レビュー

「ドンキーコング リターンズ HD」レビュー

歯応えたっぷりな「ドンキーコング」が帰ってきた! 「ドンキーコング」をSwitchで楽しめる完成された一本

【ドンキーコング リターンズ HD】

1月16日 発売予定

価格:
パッケージ版 6,578円
ダウンロード版 6,500円

 任天堂は、Nintendo Switch用アクションゲーム「ドンキーコング リターンズ HD」を1月16日に発売する。価格はパッケージ版が6,578円、ダウンロード版が6,500円。「ニンテンドーカタログチケット」との引き換えにも対応している。

 本作は、2010年12月9日にWiiで発売された「ドンキーコング リターンズ」を、鮮明なHD画質(解像度1,920×1,080)で楽しむことができるタイトルだ。2013年6月13日には、新コースや攻略を有利に進められるアイテム要素を収録した、ニンテンドー3DS用ソフト「ドンキーコング リターンズ 3D」が発売されたが、本作はそちらに準拠しつつ、Wii版の一部リモコン操作をJoy-Conで行えるようになった。

 ドンキーコングはマリオと並んで、ファミリーコンピュータの時代から長らく任天堂を支えてきたキャラクターだ。昨年12月11日には、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)にて、ドンキーコングにフォーカスした「ドンキーコング・カントリー」もオープンした。ちなみに「ドンキーコング リターンズ」の英題は「Donkey Kong Country Returns(ドンキーコング・カントリー・リターンズ)」。つまるところ、USJにオープンしたドンキーコングのエリアは本作をモチーフにしているのだろうか。

 今回はUSJでも注目されているドンキーコングが大活躍するアクション「ドンキーコング リターンズ HD」を発売前にプレイさせていただいたので、レビューをお届けしていく。

【ドンキーコング リターンズ HD 紹介映像】

失敗を重ねてゴールを目指す歯応えたっぷりな横スクロールアクション!

 あらかじめ述べておくと、筆者が「ドンキーコング」シリーズをプレイしたのは、恐らく20年ぶりくらいだ。スーパーファミコンの「スーパードンキーコング2」、「スーパードンキーコング3」やニンテンドー64で発売された「ドンキーコング64」をプレイしたことがある。TV放映されていたCGアニメ版「ドンキーコング」の方は、欠かさずリアルタイム視聴していたのを覚えている。いずれもプレイしたのは幼少期の頃だが、それでも今回「ドンキーコング リターンズ HD」をプレイするにあたっては、筆者の断片的なドンキーコングの思い出がフラッシュバックしていた。

 そんな「ドンキーコング」シリーズは、スピンオフ作品(レースや音楽ゲームなど)と「ドンキーコング64」を除き、基本的には横スクロールアクションのゲームだ。トラップが配置されたり足場がなかったりする危険極まりないジャングルやら洞窟やらを、主人公のドンキーコングを操作して、コース最奥まで導いていく。今作もそうした従来通りな横スクロールアクションの「ドンキーコング」が楽しめるのだ。

 早速ゲームの導入部分を紹介してみよう。冒頭ではドンキーコングたちが住まう「ドンキーコングアイランド」の火山が噴火し、噴き出す溶岩の一片から楽器のような形をした「ティキ族」が大量に出現。妖しいリズムで島中の動物たちが次々と操られる中、なぜかドンキーコングたちのバナナも根こそぎ奪われてしまった。怒りに打ち震える相棒のディディーコングとドンキーコングは、大切なバナナを奪還するために島中を巡ることになる。彼らが操られた動物たちのことを如何様に思っているのかは置いておき、今作の導入はこんなところだ。

 作品にもよると思われるが、今作に関してはストーリーはゲーム導入部分とボス戦前後、エンディングで簡単に描写されるくらいのものとなる。それゆえ過去作を知らなくても何ら問題はないだろう。キャラクター同士の会話もほとんどない。唯一、言葉をテキストとして話し、ちょっとした小ネタやヒントを教えてくれるクランキーコングが登場する程度。ゲーム中は、バナナを取り戻したいドンキーコングにティキ族が島の動物たちをけし掛ける様子と、そのティキ族を容赦無く腕節で成敗するドンキーコングが描かれていく。

 余談だが、先述したCGアニメ版ではドンキーコングもディディーもちゃんと言葉を話していた……が、それはライトコメディ色の強いアニメ作品というエンタメだからでもあるだろう。ゲームにおけるドンキーコングは基本的に喋らないキャラクターなのだ。ウホウホと猛るか、不敵な笑みをこぼしてドラミングするかである。それは今作でもそうで、決してナラティブ志向のゲームではないと断言できる。

