レビュー
「ペルソナ3 リロード」レビュー
JPRG好きには今年絶ッ対に遊んでほしい! ファン待望の新要素を引っ提げて再誕
2024年1月30日 22:00
- 【ペルソナ3 リロード】
- 2月2日 発売予定
- 価格:9,680円(税込)
皆さんは2006年に発売された伝説のRPG「ペルソナ3」をご存じだろうか。今でこそ日本を代表するJRPGの一角として多くのプレイヤーに愛されている「ペルソナ」シリーズだが、その“現代の「ペルソナ」”作品が持たれているイメージの多くのシステムやゲーム性の礎を築いた作品が「ペルソナ3」なのだ。
その上でアトラス作品らしいダーク感も強く残した独特の世界観とストーリーは他のナンバリングタイトルにはない魅力となっており、今でも根強いファンが非常に多い。筆者も中学生の頃にこの作品に出会ってしまった事が切っ掛けでオタクとしての道を歩む事になり、色々と拗らせたと言っても過言ではない。
そんな「ペルソナ3」が、「リンクエピソード」を始めとした新たなストーリーイベントや、全く異なるバトル体験を生み出す「シフト」と「テウルギア」等の新要素を引き下げ、さらにグラフィックやUI等も現代基準にリブートされた神リメイクタイトル「ペルソナ3 リロード」としてついに復活する!
「ペルソナ3」で味わえるゲーム感はそのままに、よりスタイリッシュに進化したコマンドバトルや、より深くキャラクター達を掘り下げる数々のエピソードの追加などリメイクタイトルらしいパワーアップが随所に見られ、ストーリー・ゲーム性・バトルシステム、どこをとっても素晴らしい完成度となっている。
今回はそんな本作を一足早くプレイする事ができたので、早速その魅力を伝えていきたい。最近シリーズを知ったプレイヤーや今を生きる若いRPG好きには是非この機会に触ってほしいと強く思えるレベルの作品となっていたので、ぜひチェックしてほしい。
青春・戦い・葛藤……高校生たちの1年の戦いを描いたジュブナイルRPGの決定版!
本作は「ペルソナ」という特異な力に目覚めた高校生の少年・少女達が、普通の人間には認知できない1日と1日の狭間に訪れる隠された時間「影時間」と呼ばれる異形の世界の中で、人々を襲う「シャドウ」と呼ばれる化け物と人知れず戦い続ける姿が描かれる。なぜ「影時間」なんて世界が存在しているのか、なぜ「シャドウ」は人々を襲うのか等の世界の謎を仲間たちと追求していきながら、未熟な若者たちが様々な葛藤や困難に立ち向かっていくのだ。
その上で同時に高校生らしい日常を楽しむことができるのも大きな特徴。学園や街に繰り出して新しい出会いを探したり、自分磨きをして世界を広げたりなど、戦い以外にもやれる事は数多く存在している。心の力である「ペルソナ」は他者と関わる事でより強力になっていくため、勉強・部活・恋愛など様々な青春の風景の中で多くの人々と関わり合い、多くのな人間ドラマを味わうのも本作の物語において非常に重要な要素となっている。
そしてプレイヤー自身が主人公となるタイプの作品なため、どのような物語を紡ぐかは自分次第。ジュブナイルな雰囲気とアトラス作品らしいダークな雰囲気が顔を覗かせている世界観の中で、日常と非日常を行ったり来たりする自由な1年間を主人公となって過ごす事ができるのだ。
戦いの果てにどのような結末が待っているのか、青春の中で何を得るのか、ジュブナイルRPGの名目に相応しいゲーム体験を味わえるのである。
「ペルソナ」シリーズといえば秀逸なバトルシステムも大きな特徴の1つと言えるだろう。システムのベースは行動を選択してアクションをを行うコマンドバトルなのだがコマンドを選択するUIがあまりにもスタイリッシュでカッコ良いためアクションゲームさながらの躍動感と爽快感を味わえるのである。その上で様々なスキルによる駆け引き、多くの攻撃属性からなる相性有利の関係、バフ・デバフや補助スキルやパッシブスキルの組み合わせによる戦略の幅広さなど、コマンドバトルの面白さを全て凝縮したような選択肢の多さは圧巻である。
