもその顔だね

 「ゴッド・オブ・ウォー」をプレイしながら、結構あの小説を思い出させられる。が、小説に通っている現代社会の批判性と違って、このゲームでかえって昔の神話が最前線の技術ではゲームの形でリメイクされ、新しい世代に発信していると思われる。

【○】
「ゴッド・オブ・ウォー」をプレイしてすごく「トゥームレイダー」と思い出させられた。イギリスを代表するクラシックなシリーズが、現代世代向けのリメークで成功したということもあるし、「トゥームレイダー」的なパズルやコレクターアイテムも盛りだくさんだ

 それはとにかく、僕の2019年のスタートは、2018年のゲームのハイライトであり、昔のギリシャや、古代スカンジナビアに思いを馳せる旅でもあった。というわけで今年もよろしく!

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