レビュー

「バトルフィールド6」レビュー

五感に訴えかける戦場体験。“バトルフィールドのDNA”に回帰した最新作

【バトルフィールド6】
10月11日 発売予定
価格  スタンダードエディション:9,800円
ファントムエディション:13,900円
対応機種:PS5/Xbox Series X|S/PC

 2002年9月13日、FPSの金字塔である「バトルフィールド」シリーズの初作が産声を上げた。その作品の名は「バトルフィールド1942」、今でも熱狂的なファンがプレイしているFPSだ。あれから23年、数々のシリーズ作品が発売されてきたが、いよいよ最新作「バトルフィールド6」が10月11日に発売される。

 歴代「バトルフィールド」シリーズは、バトルロイヤルゲームのような爽快感を重視するのではなく、一貫してプレーヤーに“戦場”を体験させてきた。狭いマップの中で白熱の歩兵戦を繰り広げたり、戦車や航空機などのビークルに乗って広大なマップを探索したりと、一人の兵士として戦場を駆け回る楽しさを教えてくれる。これこそが「バトルフィールド」の醍醐味であり、筆者を含むBFファンが求めているものだ。

 そんなBFファンの期待を一身に受け、発売を目前に控えた「バトルフィールド6」。今回、発売に先駆けて製品版をプレイする機会をいただいたので、マルチプレイモード、そしてシングルプレイのキャンペーンモードのレビューをお届けする。

【Battlefield 6: Official Launch Hype Trailer】

密度の濃い“64人対戦”の復活。「バトルフィールドのDNA」とは

 「バトルフィールド」シリーズは23年という長い間、愛されているタイトルだ。多くのシリーズ作品だけでなく、様々なスピンオフタイトルも生まれ、ユニークな戦場体験をプレーヤーに提供してきた。そして「バトルフィールド6」は、開発陣によると“バトルフィールドのDNA”への回帰を果たした作品だという。では、そのDNAとは何だろうか。

 筆者なりに解釈すると、大人数で対戦できるFPSであることはもちろん、ジープや戦車といった陸上を駆ける兵器、ヘリや戦闘機といった航空機、作品によっては水上を進む艦艇など、多様なビークルも重要な要素となる。何より、それら全ての要素が1つのマップの中で入り混じり、影響を及ぼし合う戦場。これがバトルフィールドのDNAだと考える。

大人数でプレイするFPSであることと、多数のビークルが入り交じる戦場。それがバトルフィールドらしさだ

 筆者の解釈で考えると、前作「バトルフィールド2042」は、このDNAが少し薄まったタイトルだったかもしれない。最大128人対戦という大規模な戦闘が実装されたが、マップが広すぎるという声が多く上がっていた。そこで本作では64人対戦に立ち返り、マップスケールの調整も行なわれている。これにより、歩兵戦とビークル戦のバランスが取れた密度の濃い戦闘が展開される。戦場の一体感、そこにいる全てのプレーヤーが戦局に影響を与えられる実感が「BF6」には戻ってきたのだ。

 今回は先行レビューという都合上、バトルフィールドを代表する「コンクエスト」モードを十分な人数でプレイできなかったのだが、先日のイベントで体験した「ミラクバレー」は特に印象的だった。このマップは、歩兵と各種兵器が連携しながら戦うという、バトルフィールドらしい戦闘を存分に引き出す構造になっており、ある場所で優勢になると他の場所にも好影響を与え、全体として勝利に近づいていく。そういった連帯感、チーム全体で戦場を動かしている感覚を楽しめるマップだ。これこそが、バトルフィールドのDNAそのものだと言えるだろう。

「ミラクバレー」は歩兵同士の戦闘からビークル同士の戦闘まで遊びの幅が広かったのが印象的だ

 本作には、先ほどの「ミラクバレー」を含め、「カイロ包囲線」、「エンパイア・ステート」、「イベリア攻勢」、「リベレーションピーク」、「マンハッタン橋」、「オペレーション・ファイアーストーム」、「聖人地区」、「ニューソベク市街」と、都市部から広大な戦場まで9つの多彩なマップが用意されている。

 これらの戦場は、視覚的にただ美しいだけではない。戦車が通過すると巻き上がる粉塵は思わず避けたくなるほどリアルで、目の前で爆発が起きたときは画面を見ているプレーヤーにまで衝撃が伝わってきそうだ。エンジンをうならせながらキャタピラが地面を噛む音は、味方であれば心強く、敵であれば脅威として響く。頭上を飛び交う銃弾の音、建物が崩れ落ちる轟音、そしてヘリが上空から放つガトリングガンの射撃音は恐怖すら感じさせる。