火山から出現したティキ族たち
ティキ族の特異な力によって次々と島中の動物たちは操られてしまう……!
バナナを盗られて怒り心頭なディディーコング
ティキ族の魔の手はドンキーコングにも。しかしドンキーコングに例の力は効果を成さないようだ

 「ドンキーコング リターンズ HD」では、3DS版にあった「ニューモード」が「モダンモード」へと名称変更されて備わっている。このモードはドンキーコングのライフが1つ増え、お店で購入できるアイテムの種類も増える、比較的遊びやすいモードだ。Wii版で発売されたときのルールで遊べる「オリジナルモード」のどちらかを選択してスタートできる。

 横スクロールアクションの腕に自信があるわけではないので、今回のゲームプレイではモダンモードを選択した。ただ、ここで白状すると、そのモダンモードですら数え切れないほどに残機を減らし、繰り返しゲームオーバーを迎えている。ドンキーコングのライフが1つ増えるため、調子に乗ってあえて使用アイテムを絞ったのも理由のひとつだが、そもそも根本的なコースギミックの構成にしてやられた。度重なるリトライを前提とした、それはもうイヤらしい意図があるのではないかと思うくらいだ。ライフがひとつ増えたところで、雑にゲームをプレイすればライフに関係なくドンキーコングは倒れる。

 とはいえ、全く突破できないバランスと言い難いのが難しいところ。コースごとにチェックポイントがあるので、ミスしてもそこからやり直せるし、何ならアイテムを持ち込んだ方が攻略は圧倒的に楽だ。それを前提としたコース設計であるならば、絶妙に挑戦しがいのある難易度だろう。だが、わざわざモダンモードを選択したのに妙なプライドが邪魔をして、そうしたアイテム使用の攻略手段を駆使しなかったのが実情である。モダンモードを選択した時点で、プライド云々を引き合いに出すのも滑稽な話だが、機転を効かせて危機を乗り越えるドンキーコングのようにはなれなかった、ということにしてもらいたい。

「オリジナルモード」と「モダンモード」のどちらかでプレイを開始できる
「クランキーコングの店」では攻略をサポートしてくれるアイテムが購入可能だ
ゲームの序盤から殺意高めなコース設計。この島に手心はないのか……
ライフがいくらあろうとも落下や乗り物の事故は即アウト

 ゲームでは舞台となるドンキーコングアイランドの各エリアを回りながら、最終的にティキ族が根城としている火山地帯「ボルケーノエリア」の踏破を目指していく。エリアごとに挑戦するコースのテーマもバラバラで、ジャングルやビーチ、遺跡に工場のような場所まで存在する。3DS版から新録された「スカイハイエリア」も登場し、全80種類のコースがドンキーコングとプレイヤーを待ち受けているのだ。

 当然だが、エリアが進むに連れてコースは難しいものになっていく。ジャンプの強弱、足場へ飛び乗るタイミングの見極め、ギミックへの瞬間的な対応力などなど、プレイヤーに求められる要素の比重はそれぞれエリアごとに異なるから、初見ノーミスクリアはあまり現実的な話ではない。テンポ良く進んだ先で、予想外の挙動をするギミックに足を取られて撃沈することも多々。

 また、自動で移動する「トロッコ」や「ロケットバレル」といった乗り物系のコースもかなりのクセモノ。トロッコはレールの先が無くなってジャンプで飛び越える必要があったり、突然コースの端から敵がトロッコで逆走してきたりもする。ロケットバレルはボタンを押下すると上昇し、離すと下降する操作性であるから、上手いこと天井・床・敵の攻撃に当たらないよう制御し続けなければならない。どちらもワンミスでチェックポイントからやり直しになるわけで、通常のコースを攻略する以上に神経を集中して臨まねば突破は困難だろう。

 ここまで紹介したことから察せられる通り、コースの攻略には相応の手応えがある。その分、ゴールに辿り着いたときの達成感と喜びももちろん大きい……。困難な道のりほど「よくもあんなコースを突破できたものだ」と、我ながら感心したこともあった。だが、コース内には隠しコースへの道を開く収集アイテムが隠されていたり、バナナやコインを獲得できる隠し部屋があったりもする。ということは、全コースのクリアを目指すのであれば、それらアイテムを再び回収しにプレイし直す必要が出てくる。

