インタビュー

“FPSが良いFPSであるために”。「バトルフィールド6」開発者インタビュー

【Battlefield 6】
10月11日 発売予定
価格  スタンダードエディション:9,800円
ファントムエディション:13,900円
対応機種:PS5/Xbox Series X|S/PC

 Electronic Artsが手がけるFPSの金字塔「バトルフィールド」シリーズの最新作「Battlefield 6(バトルフィールド6)」がいよいよプレイステーション 5/Xbox Series X|S/PC向けに10月11日に発売される。

 「バトルフィールド」シリーズの新作は、2021年11月に発売された「バトルフィールド 2042」以来約4年ぶりとなる。今回の「BF6」は過去作を多く手がけてきたDICEに加えて、Criterion Games、Ripple Effect、Motiveの4つのスタジオが結集した「Battlefield Studios」が開発し、“All-Out Warfare(全面戦争)体験の決定版”を謳うシリーズ最新作だ。

 筆者はElectronic Artsの招待を受け、香港で開催された「バトルフィールド6」マルチプレーヤーイベントに参加。本稿では「BF6」の開発ディレクター・Anna Norrevik氏、ゲームプレイデザイナー・Jac Carlsson氏、シニアテクニカルアーティスト・Makoto Tanaka氏の3名によるインタビューの模様をお届けしていく。なお「BF6」の先行プレイレポートも別途掲載されているので、併せてご覧いただきたい。

【Battlefield 6 Official Multiplayer Gameplay Trailer】
左から開発ディレクターのAnna Norrevik氏、ゲームプレイデザイナーのJac Carlsson氏、シニアテクニカルアーティストのMakoto Tanaka氏

「BF2042」からは多くのことを学んだ。プレーヤーが求める体験を提供する「BF6」

――今回、LAと香港など各地で大規模なイベントが行なわれました。会場にいるストリーマーやメディア、そして配信を見たファンの方々の印象に残っているリアクションを教えてください。

Jac氏:実はちょうど仕事仲間が、フランスのイベントに参加していたのですが、多くのゲストから「このイベントにずっと参加していたい」とコメントがあったそうです(笑)。みんながプレイを続けたかったし、「BF6」についてずっと話していたいという雰囲気がありました。そして配信のチャットもエンドレスにどんどん流れていて、中には「バトルフィールドが戻ってきた!」というコメントもあって、本当にエキサイティングでした。

Makoto氏:今回の香港イベントで、日本から来た皆さんに「BF6」をプレイしていただきましたが、彼らがすごく興奮しながらプレイしているのを見ると、本当に嬉しくて。頑張って作った甲斐があったというか、日本人として日本の方に喜んでもらってすごく嬉しいです。

Anna氏:昔からFPSをプレイしている方もそうでない方も、今回のトレーラーを見て、既に興奮している方が多いと聞いています。例えば、シングルプレーヤーのファンの方からは「キャンペーンモードが戻ってきた!」という感じで、その喜びが私にも伝わって来ました。

Jac氏:私も会場を歩き回っていたのですが、エンゲージメント率がとても高くて、多くのプレーヤーが本当に楽しんでいると思います。私たちも社内で毎日のようにプレイテストをやっていますが、やはり会場でさまざまなユーザーが純粋に楽しんでいるところを見ると本当に嬉しいです。私たちのプレイテストでは見られない大きな違いがあって、エモーショナルな気持ちになりますね。

香港のイベントでは、日本や中国、韓国から多数のインフルエンサーやストリーマー、メディアが参加した

――今回「BF6」の発表前に約半年間にわたって、大規模なコミュニティテストプログラム「Battlefield Labs」がありました。このテストはいつ頃始める流れになったのですか? またコミュニティからどういったフィードバックがありましたか?

Jac氏:実は「BF Labs」は開発のかなり初期の段階からゴールの一つとして設定されていました。「バトルフィールド」シリーズは過去作も含めて、コミュニティにかなり近いタイトルではありましたが、今回の「BF6」でさらに次のレベルへ、よりコミュニティの近くへ行こうという意図がありました。

 「BF Labs」はいわゆる“テストグラウンド”で、開発チームが何か試したいことがあったらここに入れて、実際に試して、プレーヤーからのフィードバックを得て、そして次のビルドに生かすというループになっています。フィードバックの中には、ダメージ、コミュニケーション、ルール、兵科をはじめ、パフォーマンスに関するもの、安定性に関するものまで色々とありました。

 またフィードバックに加えて、もう一つ大事なことが“実際にデータを見て評価をすること”です。例えば、我々は何かをデザインする時に「多分こういうデザインにしたらこういう結果になるだろう」という仮説の下でやっているのですが、それが本当にそうなるのか、データを見るまではわかりません。こういったことをちゃんとテストして、フィードバックを得るというのは、私たちにとってとても貴重なことでした。