これらの上質な基礎があった上で、敵の弱点を突いた際に敵をダウン状態にして続けて行動が行える「1MORE」、全員をダウン状態にする事で行える「総攻撃」、今作から登場した「1MORE」の際に味方に行動権をパスできる「シフト」やキャラクター毎の必殺技である「テウルギア」と言った独自のバトルシステムが非常に強い爽快感とやり応えを生み出している。
さらに「ペルソナ」シリーズの特徴として、バトルで使用するスキルは全て「ペルソナ」を行使する力によるものというのがゲームの根幹となっている。
「ペルソナ」とは神話に登場する悪魔や神々、歴史上に存在する偉人などを象った姿を持つ心の力で、パーティーキャラクターはそれぞれ自身のペルソナを駆使して様々な攻撃を可能としているのだ。
中でもプレイヤーの分身たる主人公は特異な力「ワイルド」に目覚めており、1つのペルソナで戦う他のメンバーとは異なり、複数体のペルソナを入れ替えながらバトルをする事が可能となっている。さらには、所持しているペルソナを「合体」させる事でより強力なペルソナを生み出す事もできるため、より強力なペルソナを求めて合体を繰り返す育成ゲーム的な側面も楽しむことができるのだ。
パーティーキャラクターのペルソナの特徴を踏まえながら自身のペルソナを育成し、役割に合わせて様々なペルソナを使い分ける面白さは本シリーズならではのゲーム体験と言えるだろう。
そして、戦いだけでは強くなれないのが本作の面白いポイント。そこで重要となってくるのが日常パートで行う「コミュ活動」だ。
プレイヤーは主人公を操作して学園や街で過ごしている様々なキャラクター達と自由に交流を深めて様々な人間ドラマを垣間見ることができ、共に時間を過ごす事でイベントが発生して「コミュ二ティ」のレベルを上げていくことができるのだ。「コミュニティ」を築ける相手には主人公が生み出すペルソナ達が持つ「アルカナ」と呼ばれる属性がそれぞれ割り振られており、「コミュニティ」のレベルを上げておく事で対応する「アルカナ」のペルソナを生み出した際にボーナスを獲得できるようになるため、より強力なペルソナを所持できるようになるのである。このボーナスの有無が戦力に大きく響くため、日頃から様々なキャラクター達と関係を持つことが本作では最重要なポイントになるのだ。
「コミュ活動」で多くのキャラクターに出会うには自分磨きをしっかり行わないといけないのも本作の面白い所。主人公には「勉強」、「勇気」、「魅力」の3つの「人間パラメータ」が存在しており、キャラクターによってはこれらのパラメータのどれかが一定数に達成していないと交流を開始できない事があるのだ。日常の高校生活の中で自分磨きをする事は勿論、積極的に街に出かけてアルバイトを始めとした様々な体験を積み重ねる事でこれらの能力を磨いていき、様々なキャラクターと交流できる機会を増やしていく。
さらにこの「人間パラメータ」は物語上で選択肢を選ぶ際にも影響を及ぼす事もある。例えば恐ろしい事態に側面した際に主人公らしい勇敢な選択肢を選べるかは「勇気」が、女の子にカッコつけたいタイミングでは「魅力」が、期末テストや中間テストなどの学校イベントでは「学力」の値がそれぞれ重要となる場面もある。多くの選択肢を選び取るために日常の中で自分磨きを行う事も重要となってくるのだ。
このような日常と非日常を繰り返しながら高校生として自分らしい1年間を過ごし、日を追うごとに判明する謎や強敵に直面しながら濃密なストーリーを楽しめるのが本作の大きな魅力となっている。どの曜日/日にちには何をするか、「コミュレベル」をどのような順番で上げていくのか、新しい出会いやイベントを求めて街を練り歩くか自分磨きをするか、次に生み出すペルソナは何にするか、キャラクターやペルソナをどのように育成していくのか等々……過ぎていく日々でやりたい事は盛りだくさんとなっている。本筋のストーリーに加えて自分らしいスケジューリングで物語を歩んでいける面白さが本作には存在するのだ。
より詳細なゲーム性については以前にプレビュー記事も書いているので、ぜひそちらも合わせて読んでもらえると嬉しい。
新規から古参ファンまで楽しめる! “リロード”された魅力をピックアップして紹介