 本作の戦場は五感に訴えかける。本当にその戦場に立っているかのような臨場感。それもまた、バトルフィールドが追求してきた戦場体験の一つなのだ。

スモークや銃声のリアルさがプレーヤーを戦場に引き込むのだ

スペシャリストから兵科制へ回帰。4つの兵科が織りなすドラマ

 今作のマルチプレイモードは、“兵科制”が帰ってきたのも大きなポイントだ。前作「BF2042」は、当時流行していたヒーローシューターの流れを汲み「スペシャリスト」という制度を導入。例えば「突撃兵」という兵科の中でも様々なスペシャリストが存在し、それぞれが固有の能力を持っているというシステムだった。

 だがスペシャリスト制は賛否を招き、それぞれの兵士が固有の能力を持つのは、大規模戦闘が売りの「バトルフィールド」の世界観と合っていないという意見が多かった。筆者も各キャラクターの役割が明確でなく、それぞれのプレーヤーが持っている役割を理解して戦う「バトルフィールド」シリーズの良さが失われてしまったと感じていた。

「BF2042」はスペシャリスト制が導入されたが、様々な賛否を招いた

 だが、本作は突撃兵、工兵、援護兵、斥候兵の4種類からなる伝統的な兵科システムを再導入したことにより、良くも悪くも各兵士の個性は薄くなった。この戦場に必要なのは一人のスペシャリストではなく、仲間との協力から生まれる分隊なのだ。

 基本的な役割として、まず「突撃兵」は近距離から中距離での戦闘がメイン。スタンダードな構成ではアサルトライフルとショットガンのほか、突撃用のハシゴまで持ち、まさに前衛という兵科だ。「工兵」はビークルの修理、そして対ビークルの戦闘を中心とする兵科。修理に欠かせない「リペアツール」を所持しており、ガジェットは対戦車ミサイルや対空ランチャー、対戦車地雷など多彩な装備を持つ。

 そして「援護兵」は戦場をサポートする役割だ。弾薬やガジェットを補給できる「補給バッグ」を持っているのが特徴で、除細動器を使えば分隊員やチームメイトを即座に蘇生させられる。最後の「斥候兵」はスナイパーライフルを使った遠距離からの狙撃に長けている。付近の敵の位置をスポットできるモーションセンサーなどを使い、偵察も可能だ。

 それぞれの兵科の違いは「ハシゴ」や「リペアツール」、「補給バッグ」といったガジェット。このように役割が違う4つの兵科が、戦場で複雑に絡み合うのが「バトルフィールド」のマルチプレイの魅力だ。どれか一つの兵科だけでは勝利に辿り着けない。

突撃兵は戦場を駆け抜け、近距離から中距離戦闘をメインにする
工兵はビークルのサポートと、対ビークルに優れている
援護兵は自軍のプレーヤーを蘇生できるのと、補給バッグで前線を維持しやすい
斥候兵はスナイパーライフルを使った狙撃を得意にしつつ、偵察にも長けている

 なお、以前の作品では兵科によって武器種が縛られていたこともあるが、本作ではどの兵科も自由に武器を装備できる。例えば突撃兵はアサルトライフルが得意で、アサルトライフルを構える速度が速く、ダッシュからの移動後にすぐ射撃できる能力を持っている。そのため、システム的にはアサルトライフルを持つのがオススメではあるが、他の武器種を持っても良い。

突撃兵でもサブマシンガンを持ったり、スナイパーライフルを持って戦うことができる

 筆者は前衛でガンガン撃ち合いをするのが好きなので、サブマシンガンを持った「援護兵」を使うことが多かった。サブマシンガンは連射速度があるので近距離の戦闘では十分だし、ブレをコントロールすれば中距離もある程度は戦えるので筆者のお気に入りだ。

 立ち回りとしては、戦闘はもちろんなのだが、他の兵士を蘇生できる除細動器に持ち替えることが多かった。本作では一人の兵士が数回倒される程度では戦況に大きな影響を与えない。むしろ、コントロールポイントの制圧も含めた、勝利を獲得するための目標をいかに達成するかが重要になる。

 そのため、例えばコントロールポイントを制圧するための人数を競り合っている状況や、リスポーンポイントが遠い場合は、味方を素早く蘇生し前線を維持することがカギになる。チケットカウントの消耗を抑えるためにも、蘇生することがチーム全体の利益になるのだ。

 今回の先行プレイは少人数でプレイできるモードがメインだったが、広大なマップをダイナミックに使う「コンクエストモード」になれば、各種ビークルが猛威を振るうことになるので、工兵の役割も増えてくるし、斥候兵のスナイパーライフルが活躍するシーンも多く出てくるだろう。モードによって異なる楽しみを内包している。それもまた本作の魅力なのだ。