 そしてもう一つ、特に目立ったフィードバックはプレーヤーの動作に関するものですね。最高のゲーム体験を提供する上で、実際に動かした時、ガンプレイがどうなのか、スライドやジャンプ、走りが自然なのかといったフィードバックが大変役立ちました。私たちが目指すFPSで、それらが実現されているのかを評価しながら進めてきました。

2025年2月より始動したコミュニティテストプログラム「Battlefield Labs」

――前作「BF2042」は、ユーザーから様々な評価があったと思います。その教訓を今回どのように昇華して「BF6」が完成しているのか教えてください。

Anna氏:「BF2042」からは本当にたくさんのことを学びました。いろんなフィードバックを受けた結果、今回アサルト、リコン、サポート、エンジニアの4つの兵科を再導入することになりました。私たちは常にコミュニティの声に耳を傾けていて、その一つの形が「BF Labs」なんですが、こういったことは今後も続けていきたいと思います。全てはプレーヤーの求めているものは何か、プレーヤーがどういうことをしたいのかということに耳を傾けて、理解して、彼らが求める体験を提供していくことです。

 実際「BF6」の開発でも過去の作品を振り返って、あの作品では何がベストだったのか、きちんと調べて活かしていました。特に「BF3」と「BF4」は多くの方々にプレイしていただいて、シリアスでありながら心地よいフィーリングというのをどう再現するのかは、今回の開発で特に頑張ったところです。結果、現在の「BF6」の完成度はとてもいいものですし、イベントに参加いただいたプレーヤーの方にも気に入っていただけていると思います。

Jac氏:私たちは「BF6」に“オールイン”しています。4つのスタジオが力を合わせて、高い情熱を持って、たくさんのリソースを継ぎ込んで、この作品に結実しています。その中で、私たちが大事にしているアプローチというのは、FPSのファンダメンタル(基礎的)な部分をしっかりやるということです。FPSが良いFPSであるためには何が必要なのか、そして私たちはそれをどういう風に表現しなければいけないのかということを徹底的に調べあげて、基礎の部分ができあがってから色々なものをビルドしていきました。

Makoto氏:ビジュアルの面だと、今回は「BF2042」で使っていたシェーダーを「BF6」でもベースで使っています。開発当初のビジュアルターゲットでは、カイロのマップを使ってベンチマークになるアセットを作りました。その際に、もっと戦場の雰囲気が出るようなビジュアルで推し進めてほしいと言われまして、「BF6」は前作以上に戦場のビジュアル面が良くなっていると感じています。

前作「BF2042」は発売当初、ゲームバランスの調整不足といった指摘が相次いだ。その後軌道を修正するもユーザーからの評価はわかれた

パフォーマンスチェックを厳格化。復刻マップにも期待がかかる

――今回、ユーザーから“推奨スペックが比較的軽めであること”に驚きの声が挙がっていますが、パフォーマンスに関する開発でどういった工夫があったのか教えてください。

Makoto氏:私はテクニカルアーティストとして、毎日パフォーマンスのチェックをしてきました。例えば、少し言い方が難しいですけど、私が担当したシェーダー周りも管理をかなり厳しくしました。特に「BF6」は、4つのスタジオが別々の場所で同じゲームを開発しているので、共通のアセットを使わないといけません。そういったパフォーマンスに影響が出そうな部分に関しては、厳しくチェックをしていました。その細かい積み重ねが、最終的にパフォーマンスに繋がったのだと思います。

Jac氏:確かにパフォーマンスについては尽力しました。やはり私たちとしては、できるだけゲームがスムーズに動き、レイテンシーも低く、全体的にバランスよく動作するように常に色々と取り組んできました。特にエイム時の挙動や射撃といったアクションを中心に、ユーザーの反応が目立つところは特に配慮しています。ただ、安定して運用されなければ意味がないので、この安定性の部分が非常に苦労しました。

Makoto氏:一つ加えるとしたら、ビジュアルとパフォーマンスは相反する関係にあります。ビジュアルのクオリティを上げるとパフォーマンスが下がる。「BF6」ではそういった時、“いかにプレーヤーが快適にプレイできるか”を優先していました。その結果、どうしてもビジュアル面で達成できないところは一部あったと思いますが、そこはビジュアルアーティストが上手く見せてくれて、バランスを取ることができました。

Jac氏:すみません、もう一つ(笑)。今回「BF6」の一つのゴールとして、推奨スペックでマルチプレーヤーモードを60FPSで動かすことに注力しました。もちろん、環境によってはそれよりも高いフレームレートが出ますが、全体的にスムーズにプレイできるようサーバーサイドのことも含めて、この点はかなり達成できたと思います。

オープンベータ時の最小/推奨スペック。2020年以降のゲーミングPCであれば、おおよそ条件を満たすスペックとなっている

――「BF6」では過去作に登場したマップ「Operation Firestorm」が復刻されました。プレーヤーからのリアクションはどうでしたか? 個人的には「Siege of Shanghai」の復刻も期待しています。

Jac氏:現時点で復刻マップは「Operation Firestorm」のみですが、これは皆さんのお気に入りになると思います。現在の様々なことを検討中で、将来的に発表できると思いますので、待っていてください。本当にエキサイティングな展開を用意している最中です。

Anna氏:私も「Siege of Shanghai」は好きなマップの一つです。そのほかにも、もっとアジアのマップがあってもいいなと個人的には思っています。今後も、例えばあのマップを復刻したり、こういう工夫を加えてまた出そうみたいな流れはあるかもしれません。楽しみにしていてください。

「BF3」や「BF4」で登場したマップ「Operation Firestorm」がなんと「BF6」で復刻される
「BF4」で登場したマップ「Siege of Shanghai」。「BF6」での復刻に期待!