ここまでで本作の基本的なゲーム性や面白さについては紹介できたと思うので、続いて実際にプレイして感じた「ペルソナ3 リロード」ならではの良さについてピックアップして紹介したい。
まずは何と言っても進化したスタイリッシュかつ便利に進化したUIの数々だ。バトル時の直感的なコマンド選択はアクションゲームさながらの臨場感を生み出しているが、日常パートでも随所で進化したポイントを感じ取れる部分が多数ある。例えばメニュー画面やアイテム購入画面などが本作のイメージカラーである青をベースに清涼感のあるUIへと変化している。
便利になったポイントでいうと毎日自由行動が可能になった際にイベントがある相手などからメールが届くようになっているのだ。さらにはマップ移動画面でも「コミュ活動」、「イベント発生」、「クエストに関連するキャラクターの有無」などが判別できるようになってるなど、オリジナル版にはない便利機能が随所に追加されている。ゲームをプレイしていて不便に感じる点がほとんどなくなっている印象だ。
次に、より派手にかつ戦略的になったバトルでの新要素の所感についてだ。「1MORE」の際に行動権を移せる「シフト」はナンバリング最新作である「ペルソナ5」の「バトンタッチ」に近いシステムとなり、連続で相手の弱点を突いていける爽快感や、回復や補助を様々なタイミングで差し込めるといった戦略的な面でも面白さを底上げしてくれる良い要素となっている。満遍なくキャラクターを回して無駄なく相手の弱点を突く事でSPを節約できるという点が非常に面白く、ゲーム性とマッチしている。
キャラクター毎に必殺の一撃を放てる「テウルギア」も単純に選択肢が1つ増えただけでなく、そのキャラクターならではの強みがしっかり確立した事は非常に大きい。属性相性を無視した大ダメージを与えられるという能力をベースに、各キャラクターが自身の属性や特性に合わせた能力を持っている事に加え、「テウルギア」を発動する為に溜める「テウルギアゲージ」の上昇方法がキャラクター毎に条件が異なっている為、そこを考慮した組み合わせや使い勝手の良さもバーティー選出の際にはキモになるのだ。他にもボス戦や強敵と戦う前に「テウルギアゲージ」を溜めておくことで、開幕から強力な攻撃で畳み掛けるなど今までにない意識が向くようになったり、新システムによってバトル体験はかなりガッツリ変化している。
ゲーム体験の変化といえばプレイの大部分となるダンジョン「タルタロス」の探索もガラッと変化している印象だ。まず全体的なマップ作りが各フロアによって相当特色が異なり、オリジナル版よりも同じ場所を延々と歩き回っている感覚は薄い。マップ探索の面白さにさらに磨きが掛かっていた。
さらに今作から形を変えて登場する「モナドの扉」等の新ギミックの数々もゲーム体験に変化をもたらしている大きな要因だろう。「モナドの扉」は先に進む事で強敵と戦う事ができるギミックで、討伐に成功するとレアなアイテムを入手した上で探索していたフロアと次のフロアのマップが解放されるというボーナスが発生する。強敵との戦いが歯ごたえがあって面白い事に加えボーナスも大きいので積極的に狙いたい。
他にも「タルタロス」探索で重要となるのが「薄明の欠片」の存在だ。このアイテムはタルタロス内の鍵付き宝箱を開場する際に幾つか使用する鍵のようなアイテムなのだが、他にもマップに設置された「時計台」に一定数使用する事で味方のHP/SPを完全に回復してくれたり、探索中に大量に消費しているとパーティーメンバーのレベルを主人公と同じまで押し上げる「大時計」を出現させる事ができたりなど、タルタロス探索に置いて重要なキーアイテムである。
さらにはマップで発動できる「風花」の様々なスキルが追加されたり、今作から可能になったダンジョンを素早く移動できる「ダッシュ」やそれと合わせて先制攻撃を起こしやすくなる「強襲アタック」、本作を代表する新しい服装である「SEES正式戦闘服」によってビジュアルにも変化が加わったため「タルタロス」の探索も全く異なる印象とゲーム感でプレイする事ができた。膨大な時間を「タルタロス」探索に当てる事になる本作の特徴を考えると、しっかり異なるゲーム体験が用意されているのはオリジナル版をプレイしていたプレイヤーにとっては嬉しいポイントだろう。
