レビュー

「The First Berserker: Khazan」レビュー

この死にゲー主人公強くない!? 手触りがどんどん変わる、爽快感抜群ソウルライク

【The First Berserker: Khazan】
ジャンル:ハードコアアクションRPG
対応機種 :Steam / PS5 (Pro Enhanced) /Xbox Series X|S
配信日:3月28日
価格:
Standard Edition:8,580円
Deluxe Edition:10,120円

 ネクソンは3月28日、歴史あるMORPGとして名高い「アラド戦記」の世界観をモチーフとしたハードコアアクションRPG「The First Berserker: Khazan(以下:Khazan)」の発売を予定している。

 本作は「アラド戦記」の世界から800年前を舞台に、最初のバーサーカーである主人公「カザン」の過酷な戦いを描きながら、ゲーマーを唸らせる高難易度のアクション&バトルを味わえる作品だ。プラットフォームはSteam、プレイステーション5(PS5 Pro Enhanced対応)、Xbox Series X|S。

【The First Berserker: Khazan | Unveil the Universe】

 ゲームの雰囲気やシステムから俗に”死にゲー”や”ソウルライク”といったジャンルに該当する本作だが、自由度の高いビルドや緊張感のあるバトル、そして本作ならではの面白さも随所に点在しているのが特徴的なタイトルとなっている。

 特に主人公「カザン」が繰り出す、疾走感の強い数々のアクションが凄まじく、ゲームが進んで主人公が成長していくと、最強すぎて一種の“無双ゲーム”のような爽快感も味わえるほどなのだ。

 また、本作は一見高難易度ゲームでありながら初心者に寄り添った様々なサポート機能も充実しており、初めての”死にゲー”にピッタリのタイトルとなっている。今回はそんな本作を一足早くプレイする事ができたので、早速レビューしていこう。

「カザン」の壮絶な復讐を描く物語

 本作で描かれるのは主人公「カザン」の復讐劇だ。今回はゲーム序盤のストーリーを軽く紹介しよう。物語は「カザン」が国を追放され雪山に護送されている場面から始まる。

 狂竜の脅威から国を救い、英雄として称えられた大将軍「カザン」。その存在を妬む者たちの策謀によって反逆者の濡れ衣を着せられ、両腕の神経を潰された状態で雪山に追放されてしまう。

 そんな中、瀕死の「カザン」に「鬼神」が憑りつく異変が発生する。運良く逃げ伸びた「カザン」はなぜか再び動くようになった両腕に疑問を持ちながらも雪山を進む事になる。

再び動くようになった両腕と頭に響く謎の声に疑問を持ちながらも雪山を彷徨うカザン……
道中で装備品を揃え早速ボス戦! 物語冒頭なのに早速容赦がない……!

 その後、雪山で倒れている所を「バントゥ族」に救われたカザンは、自身に憑りついた鬼神を討ち払うべく儀式に赴くことになる。「3つの試練」という名のチュートリアルを終え、鬼神との直接対決に勝利した「カザン」は、復讐の為に内に潜む鬼神たちの力すらも利用する事を決意する。

 自身を「ブレードファントム」と名乗る鬼神と契約したカザンは、復讐に協力してもらう対価として、彼らの目的である「冥界の秩序を荒らす者の排除」を行う協力関係を結ぶ事に。各地を巡りながら冥界に悪影響を及ぼす敵を排除しつつ、帝国への復讐と汚名を着せられた真実を暴く「カザン」の旅が幕を開けるのだ。

バントゥ族の助言に従い3つの試練へ向かうカザン。各武器のチュートリアルを行いながら、過去の思念や怨念が亡者となって立ち塞がる
カザンの体を乗っ取ろうとした「ソードファントム」と協力関係を築く展開に。全然そんな気配無かったけどバディ物なのかもしれない!?