 苦難の末に乗り越えたコースに再び挑戦するのは中々に勇気がいるが、1度でもクリアしていればコースの特性を身に染みて覚えているはずなので、適切なアイテムをチョイスして持ち込めばきっと何とかなる。そう思わせてくれるほどには、トライし直せる難易度バランスだと思う。ちなみにWii版から続く要素として、同じコースでのミスが続くと「スーパードンキーコング」による「おてほんプレイ」が見られる。スタート地点からゴール地点まで、スーパーなドンキーコングがコース攻略を実演してくれるという機能だ。この機能を使うとコースをそのままクリア扱いにできるのだが、その場合はアイテムが入手できない仕様になっている。

 各エリアの最後は決まってティキ族に操られたエリアボスとのバトルが待つ。攻撃を避けて、露出した弱点を踏みつけるなどしてダメージを与えていくのが基本的な流れで共通している。ボスの攻撃パターンをしっかり読みさえすれば、コースを攻略するよりも突破は遥かに容易である。ボスバトル中はドンキーコングが即アウトすることもほとんどない。コースの突破に苦労しただけ、ボスバトルは軽快かつ爽快に倒せる塩梅なのではないかと感じられたほど。

コース内のアイテムは積極的に回収しておきたい
隠し部屋はこんな感じになっている
こちらがスーパードンキーコングによる「おてほんプレイ」。無駄のない動きでゴールへ一直線である
ティキ族に操られた島の動物たちがドンキーコングの行手を阻むボス敵に
行動パターンを見極め、一撃離脱で対処していくのがコツだ
ボスを倒すとドンキーコングがティキ族をブン殴るのがお約束。バナナを盗られた怒りとコースで募った恨みはここで晴らせる!

野生味溢れる多彩なアクションであらゆる危機を乗り越えるドンキーコング

 ドンキーコングが冒険中に繰り出すアクションの数々についても見ていきたい。ドンキーコングはジャンプで踏みつけて敵を倒せるほか、転がる、地面を叩く、掴む、投げる、息を吹くといった多彩なアクションが使える。中でも地面を叩く動作なんかは、Wii版だとWiiリモコンとヌンチャクを振って発動できた象徴的なアクションだ。

 今作でもJoy-Conを用いることにより、Wii版に近い操作体験が可能となっている。Wiiリモコンの代わりに左右に持ったJoy-Conを振ると、連動してドンキーコングが地面を叩く。地面を叩くアクションは、コースの重要な仕掛けを起動させるほか、ブロックを破壊したり、一部の敵をひっくり返したり、道中にある蕾からアイテムを吐き出させることもできる。ゲーム中の使用頻度は高めな方である。

地面を叩く動作は仕掛けの起動に使える
蟹をひっくり返して無力化。その後踏みつければ倒せる

 掴むアクションもコースの攻略には必要不可欠だろう。タルを掴んで敵に投げつけて攻撃する以外に、天井から生えた草やツタを掴むことで、足場のない空間を移動できる。ドンキーコングらしいというか、野生味溢れるワイルドな移動方法である。

 息を吹くアクションは使用頻度こそ少なめなものの、特定の仕掛けに対して使う。コース内を隈なく探索するアイテム収集目的のプレイヤーならば、その使用頻度は間違いなく増えるはずだ。また、炎を身に纏った厄介な敵にも有効。炎を息で吹き消し、倒せるようになる。ドンキーコングの肺活量、恐るべし。

 転がるアクションはドンキーコングが加速を付けて前転するというもの。タイムアタックや急ぎの行動が求められる際に活躍する。こちらは攻撃にも転用可能なアクションだが、逆にダメージを受けてしまう場合もある。プレイ中は転がるで加速付けてから大ジャンプ、といった使い方をよくしていた。

掴むアクション。壁登りや天井へのぶら下がりに多用する
当然ながら無防備になってしまうので注意が必要
息を吹くことができる箇所はコース内のあちこちにある。一部の敵を倒すための足がかりにもなる
転がると素早く移動できる。一部の敵には攻撃手段としても機能した

 コースの攻略とボスバトルでは、前述した各アクションを使い分けて突破していく。ジャンプと移動だけでクリアできるほど、今作は甘くはない。道中の敵も特定のポイントでは倒しておいた方がリスクを減らせる場合がある。リトライを繰り返すたびに、コース内の攻略ポイントが自然と見えてくるため、「あそこがああだから、次はこうしてみるか」といったプレイヤー側の試行錯誤が、ドンキーコングの各アクションを通じてプレイに反映されていく。罠だらけ敵だらけの環境に、ドンキーコングの動きをチューニングしていく過程はまさしく今作の醍醐味と言える。