バトル以外でもファンを泣かせるような新要素が盛りだくさんなのが嬉しい所。「コミュ活動」では、全てのキャラクターがイベント中はフルボイスとなっているため感情移入しやすくなっている。他のナンバリングに比べて「終わり」や「死」を想起させる比較的悲しかったりブルーな気持ちになる物語が多い「ペルソナ3」の特徴と合わさって、感情を大きく揺さぶられる場面が非常に多かった。
昔遊んでいたプレイヤーからすれば年月が経って一部のキャラクターの言う事に深みを感じるようになったり、逆に青い青春を送っている若いキャラクターに懐かしさや親しみを思い出すかもしれない。悲しい雰囲気のイベントが多いとは言ったがその分心に残るエピソードが非常に多いのが「ペルソナ3」の良い所ではあるため、リメイクならではのパワーアップした表現の数々でぜひ本作の人間ドラマを味わってほしいと強く思っている。
コミュ活動意外でも多くのイベントが追加された点もデカいだろう。オリジナル版の「ペルソナ3」は後のシリーズとは異なり、共に脅威へ立ち向かう事になる「特別課外活動部」の男メンバーとのコミュ活動が存在しなかったため、今までは少し掘り下げが足りなかった部分があったのだ。
しかし今作から追加された「リンクエピソード」によって各メンバーと交流できるイベントが増えた事により、より深く仲間たちの内面を知ることができるようになった。主人公に嫉妬心を抱く事の多い「順平」の内情の変化や、先輩として強く立ち振る舞う「真田」の姿などファンからすると見たかった場面が山ほど用意されているので是非期待してほしい。
「リンクエピソード」に加えて、本作ではさらに「特別課外活動部」メンバーとのイベントが用意されている。時たま夜の自由時間に各キャラクターとDVDを見たり、料理を作ったり、読書をしたり、家庭菜園をしたり…といった寮の中で共に過ごせるイベントが追加されたのだ。これらの寮イベントを達成していくとキャラクター毎に特徴的なパッシブスキルを獲得する事ができるため戦力の強化にもなり、一緒に過ごした際のイベントではそのキャラクターの意外な一面や心情を垣間見れる事もあるためファンとしては堪らない内容となっている。
オリジナル版だとどうしても「特別課外活動部」メンバーがコミュ活動の対象外だったり、寮で起こせるイベントがそこまで大きくなかった事もあって仲間との絡みに少し物足りなさがあったのだが、今作ではこれら2つの要素が追加された事でかなりガッツリ各メンバーとの掘り下げが行われ、共に戦う仲間としての側面以外の関係値を深めてくれていた。普通の学生として和気あいあいと過ごす「特別課外活動部」の新たな一幕を見られるだけで感涙モノである。
そして追加されているのは平和なエピソードだけではない。今作では何と敵対する事になる「ストレガ」メンバーとも追加のエピソードが用意されている。しかも本筋に絡む形でかなりガッツリ用意されている印象だった。
中にはオリジナル版では狂言染みた印象のある「タカヤ」と共闘する場面や神社で話す場面が見受けられ、彼らの考えや人間性について掘り下げられるシーンも。これまでの印象とは違う彼らの行動にも注目したい所だ。
今回リメイクとなる本作をしっかり遊んでみて感じたのは「ペルソナ3」としての”らしさ”はしっかり継承してながらも、全く異なるゲーム体験を生み出せているという点が素晴らしかった。長年リメイクを待ち望んでいたファンの期待に応えるかのような追加エピソードと新要素の数々、新しく始めるプレイヤーに向けて「ペルソナ3」の物語の本質を変えないまま現代リブートした数々のシステムには驚かされてばかりだった。シリーズファンは勿論ながらJRPG好きにも強くオススメできる最高峰の力作となっていたので、気になるプレイヤーはぜひ本作を遊んでみてほしい。
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