意外とかわいい「ソードファントム」などのキャラクターが魅力的

 ここまでが本筋に入るまでの冒頭部分となるのだが、この間に2体のボスと戦うので、序盤から相当ボリューミーな内容となっている。

 全体的にダークテイストが色濃く出たストーリーで、以降訪れるダンジョンや出会う人々もどこか”闇”を感じる部分が多い。ソウルライクを好むプレーヤーであれば、肌に合う世界観だと言えるだろう。

 各所で登場するキャラクター達も魅力的な人物が多いのだが、筆者的には旅を共にする「ソードファントム」が特にお気に入りだ。当初は「カザン」の体を乗っ取るために邪悪さ全開の荘厳な態度で話しかけてくるのだが、協力関係になってからはしっかり「カザン」をサポートしつつ要所要所でナビゲート等もしてくれる。

 喋り方も意識の集合体だからか、片言になったり突然分身し始めたりと割とハチャメチャなのだが、その上で苦手な人物に出会った際には露骨に嫌な態度を見せたり、契約主である「カロン」の前では結構張り切っていたりと人間味を見せてくる事があるのだ。最初の印象とは180度変わって、見ていて飽きない可愛げのあるキャラクターとなっていた。

様々な鬼神の集合体である「ソードファントム」は色んな人格が大量に登場して会話を始める事がある。統率が取れてるのか取れてないのか……
苦手な相手が登場すると露骨に態度に出ちゃう「ソードファントム」くん。会話をしてみると実は結構人間味があって愛らしい

アニメ調のムービーは必見!

 本作の物語は美麗なムービーと独特のタッチで描かれたアートによって描かれる。

 ソウルライクには珍しいアニメ調の表現は、ダークな世界観と合わさって今までに無い不気味さとカッコ良さを生み出している。景色・敵エネミー・様々なロケーションで新鮮な気持ちを体験できるだろう。

 特に、アクションシーンは必見だ。アニメ調だからこそ映えるド派手な演出や動きが多く、ボス戦ではそこからシームレスにバトルに移行するので没入感は非常に高い。ムービーのクオリティに関しては本作のOP映像から相当気合が入っているので、ぜひそちらもチェックしてみて欲しい。

【イラストパート・ムービー・OP】

ゲームの基盤はソウルライク! 序盤はまさに高難易度アクション

 ゲームの進行・キャラクタービルド・アクションシステムに関しては従来のソウルライク作品のフォーマットに沿った形となっている。

 プレーヤーは「カザン」を操作して様々なステージに赴き、強力なボスを攻略してストーリーを進めていく事になる。が、ステージの道中もボス戦も基本的には何度も死ぬことを想定された難易度となっている。

 雑魚敵であっても囲まれてボコられれば簡単に死ぬし、唐突に床が抜けて落下死する事もあれば、見えない敵から狙撃されて知らぬ間に死ぬなんて事も多々経験した。ここら辺のバランス、手触りはまさにソウルライクといったところ。ソウルライク好きは安心して本作を遊んでいただけるだろう。

 そんな鬼のような難しいステージを攻略する上で重要となるのが、中間ポイントの「鬼剣」だ。こちらはソウルライク作品ではお馴染みのチェックポイント要素となる。

 「鬼剣」は解放しておくことで、死んでもその場所からのリスタートが可能となる。そのため、プレーヤーは何度も死にながらこの「鬼剣」を開放する事で徐々に探索範囲を広げていく。

【鬼剣】
本作におけるリスポーンポイント。プレーヤーはこれを攻略の目途にしてダンジョンを探索する事になる

 またこの「鬼剣」は各ステージへ飛べる拠点「境界の狭間」へ戻る事も可能なので、ステージ攻略中に別ステージへ赴いてキャラクター育成をしたりアクションの練習も可能だ。

 ストーリー自体は基本1本道だが、メインのストーリー以外にも寄り道ができるイベントが用意されていたり、一度クリアしたステージでも隠しアイテムや追加ボスが現われたり、探索要素もあるので、本筋のステージ以外にも遊びの幅は広い印象だ。

過去に攻略したステージやボスと再戦できるだけでなく、新たに登場するボスやミッションなども

 バトルの操作感に関しては、基本的に1~2回攻撃が被弾したら雑魚的でも瀕死状態になる位の緊張感がある。その中で、ガードと回避を巧みに使い分けて攻撃を差し込む面白さは本作でも健在だ。