筆者が最も使用したガジェットが「除細動器」だ。特に歩兵戦がメインになると大活躍する

オマケではない、充実したキャンペーンモード

 「BF6」では久々にシングルプレイの「キャンペーンモード」が復活。時は2027年、NATO(北大西洋条約機構)の地盤が緩む一方、大手民間軍事会社の「パックス・アルマータ」の影響力が増している世界が舞台となる。そんな中、NATOはジョージアから撤退し、パックス・アルマータへ平和的に譲渡されるはずだったのだが、突如としてパックス・アルマータの空爆が降り注ぐ……という物語が描かれる。

 プレーヤーが操作するのは、アメリカ海兵隊の精鋭である「ダガー13連隊」のメンバー、ハズ・カーター曹長、ディラン・マーフィー一等軍曹、シモーネ "ゲッコー" エスピナ二等軍曹、クリフ・ロペス二等軍曹で、キャンペーンの各チャプターによって操作するキャラが変わる。

 もちろん、本作はFPSなので歩兵同士の銃撃戦がメインになる。だが、スナイパーライフルで後方から支援していくようなミッションもあるし、戦車に随伴しながら適宜修理をしつつ進んでいくシーンもある。夜間作戦もあれば、ロケットランチャーでヘリを落とすようなシーンも登場する。それ以外にも水陸両用車に乗り込むシーンもあり、ゲームプレイの幅は広い。かなりじっくりと作り込まれている印象だ。

スナイパーライフルで後方支援をする時もあれば、夜間作戦までその幅は広い

 もちろんストーリー面も同様に作り込まれており、プレーヤーはアメリカ海兵隊として「パックス・アルマータ」に対抗することになる。そこに至るまでのムービーやカットシーンが豊富に用意されており、ストーリーの起伏も潤沢にある。連続ドラマを見ているような体験ができるのだ。

 難易度設定もあり、今回は標準的な難易度である「正規兵」と、最も簡単な難易度の「新兵」をプレイした。難易度選びは難しいが、FPSをたしなむ程度に遊ぶ筆者には「正規兵」がちょうど良いと感じた。簡単すぎず、難しすぎない。何らかの理由で失敗しても1、2回トライすれば突破できるというバランスだった。一方の「新兵」はプレーヤーや持っている武器が強くなるため、FPSが苦手な方やストーリーを楽しみたい方にオススメだ。

 両方を体験して感じたのは、道中が熾烈なほどストーリーが身にしみるということだ。プレーヤー自身とキャラクターたちに与えられる体験が難しいほど、没入感を感じられる。そのため、自分に合った難易度を選ぶのがオススメだ。こう書くと難易度設定に悩みそうだが、プレイを始めてからでも難易度は変えられるので、最初は「正規兵」でプレイしてみて、そこから難易度を上下させるのも良いだろう。

連続ドラマのような展開が繰り広げられるシングルプレイモード。マルチプレイモードと同じロケーションも登場するので、立ち回りの勉強にもなる

「バトルフィールド6」はBFファンが待ち望んでいた作品に

 プレイして感じたのは、「バトルフィールド6」が「バトルフィールド」のファンが待ち望んでいた作品ということだ。「バトルフィールド」シリーズは何度も姿形を変えてきた。「BF1942」の第二次世界大戦から始まった壮大な戦場は、時代を行き来しつつ「BF6」で現代戦に帰ってきた。

 「バトルフィールド」は様々なタイトルがリリースされた中で、確かにバグがある作品もあった。不満が出てしまう作品もあった。それでも我々ファンは「バトルフィールド6」に期待してしまう。その理由は「バトルフィールド」にしかない圧倒的な“戦場体験”があるから。広大なマップを舞台に、歩兵とビークルが入り交じり、それぞれが影響を及ぼし合う戦場。それは唯一無二の体験なのだ。

 崩れかかった建造物の中、銃弾が頬をかすめる音の中、歩兵同士の近距離戦闘が繰り広げられる。外に出ればキャタピラを轟かせる味方の戦車が歩兵をサポートしてくれるが、やがて敵戦車も迫ってくる。必死に修理をしていると味方の工兵が駆けつけてくれる。斥候兵が敵戦車の位置を伝えれば、ジェット機が颯爽と飛んできてくれる。地上の制圧権を確保したかと思えば、今度は敵のヘリが上空から機銃掃射で壊滅的な状況に追い込まれる。援護兵が遮蔽物を縫うように味方を蘇生し前線を維持していると、対空砲でヘリを打ち落としてくれる仲間が現れる……。

 戦場にはこんなドラマがあるのだ。その物語を紡ぐのは我々一人一人の兵士であり、この戦場を提供してくれるのが「バトルフィールド6」という作品だ。そこには本作でしか作れない……いや、本作と我々が協力することでしか作れない物語が存在する。その物語を体験する扉が、今まさに開かれようとしている。