レビュー

「カプコン ファイティング コレクション」レビュー

26年越しの初移植! 令和の時代でも斬新な意欲作「ウォーザード」

 「カプコン ファイティング コレクション」の収録タイトルの中で古参格ゲーマーがもっとも注目をしているタイトルは間違いなく、ここから触れていく「ウォーザード」だと思う。本作は1996年にアーケードで稼働した格闘ゲームで、26年越しでなんと今回が初のコンシューマ移植となる幻の作品だ。

【ウォーザード】
誰もが移植を諦めていた作品がまさかの復活

 当時少年だった筆者は、大人のように湯水のごとく連コインできるほどお金は無く、100円の1プレイでどれだけ長く遊べるかを重視して遊ぶ傾向があった。1996年といえば、2キャラも操作することができて安定してエンディングまで遊ばせてくれるコスパ最強ゲーム、「X-MEN VS. STREET FIGHTER」漬けだった頃に「ウォーザード」が稼働されたのだ。

 最先端のカプコンアーケード基板であった「CPシステムIII」用に開発されたタイトルということもあり、美しいドット絵とアニメのように滑らかに動くキャラクターを見たときは「このゲームは只者じゃない!」と衝撃を受けた。

 もちろん飛びついてプレイした訳だが、正直な話コスパ面だけで言うならば“地獄であった”。1ラウンド制で基本的には1戦目から敵が強く、勝利しても減った体力は次の戦いに継続するというシステムだったため100円など一瞬で溶けていった。結果、これまで1プレイしか遊んだことがなかったのだ。これはあるあるなのだが、ゲームセンターから姿を消してプレイする機会がなくなった途端に無性にやりたくなり、20年以上移植されることを熱望していた。

当時の2D格闘ゲームでは、群を抜いて美麗なグラフィックスだった
試合後は多少体力回復はするものの、次の戦いでは体力が減ったままの状態からスタートするという、なかなかシビアなゲームバランス
「ウォーザード」も残念ながら、「X-MEN VS. STREET FIGHTER」の影に完全に隠れてしまっていた。画面はセガサターン版

 本作は、これまでのカプコン格ゲーにはないファンタジー色の強い作風が特徴。しかも、ただファンタジーな世界観の格闘ゲームではなく“RPGの要素”を取り入れた意欲作なのだ。RPG要素については後述する。

 プレイアブルキャラクターは、ライオンの姿に変えられてしまった国王「レオ」、ジパングの将軍に仕える忍者「ムクロ」、故郷を焼き払った者を追う武道家「タオ」、世界の異変を調査する魔法使い「タバサ」の個性的な4人。それぞれが目的のために旅する。

プレーヤーが操作できる4人の主人公。どのキャラも魅力的な面々だ

 「格ゲーでキャラクターが4人ってさすがに少な過ぎる」と思うかもしれないが、本作は初代「ストリートファイター」のようなCPU戦がメインのゲーム。対人戦以外ではこの4人が交わることはなく、CPU専用キャラのモンスターと戦っていく。「ハウザー」や「金剛」などの王道のカッコ良い系のものから、石像型ロボット「ギギ」のような不気味なものまで多種多様なモンスターが登場するのが見所である。

 本作の敵は“アクションゲームのボスキャラ”といった感じでこちらのキャラクターと比べてデカく、見ただけでも強さが伝わってくるビジュアルだ。もちろん見た目だけではなく性能もボス級で、スーパーアーマー持ちや高火力ガード不能技持ちなどの強敵揃い。今回改めて遊んでみて、過去に1回プレイして以降手を出さなかった気持ちが鮮明に蘇った。

モンスターは圧巻のスケール感! どいつもかなりのクセ者だ
どのモンスターも反則級の強さ! このブレイドはガードしても鏡の中に封じ込め、確定の大ダメージを与えてくる

 ここからはゲーム部分にも触れていこう。使用するボタンは、パンチとキックがそれぞれ弱・中・強とあるオーソドックスなカプコン格ゲーのスタイル。必殺技関連のゲージは無く、代わりにミスティックオーブというアイテムを使用して、ミスティックマジック(魔法)やミスティックブレイク(超必殺技)を繰り出すことができる。

 ゲームスピードは緩やかで、強力なコンボを決めて戦うという派手なものではなく、敵の動きやパターンを覚えて1発1発を確実に当てていくというアクションゲーム色の強いゲーム性。少しでも迂闊な行動を取れば的確に大技を叩き込んでくるので一瞬たりとも油断ができない。

 純粋な格闘ゲームとして見ると手放しで絶賛はできないが、ベルトスクロールアクションなどのパターン覚えゲーが好きな人にはかなり刺さる内容である。

ミスティックマジックは使用したミスティックオーブによって効果が異なる
キャラごとの固有の超必殺技・ミスティックブレイクはかなり強力
正攻法なんて言っていられない。勝つためには必勝ハメパターンは必要不可欠

 先に触れたRPG要素だが、本作にはレベルの概念があり、バトルに勝利してEXPを獲得することでキャラクターのレベルが上がっていくのだ。パラメーターの上昇、さらには使用できる必殺技がどんどん増えていくのも非常に面白く、レベルがカンストするまで何週もプレイしたくなる魅力がある。アーケードの格ゲーでありながら成長要素が楽しめるというゲーム性は、昨今ですら斬新と思えるシステムだ。

レベルが上がることで、新しい技を習得していくのも本作の面白いポイント
レオは、レベルアップで装備が強化される

 当時はアーケードで使えるセーブ用のカードなどはほとんど無かったんので、キャラの成長した記録はパスワードで保存される。ケータイで簡単に写真が撮れる時代でもないので、筆者のホームゲーセンでは無かったが筐体にパスワード用のメモが取り付けられている店もあったようだ。

パスワードはキャラ選択時に入力する
イーカプコン限定のグッズセットには、当時ゲームセンターに配布されていたパスワードメモが付いているそうだ

 レベル以外にもやり込み要素は多く、対人戦でのみ得られる隠れた装備や必殺技、キャラクターごとのエンディング分岐など作り込みがハンパじゃない。対戦こそが至高という時代にコンシューマ寄りのゲーム性の「ウォーザード」は残念ながらアーケードで陽の目を浴びることはなかったが、改めてじっくりプレイしてみるとゲームとしての面白さは間違いない。

 「カプコン ベルトアクション コレクション」の「パワードギア」と「バトルサーキット」もそうだが、もう一生遊ぶ機会は無いと思っていた作品が移植されるのはこれ以上ないほど嬉しい。ゲームファンなら「ウォーザード」1本のためだけに「カプコン ファイティング コレクション」を買う価値は大いにありだ。

令和の時代に100円を吸われることなく思う存分遊べるのは非常に嬉しい
「ウォーザード」と同様に、「パワードギア」と「バトルサーキット」も長いことアーケードから移植されなかった作品。画面はPS4版「カプコン ベルトアクション コレクション」