 敵味方問わず存在するスタミナ的概念「気迫」も用意されていて、攻撃を繰り返す事で「気迫」を削り、相手の「気迫」を削り切る事で「脱力状態」にして隙だらけにした後、攻撃を与えながら最後に致命的な一撃「ブルータルアタック」をぶち込む。馴染み深いシステムでしっかり気持ち良くなることができるだろう。

 特にボス戦では、基本的に相手は仰け反らない。そのため「気迫」を削り合う攻防が非常に重要で、防御手段でありながら自身の「気迫」の消費を押さえつつ攻撃に転じれる「ジャスト回避」や「ジャストガード」は攻略のカギになる事が多い。

 他にも出の早い「クイックアタック」と、溜める事で威力が上昇する「強攻撃」の使用感、遠距離アイテムやエンチャントアイテムの仕様など、基本的な部分は全体的に癖が少なく扱いやすい印象だ。

【ジャストガード/ジャスト回避】
ジャストガードなら自身の気迫を消費せずに攻撃を受け流す事ができ、ジャスト回避ならそのまま連続して攻撃アクションに繋げられる強味がある
【ブルータルアタック】
敵の白ゲージが尽きると脱力状態に! 雑魚的にはバシバシ狙っていくことができ、ボス戦においても安全に大ダメージを狙えるプレーヤーのメインウェポンだ!

 キャラクタービルドに関してもソウルライク作品を触った事のあるプレーヤーなら2秒で理解できる触り心地になっていた。

 敵を倒す、ステージの各スポットから回収する、イベントを進める等の行為で入手できる経験値「ラクリーマ」を消費する事で、「カザン」の基礎ステータスを司る5つのステータスを自由に鍛える事ができる。尖った育成をするか、満遍なく上げるかはプレーヤー次第だ。

 基礎ステータス以外のビルド要素としては装備品の変更、カザンのアクション等を開放できるスキルツリー要素などが用意されているので、自由度の高い育成を楽しめるだろう。

身に覚えがあり過ぎるステータス割振り! 基本的には受ける/与える気力・体力のダメージと重量に関するステータスがここで決定する

 また本作独自のビルド要素として「ファントム能力」といシステムも存在している。これは同行(装備)する鬼神によって様々な恩恵効果を受けられる要素で、各ファントムごとに特色の違った能力を秘めている。

 ファントムの収集方法は、特定のアイテムを見つけたり、直接勝負して勝利するなど様々だが、メインストーリーを進む以外の場所で入手できることも多いので色々探索するのが重要だ。

特定の条件を達成する事で同行しているファントムも成長していく

カザンのスタイリッシュ過ぎるアクションで別ゲーに……!?

 ここまでひたすらソウルライクとして順当……という話をしてきたが、逆にここからは本作独自の強味について紹介しよう。

 まず本作は、ソウルライク系作品の中でもトップレベルにアクションがスピーディーかつスタイリッシュな仕上がりになっている、という点がある。

 そのうえで筆者が声を大にして伝えたいのが、”カザンのアクションが最強すぎる”という事だ。どんな作品にも強い攻撃やスキルは存在するモノだが、カザンに関しては覚えられるスキルが軒並み強い。途中から、プレイ感が変わり始めるレベルなのだ。

それまで割と硬派なソウルライクのように固い動きをしてたのに、突然空に舞い上がったカザンを見て驚いたよね

 カザンが繰り出せる攻撃アクションは装備する武器によって異なり、剣斧なら小回りの効く攻撃と使い勝手の良いオーソドックスな立ち回りが、大剣なら挙動が遅い代わりに重い一撃を繰り出す事が、槍なら長いリーチで広範囲を攻撃することが可能とそれぞれ特色が出ている。この3つの武器にはそれぞれスキルツリーが存在し、プレーヤーは自由にスキルポイントを使用してアクションを開拓が可能だ。