タイトルの由来。“分隊と兵科”がコアとなる「BF6」

――今回「BF6」ではキャンペーンモードが復活しますが、ストーリーの見どころを教えてください。

Anna氏:オープンベータ時点でキャンペーンモードは実装されませんが、基本的にはリニアなストーリーをお楽しみいただけます。一部の国がNATOを脱退してしまい、NATOの影響力が弱まったところに「PAX ARMATA」という民間軍事会社が実権を握ろうと戦いを挑んできます。その中でプレーヤーはある一人の海兵隊員となり、世界中のいろんな場所で非常にエキサイティングな戦いを繰り広げることになります。ぜひシネマティクスもご覧になってください。

――今回のタイトル「Battlefield 6」ですが、この「6」というナンバリングの由来を教えてください。

Anna氏:実はこれも大きな決断で、社内で様々なリサーチやテストを行ないました。これらの調査を通じて、一番みんなが気に入った「6」を採用しました。

「BF6」はNATOの影響力が弱体化した世界で、民間軍事会社「PAX ARMATA」と戦うことになる

――「BF6」は過去作からたくさんのレガシーを引き継ぐことになったと思います。この中でキルした時のサウンドがとても気持ちのいいもので、過去の「バトルフィールド1」を彷彿とさせるものになっていますが、意識されたものなのでしょうか?

Jac氏:その通りです!私たちの素晴らしいオーディオチームが、開発の初期からダメージを与えた時のサウンドをどのようにしようか、色々と考えていたんです。その中で「BF1」のキルした時の音が挙がりました。多くの方がこの音が一番だと思っているでしょうし、私たちもとても好きな音なので、これをベースにすることに決まりましたが、そこから「BF6」らしさを加えるにはどうすればいいかを色々と考えて実装しました。

キル時のサウンドは「BF1」での音をベースとしたもの

――「BF6」をきっかけに、多くの初心者の方が「バトルフィールド」にやってくると思います。そういった方々がスムーズにゲームをプレイできるように、兵科やプレイスタイル、そのほかの要素も含め、アドバイスをいただければと思います。

Makoto氏:兵科は自分の好きなものを選べばいいと私は思っています。「バトルフィールド」のコアはやはり分隊システムで、チームプレイが非常に重要です。ただ「戦場に出て相手を倒すだけのゲーム」ではないということ、初めてだとこれが少しわかりにくいかなと思います。

 最初は分隊にいる上手い人の真似をして、決して一人で死なないこと。メンバーがどこにいるかを把握して、その人についていくとか、その人がやられたら助けるとか、分隊として行動することが重要です。バトルフィールドならではの楽しさというのは、そこにあると私は思っています。

Anna氏:私からも一つ。「BF6」には4つの兵科がありますが、まずは4つ全部試してみて、それぞれがどう機能するのか、その兵科では何をしたらいいのかということを学ぶことも非常に重要だと思います。兵科を全て理解したらゲームの幅も広がりますし、この状況だったら何をするべきなのかというのがわかって、全体的に面白くなると思います。

 ……ごめんなさい。もう2つアドバイスがあって(笑)。まず今回は「射撃場」を用意していて、そこで「この銃はこんな動きをするのか」ということを学べるので、ぜひ試してみてください。もう一つは過去に「バトルフィールド」シリーズをプレイした友達を招待して、一緒に分隊を組んで、ぜひボイスチャットをしながらプレイしてみてください。とても楽しい体験になると思います。

Jac氏:私からもアドバイス。「BF6」は過去作と比較して、ゲーム内のメカニックやそれぞれの兵科の強みを、よりうまくゲーム内で説明できていると思います。ですので、初心者の方でも兵科を選びやすいと私は感じています。

 もう一つ、私はプロではないのですが、過去に競技的なFPSをやっていたこともあって“ゲームで勝つこと”が好きです。ですが「バトルフィールド」はゲームで勝つだけでなく、“ゲーム全体がスペクタクルな体験”になっています。例えば、丘の上でジェット機が轟音を響かせながら近くを飛んでいったり、近くのビルがどんどん崩れていったり、そういった大迫力な体験も魅力の一つです。もちろん勝利を目指す気持ちもわかりますが、これらを体験するだけでもかなり楽しいと思います。

Anna氏:日本のプレーヤーの皆さんが楽しんでくれるのを心待ちにしています!

――ありがとうございました。

「BF6」の発売が待ちきれない!