 時にはアクション操作のタイミングがシビアな場所もあった。どうしても突破できなければ、クランキーコングのお店でアイテムを買い揃えて挑戦するのもアリだ。特定のポイントでライフを減らしがちならば、ダメージを幾分か防ぐ「バナナジュース」を購入すればいい。落下ミスが多発するなら「グリーンバルーン」が1度の落下を防いでくれる。ちょっとした苦手をこういったアイテムで補うと、突破の活路が見出しやすいわけである。ただし、オリジナルモードでプレイしている場合は、購入できるアイテムの種類が限られるので、最終的に試行錯誤の忍耐力が試されることになるが……。

敵を踏みつけた際にジャンプを入力するとさらに高飛びできるテクニックもある
どのボスバトルでもドンキーコングの多彩なアクションが突破口になる
コースギミックの特性を頭に入れ、どのタイミングで何をすべきか最適解を探していくのが面白い
バルーンをたくさん買い込んでおけばチェックポイントでリトライし放題(血涙)

 ドンキーコングは冒険中に「DK」と書かれたタルを破壊することで、ディディーコングを背中に乗せられる。すると体力が倍増し、ドンキーコングが受けたダメージをディディーが肩代わりしてくれるのだ。さらにディディーがいる場合は、ドンキーコングがジャンプした際にジャンプボタン長押しで、バレルジェットの短時間による滞空が可能となる。足場が狭く、移動キーでの匙加減が重要な局面において、このバレルジェットを使った落下地点の調整はとても有用。これは攻略においてプレイヤーの助けとなる補助的なアクションと言うべきだろうか。

 紹介してきているようにディディーはコースを攻略する上で欠かせない冒険の相棒となっている。ドンキーコングよりも体格やパワーでは劣るかもしれないが、ドンキーコングにはできないアプローチで彼の冒険をサポートしているのだろう。ディディーを背中に乗せている際は、ドンキーコングが行なう各アクション中のディディーの様子もコミカルで可愛らしい。今回のプレイでは試していないが、Joy-Conのおすそわけによって、ドンキーコング&ディディーの2人協力プレイが楽しめる。ドンキーコングとディディーのコンビネーションが持つ力を、より強く体験できるはずだ。2人でなら困難なコースも突破しやすいかもしれない。

「DK」のタルからディディーを召喚できる。ライフも回復するので非常に助かる
短い時間だが、ドンキーコングを抱えて滞空できるように
普段のアクションもディディーがいるだけでちょっとした変化がある
ディディーを呼んだままクリアすると、リザルト画面にもちゃんといる

USJで話題の「ドンキーコング」をSwitchで楽しめる完成された一本に

 今作からグラフィックスがHD化されたとあって、非常に鮮明かつ明瞭な映像表現に仕上がった。Wiiは、現在主流となっているHDMI端子がまだ採用されていなかったゲームハードで、RCA端子をテレビに繋げてプレイしていた。そして3DS版の「ドンキーコング リターンズ 3D」は、携帯ゲーム機向けの移植作という事情がある。据え置きゲーム機と携帯ゲーム機のスペック差から生まれる、映像表現の差は顕著だ。3D立体視に新コース、新モードと、パワーアップは遂げたが、グラフィックス面についてはどうしてもジャギーが目立つようだ。

 残念ながら手持ち機材の関係で、「ドンキーコング リターンズ HD」と、Wii版、3DS版をそれぞれ実際に比較することはできないが、今作をSwitchのTVモード&携帯モードでプレイしても、決してビジュアルに粗さを感じることはなかった。本作から初めて「ドンキーコング リターンズ」をプレイした方なら、正直リマスターされたゲームだとは全く気づかないはずだ。

 本稿は「ドンキーコング リターンズ HD」のレビューというより、「ドンキーコング リターンズ」そのもののレビューという性質を強めに感じた方が多いかと思う。しかし、Wiiから3DS、3DSからSwitchへと、脈々と継承されてきた本作は、今回のHD化に加えて3DS版の追加要素、携帯ゲーム機の特性上一時オミットされた体感型の操作など、過去の全てが今作に集約されていると感じられるのだ。そういった視点で見ると、やはり「ドンキーコング リターンズ」の魅力は今一度世に広めておくべきだと思う。

 USJで「ドンキーコング」に初めて触れた人、過去のシリーズをプレイしてきたファン、まだ遊んだことがないプレイヤーにもオススメできる歯応えたっぷりな「ドンキーコング」がここにある。筆者も童心に立ち返り、あの頃スーパーファミコンで一緒にドンキーコングをプレイした友人と、今ならバナナリキュールでも酌み交わしながら、おすそわけプレイで思い出話に花でも咲かせようと思う。