 どの武器でもどんどん強くなっていくカザンだが、今回は中でも筆者が特にお気に入りで使用していた「槍」の序盤スキルを中心にその進化の一旦を紹介したい。

 まずは基本的なスキル「月光ノ構え」だ。クイックアタックの3連撃がヒットした後に15秒間残像攻撃を追加で与えるというもの。

 要するに通常攻撃を3連続で出せればバフが掛かるという能力だが、この残像攻撃というのがエゲつない。単純に15秒間攻撃の手数が倍になる事で並大抵の雑魚なら簡単に「気力」が無くなり、ボスが相手でもゴリゴリ生命力を削る事ができる。しかも発動条件が激ユルなので、普通にプレイしていたら意図しなくても勝手に発動するレベルなのが凄まじい。見た目の迫力も相まって、ずっと擦り倒していたスキルだ。

効果の適用中は、影が一緒に攻撃をするようなエフェクトが重なる! 発動条件が簡単な分、いかに常に「月光ノ構え」をキープできるかが重様になりそうだ

 2つ目は「螺旋突き」というスキルだ。スキルの中には「闘気」と呼ばれるゲージを消費する事で発動するタイプが存在するのだが、中でもこの「螺旋突き」の気持ち良さは飛びぬけている。

 槍を回転させながら相手に突撃するというシンプルな技だが、強靭な相手を怯ませる事ができたり、脱力状態の相手に当てるとダメージが増加したりなど力押しが可能な技となっている。

 何より敵に当てた時の、何もかもをゴリゴリ削る感じが堪らなく快感なので、槍を使う際はぜひ使ってみて欲しい。

槍のカッコいい所を詰め込んだようなスキル。体力削りにも強靭度削りにも有効だから汎用性が高い!

 他にも基本アクションとして遠距離の敵を攻撃する「投槍」、ファントムの力を借りて変身する「闘鬼化」など、最初のじりじりとした戦いからは想像できないほどカザンの力は段階的に増していく。

 ダンジョンやボスの難易度も比例して高くなるが、個人的にはそれ以上にカザン側の選択肢とアクション映えが加速していく印象だ。

 何よりスキルツリーはいつでも何度でもリセットが可能なので、ボスやステージに合わせて付け替えを楽しめるのも素晴らしい。アクションゲームとして、非常に満足度の高い形となっていた。

初心者を楽しく死にゲー沼に引きずり込むサポート機能

 最後に、今作が死にゲー初心者でも最後まで楽しめるシステムが数多く用意されている点について紹介したい。

 まずはボス戦の仕様について。ソウルライク系譜の作品は基本的にボスに何度も挑んで攻略の糸口を掴むのがオーソドックスだが、今作の場合は敗北したとしても”ボスに与えたダメージ分だけ”経験値となる「ラクリーマ」をゲットできる。

 これにより、ボス攻略を行いながら同時にレベル上げが可能になっている。またボス部屋の前にはしっかり「鬼剣」があるので挑む前に変な被弾をする事もなく、死亡後のリスポーンも爆速なので死んだとしても再挑戦が非常に捗る仕様となっている。

体感10秒もかからずにボス戦にリトライできるのはストレスが無くて素晴らしい! 何度も挑んでれば自動的にレベル上げもできるので”いつかは勝てる”のだ

 死んで→再挑戦を何度繰り返しても全然ボスに勝てないというプレーヤーに対しては、難易度「イージーモード」が用意されている。

 このモードは通常よりも受けるダメージ量が減り、自身の攻撃力は増加することで、より遊びやすい難易度になっている。今作の場合、正直ノーマルモードでもそこそこ難しいので、まずは「イージーモード」から遊んでみるという選択肢も全然ありだろう。

 難易度はゲームの途中でも変更が可能なので、どうしても行き詰った場合の選択肢として用意してくれているのはありがたい。

ノーマルからイージーモードにはいつでも変更可能だが、一部の実績を開放できなくなるので注意が必要だ!

 これらの要素に加え、スキル強化で最強になり続けるカザンのパワーがあれば初心者も十分に本作を楽しめるはずだ。

 他にも本作はやり込み要素として武器・防具のスキルを継承できたり、ストーリーも中盤からは帝国サイドの人間ボスが登場したりなど大きな盛り上がりポイントが数多く用意されている。

 最終的にカザンの復讐劇はどこに繋がるのか。強くなるほど手触りがどんどん変化し、爽快感バツグンとなっていくアクションを楽しみながら、ぜひその行く末を体験してみて欲しい。